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健康日本21評価手法検討会
試行実施作業部会報告書





平成16年3月



目次

はじめに

1.試行実施の概要
 1)評価表の作成について
 2)評価の方法
 3)試行実施した地方公共団体
 4)試行実施の結果報告について

2.試行実施結果
 1)各地方公共団体の評価結果
 2)試行実施について寄せられた意見
   (1)試行実施についての意見
   (2)試行実施の評価方法に対する意見
   (3)その他

まとめ


(別添)
施行実施に用いた評価表(概念図)
評価表の記入方法
都道府県評価表
市町村評価表事業実践評価表
連携機関リスト
目標達成度評価表
施行実施後に提案された評価表等(概念図)
都道府県評価表(施行実施後)
市町村評価表(施行実施後)
平成15年度中間評価の施行実施及び施行実施作業部会のスケジュール
健康日本21評価手法検討会施行実施作業部会運営要綱
健康日本21評価手法検討会施行実施作業部会構成員名簿



はじめに
 厚生労働省においては、壮年期死亡の減少、健康寿命の延伸、生活の質の向上を実現することを目的として、平成12年より21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)を推進している。「健康日本21」では、目標の設定と目標を達成するための具体的な諸活動の成果を適切に評価して、その後の健康づくり運動に反映させることを基本方針の一つとして掲げており、2005年度を目途に中間評価を行うとともに、2010年度に最終評価を行うこととしている。
 このような中、「健康日本21」における目標の設定と目標を達成するための具体的な諸活動の成果を評価するための適切な手法を開発することを目的に「健康日本21評価手法検討会」が平成14年7月に設置された。国のみならず、地方公共団体における健康増進計画(以下「地方計画」という。)の評価も必要であることから、茨城県、福岡県大牟田市、滋賀県近江八幡市、奈良県三宅町の健康づくり担当者からヒアリングを行う等議論を重ね、平成15年3月に健康日本21評価手法検討会中間報告(以下「中間報告」という。)が作成された。
 健康日本21評価手法検討会試行実施作業部会(以下「作業部会」という。)は、この中間報告を受けて、複数の地方公共団体において中間評価の試行実施(以下「試行実施」という。)を行うことにより、地方公共団体が独自の中間評価を行う上での参考となるような共通指標を策定するための基礎資料を得ることを目的に、健康日本21評価手法検討会のもとに、平成15年10月に設置された。作業部会では、中間報告で提示された評価の枠組みに基づいて、全国5自治体(愛知県、三重県、島根県、名古屋市、松阪市)において試行実施を行った。本報告書は、試行実施の結果とその結果を踏まえた意見について健康日本21評価手法検討会へ報告するものである。

1.試行実施の概要
  )評価表の作成について
 地方計画の評価表は、中間報告で提示された「計画策定プロセス」、「地方計画の目標達成のための活動状況」及び「地方計画の目標の達成度」という評価の枠組みを基本とし、第6回健康日本21評価手法検討会の議論も踏まえつつ、別紙1―2のとおり作成した。なお、評価項目は、評価についての先行研究等を参考に検討し、別紙1―1の「評価に関する概念図」の構成とした。

  )評価の方法
 評価は、試行実施を行った地方公共団体における内部評価とし、それぞれの評価項目について、評価実施者が主観的評価により4段階もしくは二者択一のプリコード回答方式で記入する形とした。なお、評価主体の指定については評価委員会を設置する等各地方公共団体の判断に委ね、特に指定を行わなかった。4段階の定義については、「十分できている」を「4」に、「ほぼできている」を「3」、「あまりできていない」を「2」、「できていない」を「1」としたが、どの状況を「十分できている」と判断するかについての具体的な例示は行わなかった。また、二者択一については、「はい」または「いいえ」を選択し回答する形式とした。
 試行実施を行った地方公共団体は、各項目に対して、それぞれの項目で行った主観的評価の理由や考え方を明らかにするため、プリコード回答について「評価理由」を記載することとした。また、項目によっては評価理由と別に「参考資料等」を、関係機関との連携については、「連携機関リスト」を添付し、客観的な判断の参考とした。また、事業の評価については、取組の分野、目標・目標値、事業名、事業目的、事業の概要、期待する効果、具体的な活動状況、今後の取組や課題について記載した「事業実践評価表」を記載することとした。地方計画の目標達成度については、「目標達成度評価表」を記載することにより評価を行った。

  )試行実施した地方公共団体
 協力が得られた全国5自治体(愛知県、三重県、島根県、名古屋市、松阪市)において、上記の評価表、評価方法により、試行実施を行った。

  )試行実施の結果報告について
 試行実施の結果報告に際しては、試行実施についての意見、試行実施の評価方法に対する意見(評価の枠組みについて、評価項目について、評価表について、評価作業について)等を試行実施を行った地方公共団体に求めた。

2.試行実施結果
 1)各地方公共団体の評価結果(別添 参照)
 2)試行実施について寄せられた意見
(1)試行実施についての意見
地方計画の推進における「弱み」が明確になった。例えば、取組に優先順位がつけられていない、市町村への支援が不十分、各課の取組姿勢がバラバラで有機的な連携がない、住民組織活動の強化に向けての取組の不足等。
地方計画を担当課だけの健康増進計画と考えるのではなく、全庁的に取り組み、各課でできるところから取り組んでいこうという気運につながった。
「事業実践評価表」により、事業目的や期待する効果を見直すことができた。
目標値が後退している項目については、現行の事業を見直し、新たな事業展開するための根拠にできる。
評価結果を住民にも公表し、目標達成に向けての課題を共有し、目標達成のために何をすべきか等を住民とともに考えていくことで、住民組織活動をより強化していくことが期待される。
評価により問題点がより明確になるが、この評価からその問題点を解決するための推進方策の開発や健康分野の施策形成についてはさらに検討が必要。
健康づくりを支援する環境整備に関する指標が乏しいことに気付いたり、量的な指標だけでなく質的な指標の必要性等、指標そのものを見直す機会になった。
指標について情報収集する際の課題(既存の制度で経年的に把握可能か、実態調査が必要か等)が明らかになった。
数値目標について、仮に目標値を達成した場合、10年間の計画で目標値が適正であったかどうかの判定や、本質的に目標達成されているのかどうかの判定等の検討が必要と思われる。また、逆に目標値を達成していないものについても、目標値の正当性、現在の数値が目標達成に向けて前進しているのか、施策はどうか等の検討が必要である。
計画の効果的な推進のためには、目標達成度の評価とインプットやアウトプットとの関係を明確にできることが望まれる。目標達成度の評価を実施するために、大規模な調査を要する項目については、定期的にモニタリングすることは困難。

(2)試行実施の評価方法に対する意見
(評価の枠組みについて)
「策定プロセス」、「計画の目標達成のための活動状況」、「目標達成度」という評価の枠組みは、取組全体について順を追って評価するという点で分かりやすく適切である。
評価の枠組みや評価項目は、必要なものが含まれており、これをもとに地方計画の推進上の課題に気付くことができ、自己評価には使用できる。
「策定プロセス」に関しては、今回の手法に基づき、一定の評価が可能であった。
「住民の意識の変化」は、「計画の目標達成のための活動状況」ではなく、「目標達成度」に含まれるのではないか。
目標達成(結果)を評価するにあたり、プロセスと活動状況だけでなく、計画に基づく活動のための基盤整備に対する評価が必要ではないか。
(評価項目について)
評価項目は、評価の参考として一つの基準を示すということが重要であり、これを基本に各地方公共団体が実情にあわせて決定すればよい。
評価項目数は、概ね妥当である。
二者択一もしくは4段階のプリコード回答方式による評価はしやすかった。
評価基準の例示については、「自己評価なので不要であり、必要に応じて評価の裏づけとなる情報を添付すれば良い」とする意見と「質問の意図が分かり、参考になるので、望ましい」という意見に分かれた。
行政は、健康づくりを支援する環境整備について大きな役割を担うが、環境整備に関する評価項目がひとつしかなく、もう少しこの部分に着目した政策評価の視点が地方計画の評価では必要になると思う。
(評価表、参考資料について)
評価表を提示するだけでは「評価の手法」の理解は難しく、解説が必要。
「目標達成度評価表」「事業実践評価表」「連携機関リスト」は、計画を見直す良い資料となった。
「事業実践評価表」の作成により、指標設定の妥当性、定期的な評価(モニタリング)の可能性について考えることができた。
「事業実践評価表」の作成により、既存の事業の見直しにつながることが期待されるが、全ての事業について作成することはかなりの負担となる。
「連携機関リスト」は関係機関・団体名のみでなく、どのような役割を担っているかについても記載できると、より有効な資料になると思う。
(評価作業について)
評価の作業は負担ではあったが、独自の評価方法で実施したならば、さらに負担は大きかったと思う。どの地方公共団体にも共通となる評価の枠組み、評価表等一定の様式があることで、充実した評価が実施できる。
事業量の評価指標は必要ないが、評価を実施する際の検討資料としては必要ではないか。
関係団体や企業等の第三者(都道府県であれば、市町村も該当する)による評価も必要ではないか。
中間評価にあたり試行実施した評価手法をどのように活用するのか。

(3)その他
国が掲げている指標については、国が毎年調査し、全国値を提供して欲しい。。
3年や5年に1度等、節目に進捗状況を把握できるよう、調査の予算を配分してほしい。
市町村に対して、地域の現状を把握するための情報提供やデータ分析等を支援する体制づくりが必要である。
現在すべての地方公共団体の間で、「評価」に対する認識がバラバラだと思うので、そのレベルを平準化するための研修会等が必要。
各地方公共団体の担当者が、「評価」についての疑問点を質問できるような統一の窓口が必要。
健康寿命に関する指標の提示をして欲しい。
「健康日本21」や地方計画の目標達成のためのアクションプランが示されていないので、示す必要があるのではないか。

まとめ
 「健康日本21」及び地方計画の評価においては、健康づくり施策の推進状況だけでなく、計画の策定や推進に住民や関係者の参加を得たか、住民主体の地域活動が強化されたか、さらに包括的な行政施策の形成に資するものであったか、健康づくりの支援的環境整備が行えたか、また根拠に基づいた保健活動のための基礎になる情報等を得ることができたか等の視点が「健康日本21」及び地方計画の総合的な推進のために重要であることが示された。このような視点は、1986年のオタワ宣言によりWHOが提唱し、欧米諸国において広く展開されているヘルスプロモーションの理念に基づくものであり、「健康日本21」及び地方計画の評価を行うにあたっては、「健康日本21」及び地方計画の目標達成のために各地方公共団体が実施している諸活動の展開状況等を測定し得るものが必要である。
中間報告で提示された「計画策定プロセス」、「地方計画の目標達成のための活動状況」、「地方計画の目標の達成度」という評価の枠組みについては、今回の試行実施において概ね妥当と判断された。評価項目については、「地方計画の目標達成のための活動状況」をさらに「計画の推進と進行管理」、「事業の変化」、「連携の推進」という評価指標群に分けて整理した。試行実施において、これらの評価指標群についても概ね肯定的な評価が得られたが、作業部会の議論を踏まえ、「評価に関する概念図」及び「評価表」についての修正案を別紙2のとおり提示する。修正点は以下のとおりである。
「評価に関する概念図」について、「住民の意識の変化」の評価群を「地方計画の目標達成のための活動状況」の枠組みから「地方計画の目標の達成度」の枠組みに移動した。これに伴い、「評価表」から「住民の意識の変化」を削除した。
都道府県と市町村の「評価表」については、企業との連携に関する設問を見直した。
 評価の実施方法は、内部評価(担当部局、委員会)による評価を主とするが、客観性を補完するため、必要に応じ、住民、専門家、関係団体等による外部評価(アンケート、パブリック・コメント、インタビュー、ミーティング、ワークショップ等)を実施することが望ましい。また、客観性を補完するための手法としては、住民や関係機関・団体とともに評価作業を行うことや今回の試行実施で提案された「事業実践評価表」や「連携機関リスト」等を活用することも有用である。
 評価の内容は、「目標の達成度」に関する指標を可能な限り定期的なモニタリングで得られた情報を活用し評価することが望ましい。また、「目標達成のための活動状況」、「計画策定プロセス」については、質的・量的評価の双方をバランスよく評価できる指標が必要である。その他、例えば健康づくりを支援する環境整備に関する指標の開発等は今後の課題であり、さらに検討を行う必要がある。
 今回の試行実施において使用された評価表を一つのモデルとして使用することは、評価をどのような観点から行うのかということを理解するのに役立つと考えられる。しかし、今回提示された評価表は、あくまで参考であり、地方公共団体独自の評価表の作成を妨げるものではなく、むしろ独自の評価手法の開発や評価表の作成が推奨される。今後、地方計画の具体的な評価の進め方の参考とするため、本報告書を利用する、あるいは、国、都道府県で研修会を実施する等により、地方公共団体における評価の支援が望まれる。
 地方計画の推進について、優先して取り組むべき目標及び評価すべき目標の検討、評価結果を踏まえた健康分野の施策形成や地方計画の推進方策の検討等といった意見が挙げられた。
 なお、作業部会において、地方計画の推進と合わせて、「健康日本21」の推進や中間評価における課題として、健康寿命に係る指標の提示、「健康日本21」や地方計画の目標達成のためのアクションプランの必要性についての意見も挙げられた。


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