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血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン

血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン



平成17年3月

厚生労働省医薬食品局血液対策課



目次


 基本的考え方

 遡及調査の定義

 調査対象範囲
(1)  病原体
(2)  血液製剤等

 遡及調査の発端となる情報
(1)  供(献)血者からの情報
(2)  医療機関からの情報

 医療機関の対応
[対応の前提]
 1  医療関係者の責務
 2  輸血前後の感染症検査の実施(輸血用血液製剤について)
(1)  医療機関で血液製剤による感染が疑われた場合(医療機関発)
 副作用感染症報告(速報)の届け出
 感染症が疑われた受血者(患者)等のフォロー
(2)  製造業者等から情報提供があった場合
−情報提供のケース−
 対象製剤が未使用の場合
 対象製剤が使用されていた場合

 日本赤十字社の対応
(1)  医療機関で輸血用血液製剤による感染が疑われた場合(医療機関発)
 供給停止又は回収及び医療機関等への情報提供
 因果関係の確認
 供(献)血者への事後検査依頼
 ガイドライン(日赤作成)の適用
(2)  供(献)血者の検査結果から病原体の感染が判明し(疑いを含む)、供(献)血歴がある場合(供血者発)
[対応の前提]
供血血液等の保管
 過去の供血血液に係る個別NATの実施
 供給停止又は回収及び医療機関等への情報提供

 血漿分画製剤の製造業者等の対応
[対応の前提]
 1  検体の保管
 2  血漿分画製剤の製造前検査
 3  除去・不活化等に係る書類等の整備及び工程の改善
 4  原料プールを製造した際の検査
(1)  医療機関で血漿分画製剤による感染が疑われた場合(医療機関発)
 血漿分画製剤等に係る保管検体のNAT等の実施
(2)  供(献)血者の検査結果から病原体の感染が判明し(疑いを含む)、供(献)血歴がある場合(供血者発)
(3)  前提3及び4に掲げる措置が講じられない等の場合(医療機関発及び供血者発)
 供給停止又は回収及び医療機関等への情報提供

 その他関係者の対応
(1)  衛生検査所の対応
(2)  国の対応
 副作用感染症報告に対する対応の検討
 コントロールサーベイの実施
(3)  供(献)血者の対応

 その他
(1)  本ガイドライン対象以外の病原体の取扱い
<輸血用血液製剤>
 
 ウイルス等
 細菌
<血漿分画製剤>


1 基本的考え方

   平成16年8月15日以降の遡及調査について適用されている「輸血用血液等の遡及調査に関するガイドライン」1)(以下「ガイドライン(日赤作成)」という。)は、日本赤十字社が薬事・食品衛生審議会血液事業部会等の意見を踏まえて自主的に作成したものであるが、これは、病原体ごとの遡及調査期間を明示するとともに、主として供血者から判明した感染事例についての日本赤十字社における遡及調査手順を示したものであり、医療機関における対応については同ガイドラインに係る通知(「血液製剤の遡及調査について」)1)において、検体の保管方法等を示したに留まっていた。
 この度、「輸血医療の安全性確保のための総合対策」において検討課題となっていた「輸血前後の感染症マーカー検査の在り方」について、「輸血療法の実施に関する指針」の一部改訂に係る通知2)によって方向性が示されたことなどから、医療機関からの情報に基づく遡及調査の実施方法等を明確にするとともに、日本赤十字社、医療機関、衛生検査所及び血漿分画製剤の製造業者等での遡及調査に係る対応を明らかにするガイドラインの作成が急務となっている。
 本ガイドラインはこれらの課題を受けて、国として遡及調査をより円滑に実施するために作成するものであり、関係者の積極的な取組を期待する。
 なお、本ガイドラインは一定期間ごとに見直しを行うこととする。


2 遡及調査の定義

   遡及調査とは、病原体の存在が疑われた供(献)血者の過去の供(献)血血液又は輸血等により感染が疑われた血液製剤等に関する情報及びこれらの供(献)血血液から製造された血液製剤の情報、当該製剤が投与された患者の感染に係る情報等を収集し、それを科学的に分析・評価することである。


3 調査対象範囲

(1)  病原体
 HBV、HCV及びHIVとする。
 なお、梅毒については、(1)世界的にも30〜40年以上も前に行われた院内採血に伴う感染報告のみであることから、先進各国でも対象としていないこと、(2)血液の低温保管中で死滅するという報告があること、(3)日本赤十字社が血液製剤を供給する体制がとられてから報告がないこと等から、対象範囲から除外することとした。
 その他の病原体については、遡及調査の必要性が確立しているとは言えず、今後の実情にあわせて検討を加えることとする。

(2)  血液製剤等
 輸血用血液製剤及び原料血漿(以下「輸血用血液製剤等」という。)並びに血漿分画製剤(遺伝子組換え製剤を含む。以下同じ。)とし、院内採血の場合は除く。


4 遡及調査の発端となる情報

   遡及調査の発端として、以下の2通りの情報が考えられる。

(1)  供(献)血者からの情報
 供血者の検査結果及び同一者の過去の供血歴から、血液製剤等への混入の可能性が認められた場合(以下「供血者発」という。)

(2)  医療機関からの情報
 医療機関からの副作用感染症報告により、使用した血液製剤等で受血者(患者)の病原体感染が疑われた場合(以下「医療機関発」という。)


5 医療機関の対応

 
[対応の前提]
 医療関係者の責務
 「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(昭和31年法律第160号)第8条3)に基づき、「医療関係者」は血液製剤の適正な使用に努めるとともに、血液製剤の安全性に関する情報の収集及び提供に努めなければならない。
 また、「医療関係者」は、
 同法第9条に基づく「血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保を図るための基本的な方針」第六及び第七3)に則り、特定生物由来製品を使用する際には、原材料に由来する感染のリスク等について、特段の注意を払う必要があることを十分認識する必要がある。
 薬事法第68条の74)に基づき、血液製剤の有効性及び安全性その他当該製品の適正な使用のために必要な事項について、患者又はその家族に対し、適切かつ十分な説明を行い、その理解を得るよう努めなければならない。
 薬事法第68条の9第3項及び第4項4)に基づき、特定生物由来製品の使用の対象者の氏名、住所その他必要な事項について記録を作成し、保存(20年)することが必要である。

 輸血前後の感染症検査の実施(輸血用血液製剤について)
 医療機関は受血者(患者)に対して輸血前後の感染症検査を「輸血療法の実施に関する指針」2)(以下「指針」という。)のVIIIの4及び5の規定(別紙1)に従って検査を行う※註1
 なお、検査の疑陽性結果、潜在ウイルスの活性化等の有無を確認するため、輸血前後の受血者(患者)血漿(清)の再検査を行うことがあるので、
(1) 輸血前1週間程度の間の受血者(患者)血漿(清)
及び
(2) 輸血後3か月程度の血漿(清)
についても保管しているものがあれば、日本赤十字社に提供し、調査に協力すること(院内採血の場合は除く)。
 この際の保管条件は、分離血漿又は交差適合試験等で使用した血清あるいは血漿(血球と分離)を1ml程度、-20℃以下で3か月以上可能な限り保管することが望ましい。

(1)  医療機関で血液製剤による感染が疑われた場合(医療機関発)

 副作用感染症報告(速報)の届け出
 医療機関は(1)輸血前後に指針に則って行った検査結果が陽転した場合又は(2)血漿分画製剤投与前後の感染症検査結果等によって製剤を投与された患者に感染症が疑われた場合は、薬事法(昭和35年法律第145号)第77条の34)に基づき、日本赤十字社等の製造業者等※註4に対して、個人情報の保護に留意しつつ、当該患者に係る検査結果及び健康情報を提供するとともに、製造業者等の情報収集に協力するよう努めることが求められる。
 また、当該感染症等に関する情報が保健衛生上の危害発生又は拡大の防止のために必要と認めるときは、同法第77条の4の2第2項4)に基づき、厚生労働大臣(具体的には独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に副作用等の報告(以下「副作用感染症報告」という。)を行うことが必要である。
 なお、輸血用血液製剤を使用していた場合において指針に即した検査を行っていない場合は、当該検査を実施するよう努め、陽転が確認された場合は当該報告を行うものとする。一方、血漿分画製剤の使用によると疑われる感染事例であって、特段指針に準じた検査を行っていない場合は、患者保管検体がある場合は指針に準じた検査を行う又は製造業者等に検体を提供するよう協力することが望まれる。

 感染症が疑われた受血者(患者)等のフォロー
 感染症が疑われた当該受血者(患者)等に、その後、病状の変化等があったことを知った場合は、製造業者等に情報提供するよう努めることが必要である。

(2)  製造業者等から情報提供があった場合

 
情報提供のケース
<輸血用血液製剤>
医療機関発
 他の医療機関において副作用感染症報告が行われた製剤と同一供(献)血者由来※註5の輸血用血液製剤が当該医療機関に提供されていた場合
供血者発
 供血後の検査により病原体の感染が判明した(疑いを含む)供(献)血者から過去に採取された血液に由来する輸血用血液製剤が当該医療機関に提供されていた場合

<血漿分画製剤>
 遡及調査に伴い、当該製剤の製造後に個別NAT陽性となった血液が原料血漿に混入していたことが判明した場合であって、ウイルスの除去・不活化等に係る書類等の整備及び工程の改善及び原料プールを製造した際の検査に係る措置が適切に講じられない等の製造工程において当該ウイルスが十分に除去・不活化されることが確認できない場合のほか、その他の事情により感染症発生との因果関係が否定できない場合の当該製剤(ロットが同一のもの)が製造業者等から当該医療機関に提供されていた場合

 遡及調査に伴い、日本赤十字社等の製造業者等から医療機関へ情報提供があった場合、医療機関は以下の手順に従って対応する(「遡及調査に伴う日本赤十字社から医療機関への情報提供等について」5)参照)。

 対象製剤が未使用の場合
 対象製剤が未使用であることを日本赤十字社等の製造業者等に連絡し、回収させる。なお、緊急時の場合においては、患者の救命を優先させるものとする。

 対象製剤が使用されていた場合
(ア)  輸血前後の感染症検査が指針に基づいて行われている場合(血漿分画製剤の投与前後に、指針に対応するような感染症検査を実施している場合を含む)
(1)  患者が非陽転の場合
 対象製剤を輸血(又は投与)された患者に対して、輸血(又は投与)前後の感染症検査結果及び対象製剤が投与された事実を知らせる※註6とともに、その後も患者の健康状態について、少なくとも輸血(又は投与)後6か月間、患者の病態等必要に応じて引き続き、注意深くフォローアップすることが望まれる。
(2)  患者が陽転の場合
 対象製剤を輸血(又は投与)された患者に対し、検査結果及び対象製剤のリスク評価(別紙2)の結果を説明するとともに、必要に応じ適切な医療を提供する※註6

 また、日本赤十字社等の製造業者等に対して、個人情報の保護に留意しつつ、当該患者に係る検査結果及び健康情報を提供するほか、製造業者等の情報収集に協力するとともに、当該感染症等に関する情報が保健衛生上の危害発生又は拡大の防止のために必要と認める場合は、厚生労働省(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)に副作用感染症報告を行わなければならない。
 その後、当該患者に病状の変化等があったことを知った場合は、製造業者等に情報提供し、調査に協力することが望まれる。
 なお、輸血用血液製剤等については、陽転の場合は、患者から採取した輸血後血液1ml程度を、陽転判明後速やかに提供する(日本赤十字社保管の同製剤で個別NAT陽性が判明する前の場合を含む)。

(イ)  輸血前後の感染症検査が指針に基づいて行われていない場合(血漿分画製剤の投与前後に、指針に対応するような感染症検査を特段実施していない場合を含む)
 受血者(患者)に対し、対象製剤が投与された事実及び当該対象製剤のリスク評価(別紙2)の結果を説明するとともに、輸血用血液製剤の場合は指針に基づき、受血者(患者)の保管血液に係る輸血前後の感染症検査を速やかに実施し、その検査結果を説明すること。この際、コンタミネーションのないようにディスポーザブルのピペットを使用するなどの対応が望まれる。なお、検査後の対応は上記(ア)に準じて行う。
 なお、血漿分画製剤の使用による感染が疑われる場合であって患者保管検体がある場合は、当該医療機関において検査を実施するか、又はプライバシーを配慮した上で、当該検体を製造業者等に提供するよう努めるものとする。


6 日本赤十字社の対応

(1)  医療機関で輸血用血液製剤による感染が疑われた場合(医療機関発)

 日本赤十字社は、医療機関から情報提供(報告)があった場合、厚生労働省(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に副作用感染症報告(速報)を届け出るとともに、速やかに以下のア〜エを行う。

 供給停止又は回収及び医療機関等への情報提供
 感染拡大防止のため、当該輸血用血液製剤と同一の供血者に由来※註5する輸血用血液製剤等について、医療機関又は血漿分画製剤の製造業者への供給前であれば早急に供給を停止する※註7
 また、供給後であれば、当該輸血用血液製剤を供給した医療機関に対して、別紙3に示す情報提供を行う。なお、日本赤十字社保管の当該輸血用血液製剤に係る保管検体が全て個別NAT陰性の場合にも、医療機関への情報提供は書面で行うこととし、その対象は平成16年4月以降に日本赤十字社へ報告された事例に係るものとする。
 一方、血漿分画製剤の製造業者への情報提供は、同社保管の当該製剤等に係る保管検体で個別NAT陽性の場合に行うこととする。

(ア)  対象製剤が未使用の場合
<輸血用血液製剤>
 医療機関で使用前であれば早急に回収を行う。  この際、医療機関における輸血治療に支障を来さないよう、円滑に代替品を提供するよう努めるものとする。
<原料血漿>
 製造業者に対して、日本赤十字社保管の当該輸血用血液製剤に係る保管検体で個別NAT陽性であって製造前であれば早急に返送又は廃棄を依頼する※註8

(イ)  対象製剤が使用されていた場合
 当該医療機関において対象製剤が既に使用されていた場合、医療機関から当該受血者(患者)の輸血前後の検査結果及び健康情報の提供並びに患者の健康状態のフォローアップを依頼する。また、陽転の場合であって、医療機関において受血者(患者)の輸血後血液の個別NATを行っていない場合は当面日本赤十字社で実施し、同社保管の同製剤についても個別NAT陽性となった場合は、後述「イ(イ)塩基配列の確認」を行う。
 なお、これらの情報については速やかに厚生労働省(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)及び同一供血者由来※註5の血液を供給した全ての医療機関等に提供する。
 ただし、※註1に該当する場合は、指針に従った検査を行うよう依頼する。

 因果関係の確認
 原因究明、感染拡大防止等のため、該当する病原体に対して以下の検査等を行うとともに、当該結果を踏まえて速やかに厚生労働省(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)に副作用感染症報告(続報)を行う。
 なお、医療機関が指針に従って輸血前後の検査を実施していなかった場合は、当該医療機関に対し、指針に則り、保管している輸血前後の受血者(患者)血液(分離血漿又は交差適合試験等で使用した血清又は血漿で約1ml)の検査を実施するよう依頼することとする。
 この際、コンタミネーションのないようにディスポーザブルのピペットを使用するなどの対応が望まれる。

(ア)  輸血用血液製剤に係る保管検体の個別NAT
 日本赤十字社保管の当該輸血用血液製剤等に係る保管検体について個別NATを行う。

(イ)  塩基配列の確認
 上記(ア)が陽性であって、医療機関から入手した受血者(患者)の輸血後3か月程度の保管血液が個別NAT陽性の場合は、日本赤十字社保管の当該輸血用血液製剤等に係る保管検体と受血者(患者)保管血液(輸血後)の塩基配列を確認する。

 供(献)血者への事後検査依頼
 当該輸血用血液製剤の供(献)血者(再度供(献)血に来た者は除く)に対して、該当する病原体について受血者(患者)の感染原因の把握が必要であることを伝え、確認検査※註9を行うよう協力を依頼する。
 供(献)血者に協力依頼を行い、検査結果が得られたとき及びその後当該供血者が献血に訪れ検査結果が得られたときは、副作用感染症報告の続報として、速やかに厚生労働省(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)に報告する。

(ア)  依頼対象者
 指針に基づく陽転例に係る供血者であって、当面は受血者(患者)が重篤のHBV又はHCV感染例(劇症又は死亡を含む)の場合に限る。
 なお、HIVの取扱いについては、現在、日本赤十字社が供(献)血者に検査結果の通知を行っていないこと、供血者のプライバシーに配慮して原因を追及していないことなどから、今後、検査結果の通知の在り方を含めて血液事業部会安全技術調査会等で検討することとし、当面は対象から除外する。

(イ)  対象期間
 輸血用血液製剤の使用時期及び献血時期に関わらず、遡って依頼する。

(ウ)  供(献)血者に対する事前周知
 供(献)血者には当該検査実施に係る依頼に関して事前に周知しておくこと。

(エ)  留意事項
 協力依頼に際しては、当該検査の必要性(当該供(献)血者の早期治療、生物由来製品感染等被害救済制度※註10の適否判断及び感染拡大防止に資すること等)を十分説明するとともに検査の実施は供血者の同意を前提とする。
 また、供(献)血者の精神的負担及びプライバシー保護に十分配慮する必要がある。
 なお、以下のように、より慎重な対応が求められる場合がある。
(1)  供(献)血者が未成年者の場合、保護者の同意(又は配慮)を必要とする(当該者に対する協力依頼は極力、他の供(献)血者の調査が終了した上で必要があれば行うこととする。)。
(2)  供(献)血者が検査結果の通知を希望していない場合、検査協力依頼は行うが、結果通知を希望しない理由等に十分配慮の上、依頼する(本人の意思を尊重する。)。

 ガイドライン(日赤作成)の適用
 当該輸血用血液製剤等の供(献)血者の個別NAT陽性の場合は、ガイドライン(日赤作成)を適用する。


(2)  供(献)血者の検査結果から病原体の感染が判明し(疑いを含む)、供(献)血歴がある場合(供血者発)

 遡及調査の方法については、以下の手順に従って行うものとする(「遡及調査に伴う日本赤十字社から医療機関への情報提供等について」6)及びガイドライン(日赤作成)参照)。

[対応の前提]
 供血血液等の保管
 ガイドライン(日赤作成)に示す遡及調査措置がとれるよう、法令等の規定に基づき、供血血液及び原料血漿を保管するとともに、供(献)血者、輸血用血液製剤及び原料血漿に係る供給及び使用に関する記録等を保管することとする。

 過去の供血血液に係る個別NATの実施
 供(献)血者の検査結果から病原体の感染が判明した場合(疑いを含む)は、過去の供血血液を調査し、日本赤十字社が保管している当該検体の個別NATを実施する。
 なお、遡及調査期間は別紙4のとおり(ガイドライン(日赤作成)参照)。

 供給停止又は回収及び医療機関等への情報提供
 感染拡大防止のため、当該供血者に由来する輸血用血液製剤等について、医療機関又は血漿分画製剤の製造業者へ供給前であれば6(1)アの措置を講じるとともに、供給後であれば、当該輸血用血液製剤等を提供した医療機関又は血漿分画製剤の製造業者に対して、別紙3に示す情報提供を行う※註11
 なお、対象製剤が未使用の場合及び使用されていた場合については、それぞれ6(1)ア(ア)及び(イ)と同様にする。


7 血漿分画製剤の製造業者等の対応

 
[対応の前提]
 検体の保管
 遡及調査措置がとれるよう、法令等の規定に基づき、血漿分画製剤の製造に係る原料プール及び製剤(ロット)を保管するとともに、供給及び使用に関する記録等を保管すること。
 原料血漿を国内で使用し、製剤を製造する場合は、上記に準じて保管すること。
 なお、当該製造業者等以外の機関において保管することも可能とする。

 血漿分画製剤の製造前検査
 血漿分画製剤の製造前には、その原料血漿について、HBV、HCV及びHIVに係るNATを実施することとし、陽性となった場合は使用しないこと(なお、当該製造業者等以外の機関で実施していても構わないこと)。

 除去・不活化等に係る書類等の整備及び工程の改善
 製剤の製造工程において、ウイルスプロセスバリデーションを実施しておくこと。また、必要な書類等を整理・保存しておくこと。
 また、特にウイルスクリアランス指数が9未満の製剤は、早期にウイルスの除去・不活化工程について改善を図ること。

 原料プールを製造した際の検査
 原料プールを製造した際、当該プールについてNATを実施することとし、陽性となった場合は使用しないこと。また、当該NATの検出限界が100IU/mlの精度となるよう精度管理を行い、必要な書類等を保存しておくこと。

(1)  医療機関で血漿分画製剤による感染が疑われた場合(医療機関発)

 製造業者等は、医療機関から情報提供があった場合、厚生労働省(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)に副作用感染症報告(速報)を届け出るとともに、速やかに以下の対応を行う(「血漿分画製剤のウイルス安全対策について」7)(以下「4課長通知」という。)参照)。

 血漿分画製剤等に係る保管検体のNAT等の実施
 感染拡大防止、因果関係の確認等のため、製造業者等が保管している当該製剤に係る保管検体(上記前提に記載)について、該当する病原体のNATを行うとともに、医療機関において当該指針に従った検査を行っていない場合であって、患者保管血液がある場合は、当該医療機関が実施するか、又は医療機関が実施しない場合はプライバシーに配慮した上で検体を入手できるよう依頼し、製造業者等において指針に従った検査を実施する。
 また、厚生労働省又は独立行政法人 医薬品医療機器総合機構から、(1)患者の健康情報の収集、(2)同一ロットでの国内外の副作用感染症報告の状況、(3)医療機関及び製造業者等で行った検査精度及び検査結果の解釈などについて調査を依頼された場合は、速やかに調査することとする。
 なお、これらの検査及び調査結果については速やかに厚生労働省(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)に報告することとする。


(2)  供(献)血者の検査結果から病原体の感染が判明し(疑いを含む)、供(献)血歴がある場合(供血者発)

 製造業者等は、日本赤十字社等の原料血漿製造業者※註12から情報提供があった場合、当該供血者に由来する原料血漿について、日本赤十字社等の保管検体で個別NAT陽性であって製造前であれば早急に返送又は廃棄する※註8(4課長通知参照)。
 なお、以下の場合は、速やかに厚生労働省医薬食品局血液対策課へ報告すること。
(ア)  遡及調査等により原料血漿にNATで陽性となった血液の混入が判明した場合
(イ)  原料のプールを製造した際の検査でNAT陽性が判明した場合


(3)  前提3及び4に掲げる措置が講じられない等の場合(医療機関発及び供血者発)

 製造業者等は、医療機関から副作用感染症報告又は日本赤十字社等原料血漿製造業者から情報提供があった場合、速やかに以下の対応を行う(4課長通知参照)。

 供給停止又は回収及び医療機関等への情報提供
 遡及調査に伴い、製剤製造後に個別NAT陽性となった血液が原料血漿に混入していた場合であって、上記前提3及び4に掲げる措置が講じられない等製造工程において当該ウイルスが十分に除去・不活化されることが確認できない場合、又は当該製剤と感染症発生との因果関係が否定できない場合※註13には、感染拡大防止のため、当該製剤と同一ロットの製剤については、医療機関へ供給前であれば原則として、早急に当該製剤の供給を停止するとともに、供給後であれば、当該製剤を提供した医療機関に対して、別紙3に示す情報提供を行う。

(ア)  対象製剤が未使用の場合
 医療機関で使用前であれば早急に回収を行う※註14

(イ)  対象製剤が使用されていた場合
 当該医療機関において使用後であった場合、医療機関から当該患者に係る製剤投与前後の検査結果があれば当該結果及び健康情報の提供並びに健康状態のフォローアップを依頼する。
 なお、指針に対応するような感染症検査を行っていない場合であっても、患者保管検体がある場合は医療機関で検査を実施してもらうか、又はプライバシーを配慮した上で検体を当該製造業者等へ提供してもらうよう依頼する。
 これらの情報については速やかに厚生労働省(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)及び同一原料血漿由来の製剤を供給した他の医療機関に提供する。


8 その他関係者の対応

(1)  衛生検査所の対応
 指針における輸血前後の感染症検査には、医療機関における整備状況や費用面から院内で実施できない検査項目がある。特に、十分な標準化がなされていないと考えられるNAT及びHCVコア抗原検査にあっては、感度の向上及び統一を図る必要がある。
 したがって、今後、厚生労働省が中心となりコントロールサーベイを実施する必要があり、各衛生検査所はこれらの取組に協力すること。

(2)  国の対応
 副作用感染症報告に対する対応の検討
 医療機関及び製造業者等から厚生労働省(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)に副作用感染症報告(速報)があった場合、劇症化例や死亡例など重篤で緊急な対応が必要な事例は薬事・食品衛生審議会血液事業部会運営委員会を緊急開催し、今後の対応を検討するとともに、上記以外の例については定例会で状況を説明する。この際、個人情報の保護等に留意するものとする。

 コントロールサーベイの実施
 衛生検査所の協力を得て、指針に基づく輸血前後の感染症検査のうち、必要な検査項目についての感度向上及び標準化に努めるものとする。

(3)  供(献)血者の対応
 医療機関等から輸血用血液製剤に係る副作用感染症報告がなされた場合、日本赤十字社から当該輸血用血液製剤の供血者に対して、報告された病原体に係る感染の可能性があることを連絡し、確認検査を行うよう依頼を行うことがあるので、供血者は検査依頼に協力することが望まれる。


9 その他

(1)  本ガイドライン対象以外の病原体の取扱い

<輸血用血液製剤>
 ウイルス等
 医療機関発の遡及調査については報告のあった全てのウイルスに係る対応が、本ガイドライン対象病原体と同様に実施されている。
 供(献)血者発については、今後の実情にあわせて検討するが、近年我が国で問題になっているHEVについては、以下の対策が必要と考える。

HEVへの対応
 我が国における感染実態、体内動態は未だ解明されていない状況である一方、血液を介した感染症例は3例であり、重篤例が報告されていないことなどから、研究的・試行的な取組として、まずは感染率の高い北海道に限定して問診を強化するとともに、問診の結果、感染の可能性がある場合は全例NATを行うことにより、NAT陽性の者の血液を除外することとする。その上で供(献)血者発の遡及調査を試行的に実施する。
 なお、血小板製剤等保存期間が短く、検査結果判明前に医療機関へ提供してしまう場合は、その旨を医療機関へ情報提供するとともに、検査結果が判明した際には、当該検査結果について速やかに医療機関へ情報提供することとする。

 細菌
(ア)  医療機関の対応
(1)  使用済みバッグの冷蔵保存
 医療機関においては、輸血に使用した全ての「使用済みバッグ」に残存している製剤をバッグごと、清潔に冷蔵保存しておくことが望まれる(冷凍は不可)。
 なお、使用後数日経過しても受血者(患者)に感染症発症のない場合は廃棄しても差し支えないこととする。

(2)  受血者(患者)血液に係る血液培養の実施
 受血者(患者)の感染症発症後、輸血後の受血者(患者)血液による血液培養を行い、日本赤十字社に対して、当該患者に係る検査結果及び健康情報を提供するとともに、製造業者等の情報収集に協力するよう努めることが求められる。この際、冷蔵保存されていた全ての「使用済みバッグ」を提供することが必要である。
 また、当該感染症等に関する情報が保健衛生上の危害発生又は拡大の防止のために必要と認めるときは、厚生労働省(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に副作用感染症報告を行うことが必要である。
 その後、当該受血者(患者)に病状の変化等があったことを知った場合は、製造業者等に情報提供するよう努める必要がある。

(イ)  日本赤十字社の対応
 医療機関発の遡及調査については報告のあった全ての細菌に係る対応が、以下の確認検査を除き、本ガイドライン対象病原体と同様に実施されている。
 なお、医療機関において、受血者(患者)の血液培養を行っていなかった場合は、実施するよう依頼するか又は当該血液の提供を依頼し、日本赤十字社で血液培養を実施するものとする。

(1)  「使用済みバッグ」等に係る血液培養の実施
<「使用済みバッグ」の提供を受けた場合>
 日本赤十字社は、当該医療機関から「使用済みバッグ」の提供を受けた場合、公的検査機関及び必要に応じて第3者機関に血液培養の実施を依頼する。
<「使用済みバッグ」の提供を受けなかった場合>
 日本赤十字社は、当該製剤と同一供(献)血者に由来し、同時に採血された血漿を用い、公的検査機関及び必要に応じて第3者機関に血液培養の実施を依頼する。

(2)  菌型の同定
 血液培養の結果、両検体から同一の細菌が検出された場合は、遺伝子解析により、菌型の同定を行う。


なお、供(献)血者発の遡及調査は実施されていない。


<血漿分画製剤>
 供(献)血者発及び医療機関発のいずれの場合も、血漿分画製剤に係る遡及調査の実施は製造業者等により対応が異なるが、HAV、HEVのような被膜(エンベロープ)のないウイルス等の現在の技術では十分な除去・不活化が困難な病原体については、当該ガイドラインの対象ウイルスと同様の対応が必要と考えられる。
 今後、早急に対象ウイルスのNAT標準化(国内標準品の整備等)と十分な除去・不活化技術の開発が求められる。
 なお、ヒトパルボウイルスB19については、(1)日本赤十字社が原料血漿の製造段階でウイルス量の高いものを除外している、(2)当該検査を導入後、国内原料を用いた血漿分画製剤では、感染症が確認されていない、(3)抗体陽性者が多く、原料プールの段階で結果として失活してしまうと言われていることから、当面、遡及調査の対象としなくて良いと考える。



別紙1

「輸血療法の実施に関する指針」のVIIIの4及び5の規定


4. 輸血後肝炎
 本症は早ければ輸血後2〜3か月以内に発症するが、肝炎の臨床症状あるいは肝機能の異常所見を把握できなくても、肝炎ウイルスに感染していることが診断される場合がある。特に供血者がウインドウ期にあることによる感染が問題となる。このような感染の有無を見るとともに、早期治療を図るため、医師が感染リスクを考慮し、感染が疑われる場合などには、別表のとおり、肝炎ウイルス関連マーカー検査等を行う必要がある。
(別表)
  輸血前検査 輸血後検査
B型肝炎 HBs抗原
HBs抗体
HBc抗体
核酸増幅検査(NAT)
(輸血前検査の結果がいずれも陰性の場合、輸血の3か月後に実施)
C型肝炎 HCV抗体
HCVコア抗原
HCVコア抗原検査
(輸血前検査の結果がいずれも陰性の場合又は感染既往と判断された場合、輸血の1〜3か月後に実施)

5. ヒト免疫不全ウイルス感染
 後天性免疫不全症候群(エイズ)の起因ウイルス(HIV)感染では、感染後2〜8週で、一部の感染者では抗体の出現に先んじて一過性の感冒様症状が現れることがあるが、多くは無症状に経過して、以後年余にわたり無症候性に経過する。特に供血者がウインドウ期にある場合の感染が問題となる。受血者(患者)の感染の有無を確認するために、医師が感染リスクを考慮し、感染が疑われる場合などには、輸血前にHIV抗体検査を行い、その結果が陰性であれば、輸血後2〜3か月以降に抗体検査を行う必要がある。



別紙2

リスク評価


 日本赤十字社等製造業者等は、以下の(1)〜(4)に掲げる結果に基づき、対象製剤についてリスク評価を行う。
 (1)  対象製剤の原料となった血液の供血年月日及び当該血液にウイルス等が混入していること、又は、混入の可能性が判明した年月日
 (2)  対象製剤の原料となった血液について貴社が実施した病原微生物検査の種類及び検査結果
 (3)  対象製剤の原料となった血液を供血した後に供血していた場合は、当該血液についての病原微生物検査の検査結果
 (4)  遡及調査に伴い追加的に病原微生物検査を実施した場合は、その検査結果

 製造業者等のリスク評価に際しては以下の分類を参考に行う。
 ○ ウイルス等混入血液由来
 遡及調査の結果、個別核酸増幅検査で不適となった血液から製造された輸血用血液製剤及び血漿分画製剤。
 ○ ウインドウ期血液由来
 遡及調査の結果、ウインドウ期間内に採血されたことがほぼ確実な血液から製造された輸血用血液製剤及び血漿分画製剤。
 ○ ウインドウ期の可能性がある血液由来
 遡及調査の対象となった血液から製造された輸血用血液製剤及び血漿分画製剤のうち、「ウイルス等混入血液由来」及び「ウインドウ期血液由来」以外のもの。

 医療機関は製造業者等が提供する以下に示す「病原微生物検査に関連する技術的基礎情報」を踏まえてリスク評価の結果を確認する。
(1)  病原微生物検査の内容に関する情報
 各病原微生物検査の内容(検査法の名称、原理等)に関する情報。
(2)  ウインドウ期に関する情報
 各病原微生物検査のウインドウ期の期間及び科学的根拠に関する情報。
(3)  病原微生物検査の精度に関する情報
 各病原微生物検査の精度に関する情報。なお、以下の情報を付記すること。
 各病原微生物検査の感度、特異性に関する情報。
 次に掲げる各病原微生物検査の検出限界に関する情報
(ア)  検出限界
(イ)  核酸増幅検査については、使用しているプローブの種類(キットの試薬の場合はキット名)、入手先、ジェノタイプへの対応等
(ウ)  血清学的検査については、検査方法、使用している抗体の種類(キットの試薬の場合はキット名)、入手先等
 次に掲げる各病原微生物検査の再現性に関する情報
(ア)  標準品における再現試験結果等
(4)  留意点
 上記情報については、論文等による一般的な情報に基づく数値等ではなく、当該製造業者等で実施している病原微生物検査における数値等を示すこと。なお、当該製造業者等においてこのような数値等を有しない情報については論文等を示すことも差し支えない。また、科学的根拠に基づかない情報、客観的事実でない情報、誇大な表現については、厳に慎まれたい。



別紙3

「製造業者等が医療機関等へ提供する情報について」


 遡及調査に至った経緯に関する情報
 医療機関に納入された血液製剤等が、ウインドウ期に採取された可能性のある血液を原料としていることが判明したこと。

 対象となる血液製剤等に関する情報
対象製剤に係る以下の情報。
(1)  名称
(2)  製造番号、医療機関への納入年月日、納入数量
(3)  対象製剤の原料となった血液の供(献)血年月日及び当該血液にウイルス等が混入していること、又は、混入の可能性が判明した年月日
(4)  対象製剤の原料となった血液について製造業者等が実施した病原微生物検査の種類及び検査結果
(5)  対象製剤の原料となった血液を供(献)血した後に供(献)血していた場合は、当該血液についての病原微生物検査の検査結果
(6)  遡及調査に伴い追加的に病原微生物検査を実施した場合は、その検査結果

 危惧される具体的な健康被害に関する情報
(1)  上記2の(3)〜(6)に掲げる結果に基づき、対象製剤について当該製造業者等がリスク評価(別添1参照)を行った結果。
(2)  医療機関が当該製造業者の実施したリスク評価の結果を確認できるよう、別添2に規定する当該製造業者における病原微生物検査に関連する技術的基礎情報。

 当該製造業者等担当者に関する情報
 当該製造業者等において医療機関との連絡の窓口となる担当者の氏名、連絡先等



(別添1)

遡及調査における感染リスクの評価について


 対象製剤について、以下の分類を参考にリスク評価を行うものとする。

 ウイルス等混入血液由来
 遡及調査の結果、個別NATで不適となった血液から製造された血液製剤等。

 ウインドウ期血液由来
 遡及調査の結果、ウインドウ期間内に採血されたことがほぼ確実な血液から製造された血液製剤等。

 ウインドウ期の可能性がある血液由来
 遡及調査の対象となった血液から製造された血液製剤等のうち、「ウイルス等混入血液由来」及び「ウインドウ期血液由来」以外のもの。



(別添2)

供(献)血血液について日本赤十字社が実施する
病原微生物検査に関する技術的基礎情報


 病原微生物検査の内容に関する情報
 各病原微生物検査の内容(検査法の名称、原理等)に関する情報。

 ウインドウ期に関する情報
 各病原微生物検査のウインドウ期の期間及び科学的根拠に関する情報。

 病原微生物検査の精度に関する情報
 各病原微生物検査の精度に関する情報。なお、以下の情報を付記すること。
(1)  各病原微生物検査の感度、特異性に関する情報。
(2)  次に掲げる各病原微生物検査の検出限界に関する情報
 検出限界
 NATについては、使用しているプローブの種類(キットの試薬の場合はキット名)、入手先、ジェノタイプへの対応等
 血清学的検査については、検査方法、使用している抗体の種類(キットの試薬の場合はキット名)、入手先等
(3)  次に掲げる各病原微生物検査の再現性に関する情報
 標準品における再現試験結果等

 留意点
 上記情報については、論文等による一般的な情報に基づく数値等ではなく、当該製造業者等で実施している病原微生物検査における数値等を示すこと。なお、当該製造業者等においてこのような数値等を有しない情報については論文等を示すことも差し支えない。また、科学的根拠に基づかない情報、客観的事実でない情報、誇大な表現については、厳に慎まれたい。



別紙4

遡及調査期間


 病原体はその種類によって生体内での増殖速度、ウインドウ期間、検査法によって陽性になる期間がそれぞれ異なる。
 したがって、病原体の種類及び検査法による陽性時期等に基づいて遡及調査期間を設定した。

病原体 50プールNAT陽転時 血清学的検査陽転時
HBV
(1) HBc抗体(EIA法等)が検出された場合
可能な限り過去に遡り、保管検体の個別NATが陰性と判定されるまですべての輸血用血液、原料血漿を遡及する。
(2) HBc抗体(EIA法等)が検出されない場合
遡及期間は125日以内とする。遡及期間内の過去の直近(前回)及び前回から過去92日以内のすべての輸血用血液、原料血漿を遡及する。
(1) HBc抗体のみが陽転した場合
可能な限り過去に遡り、保管検体の個別NATが陰性と判定されるまですべての輸血用血液、原料血漿を遡及する。
(2) HBs抗原またはHBs抗原とHBc抗体が陽転した場合
可能な限り過去に遡り、過去の直近(前回)及び前回から過去92日以内のすべての輸血用血液、原料血漿を遡及する。
HCV 遡及期間は192日以内とする。
遡及期間内の過去の直近(前回)及び前回から過去50日以内のすべての輸血用血液、原料血漿を遡及する。
可能な限り過去に遡り、過去の直近(前回)及び前回から過去50日以内のすべての輸血用血液、原料血漿を遡及する。
HIV 可能な限り過去に遡り、過去の直近(前回)及び前回から過去58日以内のすべての輸血用血液、原料血漿を遡及する。 可能な限り過去に遡り、過去の直近(前回)及び前回から過去58日以内のすべての輸血用血液、原料血漿を遡及する。

 当該遡及のほか、研究的に必要な調査を行い、2年を目途に見直し、審議会に諮ることとする。
 なお、医療機関からの感染情報に基づく保管検体の調査で、個別NAT陽性となった場合は、50プールNAT陽転時の前回血液と同様に取扱う。



脚註の説明


※註1  医療機関が当該指針に従って輸血前後の検査を実施していない場合は、輸血前後の受血者(患者)血液(分離血漿又は交差適合試験等で使用した血清あるいは血漿(血球と分離)で約1ml)を当分の間、-20℃以下で可能な限り保存することとし、日本赤十字社から検査依頼があった場合には当該指針に従って検査を行うこと。
 この際、コンタミネーションのないようにディスポーザブルのピペットを使用するなどの対応が望まれる。

※註2  頻回受血者(患者)の場合、3か月に1回程度を目安に実施することが望まれる。なお、年余にわたって輸血を受けると予想される患者には、HBワクチンの実施が望ましい。

※註3  検査項目の中には核酸増幅検査(以下「NAT」という。)等外注が必要なものもあることから、衛生検査所における感度及び特異度の確認も求められる(7(1)及び(2)イ参照)。

※註4  製造業者、輸入販売業者及び販売業者

※註5  同時採血分に限る。

※註6  患者の対応においては以下のことに留意すること。
<輸血用血液製剤>
 一般的に輸血用血液製剤は、現在の科学水準の下では技術的にウイルス等の混入による感染のリスクを完全には排除できないこと。同時に院内感染など輸血以外の原因もあり得ること。
 患者に対する輸血前後の感染症検査については、指針に従い実施すること。なお、当該検査の診療報酬の請求に当たっては、輸血を実施した日時を診療報酬明細書に記載するなど、実施の理由を明確にするよう留意すること。

<血漿分画製剤>
 現在の血漿分画製剤については、その原材料である血液についてミニプールでNATを実施し、ウイルスのDNA又はRNAが検出されないことを確認したものを使用しているが、当該ミニプールNATの検出限界以下のウイルスが混入している可能性が常に存在する。
 しかし、既知のエンベロープを有するウイルス、特に今回対象となっている病原体に対しては、平成15年10月24日に開催された平成15年度第3回血液事業部会における検討結果を踏まえ、製造工程においてウイルスクリアランス指数9以上であれば十分な除去・不活化処理がなされていると考えられていること。

※註7  原料血漿については保管検体の個別NATで陰性と判明した時点で、供給を再開する。

※註8  血漿分画製剤の製造業者等に供給後であっても、当該ウイルスに係るウイルスクリアランス指数が9以上である製剤(ロット)については、当該ウイルスが十分に除去・不活化されているとみなし、当面は個別の分離血漿の段階にある原料血漿を除き、当該製剤(ロット)を回収する必要はないこととする。
 ただし、原料のプールを製造した際、実施したNATで陽性となった場合は使用しないことととする。この際、国内標準品等を利用して、原料プールでのNATの感度を評価すること。

※註9
 HBV関連検査 HBV-DNA、HBs抗原・HBc抗体・HBs抗体検査
 HCV関連検査 HCV-RNA、HCV抗体検査
 また、陽転が認められた場合の検査として、ウイルスの相同性検査の実施が考えられる。

※註10  血液製剤等の生物由来製品については、最新の科学的知見に基づく安全対策を講じたとしても感染症を伝播するおそれを完全には否定できないことを踏まえ、生物由来製品を介した感染等による健康被害について、民事責任とは切り離し、製造業者等の社会的責任に基づく共同事業として、迅速かつ簡便な救済給付制度が平成16年4月1日から創設された。今後、生物由来製品を介した感染等による健康被害の迅速な救済を図るため、各種の救済給付を行う8)

※註11  原料血漿に係る個別NATの結果判明前の情報について、製剤送付後相応の期間を超えた場合は、製造業者等に対して提供しない。

※註12  国内製造原料血漿以外の輸入原料血漿及び輸入製剤の場合を含む。

※註13  このような場合には、速やかに厚生労働省医薬食品局安全対策課に報告すること。

※註14  薬事法に基づく回収報告は本ガイドラインに関わらず別途行うものとする。



参考資料


1)  「血液製剤の遡及調査について」(平成16年7月30日付け薬食安発第0730006号、薬食監麻発第0730001号、薬食血発第0730001号通知(参考1(PDF:64KB))

2)  平成16年9月17日付け薬食発第0917005号医薬食品局長通知「血小板製剤の使用適正化の推進及び「輸血療法の実施に関する指針」の一部改正について」(参考2(PDF:81KB))
 平成11年6月10日付け医薬発第715号。

3)  「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(平成15年7月30日施行)第8条及び第9条並びに基本方針第6項及び第7項(参考3(PDF:18KB))

4)  薬事法(昭和35年法律第145号)第77条の3及び4の2(参考4(PDF:11KB))

5)  平成15年7月30日薬食安発第0730005号、薬食監麻発第0730002号、薬食血発第0730002号通知(参考5(PDF:21KB))

6)  平成15年7月30日薬食安発第0730004号、薬食監麻発第0730001号、薬食血発第0730001号通知(参考6(PDF:17KB))

7)  平成15年11月7日付け薬食審査発第1107001号、薬食安発第1107001号、薬食監発第1107001号、薬食血発第1107001号(参考7(PDF:19KB))

8)  生物由来製品感染等被害救済制度(参考8(PDF:21KB))

9)  Bull Johns Hopk Hosp, 68, 269-79, 1941, Duration of inf-ectivity of Treponema pallidum in dcitrated blood stored
 under conditions obtaining in boold banks

10)  白血球除去血液成分製剤の工程バリデーションと工程管理のための実務ガイドライン:国際輸血学会(ISBT)Biomedical Excellence for Safer Transfusion(BEST)作業部会報告

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