国立療養所
長島愛生園

National Sanatorium Nagashima-Aiseien

ハンセン病とは

 ハンセン病は、らい菌という抗酸菌がおこす慢性の感染症です。おもに皮膚、末梢神経を侵しますが、眼、鼻・のど・口などの粘膜、一部の内臓にも病変が生じます。1873年に菌を発見した医師ハンセンにちなんで、ハンセン病という病名が用いられています。

 皮膚に生じる変化や末梢神経の病変、菌の検査などによって、病型を区別します。病型によって、病状の進み方や末梢神経の障害、反応性病変が異なり、治療法も変わってきますので、ハンセン病の治療は病型を決めることから始まるといえます。
 いま広く用いられているのは、
 1)皮膚菌検査が陽性か陰性かによってMB(多菌型)、PB(少菌型)の2型に分ける分類
 2)検査のほかに臨床病変、組織検査、菌への抵抗力などを加えて総合的に分類するリドレィ・ジョプリング分類
の2つの分類です。

 現在、ハンセン病は治る病気となっています。早く、確実に治癒させるとともに、末梢神経の障害を防ぎ、後遺症・合併症を少なくして、患者さんの社会生活を損なわないようにするのが治療の目標となります。ハンセン病治療薬としては、主にリファンピシン、クロファジミン、DDS(ジアフェニルスルホン)、オフロキサシンが使用されます。多剤併用が原則です。多剤併用療法によって治療期間が短くなり、耐性の出現が抑えられ、再発はまれになっています。治癒にいたるまで、また治療後のケアも長期にわたるので、患者さんと治療スタッフとの信頼関係を保っていくことが大切です。

 末梢神経が侵されて知覚麻痺、運動障害が生じると回復が困難で、入所者の多くの方にさまざまな後遺症が残っています。こうした障害のある人たちへの介護と介助、後遺症の治療、そして高齢化に伴う老人性疾患の治療、これらが現在の愛生園の医療と福祉活動の中心となっています。

 日本で新しくハンセン病と診断される人は、年間6,7人となっています。新患の大部分は一般病院で治療を受けています。日本ではハンセン病の流行はもう終わっていますが、発展途上国のなかにはまだ患者さんの多い国があります。こうした国々のハンセン病への取り組みに、日本のハンセン病医療に携わっている人たちが協力する活動が続けられています。