厚生労働省

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日本人の食事摂取基準について

平成17年度から平成21年度の5年間使用する「日本人の食事摂取基準(2005年版)」は、平成16年10月25日(月)に「日本人の栄養所要量−食事摂取基準−策定検討会」(座長:田中平三 独立行政法人国立健康・栄養研究所理事長)においてとりまとめられた。

食事摂取基準とは
食事摂取基準は、健康な個人または集団を対象として、国民の健康の維持・増進、エネルギー・栄養素欠乏症の予防、生活習慣病の予防、過剰摂取による健康障害の予防を目的とし、エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示すものである。
保健所、保健センター、民間健康増進施設等において、生活習慣病予防のために実施される栄養指導、学校や事業所等の給食提供にあたって、最も基礎となる科学的データである。


見直しのポイント
生活習慣病予防に重点をおき、以下の栄養素について新たな指標「目標量」を設定した。
 ・増やすべき栄養素
  食物繊維、n-3系脂肪酸、カルシウム、カリウム
 ・減らすべき栄養素
  コレステロール、ナトリウム(食塩)
 ・脂質については、脂肪エネルギー比率のみならず、その質も考慮する必要があり、飽和脂肪酸、n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸、コレステロールについても策定した。

平成16年11月22日
健康局総務課生活習慣病対策室
栄養指導係(内2344,2345)



日本人の食事摂取基準(概要)



1.策定の目的
 食事摂取基準は、健康な個人または集団を対象として、国民の健康の維持・増進、エネルギー・栄養素欠乏症の予防、生活習慣病の予防、過剰摂取による健康障害の予防を目的とし、エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示すものである。

2.使用期間
 使用期間は、2005年4月(平成17年度)から2010年3月(平成21年度)までの5年間とする。

3.策定方針
1)基本的考え方
 食事摂取基準の策定にあたっては、科学的根拠に基づいた策定を行うことを基本とし、国内外の学術論文並びに入手可能な学術資料を活用することとした。
 食事摂取基準は、3つの基本的な考え方に基づいて策定されている。
 (1)エネルギー及び栄養素の「真」の望ましい摂取量は個人によって異なり、また個人内においても変動する。そのため、健康の維持・増進と欠乏症予防にとって「真」の望ましい摂取量は測定することが非常に困難であるので、望ましい摂取量の算定においても、活用においても、栄養学のみならず確率論的な考え方が必要であること。
 (2)生活習慣病の予防を特に重視し、このことに対応するために、「摂取量の範囲」を示し、その範囲に摂取量がある場合には生活習慣病のリスクが低いとする考え方を導入すること。
 (3)それ以上の摂取量になると、過剰摂取による健康障害のリスクが高くなってくることを明らかにすること。

2)設定指標
 食事摂取基準(Dietary Reference Intakes)として、エネルギーについては1種類、栄養素については5種類の指標を設定した。
【エネルギー】
○推定エネルギー必要量(estimated energy requirement: EER)
 エネルギーの不足のリスク及び過剰のリスクの両者が最も小さくなる摂取量
 【栄養素】
 健康の維持・増進と欠乏症予防のために、「推定平均必要量」と「推奨量」の2つの値を設定した。しかし、この2指標を設定することができない栄養素については、「目安量」を設定した。また、生活習慣病の一次予防を専ら目的として食事摂取基準を設定する必要のある栄養素については、「目標量」を設定した。過剰摂取による健康障害を未然に防ぐことを目的として「上限量」を設定した。
○推定平均必要量(estimated average requirement: EAR)
 特定の集団を対象として測定された必要量から、性・年齢階級別に日本人の必要量の平均値を推定した。当該性・年齢階級に属する人々の50%が必要量を満たすと推定される1日の摂取量である。
○推奨量(recommended dietary allowance: RDA)
 ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97〜98%)が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量である。原則として「推定平均必要量+標準偏差の2倍(2SD)」とした。
○目安量(adequate intake: AI)
 推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量である。
○目標量(tentative dietary goal for preventing life-style related diseases: DG)
 生活習慣病の一次予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量(または、その範囲)である。
○上限量(tolerable upper intake level: UL)
 ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量である。

図1 推定エネルギー必要量を理解するための模式図
図1 推定エネルギー必要量を理解するための模式図
 習慣的な摂取量が増加するにつれて、不足のリスクが減少するとともに、過剰のリスクが増加することを示す。両者のリスクがもっとも少なくなる摂取量が推定エネルギー必要量である。

図2 食事摂取基準の各指標(推定平均必要量、推奨量、目安量、上限量)を理解するための模式図
図2 食事摂取基準の各指標(推定平均必要量、推奨量、目安量、上限量)を理解するための模式図
 不足のリスクが推定平均必要量では0.5(50%)あり、推奨量では0.02〜0.03(中間値として0.025)(2〜3%または2.5%)あることを示す。上限量以上を摂取した場合には過剰摂取による健康障害が生じる潜在的なリスクが存在することを示す。そして、推奨量と上限量とのあいだの摂取量では、不足のリスク、過剰摂取による健康障害が生じるリスクともにゼロ(0)に近いことを示す。
 目安量については、推定平均必要量ならびに推奨量と一定の関係を持たない。しかし、推奨量と目安量を同時に算定することが可能であれば、目安量は推奨量よりも大きい(図では右方)と考えられるため、参考として付記した。
 目標量については、推奨量または目安量と、現在の摂取量中央値から決められるため、ここには図示できない。

3)年齢区分
0〜5か月、6〜11か月、1〜2歳、3〜5歳、6〜7歳、8〜9歳、10〜11歳、12〜14歳、15〜17歳、18〜29歳、30〜49歳、50〜69歳、70歳以上。
妊婦、授乳婦。
第6次改定からの変更点:学校給食基準との整合性から6〜8歳、9〜11歳を6〜7歳,8〜9歳、10〜11歳に変更した。

4)策定栄養素等
エネルギー、たんぱく質、脂質(総脂質、飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸、コレステロール)、炭水化物、食物繊維、
水溶性ビタミン:ビタミンB、ビタミンB、ナイアシン、ビタミンB、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンC
脂溶性ビタミン:ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンK
ミネラル:マグネシウム、カルシウム、リン
微量元素:クロム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、亜鉛、セレン、ヨウ素
電解質:ナトリウム、カリウム

4.基本的な活用方法
 食事摂取基準の用途は、「摂取量を評価(アセスメント)するため」(表1)と、「栄養計画(プランニング:栄養指導計画、給食計画等を含む)を立案するため」(表2)の2つに大別される。
 なお、エネルギー摂取量の評価・判定は、BMI(Body Mass Index)を指標とし、モニタリングは体重を指標にして行う。また、計画においては、エネルギー摂取量を制限することにより、栄養素の不足を招来させる可能性が生じてくるため、エネルギー消費量、すなわち身体活動の増加も併せて計画することが望ましい。

 表1 栄養素摂取量の評価(アセスメント)を目的として食事摂取基準を用いる場合の概念(エネルギーは除く)1-3
  個人を対象とする場合 集団を対象とする場合
推定平均
必要量
(EAR)
習慣的な摂取量が推定平均必要量以下の者は不足している確率が50%以上であり、習慣的な摂取量が推定平均必要量より低くなるにつれて不足している確率が高くなっていく。 習慣的な摂取量が推定平均必要量以下の者の割合は不足者の割合とほぼ一致する。
推奨量
(RDA)
習慣的な摂取量が推定平均必要量以上となり推奨量に近づくにつれて不足している確率は低くなり、推奨量になれば、不足している確率は低い(2.5%)。 用いない。
目安量
(AI)
習慣的な摂取量が目安量以上の者は、不足している確率は非常に低い。 集団における摂取量の中央値が目安量以上の場合は不足者の割合は少ない。摂取量の中央値が目安量未満の場合には判断できない。
目標量
(DG)4
習慣的な摂取量が目標量に達しているか、示された範囲内にあれば、当該生活習慣病のリスク6は低い。 目標量に達していない者の割合、あるいは、示された範囲外にある者の割合は、当該生活習慣病のリスク6が高い者の割合と一致する。
上限量
(UL)5
習慣的な摂取量が上限量以上になり、高くなるにつれて、過剰摂取に由来する健康障害のリスク6が高くなる。 習慣的な摂取量が上限量を上回っている者の割合は、過剰摂取による健康障害のリスク6をもっている者の割合と一致する。
1摂取量に基づいた評価(アセスメント)はスクリーニング的な意味をもっている。真の栄養状態を把握するためには、臨床情報、生化学的測定値、身体計測値が必要である。
2調査法や対象者によって程度は異なるが、エネルギーでは5〜15%程度の過小申告が生じやすいことが欧米の研究で報告されている。日本人でも集団平均値として8%程度の過小申告が存在することが報告されている。また、特に、肥満者で過小申告の傾向が強いが、その量的関係は明らかではない。栄養素についてもエネルギーと類似の申告誤差の存在が推定されるが詳細は明らかではない。
3習慣的な摂取量をできるだけ正しく推定することが望まれる。
4栄養素摂取量と生活習慣病のリスクは、連続的であるので、注意して用いるべきである。「リスクが高い」「リスクが低い」とは、相対的な概念である。
5上限量が設定されていない栄養素が存在する。これは、数値を決定するための科学的根拠が十分に存在していないことを示すものであって、多量に摂取しても健康障害が発生しないことを保障するものではない。
6 ここでいう「リスク」とは、生活習慣病や過剰摂取によって健康障害が発生する確率のことを指している。

表2 栄養計画を目的として、栄養素に関する食事摂取基準を用いる場合の概念(エネルギーは除く)1
  個人を対象とする場合 集団を対象とする場合
推定平均
必要量
(EAR)
用いない。 習慣的な摂取量が推定平均必要量以下である者の割合を2.5%以下にすることをめざす。
推奨量
(RDA)
習慣的な摂取量が推定平均必要量以下の者は推奨量をめざす。 用いない。
目安量
(AI)
習慣的な摂取量を目安量に近づけることをめざす。 集団における摂取量の中央値が目安量になることをめざす。
目標量
(DG)2
習慣的な摂取量を目標量に近づけるか、または、示された範囲内に入るようにめざす。 習慣的な摂取量が目標量に達していないか、示された範囲外にある者の割合を減らす。
上限量
(UL)3
習慣的な摂取量を上限量未満にする。 習慣的な摂取量が上限量以上の者の割合をゼロ(0)にする。
1栄養アセスメント(食事摂取量のみならず、生化学的指標、身体計測値など)に基づいて、対象に応じた計画を立案し、実施することが重要である。数値は実現しなければならないものではない。なお、計画立案の基になる栄養摂取量評価(アセスメント)はスクリーニング的な意味をもっている。真の栄養状態を把握するためには、臨床情報、生化学的測定値、身体計測値が必要である。
2栄養素摂取量と生活習慣病のリスクは、連続的であるので、注意して用いるべきである。「リスクが高い」「リスクが低い」とは、相対的な概念である。ここでいう「リスク」とは、生活習慣病や過剰摂取によって健康障害が発生する確率のことを指している。
3上限量が設定されていない栄養素が存在する。これは、数値を決定するための科学的根拠が十分に存在していないことを示すものであって、多量に摂取しても健康障害が発生しないことを保障するものではない。

5.使用にあたっての留意点
1)食事摂取基準を適用する対象は、主に健康な個人、ならびに、健康人を中心として構成されている集団とする。ただし、何らかの軽度な疾患(例えば、高血圧、高脂血症、高血糖)を有していても日常生活を営み、当該疾患に特有の食事指導、食事療法、食事制限が適用されたり、推奨されたりしていない者を含むこととする。
2)食事摂取基準として用いられている単位は「1日当たり」であるが、これは習慣的な摂取量を1日当たりに換算したものである。
3)栄養指導、給食計画等に活用する際、基本的には、エネルギー、脂質、たんぱく質、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC、カルシウム、鉄、ナトリウム、食物繊維について考慮するのが望ましい。
4)推奨量、目安量、目標量については、日常の食生活において、通常の食品によってバランスのとれた食事をとることにより満たすことが基本である。
5)上限量については、通常の食品による食事で一時的にこの量を超えたからといって健康障害がもたらされるものではない。
6)高齢者では、咀嚼能力の低下、消化・吸収率の低下、運動量の低下に伴う摂取量の低下などが存在する。特に、これらは個人差の大きいことが特徴である。また、多くの人が、何らかの疾患を有していることも特徴としてあげられる。そのため、年齢だけでなく、個人の特徴に十分に注意を払うことが必要である。

6.食事摂取基準
 別添のとおりである。


※印刷用PDFファイルは、こちらから御覧になれます。
  概要PDF:41KB)
  別添(PDF:128KB)


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