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児童虐待に関する現状データ
(第1回児童虐待の防止等に関する専門委員会(平成14年12月3日)資料より抜粋)


I. 児童虐待防止対策(発生予防)における現状データ
 (1) 一般の子育て支援
出生数等(平成12年 人口動態統計)
総数 低出生体重児
1,190,547 102,888
育児学級(平成12年度 地域保健・老人保健事業報告)
  開催回数 参加延人員
総数 107,902 2,323,367
 思春期・未婚女性学級 3,742 3,742
 婚前・新婚学級 117 1,968
 両(母)親学級 39,072 612,841
 育児学級 64,971 1,444,089
地域保健における子育て支援
乳児を養育中の家庭への子育てヘルパー派遣事業等
育児・子育てサークル活動支援

 (2) 虐待リスクのある家庭の把握
児童虐待の発生は年3万5千件(児童人口千対1.54)程度と推計(小林研究)
児童相談所の児童虐待相談処理件数23,274件(平成13年度 厚生労働省調べ)
虐待事例の周囲には、それを取り巻く虐待リスクのある家庭が存在
地方自治体等における虐待リスクのある家庭の把握・支援マニュアル作成・導入の動きあり
母子保健事業における産後うつスクリーニングの導入(新宿区、福岡市等6団体)
保健機関は、妊娠期以降様々な母子保健サービスを通して家族への接点を持つため、保健所及び市町村等、地域保健における虐待発生防止のための組織的な取組が図られつつある。しかし虐待死亡例には転居、健診未受診、出産直後等により保健機関においても把握できていない事例も多い。(厚生労働省まとめ)
出産直後は産後うつの好発時期である一方、産科医療機関を退院してから3・4か月児健診までの間は、一般的な母子保健サービスとのつながりが希薄になりやすい。
生後3ヶ月以内の乳児虐待死亡の約半数は保護者が自分だけでは対応できない程度の強い情緒不安定、強い育児不安・負担感等何らかの精神心理的問題を有していた。(厚生労働省まとめ)

 (3) 虐待リスクのある家庭のリスク低減
乳幼児期の虐待は子どもの健全な発育・発達を阻害するばかりでなく、生涯にわたる深刻な影響を及ぼす。
虐待死亡例の40%は0歳児で、その半数は生後3か月以内(厚生労働省まとめ)
被虐待児童には情緒・行動障害が生じやすい。(大阪児童虐待研究会まとめ)
児童自立支援施設入所児童の約6割に被虐待歴がある。(児童自立支援施設入所児童の被虐待経験に関する研究)
保健所・市町村における虐待リスクのある家庭の支援
保健師等による家庭訪問、個別相談事業の開始
保健所・市町村における虐待予防教室、育児グループ育成支援を実施
保健師が1年間継続支援した結果、1割はリスク低下、7割は現状維持、虐待発生は約2割(大阪児童虐待研究会)
虐待リスクの高さは、未熟児・障害児・育てにくい等の児のリスク、健診未受診・育児不安が強いなどの親のリスク、転居・孤立等の養育環境リスクの各側面から総合的にみることによって、把握する手法が用いられている。(小林研究等)
保健所・市町村における活動状況(平成12年度 地域保健・老人保健事業報告)
保健師数(都道府県:4,481人、13大都市・中核市:4,145人、市町村:17,120人) 母子保健活動実績等
  訪問指導数 保健指導数
妊婦 29,971 35,077 492,967 527,644
産婦 316,274 347,913 159,621 206,633
新生児(未熟児を除) 239,419 258,397 712,597 1,039,188
未熟児 46,726 57,159
乳児(未熟児を除) 151,875 179,835
幼児 121,628 177,293 714,193 1,067,104
(平成12年度 地域保健・老人保健事業報告)
医療機関における虐待リスクのある家庭に対する支援の試み
児童虐待の早期発見と防止マニュアル(日本医師会)
看護職による子どもの虐待予防と早期発見・支援に関する指針(日本看護協会)
助産師等による退院後の家庭訪問(日赤病院等)
先輩ママの会(ピアカウンセリング)の育成支援(日赤病院等)
24時間ホットラインの設置(日赤病院等)
院内虐待対応チームの設置(北里大学病院等)
民間ネットワーク
虐待防止ネットワークなど民間ボランティアの活性化

 (4) 連携による支援体制の確保
児童虐待防止市町村ネットワークの進捗状況(厚生労働省調べ)
平成14年6月現在 設置済702、計画中323、合計1025か所
母子保健主管課、保健センター、保健所はそれぞれ50%程度参加
虐待死亡例では、乳幼児と最も接点を持ちやすい保健機関とすら接触が途絶える事が多い。
法施行後の虐待死亡事例には、住民票を移動しない居住先変更、健診未受診、家庭訪問時不在・拒否、就学年齢以降の児童等、保健機関では把握できにくい対象等のため、一般母子保健での対応が難しい事例も多い。(厚生労働省まとめ)

 (5) 虐待を認めない社会づくり
児童相談所において児童虐待相談を受け付けた件数は2万4千件を超えたが、依然として通告には躊躇があるとされ、対応が遅れる例がある。
判断が間違っていたらどうするのか、通告者が特定されはしないか等
子どもたちに対する予防教育としては、思春期児童を対象としたと取組みが始まっている
保健所・市町村等における赤ちゃん抱っこ、乳幼児ふれあい体験、思春期保健講座等の実施(栃木県、長野市等、9自治体で実施)
都道府県、市町村における児童虐待防止に関する啓発活動の活性化

II. 児童虐待防止対策(早期発見・早期対応)における現状データ
 (1) 対応機関の機能、システム
〔児童相談所の体制〕
設置数
平成14年度設置数  180ヶ所
一時保護所  108ヶ所
定員2,226名
職員数
平成14年度  6,502人
・児童福祉司 1,627人
・心理判定員 872人
・医師 509人 (常勤(専任)17人)
虐待対応組織
平成14年度現在、31の自治体が独自に設置

〔児童相談所における相談、対応〕
全相談件数の推移
全相談件数は近年の児童虐待相談の増加に伴い、増加傾向にある。育成相談(不登校、しつけ等)は減少傾向。相談件数の約5割は障害児相談。
虐待相談の推移
平成10年度以降急増。平成11年度以降、ネグレクト、実母によるもの、在宅指導の割合が増加。
一時保護
平成12年度  21,764人(内、一時保護委託は4,307人)
平成13年度  22,804人(内、一時保護委託は5,011人)
相談への対応
全相談処理の約8割は、助言指導、継続指導等

〔児童相談所職員の資格、研修〕
平成13年度、社会福祉専門職として採用されている児童福祉司は約5割。
職員の専門性、資質向上のための研修は自治体においても実施されているが格差大。国の研修は、児童福祉司資格認定通信課程、子どもの虹情報研修センター等での指導者研修、実務研修等を実施。

〔福祉事務所の設置状況〕
設置状況
平成13年度 1,195ヶ所 職員数 59,474人
家庭児童相談室
平成13年度設置 958ヶ所(郡部267ヶ所、市部691ヶ所)
近年、郡部で減少、市部で増加の傾向。
家庭相談員数 1,622人(常勤213人)
相談延べ件数(平成13年度)
全相談  823,445件
虐待相談 80,433件
虐待を含む家族関係に関する相談の増加が顕著

〔児童委員、主任児童委員〕
委嘱者数(平成13年12月1日)
・児童委員  204,099人
・主任児童委員 19,920人

 (2) 虐待の早期発見・通告・早期対応のシステム
〔虐待の早期発見、早期対応のための関係機関等の役割、連携、地域ネットワーク〕
児童虐待の早期発見、早期対応に、地域レベルでの取組を推進するため、市町村ネットワークの構築が推進されつつある。
児童虐待防止の機能をもつ市町村域ネットワークの設置状況(平成14年6月)
  設置済み −702市町村(21.7%)
  計画中 −323市町村(10.0%)
関係機関連携のマニュアル、15県市で作成中
日本医師会「児童虐待の早期発見と防止マニュアル」

〔通告〕
児童相談所における児童虐待相談の経路は、約半数が福祉事務所、学校等の関係機関。

〔的確なリスクアセスメント手法、ケースマネジメント手法〕
「子ども虐待対応の手引き」で子ども虐待アセスメントフローチャート、一時保護決定アセスメントシートを提示。
「子ども虐待対応の手引き」で子ども虐待アセスメントフローチャート、一時保護決定アセスメントシートを提示。
複数の自治体において、重症度別のアセスメント、リスクアセスメントモデル等を作成、活用。
保健機関におけるハイリスクアセスメントモデルの作成、家庭児童相談室におけるグレーゾーンスケール作成の試み。

〔自治体とNPO、民間団体等の連携〕
児童相談所とNPO法人等との協定(4自治体)

 (3) 児童相談所の行政権限、裁判所の関与
〔安全確認〕
児童相談所における保護者対応の困難さ(強制的な介入と指導援助の機能を一つの機関が行う)
48時間以内に行うことを原則としている自治体もある。
関係機関の関与がある場合は、安全確認の依頼を行う自治体もある。

〔立入調査〕
児童相談所における立入調査件数
平成12年度 96件
平成13年度  194件

〔一時保護(虐待相談)〕
○平成12年度  6,168人(内、一時保護委託は1,300人)
○平成13年度  7,652人(内、一時保護委託は1,539人)

〔親の意に反する施設入所措置〕
児童相談所による申立
平成12年度  127件
平成13年度  134件

III. 児童虐待防止対策(保護・支援等)における現状データ
 (1) 児童相談所の行政権限と裁判所の関与
知事の勧告: 平成12年度 0件
平成13年度 0件
33条の6請求: 平成12年度 8件
平成13年度 4件
親からの引取要求については一時保護及び法第28条の措置により対応(接近禁止の仮処分の申請可)
手術などの医療行為については保護者の同意が必要

 (2) 児童福祉施設・里親等の機能、システム
 児童福祉施設は、施設種別を問わず在籍人員が増加傾向にあり、充足率が上がっている。里親については漸減傾向にある。
児童福祉施設 (平成9年度)→(平成13年度)
 ※但し、児童自立支援施設は平成12年度
乳児院(設置数115ヶ所)
入所児童数
(定員3,718人(充足率74.4%))→(3,687人(85.5%))
児童養護施設(550ヶ所)
入所児童数(32,546人(83.0%))→(33,725人(90.3%))
情緒障害児短期治療施設(21ヶ所)※平成14年度
入所児童数(775人(78.1%))→(929人(82.3%))※平成13年度
児童自立支援施設(57ヶ所)
入所児童数(4,582人(39.9%))→(4,374人(40.9%))
里親(平成9年度)→(平成12年度)
登録里親数(7,760人)→(7,403人)
委託里親数(1,725人)→(1,699人)
委託児童数(2,155人)→(2,157人)

 (3) 児童福祉施設職員・里親等の資質向上、資格要件、人材確保、メンタルヘルス
 児童自立支援施設長は毎年全体の1/3が異動。施設職員の疲労やストレスの蓄積
児童福祉施設職員研修事業(全国規模の主な研修)
・児童養護施設: 全国児童養護施設長研究協議会、東日本児童養護施設職員研修会、西日本児童養護施設職員研修会
・乳児院: 全国乳児院研修会
・情短施設: 全国情緒障害児短期治療施設職員研修会
・児童自立支援施設: 全国児童自立支援施設職員研修会など

 (4) 在宅支援の強化
 虐待の発生する家庭は、一般的に当事者が積極的に対人接触を図ろうとしない特徴があり、通所支援型のサービスによる対応では限界があり、保健師の訪問活動や家庭訪問支援事業の創設などによる在宅支援を実施。
児童相談所カウンセリング強化事業
(平成14年度 137ヶ所)
(平成13年度 111ヶ所)
児童家庭支援センターの設置要件の緩和
(平成13年度平均延べ相談数(1ヶ所あたり643件))
児童家庭支援センターの設置要件の緩和
(平成13年度平均延べ相談数(1ヶ所あたり643件))
情緒障害児短期治療施設における家族療法事業
(平成13年度平均実施延家族数(延実施日数)1ヶ所あたり761家族)
家庭訪問支援事業の創設
(平成14年度 3カ所)
保健師等の訪問活動
(平成12年度 905,893件(実数)1,055,674件(延数)
母子保健のみ)   平成12年度 地域保健・老人保健事業報告

 (5) 子どもに対する治療・援助法の確立(福祉・医療・保健機関等)
 子どもの治療法については、修正的アプローチと回復的アプローチによる心理的治療が有効であると指摘されている。
児童相談所: カウンセリング、遊戯療法、箱庭療法、家族療法、家庭訪問等
児童福祉施設
・児童養護施設: 生活場面面接、カウンセリング、環境療法、遊戯療法、箱庭療法等
・情短施設: 生活場面面接、カウンセリング、家族療法(1施設当たり平均759件)環境療法、遊戯療法、箱庭療法等
・児童自立支援施設: 生活場面面接、カウンセリング、環境療法等
保健所:相談、家庭訪問等
医療機関:身体治療、薬物療法、精神療法

 (6) 保護者に対する治療・指導法の確立(福祉・医療・保健機関等)
 親や家族への治療・指導については、一部の自治体で、その評価やプログラムについて検討している。
在宅ケース
・児童相談所: カウンセリング、遊戯療法、家族療法等
・保健所: 家庭訪問、自助グループ活動等
・医療機関: 医療機関:
親子分離ケース
・児童相談所: カウンセリング等
・児童福祉施設: 面接、電話相談、家庭訪問等
・医療機関: 薬物療法、精神療法

 (7) 医療機関の機能、システム
 日本医師会が「児童虐待の早期発見と防止マニュアル」を作成し、その普及に努めている。
医師(平成12年12月現在)
・小児科(14,156人) ・精神科(11,063人)


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