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平成21年12月25日

医薬食品局審査管理課

化学物質安全対策室

室長        山本 順二

室長補佐    柴辻 正喜

専門官      古田 光子

担当       間宮 弘晃

(電話代表) 03(5253)1111

(内線)    (2424),(2426)

平成20年度 家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告について


 厚生労働省は、家庭用品等に関連した健康被害情報を収集するため、皮膚科領域及び小児科領域の病院並びに(財)日本中毒情報センターの協力を得て家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告制度を実施しています。
 今般、平成20年度における、これらの病院等からの健康被害報告の内容について家庭用品専門家会議(座長:伊藤正俊 東邦大学医学部皮膚科学第一講座教授)にて検討を行い、報告書を取りまとめたので公表します。報告書の概要は別添のとおりです。
 厚生労働省では、消費者をはじめ、地方公共団体、関係業界団体等に対して本報告書の内容を周知するとともに、引き続き本制度を通じて、家庭用品に含有される化学物質による健康被害の実態の把握と情報提供等を推進していきます。


【報告のポイント】
・皮膚障害については、装飾品が43件と最も多い。
 →症状が発現したら、原因製品の使用を中止するか別の素材のものに変更する。
・小児の誤飲事故は、タバコが159件と30年連続でトップ。
 →生後6~17ヵ月の小児がいる家庭は、タバコの取扱い及び保管方法に注意する。
・吸入事故等(吸入事故・眼の被害)は、殺虫剤が221件と最も多い。
 →使用上の注意をよく読む。蒸散型の殺虫剤は、使用時に火災警報機が鳴り、止めるため入室して吸入する事例があるため、事前の対策を行って使用する。

(別添)

平成20年度 家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告(概要)

 

 本制度では、モニター病院(皮膚科、小児科)の医師が家庭用品等による健康被害と考えられる事例(皮膚障害、小児の誤飲事故)について、また、(財)日本中毒情報センターが収集した家庭用品等による吸入事故等と考えられる事例について、それぞれ厚生労働省に報告することになっており、平成20年度に報告された事例の件数は、合計1,565件(前年度1,681件)であった(図1)。
 それぞれの報告件数の詳細は以下の通りである(表1)。

表1 平成20年度 家庭用品等による健康被害のべ報告件数(上位10品目)

(注)皮膚障害では、原因となる家庭用品等が複数推定される事例があるため、報告事例総数(114例)とは異なっている。


1. 家庭用品等に係る皮膚障害に関する報告

(1)調査結果の概要と考察

・報告された事例は、114件(前年度62件)であった。
・皮膚科領域では、1事例に対し複数の原因・障害が報告されたものがある。
・皮膚障害の原因となった家庭用品等の種類は装飾品が43件(32.1%)、洗剤が13件(9.7%)、ゴム・ビニール手袋が10件(7.5%)等であった(表1、表2・参考1図2)。
・性別では、女性が90件(78.9%)と大半を占めた。
・皮膚障害の種類は、「アレルギー性接触皮膚炎」62件(51.7%)と「刺激性接触皮膚炎」49件(40.8%)がほとんどを占めた。

 家庭用品を主な原因とする皮膚障害は、原因家庭用品との接触によって発生する場合がほとんどである。家庭用品を使用するに当たり、接触部位に痒み、湿疹等の症状が発現した場合には、原因と考えられる家庭用品の使用は極力避けることが望ましい。
 また、事業者においては家庭用品に使用する化学物質の種類、経時変化等に留意して、事故の未然防止に努める必要がある。

(2)製品別の結果と考察

装飾品 〈症状が発現したら、使用中止又は別の素材のものに変更〉
・装飾品に関する報告件数は43件、製品別の内訳は、ネックレスが15件、ピアスが9件、指輪が2件などであった。
・障害の種類は、アレルギー性接触皮膚炎が38件と最も多かった。
・金属の装飾品について、25件でパッチテストが施行され、ニッケル又はコバルトにアレルギー反応を示した例が多かった(表3)。

 金属による健康障害は、金属が装飾品から溶けだして症状が発現すると考えられる。そのため、直接皮膚に接触しないように装着することにより、相当程度、被害を回避できると考えられる。それでも症状が発現した場合には、原因と思われる製品の装着を避け、装飾品を使用する場合には別の素材のものに変更することが症状の悪化を防ぐ上で望ましい。

洗剤 〈使用上の注意・表示をよく読む〉
・洗剤に関する報告件数は13件であり、ほとんどが台所用洗剤であった。
・障害の種類は、13件とも刺激性接触皮膚炎であった。

 基本的な障害防止策としては、使用上の注意・表示をよく読み、希釈倍率に注意する等、正しい使用方法を守ることが第一である。また、原液をスポンジに直接とり使用する場合などは必ず保護手袋を着用することや、使用後、クリームを塗ることなどの工夫も有効な対処法と思われる。それでもなお、症状が発現した場合には、原因と思われる製品の使用を中止し、早期に専門医を受診することを推奨する。

2.家庭用品等に係る小児の誤飲事故に関する報告

(1)調査結果の概要と考察

・報告された事例は、477件(前年度777件)であった。
・原因となった家庭用品等の種類はタバコが159件(33.3%)、医薬品・医薬部外品が86件(18.0%)等であった(表1、表4・参考2図3)。
・誤飲事故の発生は、夕刻以降に増加する傾向が見られ、全体の約59.0%が午後4時から午後10時の間に発生していた(図4)。

 事故は家族が側で小児に注意を払っていても発生してしまうことがある。小児のいる家庭では、小児の手の届く範囲には極力、小児の口に入るサイズのものは置かないようにしたい。今回、過去に誤飲事故が起きた場所にもう一度同じように置いているケースも見られた。誤飲防止のため一層の保護者による配慮を求めたい。歩き始めた小児は行動範囲が広がることから特に注意を要する。

(2)製品別の結果と考察

タバコ 〈30年間トップの原因製品、保管方法に注意〉
・タバコに関する報告件数は159件(33.3%)であるが、誤飲事故の発生は特定の年齢に集中し、生後6~11か月の乳児の事故が97件(61.0%)、12~17か月の幼児の事故とあわせると139件(87.4%)で、報告例の大半を占めた(図5)。

 タバコの報告件数は、昭和54年より30年間トップである。生後6~17か月の乳幼児の時期に注意を払うことにより、タバコの誤飲事故は大幅に減らすことができるので、この時期の小児の保護者は、タバコや灰皿を乳幼児の手の届かないところに保管すること、飲料の空き缶等を灰皿代わりに使用しないことなど、それらの取扱いや置き場所に配慮が必要である。

医薬品・医薬部外品 〈重症化しやすい、保管・管理に注意〉
・医薬品・医薬部外品に関する報告件数は86件(18.0%)であり、入院事例も報告された。
・タバコに比べ事故が発生する年齢層が広いが、特に1~2歳児に多く、報告件数は62件であった。

 医薬品等の誤飲事故の大半は、保管を適切に行っていなかった場合や、保護者が目を離したすきに発生していた。特に医薬品の誤飲では健康被害が発現する可能性が高く、シロップ等、小児が飲みやすいように味付けしてあるものは、小児がおいしいものとして認識し、冷蔵庫に入れておいても目につけば自ら取り出して飲んでしまうこともありうるため、保管・管理に十分注意する必要がある。

その他
・誤飲した場合に消化管せん孔を起こす可能性のある電池の誤飲が、未だに多数報告されている(12件)。

3.家庭用品等に係る吸入事故等に関する報告

(1)調査結果の概要と考察

・報告された事例の件数は、974件(前年度842件)であった。
・吸入事故等の原因となった家庭用品等の種類は、殺虫剤(医薬品等を含む)が221件(22.7%)、洗浄剤が165件(16.9%)、 漂白剤96件(9.9%)等であった(表1、表5・参考3)。
・年齢別では、9歳以下の小児が379件(38.9%)と多い。
・製品の形態の内訳では、スプレー式の製品が396件(40.7%)(うち、エアゾールが200件)、次いで液体の製品が297件(30.5%)と件数が多かった(表6)。

 事故の発生状況を見ると、使用方法や製品の特性について正確に把握していれば事故の発生を防ぐことができた事例や、わずかな注意で防ぐことができた事例も多数あったことから、製品の使用前には注意書きをよく読み、正しい使用方法を守ることが重要である。万一事故が発生した場合には、症状の有無に関わらず、(財)日本中毒情報センターに問い合わせをし、必要に応じて専門医の診療を受けることを推奨する。

(2)製品別の結果と考察

殺虫剤 〈使用上の注意をよく読む、火災警報器にも注意〉
・殺虫剤(医薬品等を含む)に関する事例は221件であった。

 用法を十分に確認せず使用した事例も多いため、使用前に製品表示を熟読し、安全な使用方法等についてよく理解した上で、正しく使用すべきである。また、近年、火災警報器の設置件数が設置義務拡大に伴い増加したためか、蒸散型薬剤の使用中に火災警報器が鳴り、これを止めるために入室した結果、薬剤を吸い込む事例が増加している。薬剤使用中に火災警報器が作動しないよう、取扱説明書に従って事前に対策を行ったうえで使用し、使用後はすみやかに火災報知器を元の状態に戻すべきである。

洗浄剤・洗剤、漂白剤 〈混合による有毒ガスに注意〉
・洗浄剤・洗剤に関する事例は203件で、そのうち塩素系の製品(101件)が最も多かった。
・漂白剤に関する事例は96件で、そのうち塩素系が75件と大半を占めた。

 塩素系の洗浄剤と酸性物質(事故例の多いものとしては塩酸や有機酸含有の洗浄剤、食酢等がある)との混合は有毒なガス(塩素ガス、塩化水素ガス)が発生して危険である。これらの製品には「まぜるな危険」との表示をすることが徹底されているが、いまだに発生例が見られ、一層の周知が必要である。

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