検討事項 |
指摘事項 |
委員から提出のあった論文等と具体的施策の例 |
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○ |
関係機関の役割の明確化 |
○ |
施設サービス体系の見直し |
・ |
できる限り個々人の状況に応じた支援を行っていくこと。そのためには小規模化を基本にしながら、施設体系のあり方を考えていくことが必要。 |
・ |
子どものニードに応じて対応できる階層的な支援体制が必要。 |
・ |
子どものニードによって、生活と治療のあり方を選択できるように、複数の種類の施設や里親を含めた養護体系が必要。 |
・ |
ケアの連続性の観点から、乳児院と児童養護施設の関係について検討が必要。 |
・ |
虐待を受けた子どもの多くは、安全な「生活」はもとより、治療的な支援が必要であり、虐待を受けた子どもの社会的養護を考える時に、生活と治療という両面からの検討が必要。子どもに対する生活と治療と親に対する生活と治療を基本に置くこと。即ち、子どものみならず親も視野に入れた家族に対する支援という考え方が重要。 |
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○ |
情緒障害児短期治療施設における被虐待児の治療
・ |
高い改善率
ア |
萎縮傾向にある児童に対する高い改善率 |
イ |
大人に対する無関心、強い不信感など被虐待児に特有の対人関係の傾向に対する高い治療効果 |
ウ |
否定的な自己イメージを持つものの約50〜70%が改善 |
エ |
特定の大人との関係性に対する高い改善率 |
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・ |
低い改善率
ア |
対人暴力や器物破損など衝動的・攻撃的な行動化の傾向は男女ともに改善率が30%に達しない。 |
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滝川一廣他「児童虐待に対する情短施設の有効利用に関する調査 研究」2001年 |
・ |
子どもに最適の社会的養護を提供するために、子どものニードを図る的確なアセスメントが必要。 |
・ |
児童養護施設の子どもの多くは、安全・安心な家庭生活を経験していない。(精神的な)治療を要しない子どもというのはむしろまれである。その治療の前提として本人が治療に心を向けられる「生活」の確保は必須。 |
・ |
虐待を受けた子どもの社会的養護を考える時に、生活と治療という両面からの検討が必要。子どもに対する生活と治療と親、家族に対する生活と治療との構造化を基本に置き、生活・治療の2つの機能面からの再編成の検討が必要。 |
○ |
子どものケア内容に応じた措置費体系
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○ |
児童福祉施設等の機能及び体制強化
・ |
施設内虐待を防止する体制や施設内での子どもの行動上な問題に対応する体制が必要 |
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○ |
児童福祉施設最低基準の改善 |
○ |
地域支援機能の強化
・ |
市町村などと連携をし施設のノウハウを活用して在宅支援するためには、児童家庭支援センターの整備促進やファミリーソーシャルワーカーの配置など体制整備が必要。 |
・ |
在宅支援、子育て支援といった地域との関わりなくして、施設だけで運営するという視点では機能しない。児童家庭支援センターを核にしながらの地域支援の在り方などについて検討が必要。 |
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○ |
乳児院・児童養護施設間の措置変更について
2、3歳での乳児院から児童養護施設への措置変更は、同一敷地内に両施設を保有しない限り、現行の施設機能や人員配置では対応が困難という研究結果が出ている。
松原康雄「要保護児童の自立支援に関する研究」平成12年度厚生科学研究2001年 |
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○ |
施設の小規模化
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○ |
施設の小規模化及び個別的対応の強化 |
・ |
心の問題をもった入所児童の増加 |
・ |
大規模施設より小規模施設の方が精神的影響を軽減する効果あり |
・ |
虐待の影響は行動から人格形成まで広範にわたる。子どもの生活の中にTherapeutic parentingや治療的里親という要素が必要。単にカウンセリングや精神医療を週に1時間提供するのではうまくいかない。そういう治療的養育は大規模施設では無理。グループホームとか里親が適当。 |
・ |
児童養護施設には、虐待を受けた子どもも、また他の要因を持った子どももいる。崩壊家庭の子どもたちには安心、安全な住まいを提供することが必要。小規模化は、より専門的な施設も用意できるし、生活支援のみの施設、親子交流が日常的にできるような施設にすることもできるメリットがある。 |
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○ |
行動上の問題と被虐待経験との関係について
非行といった行動上の問題については、様々な要因が重なり合って発生すると言われているが、その発生要因の1つとしてあげられているのが被虐待経験である。
・ |
児童自立支援施設における被虐待経験について
ア |
児童自立支援施設入所児童の約6割が虐待経験あり。 |
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国立武蔵野学院「児童自立支援施設入所児童の被虐待経験に関する研究」2000年
・ |
少年院における被虐待経験
ア |
少年院に入院中の男子2034名、女子219名中、被虐待体験は
男子49.6%、女子57.1% |
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法務総合研究所 法務研究所研究部報告11「児童虐待に関する研究」2001年 |
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○ |
家庭復帰できない子どもの自立ということを考えなければいけない。そのような子どもが自立していくためのプログラム及びその支援体制について、いわゆる自立援助ホームの在り方ないし、その整備ということや年齢延長といった点なども視野に入れ検討していくことが必要。 |
・ |
子どもたちの自立年齢は上昇しているので、それを考え、社会生活の中で個別に対応する仕組みが大切。NPOなどの活用も検討が必要。
本人と社会資源を結ぶための手立てを整備することが必要。 |
○ |
情緒障害児短期治療施設等の治療機関の整備・拡充 |
○ |
治療機関と養育機関の役割分担のあり方検討 |
○ |
施設と里親との連携 |
・ |
里親、施設、児童相談所が一体となった柔軟な取り組みが必要。 |
・ |
レスパイトケアやケアワークを含め、施設が里親を支援する体制が必要。
施設ばかりではなく、市町村の支援も必要である。
いろいろな視点から児童福祉施設の再編成を行うことが必要になってくる。 |
○ |
里親制度の拡充 |
○ |
養子縁組を前提とする里親が多いという実情の中で、これを養育里親に変えていく必要がある。 |
・ |
欧米に比して社会的養護における里親の占める割合が少ない。里親が普及しない根本的な原因を究明し、その対策を講ずる必要がある。 |
・ |
里親の拡大に向けた啓発を十分行うと共に、補償についても検討が必要である。 |
○ |
施設の退所等に際しての客観的なガイドラインの策定 |
・ |
家族の再統合プログラムや再統合に向けたアセスメントが必要であり、それらを実施する機関が必要である。 |
・ |
苦情処理に関してのシステムが整備されているが、施設等の客観的な評価を進めるための方法として第3者の評価が必要になる。そのためには、評価を実施する評価者の養成が必要である。 |
・ |
再統合のための親の評価・子どもの評価・地域の社会資源の評価などを的確に行う第三者機関が必要 |
・ |
施設で暮らす子どもの権利を擁護する仕組みを実効性のあるものとする。 |
・ |
児童福祉法第28条に基づく措置にあっては、その期間を定めることも有用である。 |
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○ |
「大舎制よりも中舎制・小舎制のほうが子どもの施設に対する適応が比較的よい」という結果報告。
杉山登志郎 「発達的視点からみた子ども虐待の後年への影響とその治療」2002年
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○ |
「児童養護施設における生活単位の小規模化、地域化に関する調査研究」(研究代表者:高橋利一 平成11年度児童環境づくりS等総合調査研究事業) |
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検討事項 |
指摘事項 |
委員から提出のあった論文等と具体的施策の例 |
5. |
子どもに対する治療・援 助法の確立(福祉・医療・ 保健機関等) |
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・ |
どの程度心理的なケアを必要とする子どもがどれくらいるのか、そういう子どもに対して何人の職員が必要なのかといった基礎データ、子どものアセスメント、アセスメントをするための機関の問題について検討する必要性。 |
・ |
最初の段階で家族のアセスメントがなされていないから、その後どう改善したか評価できない。今までの研究をベースにしたガイドラインをつくっていくべき。 |
・ |
アセスメントは、子ども、家族、地域資源など、多角的重層的に行われることが重要であり、それに基づき、総合的な支援計画を立て、一定期間後に見直すことが必要。 |
・ |
アセスメントについては児童相談所と一時保護所がやっているが、さまざまな問題を抱えている子どもが入っている今の一時保護所ではアセスメントやそのための行動観察は不十分であり、アセスメント機関としての施設利用やアセスメントセンター創設などを含めて、そのあり方について検討していく必要がある。 |
・ |
一般的に身体的虐待を受けた子どもへのケアについてのノウハウは確立されているが、性的虐待を受けた子どもに対するノウハウはまだまだ未確立。 |
・ |
性的虐待を受けた子どもへのケアについては、保護した直後の関わり方から重要であり、物理的にも個室対応などがとれる設備も必要。 |
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○ |
被虐待児に対するアセスメント手法の開発
以下のような研究がある。
・ |
6箇所の養護施設に入所中の子ども179人を対象に,CDC(子どもの解離性症状チェックリスト)とTSCC(子どものトラウマ症状チェックリスト)を用いて,虐待体験がもたらす心理的影響を把握する目的で行った研究. |
西澤哲.児童養護施設に入所中の子どもの心的外傷反応のタイプに関する研究.社会事業研究所年報.No.36, 2000年.
・ |
虐待体験とTSCCによるトラウマ反応の測定.
養護施設に入所中の子ども115名を対象に,虐待体験の有無とTSCCで評価されるトラウマ症状の関係を検討. |
西澤哲 他「養護施設に入所中の子どものトラウマ反応に関する研究」 1999年
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○ |
入院した被虐待児35例の精神医学的問題についての臨床研究.
ア |
自傷・他害:18例(家庭内暴力) |
イ |
反社会的行動:16例(家出・放浪・深夜徘徊・盗癖・万引き・放火・火遊び等) |
ウ |
登校および学習上の問題:13例 |
エ |
食行動異常:10例(過食,多飲,盗食,異食) |
亀岡智美 「被虐待児の精神医学」臨床精神医学 第26巻第1号1997年 |
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○ |
司法手続き上の配慮
|
○ |
施設ケア業務に情報技術の活用 |
・ |
情報を集積した情報センター(子どもの虹情報研修センター)を活用することが可能である。 |
・ |
施設内での記録を画一化するなどの手立てで、情報を共有化することが必要。その際のセキュリティに十分な配慮が必要。 |
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○ |
子どもへの治療のあり方については、多くの文献研究や臨床研究から以下のような共通点があげられている。
1. |
被虐待児の精神的症状は行動の問題が多く、愛着の問題、自己調節の問題、自己の連続性の問題(解離)など、人格の問題につながると考えられる自己の障害が大きい。 |
2. |
被虐待児は注意欠陥多動性障害、行為障害などにつながる危険がある |
3. |
海外の文献から、境界型人格障害、解離性障害、物質依存、うつ、行為障害、食行動異常などは被虐待体験を持っている人が多いと報告されている。 |
4. |
性的虐待例は心理的症状も多いが、それに加え、性的行動の問題も多く、特別なケアが必要と考えられる。 |
5. |
治療に関しては、医学的治療・心理的治療は有効であると考えられる。 |
6. |
治療は、十分なアセスメントに基づき、総合的支援計画の一環として行われる必要がある。 |
7. |
虐待と軽度発達障害の関係について検討していく必要がある。 |
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○ |
精神保健外来を受診した被虐待児56例の分析
・ |
在宅ケースでは30%が治療を中断していた |
・ |
継続治療ができたケースでは
在宅では60%が、施設入所児では40%が改善(やや改善を入れると75%、67%) |
・ |
在宅例で初診時虐待があったケースでは50%が虐待は消失 |
奥山 眞紀子「被虐待児の精神的問題に関する研究 」
平成10年度厚生省厚生科学研究 1998年
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○ |
家族外性的虐待を受けた低年齢児の治療
・ |
家族外性的虐待を受けた子どもは打ち明けてから症状が著明となる。 |
・ |
家族の対応がよければ、3−4ヶ月で症状は軽減 |
・ |
家族機能が良い時には親ガイダンスが最も重要 |
奥山 眞紀子「家族外性的虐待を受けた低年齢児の症状とその経過」 |
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