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1. 年金制度を取り巻く社会経済環境

《高齢期の所得保障の主柱としての公的年金》

 公的年金は、高齢期の所得保障の主柱として国民生活に欠くことのできない極めて重要な役割を果たしている。

 公的年金の受給者は2,858万人、年間給付総額は39兆4,479億円に上る(平成12(2000)年度末)。また、高齢者の所得の中で公的年金の占める比率は約6割となっており、さらに、公的年金が収入のすべてである世帯は高齢者世帯の約6割を占めている。

《平成12年改正による少子・高齢化への対応》

 この公的年金制度について、少子・高齢化の進行に対応するため、平成12年改正では、将来の給付水準を適正化し、高齢化のピーク時の現役世代の保険料負担を、現在のヨーロッパ諸国並みである年収の2割程度に抑制した。

《更なる少子・高齢化の進行、経済状況の低迷等と年金財政の悪化》

 しかしながら、平成14(2002)年1月の新人口推計によると、少子・高齢化が一層進んでいる。少子・高齢化の一層の進行が年金財政に及ぼす影響を最終保険料(率)で見た場合、新人口推計の中位推計で1割5分程度(高位推計で5分程度、低位推計で2割5分〜3割程度)引き上げなければならないと見込まれる。

 また、1990年代に入って以降、我が国経済は停滞を続け、経済成長率や賃金上昇率は近年大幅に低下している。さらに、雇用情勢も悪化し、失業率が上昇し、厚生年金被保険者は近年減少してきている。

 受給者の増加による年金給付費の増加の一方、平成12年改正における保険料引上げ凍結や景気の低迷等による保険料収入の伸び悩みにより、年金財政は悪化している。現状のまま推移すれば、高齢化の入口段階にもかかわらず、近いうちに積立金を取り崩さざるを得ない。

《年金制度への不安感、不信感の広がり》

 また、若い世代を中心として現役世代の年金制度に対する不安感、不信感の広がりが見られるが、これは揺るがせにできない問題であり、その解消が求められている。

《女性の社会進出、就業形態の多様化等》

 さらに、女性の社会進出や就業形態の多様化に伴い雇用構造が変化する中で、働く意欲を持つ者が多様な形で働き、その能力を発揮できるとともに、そのことが年金制度上も評価され、それに応じて老後の自立生活を支える年金が充実していく方向が求められている。

《平成16年の年金改革の必要性》

 このような状況の変化に対応して、公的年金制度が老後生活の支えにふさわしい価値のある年金を保障するという役割を今後とも果たすことができるよう、次期財政再計算が予定される平成16年に年金制度の改革を行うことが必要である。

《欧米先進諸国においても同様の取組》

 なお、欧米先進諸国においても、近年における少子・高齢化の進行と経済の低迷の中で、各国とも年金制度を安定したものとするため、年金改革を進めている(スウェーデン(1999年)、ドイツ(2001年)等)。


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