Ministry of Health, Labour and Welfare

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「人口減少社会」に対応できる企業を目指して

〜多様就業型ワークシェアリングの取組方法〜

厚生労働省

(労働力人口の減少と各企業への影響)

急激な少子高齢化に直面している我が国では、労働力人口は既に減少に転じており、2007年以降にいわゆる団塊の世代が定年を迎えることで、さらなる減少が見込まれます。

また、団塊の世代の引退に加え、バブル崩壊後の長期不況期において若年労働力を十分に採用してこなかったこと等により、今後、技能の継承や人材確保のための対応を迫られる企業も増加することが予想されます。

(各企業における対応策)

各企業においてこうした問題に対応するためには、高齢者、女性などのうちこれまで働いていなかった方々を含めて、誰もが意欲と能力に応じて働ける職場環境を整備することが重要です。こうした職場環境の整備により、有能な人材の職場への定着や新たな人材確保を容易にし、企業の競争力を高めることも期待できます。

「多様就業型ワークシェアリング」の推進も、そのための取組の一つです。

次ページ以降では、働きやすい職場環境を整備し良質の人材を確保するため、今後、各企業において人事労務管理全般についての見直しを行う上で参考になると考えられる具体的な取組を、テーマごとに取り上げますので、各企業の置かれた実情に応じ、ご活用ください。

(多様就業型ワークシェアリングとは)
短時間勤務や隔日勤務など、多様な働き方の選択肢を拡大することについて社会全体で取り組むワークシェアリングです。
照会先
厚生労働省政策統括官付労働政策担当参事官室政策第二係、企画第二係 電話 03(5253)1111(内線7719、7723)

厚生労働省ホームページ:https://www.mhlw.go.jp/


長時間労働の解消等

−従業員の自己啓発、健康維持等の時間を確保し、将来性のある企業経営を可能にしたい事業主のみなさんへ−

(メリット)

長時間労働の解消やさらなる労働時間の短縮を進めること等により、従業員の心身の健康維持に努め、仕事と生活のバランスがとれた働きやすい環境を作るとともに、働き盛りの従業員が余暇を利用して一層の能力向上を図ることが可能になります。

(考えられる取組例)

交代制勤務の変更による所定内労働時間の短縮、定年を迎える従業員の継続雇用等による他世代従業員の所定外労働の削減、年次有給休暇の取得促進等

(企業実例)

A病院
・従業員全体の労働時間を短縮するために、作業を行う体制等を工夫し高齢者の雇用を進めることで、高齢者、現役世代の双方に利点が生じ、さらに質の高い介護の提供が可能になった。
B社(印刷)
・残業時間を削減するために、変形労働時間制の採用や中堅管理職の指揮管理能力の向上等を行い、従業員の士気及び生産性向上を図った。
C社(外食)
・24時間営業店舗における社員の深夜、早朝勤務を大幅に削減するために、深夜・早朝に勤務可能な高齢者の募集・採用を行ったところ、多数の応募があり、地域の雇用創出にも貢献。

人材の育成

−働き盛りの従業員のより一層の能力向上を図り、将来性のある企業経営を可能 にしたい事業主のみなさんへ−

(メリット)

グローバル化や技術革新により、働く者に求められる能力の変化が予想される中、働き盛りの従業員にあえて自己啓発の時間等を確保し一層の能力向上を図ることにより、従業員の能力の陳腐化を防ぎ、市場の変化に対応した将来性のある企業経営が可能になります。

(考えられる取組例)

企業内における労働者のキャリア形成の効果的な促進のため、目標が明確化された職業訓練の実施、自発的な職業能力開発の支援、職業能力評価の実施等。

(企業実例)

D社(電気)
・50歳台の従業員をリストラせず会社に貢献してもらうために多様な働き方を整備。自己啓発のための休職や社内公募制、本人の希望による社内兼職、FA制度等を導入。
E社(電気)
・高度な知識や経験を持つ人材を育成するため、自己啓発など私生活の充実を求める従業員を支援する短時間勤務制度を導入。週当たりの勤務時間を8〜6割に短縮(1日の勤務時間短縮又は週3〜4日勤務)。

(利用可能な支援制度)

キャリア形成促進助成金
(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/d01-1.html)
→ 詳しくは、独立行政法人雇用・能力開発機構の都道府県センターまで。
企業内における労働者のキャリア形成の効果的な促進のため、目標が明確化された職業訓練の実施、自発的な職業能力開発の支援又は職業能力評価の実施を行う事業主に対して助成する制度。
教育訓練給付金
(制度概要 http://www.kyufu.javada.or.jp/kensaku/T_M_shikyu#a、支給申請手続き https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/anteikyoku/kyouiku/index.htm)
→ 詳しくは、最寄りのハローワークまで。
一定の条件を満たす雇用保険の一般被保険者(在職者)または一般被保険者であった人(離職者)が、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講し修了した場合、本人が教育訓練施設に支払った教育訓練経費(入学料・受講料)の一定割合に相当する額を本人に支給。
  • 支給要件期間(※)が5年以上 教育訓練経費の40%(上限20万円)
  • 支給要件期間(※)が3年以上 教育訓練経費の20%(上限10万円)

(※)「支給要件期間」とは、教育訓練を開始する日までの通算した雇用保険被保険者であった期間のこと。なお、過去に教育訓練給付金の支給を受けたことがある場合は、支給に係る教育訓練を開始した日前の期間は、支給要件期間には算入されない。

(注) 平成19年10月1日以降に受講を開始した方は、次のとおりとなります。
 (1) 支給率は、支給要件期間3年以上で一律20%(上限10万円)に一本化。
 (2) 初めて制度を利用する方に限り、当分の間、支給要件期間1年以上で受給可能。


仕事と家庭との両立支援等

−有能な人材を長期に確保したいと考えている事業主のみなさんへ−

(メリット)

仕事と家庭との両立や自己啓発等が可能となるような取組を行うことにより、有能な人材の職場への定着や人材確保を可能にし、企業の運営の効率性を高めることができます。

(考えられる取組例)

育児・介護のための短時間勤務制度の導入、短時間正社員制度の導入、在宅勤務制度の導入 等

(企業実例)

F社(情報)
・社内メールの積極的活用により不在時の出来事も含めた関係者間での情報共有を可能にし、無駄なミーティングの削減等により、短時間勤務しやすい環境を整備。
G社(電器)
・育児・介護に限らず、社員が仕事と家庭の両立を図れるような多様な勤務形態を整備。短時間勤務制度を希望する社員は、週当たりの勤務時間を8〜6割に短縮又は週3〜4日勤務の4つの勤務条件から選択可能。
・社内ITインフラの充実により在宅勤務制度を導入。
H社(小売)
・意欲と能力のある人材の活用を図るため、パートタイム労働者の本格的な基幹労働力化を推進。従来の正社員とパートタイム労働者の雇用区分を廃止し、勤務形態(フルタイム又はパートタイム)と異動範囲(転宅可能かどうか)の違いによって契約区分を4つに分ける等により、社員の配置、育成と処遇を統合。

(利用可能な支援制度)


若年従業員の育成・確保

−次世代を担う従業員の育成・確保による企業の競争力強化を考えている事業主のみなさんへ−

(メリット)

若年者を従業員として受け入れたり、仕事を通じた実践能力の蓄積を図る機会を提供することにより、企業の技術技能を継承し、次世代を担う若年労働者の育成・確保が可能となり、将来性のある企業経営が可能になります。

(考えられる取組例)

(企業実例)

I社(製造)
・60歳以上高齢パート社員の採用による、若手従業員に対する技術技能の伝承や多能化教育を実施。

(利用可能な支援制度)

試行雇用奨励金(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/c02-1.html)
→ 詳しくは、最寄りのハローワークまで。
・ハローワークからの紹介により、職業経験、技能、知識等の不足などから就職が困難な35歳未満の求職者を一定期間試行(トライアル)雇用した場合、対象者1人につき月額4万円(最大3ヶ月)を支給。また、平成18年度より新たに長期若年無業者等を対象に、短時間勤務による試行雇用事業を実施。
若年者雇用促進特別奨励金 → 詳しくは、最寄りのハローワークまで。
・25歳以上35歳未満の不安定就労の期間が長い若年者等の安定した雇用を促進するため、トライアル雇用終了後に、当該労働者を雇用期間の定めのない労働契約により継続して雇用する事業主に対し、若年者雇用促進特別奨励金を支給(※)。(平成21年度までの制度)
※ 25歳以上30歳未満は20万円を、30歳以上35歳未満は30万円を常用雇用移行後、半年経過ごとに半額ずつ支給。

高年齢者の活用

−高年齢者の継続雇用等による企業の競争力強化を考えている事業主のみなさんへ−

(メリット)

豊富な経験と能力の蓄積のある高年齢者が企業で活躍することにより、他の従業員にノウハウが引き継がれ企業の競争力強化を図ることができます。

(考えられる取組例)

高年齢者の新規雇入、継続雇用、定年延長等。
設備改良によるバリアフリー化の推進。

(企業実例)

J社(電気・ガス)
・60歳定年以降の雇用機会の確保・創出のため、(1)週3日勤務で概ね2人で1人分の業務を担当する、(2)55歳以降週4日勤務で兼業を認める、(3)定年後に独立開業し会社から業務委託を受ける、等のコースを設定し多様な働き方を整備。
K社(小売)
・定年の65歳への引上げに合わせて、50歳以上の従業員が(1)フルタイムで働き、実力次第で管理職に就ける、(2)フルタイムの8〜6割の短時間勤務、のいずれかを選択することができる制度を導入
L社(製造)
・人件費の圧縮を図りつつ工場の稼働率を高めるため、土日に勤務する60歳以上高齢パート社員を新たに雇い入れ、低コスト・短納期という顧客ニーズに対応。就労意欲のある高齢者を有効活用しつつ、地域の雇用創出にも貢献。
・高齢パート社員による若手従業員への技術技能の伝承や多能化教育を実施。

(利用可能な支援制度)


(参考)緊急対応型ワークシェアリングについて

− 一時的な雇用過剰感に直面しつつも、社員の雇用を維持しつつ問題の解決を図りたいと考えている事業主のみなさんへ −

ワークシェアリングには、1ページでご案内した「多様就業型ワークシェアリング」のほか、「緊急対応型ワークシェアリング」があります。

緊急対応型ワークシェアリングとは、個々の企業において一時的な生産量等の減少に伴い余剰人員が発生した場合、当面の緊急的な措置として、労使の合意により、生産性の維持・向上を図りつつ、雇用を維持するため、所定労働時間の短縮とそれに伴う収入の減額を行うものです。

(メリット)

従業員の雇用の維持を図ることにより、例えば次のような効果が期待できます。

(実施する場合の留意事項)

(企業実例)

M社(半導体製造)
・業界における急速な業績悪化への対応策として、期間限定で週3休制を導入。この間、余剰となった時間を活用し、若手従業員の多能工化を目的とした研修等、従業員の能力開発を通じた生産性向上策を考案し、実施。
N社(製造)
・業績の悪化に対応するため、生産部門を対象に期間限定で、1日当たり労働時間の短縮又は週当たり労働日数の削減を行う仕組みを労使協定により制度化。
O社(製造)
・生産量の減少に対応するため、期間限定で、工場の間接部門に在籍する55歳以上の従業員を対象に1日当たりの労働時間を7時間に短縮し、給与を時間比例で削減。
P社(情報通信)
・交代制勤務の班直体制を組み替えることにより、緊急避難的に労働時間短縮を実施し、雇用の維持を実現。

(利用可能な支援制度)

緊急対応型ワークシェアリング導入に向けての具体的な方法については、都道府県労働局ワークシェアリング推進本部あてお問い合わせください。


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