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第6回目安制度のあり方に関する全員協議会議事録


1 日時 平成16年3月23日(火)13:00〜14:40

2 場所 厚生労働省専用第17会議室

3 出席者
 【委員】公益委員 渡辺会長、今野委員、岡部委員、勝委員、中窪委員、古郡委員
労働者側委員 弥富委員、加藤委員、久保委員、中野委員、山口委員、横山委員
使用者側委員 池田委員、内海委員、川本委員、杉山委員、東條委員、原川委員

 配付資料

 資料1 前回の議論における論点(賃金改定状況調査等参考資料のあり方について)

 資料2 賃金改定状況調査について(概要)

 資料3 賃金引上げ率の推移と試算

 資料4 パートタイム労働者比率の上昇と賃金改定状況調査の賃金上昇率について
 ・現在の計算方法について
 ・賃金上昇率(改定率)とパートタイム労働者比率について
 ・パートタイム労働者と一般労働者の所定内賃金について
 ・パートタイム労働者比率の上昇の影響について

 議事内容

○会長
 ただいまから、第6回目安制度のあり方に関する全員協議会を開催します。第4回目安制度のあり方に関する全員協議会で了解いただいたスケジュールに従って、本日の全員協議会では「賃金改定状況調査のあり方」について検討を行いたいと思います。事務局から配付している資料に関して、ご説明をお願いします。

○事務局
 まず、お手元の資料を確認させていただきます。資料は4点あります。資料No.1が「前回の議論における論点」、資料No.2が「賃金改定状況調査について」、資料No.3が「賃金引上げ率の推移と試算」、資料No.4が「パートタイム労働者比率の上昇と賃金改定状況調査の賃金上昇率について」です。またお手元のファイルは、いままでの全員協議会での資料一式ですので、検討の中で適宜ご参照いただければと思います。
 それでは、今回の配付資料につき、ご説明いたします。まず資料No.1は、賃金改定状況調査等参考資料のあり方に係るこれまでの議論について、事務局の責任でまとめたものです。論点としては、大きく分けて2つあったと思います。1つ目は「調査対象事業所の選定について」、2つ目は「賃金上昇率の計算方法について」、つまり賃金改定状況調査の第4表の計算方法についてということになります。
 それぞれの論点およびフリーディスカッションで出された意見を読み上げます。まず「調査対象事業所の選定について」です。「類似労働者の概念としてどのくらいの事業所規模まで取るかを考えた場合、30人未満規模は少し小さいのではないか。昭和57年の議論の中にもあったように、せめて100人未満ぐらいまではサンプルを拡大するほうがいいのではないか」「地方小都市の比率を現在の3:1よりも、大きくする方向で見直してもいいのではないか」といった意見がありました。
 次に「賃金上昇率の計算方法について」です。まず「現行の計算方法を見直す」、つまり一般、パート労働者の構成比変化を除去するといった意見としては「類似労働者の賃金の変化率をきちんと表せるような形、つまり男女構成比なりパート労働者の構成比の変化を除去した形での賃金の変化を考えるべきではないか」「パートと一般労働者は雇用形態が異なり、労働市場における賃金の決定方法も全然違う。従って、類似労働者の賃金の状態を見るのであれば両方別々に示すのが賃金統計としてはふさわしい」「現在の調査方法は総平均賃金が去年と今年でどう変化したかを見ているので、水準を議論する場合はこれでいいが、最賃の改定の数字として使うのは適切ではないのではないか」「銘柄をどこまで細かくするかは別として、中身について全部込み込みではなく、少し分けたほうがいいのではないか」「時間当たりの賃金額が上昇したのかどうかを指標として見たいとき、実態として一般もパートも上がっているのに、構成比の変化によってそれが下がった率として計算されるのは、それでいいのかという気がする」といった意見がありました。
 一方「計算方法の変更には慎重であるべき」という意見については「賃金の低廉な労働者の実態がどうなっているのかを見ているのが第4表の数値であり、一般とパートを分けて考える必要性はないし、また分け始めたらきりがないのではないか」「パート労働者が増えているのでマイナスと出るが、それが実態である。それを所与のものとして他の指標も勘案して最終的にどうあるべきかを決めるもの」「(構成変化を除くとする場合)一般労働者とパート労働者という分け方だけでなく、例えば地域や産業も重要になるかもしれず、それに合わせて調査のサンプリングを考える必要が出てくる。そこまで考えないといけない問題になる」といった意見がありました。
 それ以外の意見としては、2頁の(3)の「その他」にありますように「類似の労働者についてはトータルの労働者を類似と考えるべき。第4表については合計とは別に、一般とパートそれぞれを別に出したものを出して見比べながら考えればいいのではないか。男女で分けるのは問題があるので、一般とパートで分ければいいのではないか」といった意見がありました。
 資料No.2の「賃金改定状況調査の概要」は、昨年12月の第3回目安制度のあり方に関する全員協議会で、一度提出させていただいた資料ですので、今回はかいつまんでご説明いたします。まず1の(1)にも書いてありますように、都道府県庁所在都市と、通常「地方小都市」と呼んでいる、原則として都道府県ごとに人口5万人未満の市より選定した1つ又は複数の市が、調査対象地域となっております。調査事業所は(2)にありますように、常用労働者数が30人未満の企業に属する民営事業所で、調査事業所数は都道府県庁所在都市が約3,000事業所、地方小都市が約1,000事業所、合わせて4,000事業所、調査労働者数が約3万1,000人となっております。なお、調査サンプル数については、県庁所在都市と地方小都市とで差がありますが、実際の推計に当たっては、母集団に復元して計算しております。ですから例えば現状のサンプル数を2倍にした場合、統計精度が高まる、つまり誤差率が小さくなるという意味では、改善されることになるかと思います。
 次に、2の「本調査の基本的性格」をご覧ください。この調査の大きな特徴は(2)でも触れられておりますように「迅速性が求められていること」が挙げられます。本調査は、各年6月分の賃金の実態調査を通じて賃金の引上げ状況等を把握いたします。その調査結果については、7月の中央最低賃金審議会の小委員会に提出しているところです。このため、極めて短期間に調査票を回収し、集計する必要があります。
 2頁の4「地方小都市の選定」については、原則として人口5万人未満の都市とされております。そして3頁の(3)に書いてありますように、労働基準監督署が設置されている等により調査の便宜が得やすい都市とされております。このようにしている理由ですが、5の「調査の日程」をご覧ください。調査期間は、原則6月1日から20日までの20日間としており、集めた調査票を短期間で回収する必要性が生じております。また調査票は6月20日に各都道府県から本省に提出となっております。それを賃金時間課において7月上旬までに結果を集計することとなっております。昨年の場合ですと、7月9日の中央最低賃金審議会の第2回目安小委員会において、審議資料として提出いたしております。このように短期間に調査票を回収・集計しているという状況です。
 資料No.3は、12月の目安制度のあり方に関する全員協議会のフリーディスカッションの中で、サンプルの調査事業所規模を、100人未満ぐらいまでに拡大するほうがいいのではないかといった意見がありましたので、毎月勤労統計調査の数字を使って試算したものです。昭和57年から58年にかけての目安制度のあり方に関する全員協議会でも、同様な議論があったところですが、その際事務局から提出した資料を参考に、現時点のバージョンということで作成しております。
 まず1段目が、賃金改定状況調査で見た場合の賃金上昇率です。平成15年の直近では−0.1%の減少となっております。2段目が毎月勤労統計調査の30〜99人規模における、賃金上昇率を見たものです。上から調査産業計、製造業、卸売・小売,飲食店、サービス業となっております。平成15年の直近の状況を見ますと、調査産業計では−0.2、製造業では+1.2、卸売・小売,飲食店では−0.3、サービス業では+0.9という状況です。3段目が賃金改定状況調査の結果に、毎月勤労統計調査の30〜99人規模の結果を加味した形にして、1〜99人規模について試算したものです。
 試算方法については、1〜29人と30〜99人のそれぞれの規模の常用労働者数により、所定内給与の上昇率、それぞれ賃金改定状況調査と毎月勤労統計調査から出ている上昇率について、加重平均したものとなっております。試算は2つ出しており、試算その1が製造業だけを99人規模まで調査対象を拡大したケースです。試算その2が製造業に加え、卸売・小売,飲食店、サービス業についても調査対象を99人規模まで拡大したケースです。
 この試算結果を見ますと、例えば平成14年ですと賃金改定状況調査は+0.1でしたが、当方で1〜99人規模で推計したところ、製造業だけを加えたケースで−0.1、製造業以外に卸売・小売,飲食店やサービス業を加えたもので−0.2ということで、0.1から0.2程度低くなっております。逆に平成15年ですと、賃金改定状況調査だと−0.1ですが、当方で試算した結果ですと、試算その1のケースで0.0、試算その2のケースで0.1ということで、今度は0.1から0.2程度のプラスとなっております。ここ数年の結果を見ますと、大体0.1から0.2%ほど、若干の相違が見られますが、賃金改定状況調査に比べて高く出ている年もあれば、低く出ている年もあって、バラバラな状況になっているかと思います。
 資料No.4は「パートタイム労働者比率の上昇と賃金改定状況調査の賃金上昇率について」です。「現在の計算方法について」という所で、簡略化したものを下に付けております。各事業所には各労働者について、一般・パートの就業形態とか、当年および前年6月の基本給、労働時間を記載していただいております。下の表のようなものを各事業所に記載していただき、それを全部まとめて集計するという形になっております。このケースですと、例えばBという労働者が一般労働者だとした場合、平成14年には在籍していたけれど、平成15年にはいなかったとしますと、Bという労働者について平成15年は無記入となります。一方、平成14年にはいなかったDという労働者を、仮にパートタイム労働者だとしますと、平成15年だけ在籍しておりますので、平成14年の所は空欄で、平成15年にだけ賃金と労働時間が記載されるという状況になります。
 計算方法は下の四角の枠に書いております。まず平成14年の1時間当たりの賃金の計算方法は、平成14年に在籍していたA、B、C労働者の賃金を足して、A、B、C労働者の労働時間で割ったものです。一方、平成15年の1時間当たり賃金は、一般労働者で前年までいたBという労働者がいなくなって、パートタイム労働者であるDという労働者が入っておりますので、A、C、Dという労働者の賃金をA、C、D労働者の労働時間で割ったものとなっております。このようにして計算された平成14年の1時間当たり賃金と、平成15年の1時間当たり賃金について、平成14年から15年で伸びた額を、平成14年の数値で割ったものが上昇率となっております。
 3頁は「賃金上昇率とパートタイム労働者比率」の推移ということで、賃金改定状況調査における、第4表の賃金上昇率とパートタイム労働者比率の動きをまとめたものです。パートタイム労働者比率については、各年とも毎年前年と当年の2年間分記載していただいておりますので、それぞれの年について前年と当年という2つの数字が出ております。例えば平成15年の調査ですと、当年は22.1%、前年は21.1%という2つの数字が出ています。いちばん上の段の賃金上昇率は、概ね低下傾向で推移してきているという状況が見られるかと思います。一方、パートタイム労働者比率は逆に上昇傾向で推移しているという状況が、賃金改定状況調査の中で見られているのではないかと考えられます。
 4頁は「一般労働者とパートタイム労働者の賃金格差」を見たものです。当方で行っている賃金改定状況調査では、一般労働者とパートタイム労働者別で賃金を集計しておりませんから、どのような実態になっているかが分かりませんので、ここでは毎月勤労統計調査を活用し、その所定内給与について、5〜29人規模で賃金の格差を比較しております。これを見ますと、パートタイム労働者の賃金は、一般労働者の概ね50%程度で推移しているという状況にあるかと思います。
 5頁は、パートタイム労働者比率構成比の変化が、一般労働者とパートタイム労働者を含めた全体の賃金の動きに対し、どの程度の影響を持っているかを見たものです。ただ賃金改定状況調査では、一般労働者とパートタイム労働者の賃金格差がわかりませんので、ここでは毎月勤労統計調査の5〜29人規模の労働者の所定内給与の変化を、要因分解したものとなっております。まずグラフ中の折れ線の菱形の点は、一般労働者とパートタイム労働者を合わせた全労働者で見た場合、所定内給与が前年と比べてどの程度変化しているかを見たものです。例えば平成15年ですと平成14年から比べて、対前年比で0.5%程度の減少という状況が見られます。
 この減少割合ですが、平成9年度などは非常に高い状況にあって、増加割合ということになっておりますが、この変化率が一般労働者の所定内給与の変化、パートタイム労働者の所定内給与の変化、パートタイム労働者比率の変化のそれぞれの要因によって分解すると、どのようになるのか、その寄与度で見たのが棒グラフです。賃金が引き上げられた場合、当然一般労働者もパートタイム労働者も、労働者全体で見た場合も、引上げ要因として寄与することになります。ただ寄与度で見ておりますので、パートタイム労働者の構成比は大体全体の2割程度ですから、仮に一般労働者の賃金の引上げがなく、パートタイム労働者だけが10%程度引き上げられたとした場合、全体の労働者で見た場合の寄与度としては10%の2割程度ということで、2%程度の伸びで寄与するだけということになるかと思います。図の中では一般労働者の寄与度が網掛け部分で、一方、パートタイム労働者の寄与度は、横線で入っている部分です。
 次が、パートタイム労働者の構成比変化です。先ほどの頁でも見ましたように、パートタイム労働者は一般労働者に比べ、相対的に賃金が低いということになりますので、全労働者に占めるパートタイム労働者構成比が高まれば、当然のことながら全体としての賃金は低下することになります。前年から比べて、パートタイム労働者構成比の比率が大きく変化していれば、全体の賃金の変化率に対して、マイナスで寄与することになります。グラフですと棒グラフの白抜き部分で表した所が、パートタイム労働者構成比の変化による寄与度です。このような3つの要素、つまり一般労働者の所定内給与の変化、パートタイム労働者の所定内給与の変化、パートタイム労働者比率の変化といったものが、それぞれプラスマイナスで影響した結果として、折れ線グラフの菱形の点で、全体の賃金の変化がでてきます。これを見ますと平成8年以降、パートタイム労働者比率の変化要因、グラフですと白抜き部分ですが、主要因として寄与しているという状況が見られるかと思います。以上、私からの説明は終了いたします。

○会長
 ただいまの配付資料の説明に関して、最初にご質問をお受けします。

○労側委員
 資料No.3です。試算をしてありますね。あるいは上の真ん中の毎月勤労統計調査の30〜99人規模のデータもそうですが、これは一般労働者とパートタイム労働者が、それぞれ含まれた数字なのでしょうか。もしパートタイム労働者が含まれているのであれば、平成11年以降の構成比の変化みたいなものが分かっていれば、教えていただければと思います。

○事務局
 毎月勤労統計調査の30〜99人規模には、パートタイム労働者も含んでおります。30〜99人規模のパートタイム労働者の比率を見ますと、各年6月の数字で取っておりまして、産業計で平成11年が20.13%、平成12年が20.98%、平成13年が20.52%、平成14年が22.63%、平成15年が22.39%という数字になっております。

○会長
 いまお答えいただいた、毎月勤労統計調査の30〜99人規模のパートタイム労働者比率は、資料No.4の後ろから2枚目の賃金改定状況調査の30人未満のパートタイム労働者比率よりも高くなっているのですか。規模が大きくなると、パートの比率が少し高くなるのでしょうか。そうではないですか。やはりパートタイム労働者比率は、29人以下のほうが高いのですかね。

○事務局
 当方で毎月勤労統計調査の5〜29人規模で、産業計でパートタイム労働者比率を見たところ、平成11年が22.98、平成12年が23.69、平成13年が25.11、平成14年が25.59、平成15年が26.48%となっておりますので、毎月勤労統計調査で見ますと、5〜29人規模のほうがパートタイム労働者比率は高いという状況になっております。

○会長
 わかりました。ほかに何かございませんか。ご意見も結構ですので、どうぞ自由にご議論いただきたいと思います。

○公益委員
 確かにパートが増加するという状況により、こういう調査では第4表が低めに出るという傾向で、現段階では労働者側に不利なように作用いたしますが、もしパートが減るような時期になりますと、今度は使用者側に不利に働くかもしれないので、結局おあいこではないかと思うのです。つまり長期的には、結局プラス・マイナス・ゼロの話ではないかという感じがするのですが、どうでしょうか。

○労側委員
 資料説明いただいた内容に対する質問や意見ではなく、賃金改定状況調査のあり方そのものについての意見でよろしいでしょうか。フリートーキングを何回かやってまいりましたし、前回は水準のあり方についての議論も行ったわけですが、そうしたことも踏まえて、労働者側としても今後どうあるべきかということで、少し検討させていただきました。そこで私から少し概括的に、その考え方を述べさせていただいて、補足等があれば、各委員からお願いしたいと思います。
 第1点目はいま公益委員からもご指摘のあった、賃金改定状況調査の第4表の算出方法についてです。フリー討論でも指摘しましたように、近年、雇用構造が大きく変化しているわけです。そうした中で雇用形態の多様化が進み、パートタイム労働者など、いわゆる非典型労働者が年々増加傾向を見せております。こうした労働力構成の変化が、賃金統計に及ぼす影響が指摘されるのではないかと思っております。先ほどの事務局からの資料説明でも、例えばパートタイム労働者比率の増加が、毎月勤労統計調査における平均的な所定内給与水準を、マイナス傾向に変化させるといったご説明があったわけですが、こうしたことは現行の第4表の算出方法にも、全く同様の問題点が当てはまるのではないかと思っております。
 たしか一般労働者、パートタイム労働者ということではなく、男女の構成比をベースにしながらシミュレーションした資料を、事務局で作成されて、フリートーキングの第3回でお示しいただきましたが、仮にあそこで示された資料の男女を一般労働者、パートタイム労働者というように置き替えてシミュレーションしてみますと、一般労働者、パートタイム労働者の双方が賃金上昇したとしても、統計上はマイナスが発生するわけです。こうした算出方法は、やはり労働者側としては改めるべきだと考えております。これでは賃金水準の変化を適正に分析することはできないのではないかと思っております。企業の人件費コスト変化を評価することが、この調査の目的であるのなら、そういうことも成り立つとは思いますが、最低賃金法の趣旨に沿って類似労働者の賃金変化を見るのであれば、やはりパートタイム労働者の構成比変化が、賃金水準に及ぼす影響を除去した算出方法に改めたほうがいいのではないかという考え方です。
 直接第4表との関係ではありませんが、あと2点だけ意見を申し上げたいと思います。2点目は、賃金改定状況調査全体の改善についての付加的な要望です。前回の全員協議会で議論した水準のあり方とも関連いたしますが、目安審議における極めて重要な参考資料として扱われている賃金改定状況調査が、第1表から第4表まですべてそうであるように、賃金改定状況や賃金変化だけに限定した討議素材になっているわけです。そうした中身から、もう少し類似労働者の賃金水準や絶対額についての状況が的確に示されて、最低賃金のあるべき水準に関する議論にも活用できるようなものに、図表を追加するなどの改善をしていただければ、ありがたいと思います。
 3点目は、これまでのフリートーキングでの意見紹介の中にも記載されておりますが、調査対象事業所規模の拡大についてです。労働者側はかねてから、最低賃金の水準論議や影響率を考える場合、最賃の適用対象が全労働者であることから、全労働者ベースで議論すべきということを主張してきたわけです。賃金改定状況調査の対象事業所についても、せめて各地方局が最低賃金の審議のために実施している、最低賃金に関する基礎調査と同じ100人未満規模まで拡大する必要があるのではないかと考えております。そのほうが中央で目安を出し、地方で最低賃金の審議をするときのデータとして、企業規模の上でお互いに整合性が取れるのではないかということも付け加えたいと思います。以上3点、概括的に意見を申し上げました。

○会長
 差し当たってそういうご意見を、3点にわたっていただきました。

○公益委員
 事実的なことですが、1点お伺いしたいことがあります。先ほどの資料No.2のご説明では、都道府県庁所在都市と地方小都市については復元しているというお話でしたね。

○事務局
 両方とも復元しております。

○公益委員
 業種や規模は復元していないのですか。

○事務局
 サンプルを取るときに、事業所企業統計調査のサンプルに基づき、それぞれ製造業やサービス業などの比率を取っておりますので、戻すときにはきちんと復元された形になっていると思います。

○公益委員
 そうすると所在地もそうだし、業種もそうだし、規模も一応復元した値でやっているのですか。

○事務局
 はい、復元しております。

○使側委員
 何点か申し上げたいと思います。まず1点目は、先ほど労側委員からも3点ばかりお話がありましたが、いちばん最後にあった調査対象規模の話からさせていただきます。この議論については第3回のときも、今日までの議論を整理したものが資料として提出されておりましたが、労働者側は調査対象規模は100人未満まで拡大ということを、かねてからご示唆されてきたところです。これに対して私ども使用者側は、むしろ調査対象地域を郡部の町村まで拡大すべきではないか、それがないと最低賃金が働く実態としてはないのではないかという議論をしてきました。そういう中で今日事務局から改めて資料が提出されたわけですが、先ほどの事務局のご説明ですと、この目安審議に際し、非常に短期間でしなければならないというご指摘もありましたし、労働基準監督署が設置されていることが便宜を得やすい都市であるということで、中心地としたというお話もあったわけです。したがって労使で違う主張をしているということが、まず第1点にあります。もう1つは技術的な問題があるのではないかと思っておりますが、この辺はまた事務局からお話いただければと思います。
 2点目は、第4表の一般とパートの扱いの問題です。これについては私は前回も意見を申し上げたかもしれませんが、私が思うに、もともと日本の大方の企業における賃金というのは、年齢等に基づく賃金カーブを形成しているのが一般的だと考えますと、実は一般労働者の調査の中でも、年齢構成等の変化もかなり影響を受けているのが実態だろうと思います。そういう中で、今日パートの比率が少し上がってきているので、その影響を受けているということですが、一般労働者の中における変化も、今日までにそういう影響を受けているのだろうと思っております。したがってこの両方を合わせた形でやっている今の第4表のやり方は、やはり労働者の賃金の変化率として、実態を捉えているのではないかと考えております。
 もう1つは、先ほど委員のほうからも、比率が上がれば労働者側に不利になり、比率が下がっていくと、今度は使用者側に不利になるということで、中期的にはバランスするのではないかというお話がありましたが、そのご指摘はそのとおりだと思います。また、もしもマイナスのときというお話もありました。別に第4表がマイナスになったからといって、マイナスと決まるわけではありませんし、プラスだからプラスと決まるものではありませんが、かなり有力な参考資料として使っているという事実はあります。ただ、そういう中で仮にマイナスの目安が出たとして、もしも最低賃金で働いている方がいらっしゃって、その方が下がるかというと、それを下げることは出来ないわけです。新たに市場に参入される方について、新たな最低賃金が適用されるのです。つまり、いま一般とパートを合わせた中で起きている賃金の働きというのは、言葉を換えれば賃金調整が行われてきているという実態を表しているわけです。それを受けて、もしも最低賃金がその影響を受けた形で修正されたとしても、それは日本全体の賃金の動きの実態を捉えた中でのものになるのではないかと考えております。
 併せて、これは事務局への質問です。かつては男女の比率を反映したものと反映していないものとでやっていたのを、平成7年に反映した形で一本化したわけですが、平成6年以前にこの男女の比率構成変化を除去したものと除去していないものと分けていた、そもそもの理由は何だったのかを、確認したいと思います。併せて、平成7年のときにその手法を具体的に変えたわけですが、その理由がもしも議事録等でおわかりであれば、ご説明いただければと思います。

○事務局
 ご質問の半分にしかお答えできないことになるかと思います。平成7年になぜ構成比変化の除去の計算方法をやめたのか、当時の議事録を調べてみたのですが、この計算方法をやめることになった経緯については分かりませんでした。議論があまりなされていないのです。それ以上のそもそも論については、相当ひっくり返さないと分かりませんので、お時間を頂戴したいと思います。

○使側委員
 もしお調べいただけるようでしたら、そのときには男女という見方をしているわけですが、どうして男女を分けた変化を反映したものと除去したもの、どういう根拠からわざわざ分けていたのかというところの議論があれば、そのことを調べていただければと思います。

○公益委員
 まだ考え中ですが、基本的には類似労働者とは何だろうかという定義ではないかと思います。類似労働者を普通の個別の個人で考えるという考え方と、もう1つは平均賃金みたいなもので考えるという考え方があると思うのです。結局、従来のやり方は平均賃金方式でやっていたわけですよね。ですから、そこの内部がどう変わろうが、どういう人が働いていようが、それはもうどうでもいいと。とにかく平均で割ってしまうということですよね。労側委員がおっしゃったのは、どういう銘柄を取るかというのは、男女とか、一般・パートとか、年齢とか、勤続とか、いろいろな観点はあり得るけれど、やはりある銘柄をきちんと考えて、それを念頭に入れたものが類似労働者だという考え方ですよね。

○労側委員
 厳密に賃金論で賃金比較をすると、労働力の構成については年齢や勤続、学歴など、さまざまな構成で賃金が違うわけですから、そこまで固定して比較しなければいけないというところまでたどりつくのか分かりませんが、そこまで議論できる内容ではないと思うのです。しかしパートタイム労働者と一般労働者の場合は雇用形態が明らかに違うし、日本の場合は均衡処遇という概念が確立していないわけですから、明らかに賃金水準なり労働条件なりが違うわけです。それを一緒にして比較した場合、統計上変なことが生じてしまうということについては、改めないとまずいのではないでしょうか。
 極端なことを言うと、今日お配りしたA、B、C、Dというのは、1人だけの変化ですが、仮にこれが全員一般労働者からパートタイム労働者に置き替わって、パートタイム労働者の賃金水準は全く変わらなかった、あるいは大幅に上がったとしても、大幅なマイナスになるわけです。ではパートタイム労働者の賃金はむしろ上がっている、あるいは現行の水準は維持されているけれど、第4表が大幅なマイナスになったから、最低賃金を大幅なマイナスに押していいという議論が、果たして成立するのかどうか。統計処理的な扱いで、少し一般常識的に考えたほうがいいのではないかという気がしました。あまり厳密に年齢や学歴、勤続、職種などまで遡って比較するような内容ではないと思います。

○公益委員
 年齢や勤続などと言うと、ほかの変数だっていくらでも考えられますよね。そのような細かいことを言っているのではなく、前年度でA、B、Cという個別の人がいて、その人がどう上がったかが重要なのです。つまり個別の人がどうなったのかという観点で類似労働者を見るのと、それはどうでもいいから、十把一絡げで見るというのがありますよね。男女でもいいですし、一般・パートでもいいですが、考え方や見方を少し変えると、影響を除去するというのは、前の年で行った人たちが次の年にどうなったかだけ見ましょうということですよね。ですから基本的な考え方が違いますから、そこをどう整理するか。
 後者のほうが正しいということであれば、後者の方法を取ればいいし、後者の方法で正しいといっても、技術的には無限のことが考えられるので、その中からいちばんいい選択肢を取るということでもいい。それは賃金の実態上からある限定をすることもあるし、技術的な問題で限定することもあるでしょう。そうすればいいのではないかと思うのです。もし、そういう方向でいくとしたら、今後は類似労働者の捉え方を、そういう方向のコンセプトでいくわけですよね。そういう意味では、基本的な考え方を転換するということではないかと思っているのです。

○公益委員
 統計の取り方にいろいろな問題があるというお話ですが、賃金に限ったことでなく、例えばインフレ率などを見ても、いまはCPIとGDPプレイでは非常に乖離しているのです。これはバスケットを固定しているラスパレス方式であるCPIと、パーシェ型カヘンバスケットであるGDPデフレータの乖離というのが、非常に大きく出てきているからです。いまのお話を聞いていると、それと同じことが賃金改定状況調査のデータと、一般とパートで計算した資料No.4の部分の格差とに出てきていると思うのです。資料No.4の5頁に、最近の賃金の伸び率のマイナスの寄与度のウエイト付けが出ておりますが、これは明らかにパートタイム労働者の比率が非常に大きくなったことが、賃金の上昇率を下げているわけです。これを固定バスケット、つまりパーシェ型で見れば、むしろパートも一般もそれぞれ賃金は上昇している、あるいは変わっていないのです。
 両方の言い分は、それぞれもっともだと思います。特に労働者側の言い分のほうで、いまのやり方一本で見るのはおかしいというのは、もっともだと思うのですが、パートと一般労働者のそれぞれの固定ウエイトで見た場合、上昇しているからといって、もし最低賃金を上げたら、さらにパートタイムの比率が上がっていくといった、最低賃金を上げすぎることにより、むしろ雇用の構造変化をさらに促進させてしまうというジレンマの局面にあるのではないかと。そうすると、どちらかの指標を取るのではなく、いまの賃金改定状況調査の伸び率、つまり平均賃金の伸びで見るものと、パートタイムと一般の賃金の上昇率の変化のそれぞれを見て、バランスを取った形で考えるべきではないかと。
 もちろん労働者側がおっしゃったように、一般労働賃金も賃金調整を表していて、構造変化を表しているわけです。つまり労働コストを下げていくという意味で、比率が上がらないというのはもっともだと思うのですが、どちらかというのではなく、いままでのように賃金改定状況調査だけを見ていくというのではなく、バランスを取って見ていくことが必要ではないかと思います。

○使側委員
 私がこの種の論議に初めて参加した感想的なものも含めて申し上げます。要は本番の目安を決める時点で論議すべきことと、資料についての論議を一緒にすべきではないのではないかという感じがいたします。この資料をどう取るかというところに勝負がかかっているのであれば、そういう本質的なことも含めて論議をしないと、それで決まってしまうのですが、実際はそうではありません。もちろん重要な参考になる数字とは思いますが、諸々のことも勘案して、結論は出ているのだろうと思います。というのは去年、一昨年、その前も、パートの状況がどうであるからこの数字はそのまま適用できないという論議があった結果として、毎年の結論が決まってきておる。そう考えると、資料として出すものはどういうものであるべきかは結論とは切り離し、要はある数字があっても、別な展開要素があれば結果的にはそれは加味されていくわけですから、基本になる数字はどちらが良いのであるかということだろうと思うのです。
 そうすると平均賃金方式が引き続きやってきた数字ですから、これを基本にし、その変化要素をどう加味するかはその都度の議論でする。例えば地域によってパート比率は大幅に違います。従ってパート比率が違う地方は、当然そういう議論をされるでしょうし、そうでなく、マクロで考える場合は、従来とのつながりの数字の上でどう決まっていくかを出したほうが分かりやすいのではないかというのが、私の感想です。
 もう1点は、私ども民間企業でベースアップをやってきておりますが、そのベースというのは平均賃金ということです。従って若年労働者が増えた場合には、ベースはダウンした企業も多いわけです。ダウンした上に立って論議をしているので、さっき労側委員から、これは年齢構成という点では過去からずっとあったではないか。一般というところにはプラスで作用し、マイナスで作用し、いろいろあった末のものであって、パートだけこの段階で取り上げる必要はないのではないかという意見だったと思います。私も、世間との比較という点からいくと、やはり一般労働者の平均賃金、これが基本になるというのが、基本数値としては柱ではないかという感じがいたします。以上です。

○公益委員
 結局同じようなことになるのですが、前回の議論における論点という、資料No.1の2枚目の「その他」に分類されたのは、たぶん私の申し上げたことだったと思うのです。わけがわからないので、ここになったと思うのですが。その中で、先ほどちょっと問題になった類似労働者については、トータルの労働者を類似と考えるべきだと確かに申し上げたのですが、これは積極的な意味で言ったのではなく、例えば産業別である特定の産業について最低賃金を置くのであれば、その産業の労働者が類似になる。これは当然である。それから、もし正社員とパートと別々に最低賃金を考えるとすれば、パートと正社員と別々に、それぞれが類似になるのが当然だろう。その前に、いま言っているのは地域の最低賃金ですから、それもあらゆる労働者に適用されるという意味では、そういう限定がなくトータルになるだろうと、いわばネガティブな意味で、これは類似と考えるべきだろうと申し上げたのです。
 では、どうトータルの労働者の賃金を考えるか。まさに、いまここに議論になっているわけでして、第4表のように、それを全部ごっちゃにして1つ出るというのがあるわけです。しかし、それだけでは状況がひとつ分からないというときに、パートと正社員を別々に分けて見て、それぞれどうなっていますかということを情報として加えれば、それだけトータルの労働者の中身が分かりやすくなって、その上でどう決めるか。さっき使側委員がおっしゃったように議論をする材料としては、そういうのがあったほうがいいだろうということで申し上げたわけなのです。先ほど類似労働者について若干議論がありましたが、私の補足ということで申し上げました。

○労側委員
 いままでのご議論お聞きいたしておりまして、目安の論議と資料の論議は別だという、まさにおっしゃるとおりと理解をいたしております。最低賃金が、労働力の流動化とか、そういう動きを受けて、非常に重要になってきているというのは、皆さん同じ認識だろうと思います。目安が決定されていくに当たって、その資料も含めてきちんとした説明ができる、そういう中身でなければならんのではないか。
 説明の中の1つの重要な資料として第4表があるわけですから、第4表がいまの情勢などを踏まえ、目安決定に当たって参考にしたという意味での説明ができるものに、できるだけ近付けなければならないというのが、私の考え方です。
 そういう意味から言いますと、現行の計算方法は平均賃金ですが、これは平均労務費、総額労務費の変化率を、厳密にいうと表しているものだろうと思います。そうしますと、ある意味、第3回資料の男女構成比の変化を除去した場合でも、やはり平均賃金としてトータルで捉えているものですが、この場合はやはり変化を除去した分、賃金の変化率により近くなっていっているのではないかと思います。その意味からいいますと、労働者側の主張に有効であるとか、あるいは使用者側の主張に有効ということではなく、その説明責任をどうやって果たせるかという観点で、ご議論をお願いできればなと思っております。資料ですから、冒頭公益委員がおっしゃったように、どういう資料を使っても、1つの資料を使っていけば、低目に出る場合もあるし、高目に出る場合もあるわけです。そういうものではなく、どういう取扱いが国民の皆さんに理解をされるような中身になるかという見地で、私は申し上げているつもりですので、よろしくお願いしたいと思います。

○渡辺会長
 議論を混乱させるようですが、私のほうには、類似労働者をどう捉えるかという問題と同時に、いま労側委員がおっしゃったように、総労務費の変化と捉えれば、相対的に低い賃金の労働者が増えて、高い賃金の労働者が減っていけば総労務費は減るわけですね。
 そうなると、もう1つの企業の支払い能力という最低賃金決定の手法もあるわけです。その変化率を企業の支払い能力という観点で見たときどう評価するかということも、検討の中に加わる議論ではないか。いま企業経営に関する資料としては、いろいろ企業経営に関する別な資料を使って状況把握を、目安審議ではしていると思うのです。それだけでない、新たなそういう見方も出てくるのではないかという気がしています。

○労側委員
 今日労側委員が言ったことも、会長が言ったことも、私は労働者側は常に言ってきたと思っています。類似労働者の賃金の状況という、その賃金とコストをどう見るのか。平均賃金でという説明についてはいま労側委員が言ったとおりと思っています。要するに、企業でも平均賃金でベースアップと言いますけれども、結局その後は個人の配分ですね。労働組合の主眼は、原資を決めた後どう個人別に配分し、その状況がどうなったか。個人の生活がどうなったから、労働者としてはどうなのか。マクロ的に、最終的にそれを見るのも労務コスト的な平均賃金という、この数字は労働組合も使っています。少なくても我々は常に言っているように、個別賃金という賃金改訂をやはりそうすべきだろうし、労働組合としては賃金改訂に取り組んでいます。そういう意味では、まさに基本的にはそれぞれの賃金の状況がどうなったかを示す、労側委員がいう労務構成の変化をなるべく除去した数字のほうが、平均賃金として見るときでも当然類似労働者の賃金としては当たり前の数字ではないか。労働者側としては、常にこういう主張もしていました。
 平成7年のときにも連合本部の事務方で我々はそういう議論をしながら、審議会では審議会のご判断があり、労働者側もその当時はそれに賛成したわけですから、それはそれとして。ただ常に主張で言ってきたし、そういう考え方をしていた。最後に支払い能力論と賃金論の場合には、やはりこの第4表は是非とも改善すべきだという考え方です。

○公益委員
 先ほどの使側委員のご意見は平均賃金のお話ですが、研究者としては平均賃金というのはあまり好きではないのです。特に賃上げ率の問題、賃上げで個別労働者はどう賃金が上がったかというときには、どうしてもやはり労働力は調整したいと、我々は習性的に思うので、そのことだけちょっと言いたいと思いました。
 結局最後は最低賃金って何だろうと思うのです。最低賃金でぎりぎりで働いている人たちの個別の賃金をどうコントロールするかということが機能とすると、では労働力構成には個別賃金的な決め方の情報がほしいという気は、基本的には私はするわけです。
 例えば、先ほどの年齢構成の問題もあるではないかとか、勤続の構成もあるではないかというお話がありましたが、もし年齢構成が大幅に変わったら、私の気持としては年齢構成をちゃんと変数で入れてくれと言うだろうとは思います。年齢構成がそんなに急速に変わったとは思えないので、ですからとりあえずそれで調整してないだけであろう。そういう意味では違う、重要な賃金に与えるような基本的な要素が大幅に変わったときには、やはり調整をして出してほしいという気持に、私はなります。
 そういう点では、一般とパートの比率は大きく変わっていますので、その辺は調整して、調整した数字が見たいというのが、私の基本的な考え方です。
 実際上支払い能力問題とか、公益委員が言われたように、では最低賃金を上げてしまうと一般労働者からパートにまた移って、雇用構造を変えてしまうのではないかというのは、そこから先で判断すればいい問題かと思っています。先ほどの使側委員の言い方をすると、本番決定のときにいろいろ考えればいいので、基本的な情報としてはそちらのほうが欲しいというのが、私の意見です。

○労側委員
 ちょっと私も賃金はまだまだ不勉強ですが、やはりデータというものはできるだけ正確に取るということで、単純に平均すると、いまのパートと一般労働者で0.5、約半分。平均というと、その平均のところには誰もいないというような平均値だと思うのです。
 そうではなくて、やはりパック背景でどういう影響が及んでいるかということがわかるようなデータの取り方。ですから、まずは正確にデータを取る。それに何が影響しているかを見れるような、特にいまクロス分析などいろいろコンピュータでできますから、そういう意味では単純平均ということではなく、ちょっとわかりにくいかもしれないですが、いろいろなものを使って、データを見られるようなデータの取り方を、是非していただければと思います。

○使側委員
 先ほど言ったことと繰り返しになりますが、あえて申し上げたいのです。この第4表に、先ほど労務費を見ているというお話がありましたが、そういう労務費やコスト等として見ているわけではなく、やはり働いている方々の賃金が実態としてどう動いているのかを、たとえ平均であっても、第4表は示しているのだろうと思います。先ほどちょっと賃金調整が実態として行われていると言いましたけれども、その賃金の高い人に置換えが起きることもあるでしょうし、低い方に置換えが起きていることもあるということで、いまはたまたま低い所への置換えが起きていっている。それはそれで大事な実態であると考えます。
 ある意味では、先ほど一般労働者の中でもいろいろあったと言いましたが、そういうものを含みの中で非常に上昇しているときは上昇しているときで、それを重視してやってきたのがありますので、いま下げ要因だからといって、意味あいを違えていくというのは本来でいえばおかしいのではないか。第4表は第4表で、要するに意味があるんだということを申し上げておきたいと思います。

○労側委員
 使側委員がおっしゃったから繰り返すわけではないのですが、私のほうはまた繰り返しになりますが、逆の意見です。第4表そのものは、要するに類似労働者の賃金がどう変化したのかを見るわけでありますから、統計的に、例えばパートも一般も、常用雇用労働者もパートタイム労働者も賃金が伸びていると言ったら、やはり伸びているというのが賃金の変化であって、それが構成比の変化によって、例えばそれは伸びているのではなく、大きく下がったのだというようなデータとして現れる。そんなあり方については、少し検討したらどうかなというのが、基本的な考え方です。
 ある程度日本の場合も時間給概念が一般化していて、あるいは概念化していて、その均等処遇なり均衡処遇なりが成立をしているのであれば、それはあまり大きな変化になって、マイナス要因になって現れないと思うのですが、明らかに違うわけです。まず雇用形態が長期雇用なのか、有期雇用なのかという違いもありますし、賃金水準も全然違うというのが、今日の雇用形態と賃金との関係であります。そうしたことが及ぼす影響については、できるだけ除去することが正しいのではないかなと思います。パートの賃金が上がっているのにもかかわらず、統計上マイナスになるというやり方は、参考資料だからいいではないかと思いますが、近年目安制度ができて以来ずっと見ていただければ、第4表にかなり近い数字というか、第4表そのもので決まってきた経過があります。それほど重要なデータということで、やはりきちんとした議論をしておく必要があるのではないかと思います。

○使側委員
 この問題は各一般の企業段階でも、繰り返し論議されてきた問題と比較してみますと、いわゆるポイント賃金という要求がありまして。例えば25歳とか35歳とか、要するに標準労働者として捉えるという考え方が、労働者側から何回も出てまいります。しかし基本的にそれに応じている企業も中にはありますが、それはやはり例外的であろうと、私は思っているのです。基本的には引き続きベースを基準として、それでアップ率を考えるという考え方があると思います。
 しかし、そのベースはどうかと言いますと、諸々のものを加味した新しいベースを土台にして、翌年アップ率を考えているわけです。ですからいろいろなものを修正して考えるのではなく、平均賃金というのは、その実態の労働者の諸々を加味した平均賃金ということであるという点を、さっき申し上げたわけであります。
 なぜそれが経営者側が、労働者の意見を聞き難いかといいますと、確かに先ほどありましたように、労務管理論的には、そういう労働者の生活との関係等におきまして、その収入という面を考えるというのも、1つの考え方だろうと思います。一方経済学的といいますか。経理的に考えますと、やはり平均賃金で考えざるを得ないというところにポイントがあるように思うわけです。

○労側委員
 使側委員がおっしゃられていますので、最初は黙っていようと思ったのですが。民間で賃金交渉する場合も、平均賃金で交渉する場合も、その平均賃金のベースというのは賃金交渉前の2月とか3月に一度揃えて、それをベースにどのくらい引き上げるのかという交渉をするのではないか。従ってその場合においては、労務構成の変化はある一定の雇用に対して、それを何パーセント上げていくらになるというやり方をしていると、私は理解をしています。
 現在の計算方法は、去年4月の賃上げ後の賃金とそのときの労務構成と、今年4月の賃上げ後の労務構成を、同じ変化率をここに入れたままその平均賃金をやっているわけですから、民間の賃金交渉の場合はそれを一旦2月に整理をし、新たな労務構成に引き直しながらやっているという意味では、民間の賃金交渉も、男女の構成比の変化を除去するような形で、あるいは労務構成の変化を除去するような形での交渉になっているのではないかと思っています。
 そういう意味から言いますと、別にここで平均賃金の問題を駄目だと申し上げているのではなくて、あるいはここの水準だけで議論しろと申し上げているのではなく、少なくても民間もそうやっているわけですから、その部分は最低賃金も同じようにしなければならないのではないかと申し上げているわけです。

○使側委員
 最初に第4表だけで決めるべきでないということは、もう従来から主張してきておりますので、まずそのことを確認します。その上で先ほどから続いている議論ですが、いま考えたのですが、そもそも先ほどからAさん、Bさん、Cさん、Dさん、それぞれの個々がどう変化したのが重要なのかというお話がありました。そうなりますと、そのことと、パートと一般を分けることというのは実は同じ理論ではないと思います。つまり一般とパートを分けたところで、パートの中にも新しく入った方、2年目の方、3年目の方といらっしゃるわけです。もしAさん、Bさん、Cさんが去年に比べてどうなったかということになると、少なくても最低2年目、1年目があって2年目の人のデータからしない限り変化率は見られないということになります。
 一方でパートと一般を分けようとして新しく市場に入ってきた人の1年目を見ようとすると、それでいまもちろん入っているわけですが、それは個人の変化率としては見られないわけです。どうしてもそこは全体として押しくるんで見ているわけです。ですからそれが一般とパートと分けたことによって、必ずしもAさん、Bさん、Cさんのことを見たことにはならないと思います。

○公益委員
 個別にいうとおっしゃるとおりですが、労働力構成を固定をして、賃上げ率を計算するということは、大雑把にいうとAさんがどうなった、Bさんがどうなったというのを全体で丸めたらどうなるかという話と思うのです。
 私が気にしていることの1つは、今回は一般労働者とか、先ほども言ったのですが一般労働者、パートの問題が出ていますが、やはりほかの要因がものすごく大きく関わったら、やはり同じように考えなければいけないと、私は思っているのです。もしかしたらたまたま何年後かにパートが大幅に減って、逆の現象になるかもしれない。そういう賃金に大きな影響を与える労働力構成面の変化が大きく変わったら、そこは必ず入れるべきだというのはもう基本だと思っているのです。その変化が小さければいいのですがね。
 逆に言うと、そういうふうに基本的な考え方を変えるということを、今回もし一般・パートを分けて、労働力を固定してやるような方法でいくとすると、そういう考えの転換があることを確認してもらわないといけない。将来にまた変えたりとか言われると、お互いにもしかしたら良いほうを取ろうと思う。そんなことなしよというのが、私の意見です。

○使側委員
 いま先生がおっしゃったことで、過去のパートの比率が上がったから、その賃金が上がったとか下がったとかいうのは、ほかの影響が相当あったような気がしますので、一概にその比率だけの問題かなということが1つあります。
 やはり企業はパイが決まっていますから、おそらくこれから男女の格差というのは、大企業にとって男女の社員数というのは同じくらいになってくるのではないかと思うのです。労働政策上は、組合の方たちは、なるべく一般社員に採用しろという政策を取るのではないかと思うのですが、企業のパイが決まっていると、なるべくパートにしたいということ。するといまの議論からいくと、逆現象が起きてくるのではないかと思うのです。そういった面から、あくまでもこれは目安であり数字だけ見るのであれば、いま以上にパートを上げたい所と上げない所と、やはり労使拮抗していますから、あまり比率を細かく見ていっても意味がないのではないか。実際100%なんていったら、パートの比率なんてことはあり得ないので、いま以上にそんなに大きく変化することがあるのか。ただ男女比率はこれから変わっていくかもしれません。それぞれの企業がパイの決まった中で、やはりそれぞれの職種と企業に応じた賃金体系を決めているはずです。最低賃金の人の目安としては、いまの全体的な大きな形の目の中で、私は十分ではないかと思います。

○労側委員
 結論はいっしょなのですが、先ほどどなたかのご発言にあったと思うのです。賃金改訂状況の資料整理の仕方として、第1表から第4表まであって、参考資料があってと。それぞれの整理の仕方というのは、全部が事業所ベースでいったらこういう改訂状況でしたという資料の整理の仕方です。第4表は、タイトルは「労働者の賃金改訂状況」となっていますが、見方によっては先ほど、これもどなたか発言されたように、平均賃金の1人当たりの人件費がどう変わったかという整理の仕方と見ることも可能なわけです。
 そうすると個々の実際に働いている人たちの賃金が、去年と今年で、去年のAさんが今年いくらになったのかということはこの中に表れてこないわけです。資料の整理の仕方としてやはり事業所ベースで資料を整える部分と、労働者ベースで資料を整える部分という意味あいでいけば、第4表の性格というのはもっと労働者ベースに、個々人ベースにきちんと整理をしたものにすべきではないかと思います。

○会長
 まだご発言のない委員の方、どうぞ。

○使側委員
 先ほど使側委員が、調査対象規模について発言していましたが、私は地方の中小企業からここへ参画しているのですが、「調査の概要」で、調査の地域として都道府県庁所在都市と地方小都市とあります。そう言われてみると、私の住んでいる所は町から、今度は南アルプス市になったのですが、いままではそういう調査には参画できなかったのかなということを思っております。最低賃金といいますと、そういう小さい所の吸い上げられたものが必要ではないかと感じているのです。これでいくと、いままでの郡、町村というものはこの中には参画できなかったということで、動きの実態というものがはっきり細かいところまで出ていなかったのではないかと感じております。調査対象をやはり細かな、29人以下の小規模を配慮した調査をしていただきたい。またそういうことが必要ではないかということを感じていますので、発言いたしました。

○使側委員
 ひとつ、先ほど会長が言われた支払い能力の問題ですが、やはり三要素の1つに支払い能力があるわけですから、そういった視点からの資料も是非私ども中小企業としては考えていただきたいと思います。
 いままでの議論ですが、やはり平均賃金を信じていままでやってきた。いま労働者構成が違うからその変化を熟慮すべきだというのも、外の人が見れば、あるいは我々中小企業の経営者が見れば、非常にご都合主義というような観は免れないと思うのです。では、なぜそのときにそういうことが議論されなかったかということが、非常に重要になってくると思うのです。従って、是非この当時の議事録なりをきちんと集め、しっかりした理由を提示していただきたい。これは強くお願いします。

○会長
 平成7年のときの議論を、もうちょっと詳細にフォローしてほしいというご要望と承っておきます。

○使側委員
 いまそれを言おうと思ったのです。先ほど公益委員から、基本的な考え方を変えるという確認が必要で、そうでないとまたころころ変わってもというお話がありました。そういう意味では、ここで本日こうやって検討しているわけですが、直近であれば平成7年のときに、1つのやり方が変化したと思われるので、そのときの変化させた考え方は再確認した上で、この問題については議論する必要があるのではないかと思います。

○会長
 この「賃金改訂状況調査のあり方」に関しては、今回だけではなく、ご案内のように次回も予定されています。今日は大変活発にご議論をいただき、各委員それぞれ立場で発言なさったと思います。また事務局には宿題も残されたような気がしています。もし特にいま一言というご発言がなければ、一応今日の段階で出尽くした気がしますが、そのような扱いでよろしいですか。

(了承)

○会長
 次回は4月16日の金曜日、午前10時から、第16階の専用第17会議室で開催したいと思います。引き続き「賃金改訂状況調査のあり方」についてご検討いただくということで、よろしいでしょうか。

(了承)

○会長
 では、第6回目安制度のあり方に関する全員協議会を終わります。本日の議事録の署名を、池田委員と中野委員にお願いいたします。
 本日は、どうもありがとうございました。




(照会先) 厚生労働省労働基準局賃金時間課最低賃金係(内線5530)


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