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第7章 企業年金の安定化と充実

 厚生年金基金制度については、免除保険料率の凍結解除等により持続可能な展望を示すとともに、一方で解散を希望する財政状況の厳しい基金について解散時の特例措置を設ける。
 確定給付企業年金制度等の給付建て制度についても、雇用の流動化により対応できるよう、ポータビリティの確保を図る。
 公的年金の改革にあわせ、拠出限度額の引上げ等、確定拠出年金制度の改善を図る。

1.厚生年金基金関係

(1)免除保険料率の凍結解除等

 <免除保険料率の引上げ>


  ○ 将来の代行給付に必要な免除保険料率については凍結を解除し、直近の平均寿命、厚生年金本体の予定運用利回りの見通し、平成12年改正後の代行範囲に基づいて見直し、設定する。 〔現行:平均2.8%→平均3.7%程度(見込)〕

 ○ 免除保険料率の上下限については、平均的な免除保険料率の動向、上下限を超える基金の状況、上下限のバランス等を考慮し、見直しを行う。 〔現行:2.4%〜3.0% → 2.4%〜5.0%程度(見込)〕
 経過的給付分の取扱い
 将来加入期間について発生する経過的給付分(乗率千分の5.481超部分・60歳代前半部分)は、免除保険料の対象外とし、給付時に厚生年金本体から政府負担金として対応する。

 <過去加入期間分への対応及び最低責任準備金の在り方

  ○ 予定利率、平均寿命の見直しにより、過去加入期間についての給付債務の増大が生じるが、これについては、最低責任準備金が代行給付現価の1/2を下回った場合、この下回った部分の1/5を各年度に財源手当する。

 ○ 最低責任準備金(過去加入期間に対応するものとして各基金が代行給付のために保有すべきもの。解散時や代行返上時には返還)については、給付債務の増大に対し部分的にしか対応できないことや、厚生年金本体との財政中立性の観点、現行との接続性から、現在行われている過去法に基づく方式で算定する。

 現在行われている過去法に基づく方式
平成12年改正での免除保険料率凍結に伴い導入されたもので、平成11年9月時点の最低責任準備金をベースに、以降の免除保険料収入を加え代行給付の支出を控除し、厚生年金本体の運用利回りの実績により付利するもの。なお、上記の財源手当も収入として算定する。この方式によれば、本体財政と完全に財政中立的である(凍結以降は、本体にいたのと同じであり、利子率、死亡率も本体との間で自動的に調整される。)。

(2)厚生年金基金の解散の特例措置

 <納付方法の特例(分割納付)及び納付額の特例>


  ○ 解散時に最低責任準備金を確保していなくとも解散を認め、不足分については分割納付を認める。 〔分割納付は原則5年以内。厚生年金本体の運用利回りで付利〕

 ○ 下記の要件を満たす厚生年金基金については、仮に当該基金の加入員が当初から厚生年金本体のみに加入していれば厚生年金本体において形成されていたであろう積立金(当該基金の資産額がこれを上回る場合には当該現有資産額)を解散時の納付額とすることを認める。

 分割納付の納付計画
  納付計画を事前に作成させ、厚生労働大臣の承認を要するものとする。

 納付額特例の対象基金の要件
 これまでの運営努力
相応の掛金の徴収(適正な掛金の徴収、免除保険料率以上の掛金水準(上乗せ分補正後)が全基金平均超)や給付設計見直し(一時金停止、給付減額)を考慮。

 今後の運営の困難性
成熟度、代行コスト、母体企業(業種)の経営状況等を考慮。

 国への移換
  特例措置による最低責任準備金及び給付義務の移換先は、通常の解散ケースと異なり、上乗せ部分の移換がないこと、分割納付の場合長期の徴収が必要なこと等から、国とする。

 特例措置の期限
  本特例措置は、3カ年の時限措置(施行から3年以内の申請)とする。

2.確定給付企業年金関係(ポータビリティの確保)

 <厚生年金基金・確定給付企業年金間の相互の移動及び確定拠出年金への移動>

  ○ 厚生年金基金(厚生年金基金連合会を含む)・確定給付企業年金間で、あらかじめ規約で資産移換できる旨定めている場合には、加入者の申出により、資産移換を行えるものとする。

 ○ 厚生年金基金(厚生年金基金連合会を含む)・確定給付企業年金から、加入者の申出により企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金へ資産移換を行えるものとする。

 <確定給付企業年金の中途脱退時及び制度終了時の年金化>

  ○ 確定給付企業年金の中途脱退時及び制度終了時について、加入者の申出により厚生年金基金連合会で引受を行い、年金として受給できる途を開く。

3.確定拠出年金関係[税制改正関係][具体的要望は別添参照]

 <拠出限度額の引上げ>

  ○ 公的年金制度の改革に合わせて、確定拠出年金の普及を図るために、公的年金の給付水準の見直し、長期的な運用利回りの低下傾向を踏まえ、拠出限度額の引上げを図る。

 <中途脱退時の要件緩和>

  ○ 確定拠出年金は、年金としての老後保障を目的とすることから、中途脱退を制限しているが、資産が少額の場合は運営管理手数料等で資産が減少する状況にあることから、中途脱退の要件の緩和を図る。


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