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第4章 援助

第4章   援助
第1節   援助の種類
(1)  児童相談所が子どもや保護者等に対して行う援助には表−4に掲げるものがある。援助を行う場合には、子どもや保護者等に、その理由、方法等について十分説明し、子どもや保護者等の意見も聴き行う。
(2)  行政処分としての措置を行う場合には、保護者等は行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第5条(児童相談所長が措置を行った場合の都道府県等に対する審査請求)又は第6条(都道府県等が措置を行った場合の都道府県等に対する異議申し立て)に基づき不服申立てを行うことができる。なお、行政処分としての措置を書面で行う場合には、行政不服審査法第57条により保護者等に対し、不服申立ての方法等について教示しなければならない。行政処分としての措置は、原則として文書により通知する。
(3)  子どもを家庭裁判所の児童自立支援施設又は児童養護施設送致の保護処分決定によって、これらの児童福祉施設に入所させる場合には、これに対する不服申し立ては保護処分決定に対する抗告(少年法第32条)によることになり、この旨は家庭裁判所において決定言渡し時に教示される。(少年審判規則第35条第2項)
(4)  児童相談所が行う指導には、措置によらない指導及び法第26条第1項第2号、第27条第1項第2号に基づく措置による指導がある。
 
第2節   在宅指導等
1. 措置によらない指導
(1)  助言指導
ア   助言指導とは、1ないし数回の助言、指示、説得、承認、情報提供等の適切な方法により、問題が解決すると考えられる子どもや保護者等に対する指導をいう。
イ   助言指導は、子どもや保護者等の相談内容を十分理解し、必要な資料の収集等を行い、予測し得る経過について十分見通しを立てて行う。
ウ   助言指導は、対象、目的、効果等を考慮し、電話、文書、面接等適切な方法を工夫し行う。
エ   助言指導は児童福祉司、相談員、児童心理司、医師等の職員によって行われるが、必要に応じ、他の職員と十分協力する。
オ   助言指導を行う際は、子どもや保護者等の精神的、身体的状態等を十分考慮し、現実的かつ具体的な指導を行う。
カ   電話により助言指導を行う際は、その長所及び限界に十分留意し、場合によっては、面接等の方法をとる。
キ   助言指導を行った場合は、その内容を児童記録票に記載し、援助方針会議等において確認を受けるとともに、その効果について、必要に応じ追跡することが適当である。
(2)  継続指導
ア   継続指導とは、複雑困難な問題を抱える子どもや保護者等を児童相談所に通所させ、あるいは必要に応じて訪問する等の方法により、継続的にソーシャルワーク、心理療法やカウンセリング等を行うものをいう。この中には集団心理療法や指導キャンプ等も含まれる。
イ   継続指導を行う場合には、判定会議、援助方針会議においてその必要性、方法及び担当者等について慎重に検討する。なお、施設入所中の子どもの保護者への継続指導についても、法第27条第1項第3号の措置に併せて行うことを検討する。
ウ   心理療法及びカウンセリングを行う場合には、医師との連携に留意し、それぞれの原理や留意事項にのっとり行う。
エ   担当者の決定は指導の目的、経過等により適切に行う。
オ   継続指導の経過は児童記録票に記載し、指導終結の際は指導の効果についてチ−ムで協議するとともに、援助方針会議で十分な検討を行う。
(3)  他機関あっせん
[1]   他の専門機関において、医療、指導、訓練等を受けること並びに母子家庭等日常生活支援事業を利用する等関連する制度の適用が適当と認められる事例については、子どもや保護者等の意向を確認の上、速やかに当該機関にあっせんする。なお、この場合あっせん先の機関の状況を子どもや保護者等に十分説明する。
[2]   他機関あっせんを行う場合には、電話であっせん先に連絡をとる等利用者の利便を十分図り、指導に万全を期する。また、あっせん後においてもあっせん先と十分な連携を図る。
[3]   他の児童相談所への移管が必要と認められる場合は、移管先の児童相談所と十分協議し、原則として文書により移管する。
 
2. 措置による指導 
(1)  児童福祉司指導
ア   児童福祉司指導は、複雑困難な家庭環境に起因する問題を有する子ども等、援助に専門的な知識、技術を要する事例に対して行う。
イ   児童福祉司指導は、子どもや保護者等の家庭を訪問し、あるいは必要に応じ通所させる等の方法により、継続的に行う。また、担当者は児童福祉司が中心となるが、必要に応じ他の職員も参加する等柔軟な対応をとる。
ウ   児童福祉司指導を行う場合には、市町村、福祉事務所、児童委員その他関係機関との連携を十分に図る。場合によっては児童委員指導等と併せて行うことも考慮する。
エ   児童福祉司指導の場合には、指導を担当する児童福祉司の氏名等及びその指導に付する旨を子どもや保護者等に通知する。
オ   特別養子縁組希望者であって里親委託を希望しない場合には、児童福祉司指導を行うことを考慮する。
(2)  児童委員指導
ア   児童委員指導は、問題が家庭環境にあり、児童委員による家族間の人間関係の調整又は経済的援助等により解決すると考えられる事例に対して行う。
イ   児童委員指導とする場合には、指導を担当する児童委員の氏名等及びその指導に付する旨をあらかじめ子どもや保護者等に十分説明し、その同意を得た上で行うことを原則とし、児童委員指導を決定したときは、当該児童委員及び保護者等にその旨通知する。
ウ   児童委員指導を行う場合には、児童相談所長は指導担当児童委員に、その指導について参考となる事項を詳細に連絡する。
エ   児童委員が当該措置の解除、停止又は変更を適当と認めた場合には、速やかに児童相談所長にその旨意見が述べられるよう体制を整えておく。
オ   児童委員指導を行う場合には、当該地区を担当する児童福祉司は、指導の経過報告を求め必要な援助等を行う等、当該児童委員と連携を十分に図る。場合によっては、児童福祉司指導を併せて行う。
カ   主任児童委員は、児童委員の中から選任されることから、児童委員としての職務を行い得るものである。この旨が平成16年児童福祉法改正法により明確化されたところであり、指導担当児童委員を選任する際には、主任児童委員をはじめ、問題解決に最適と考えられる者を選任する。
(3)  児童家庭支援センター指導
ア   児童家庭支援センター指導は、地理的要件や過去の相談経緯、その他の理由により児童家庭支援センターによる指導が適当と考えられる事例に対して行う。
イ   児童家庭支援センター指導とする場合には、あらかじめその指導に付する旨を子どもや保護者等に十分説明し、その同意を得た上で行うことを原則とし、児童家庭支援センター指導を決定したときは、当該児童家庭支援センター及び保護者等にその旨通知する。
ウ   児童家庭支援センター指導を行う場合には、児童相談所は児童家庭支援センターに、指導について参考となる事項を詳細に指示するとともに、児童家庭支援センターが的確な援助計画を作成できるよう助言を行うなど、指導の一貫性・的確性が確保できるよう努める。
エ   児童家庭支援センターが当該措置の解除又は変更を適当と認めた場合には、速やかに児童相談所にその旨意見が述べられるよう体制を整えておく。
オ   児童家庭支援センター指導を行う場合には、児童家庭支援センターの指導の経過報告を求めるとともに、必要な指示、援助等を行う等、児童家庭支援センターと連携を十分に図る。場合によっては、児童福祉司指導を併せて行う。
(4)  知的障害者福祉司指導、社会福祉主事指導
ア   知的障害者福祉司指導又は社会福祉主事指導は、問題が知的障害に関するもの及び貧困その他環境の悪条件等によるもので、知的障害者福祉司又は社会福祉主事による指導が適当な場合に行う。
イ   これらの場合には、法第26条第1項第3号に基づき福祉事務所に送致する形式をとる。
ウ   その他知的障害者福祉司指導又は社会福祉主事指導に関することについては、児童委員指導に準ずる。
(5)  障害児相談支援事業を行う者の指導
障害児相談支援事業を行う者の指導は、障害児及びその保護者であって地理的要件や過去の相談経緯、その他の理由により障害児相談支援事業を行う者による指導が適当と考えられる事例に対して行う。
(6)  保護者等に対する指導について
ア   法第27条第1項第3号の措置により施設に入所している子どもの保護者に対する指導については、従来、家庭訪問や児童相談所等への招致により家庭状況の確認や家族関係についての指導などを実施してきたところであるが、特に虐待を行った保護者等への指導については、法第27条第1項第3号の措置に加え、児童虐待防止法第11条の規定により、法第27条第1項第2号の措置による指導(以下「保護者指導」という。)を併せて行うことを検討する。
保護者指導は、親子の再統合への配慮その他の児童虐待を受けた子どもが良好で家庭的環境で生活するために必要な配慮の下に適切に行わなければならない。
イ   この場合において保護者が当該指導を受けないときは、都道府県知事等は、当該保護者に対し、当該指導を受けるよう勧告を行うことができることとされており、保護者指導の実効性を確保する観点から、当該勧告の活用について積極的に検討すべきである。
なお、都道府県知事等が、児童虐待を受けた子どもについて、施設入所等の措置の解除の可否を判断するに際しては、保護者に対する指導を行うこととされた児童福祉司の意見を聴くこととされている。
ウ   都道府県等から法第28条の規定による措置に関する承認の申立てがあった場合、家庭裁判所は、都道府県等に対し、期限を定めて、その申立てに係る保護者に対する指導措置に関し報告及び意見を求め、又は当該申立てに係る子ども及びその保護者に関する必要な資料の提出を求めることができることとされており、家庭裁判所からこうした求めがあった場合には、迅速かつ適切な審判に向けて協力すべきである。
また、家庭裁判所は、法第28条の規定による措置に関する承認の審判をする場合において、当該措置の終了後の家庭その他の環境の調整を行うため当該保護者に対し指導措置を採ることが相当であると認めるときは、当該保護者に対し、指導措置を採るべき旨を都道府県等に勧告することができることとされており、家庭裁判所からこうした勧告が行われた場合には、これを踏まえて保護者指導を行うことが必要である。
こうした勧告を行うか否かは、家庭裁判所の判断によるが、児童相談所としてこうした勧告が効果的であると判断する場合には、家庭裁判所への審判の申立時にその旨の意見を述べることが適当である。この場合、予定している保護者指導措置の内容とこれにより期待される効果などについても、併せて提出することが必要である。
 
3. 訓戒、誓約措置
訓戒、誓約措置は子ども又は保護者に注意を喚起することにより、問題の再発を防止し得る見込みがある場合に行い、養育の方針や留意事項等を明確に示すよう配慮する。
 
第3節   里親
1. 里親制度の意義
里親制度の意義は、家庭での養育に欠ける子ども等に、その人格の完全かつ調和のとれた発達のための暖かい愛情と正しい理解をもった家庭を与えることにより、愛着関係の形成など子どもの健全な育成を図ることであり、児童相談所はその趣旨を十分理解し、本制度の積極的活用に努める。
特に、父母が死亡した子どもや、父母が長期にわたって行方不明である子ども等については、里親委託措置を積極的に検討する。
 
2. 里親の種類
里親の種類は、養育里親、親族里親、短期里親及び専門里親とする。
(1)  養育里親は、保護者のない子ども又は保護者の監護させることが不適当であると認めれる子どもを養育する里親 
(2)  親族里親は、要保護児童の三親等内の親族であり、両親その他その子どもを現に監護するものが死亡、行方不明又は拘禁等の状態となった子どもを養育する里親 
(3)  短期里親は、1年以内の期間を定めて、要保護児童を養育する里親
(4)  専門里親は、2年以内の期間を定めて、要保護児童のうち、児童虐待等の行為により心身に有害な影響を受けた子どもを養育する里親
 
3. 里親の認定、登録
(1)  里親の申込みがあった場合、児童相談所長は直ちに児童福祉司等をその家庭に派遣し又は福祉事務所長若しくは児童委員に調査委嘱を行う等の方法により調査を行い、その適否について援助方針会議において十分検討し、関係書類を添付して都道府県知事等に送付する。 
(2)  児童相談所長(都道府県知事等から権限を委任されている場合)は、養育里親、短期里親、専門里親から登録申請があったときは里親名簿に登録しなければならない。
なお、養育里親、短期里親の登録の有効期間は5年であり、専門里親の登録の有効期間は2年であるが、登録の更新も可能である。
 
4. 里親による職業指導
(1)  平成16年児童福祉法改正法により保護受託者が廃止された際に、併せて、「里親の認定等に関する省令」に定める一定の要件を満たす里親は受託児童に対し職業指導も行うことができることとなった。
(2)  里親による職業指導は、あくまでも子どもの自立を支援することを目的として行われなければならず、職業指導の名を借りた子どもの労働力搾取がなされるようなことがあってはならない。したがって、児童相談所としては、職業指導を行う里親の認定や里親による職業指導を実施するかどうかの判断等を慎重に行うことはもちろん、里親が職業指導を行う場合には、こまめに職場を訪問するなどして子どもが置かれている状況等を常に把握し、子どもが里親や職場の他の者から不当な扱いを受けることのないよう十分注意する。
 
5. 子どもの委託
(1)  里親に子どもを委託する場合においては、子どもや保護者等の意向、意見を十分尊重しつつ子どもの最善の利益を確保する観点から、これまで育んできた人間関係や地域環境への配慮などケアの連続性の確保に配慮したその子どもに最も適合する里親の選定に努める。また、委託する里親との事前の連携を十分図り、子どもの安定化が順調に行われるよう十分配慮する。
(2)  里親に子どもを委託する場合において、子どももしくはその保護者の意向が児童相談所の方針と一致しない等の場合は、法第27条第3項、第28条第1項第1号又は2号ただし書きの規定により採るものを除き、都道府県児童福祉審議会の意見を聴取しなければならない(令第32条)が、その手続き等については、第3章第7節「都道府県児童福祉審議会への意見聴取」による。
(3)  里親に子どもを委託する際は、子どもや保護者に十分説明を行うとともに、委託しようとする里親の氏名、居住地及び委託中の費用に関する事項について告知する。
(4)  虚弱な子ども、身体障害の子ども、知的障害の子ども等の場合には、知識、経験を有する等それらの子どもを適切に養育できると認められる里親を選定する。
(5)  里親に委託されている子どもの保護がより適切に行われると認められる場合には、子どもに通所施設の指導訓練を受けさせることができる。
(6)  養育里親、短期里親又は専門里親の家庭において同時に養育される子どもの総数は、委託された子どもと実子の数を合計して6人を超えることができないこと。また、専門里親が同時に養育する委託された子どもの人数は2人を超えることができないこと。
(7)  子どもを里親に委託した場合においては、里親に対し、措置決定通知書及び自立支援計画に加え、委託の理由や経緯、子どもや保護者の態様や必要とする援助の内容等、里親がその子どもの養育を適切に行うために必要な資料を送付する。
(8)  委託後、何らかの事情で他の里親へ委託するなど、措置の内容を変更する場合には、子どもにとって精神的負担が大きく、心的外傷体験になる危険性があることから、子どもへの影響に十分配慮しつつ行うことが必要である。
 
6. 里親委託を推進するための取組
「里親委託推進事業」の実施により、児童相談所に「里親委託推進員」を配置するとともに、「里親委託推進委員会」を設け、児童相談所、乳児院等の施 設及び里親との連携を図りつつ、次のような事業を行うことにより、施設から 里親への子どもの委託を総合的に推進する。
(1)  地域での里親委託の目標を設定する。
(2)  未委託の里親に対し、子どもの委託に関する意向調査を行う。
(3)  施設行事の活用や施設職員OBやボランティア登録者への働きかけ等により、里親候補者の掘り起こしを行う。
(4)  乳児院等の施設に措置した子どものうち、里親委託を目指すべき子どもを特定する。
(5)  未委託里親を含め、里親体験(トライアル里親)を通して、里親になるための動機付けを行う。
 
7.里親の支援
(1)  支援担当者は、定期的に訪問するなどにより、「里親が行う養育に関する最低基準」が遵守され、適切な養育が行われるよう子どもの養育について必要な支援を行うこと。特に委託直後は、手厚い支援が必要であり、訪問による子どもの状態の把握や養育に関する里親からの具体的な相談に応ずるなど積極的に支援すること。
(2)  児童相談所長は、里親への支援に関して、支援担当者に必要な助言を行うこと。
(3)  支援担当者は、訪問等により里親に対し支援した事項を児童相談所長に報告し、必要があれば、都道府県知事等に報告すること。
(4)  支援担当者は、子どもの養育に関して必要な支援を行ったにもかかわらず、里親がこの支援に従わない場合は、児童相談所長を経て、都道府県知事等に意見を添えて報告すること。
(5)  児童相談所長は、連絡先の教示など子どもが児童相談所に相談しやすい体制の整備に努めること。
(6)  支援担当者は定期的に子どもの保護者と連絡をとるなど、子どもの家庭復帰が円滑に行われるよう努めること。
(7)  平成16年児童福祉法改正法により、里親についても、児童福祉施設の長と同様に、監護・教育・懲戒に関し子どもの福祉のため必要な措置を採れることが明確化されたが、懲戒に関する権限については、あくまでも子どもの健全な育成のために認められているものであり、決して濫用されるようなことがあってはならない。
もとより、里親は、委託されている子どもに対して、児童虐待防止法に規定する児童虐待その他子どもの心身に有害な影響を与える行為をしてはならないものであり、また、里親から虐待を受けた子どもは、児童虐待防止法第6条の通告の対象となるものである。
委託されている子どもやその保護者から、懲戒に関する権限の濫用や虐待等の訴え等があったときや児童虐待防止法に基づく通告を受けたときには、客観的事実の把握に努め、事実に基づく対応をしなければならない。
その際、その子どもの最善の利益に配慮して適切なケアを行うこととし、必要に応じてその子どもの一時保護、措置変更を行うとともに、養育上の問題について里親に対し技術的助言、指導を行う。また、再発防止の観点から、必要に応じて里親に対する指導権限を有する本庁と連携を図りつつ対応することが必要である。
なお、都道府県等が行った指導又は助言について、「里親が行う養育に関する最低基準」第13条第2項により、里親は必要な改善を行わなければならないことが明示されている。
 
8. 里親を支援するための主な取組
里親の専門性の確保や精神的負担の軽減などを図るために次のような支援を行う。
(1)  里親の一時的な休息のための援助(レスハ°イト・ケア)の実施について委託されている子どもを養育している里親家庭が一時的な休息のための援助を必要とする場合には、乳児院、児童養護施設または他の里親を活用してその子どもの養育を行う。
(2)  里親支援事業
[1]   里親研修事業
基礎研修と専門里親研修の実施
[2]   里親養育相談事業
委託されている子どもの適切な養育を行うためには、支援が必要であり、里親(家族を含む)に対して、委託児の養育や里親自身等に関する相談を実施すること
[3]   里親養育援助事業
里親(家庭)の負担を軽減するため、訪問による生活援助(家事や養育の補助など)や相談援助(軽度な養育相談など)を実施する。
[4]   里親養育相談援助事業
里親が児童相談所等に集い、里親相互の交流により、里親の精神的負担の軽減を図る。
 
9. 都道府県等間の連絡
(1)  他の都道府県等に居住する里親に子どもを委託しようとする場合には、当該都道府県等に子どもに関する必要な書類を送付して、その子どもに適合する里親のあっせんを依頼する。
依頼を受けた都道府県等は、適当な里親を選定し、その里親に関する必要な書類を、依頼した都道府県等に送付し、里親にその旨を通知する。
書類の送付を受けた都道府県等は、適当と認められる場合は、その書類に基づいて委託を行う。
(2)  里親に委託する適当な子どもがいない場合は、里親に関する必要な書類を他の都道府県等に送付することが望ましい。この場合、里親にその旨を通知する。
書類の送付を受けた都道府県等が、その里親に対し子どもを委託しようとする場合は、その書類に基づいて行う。
(3)  都道府県等が子どもを委託した里親が当該都道府県等に居住していない場合又は他の都道府県等に住所の移転を行った場合は、関係書類を送付して、里親の居住地の都道府県等に当該里親の援助を依頼するとともに、里親にその旨を連絡する。この場合、里親は居住地の都道府県等の指導監督に服する。
(4)  援助を依頼された都道府県等が里親委託の措置に影響を及ぼすと認める事実を知った場合は、直ちに子どもを委託した都道府県等にその旨を連絡する。
 
10. その他
里親委託等については、本指針に定めるほか、次の通知等による。
[1]   平成14年厚生労働省令第115号「里親の認定等に関する省令」  
[2]   平成14年厚生労働省令第116号「里親が行う養育に関する最低基準」
[3]   平成14年9月5日雇児発0905001号「里親の認定等に関する省令」及び「里親が行う養育に関する最低基準」について        
[4]   平成14年9月5日雇児発0905002号「里親制度の運営について」
[5]   平成14年9月5日雇児発0905004号「養子制度等の運用について」
[6]   平成14年9月5日雇児発0905005号「里親支援事業の実施について」
[7]   平成14年9月5日雇児発0905006号「里親の一時的な休息のための援助の実施について」
[8]   平成18年4月3日雇児発0403001号「里親委託推進事業の実施について」
 
第4節   児童福祉施設入所措置、指定医療機関委託
1. 措置の決定等
(1)  児童福祉施設又は指定医療機関(以下この節において「児童福祉施設等」という。)への入所措置又は委託(以下この節において「措置」という。)は、一般に「相談〜調査・診断〜判定〜(一時保護)〜援助〜終結」と続く一連の相談援助活動の一環であり、慎重な判定に基づき行う。
(2)  入所型の児童福祉施設等への措置については、子どもを家庭から引き離して新しい環境に置くので、これまで育んできた人間関係や地域環境への配慮などケアの連続性の確保に配慮するとともに入所期間を定める等適切な対応を行う。
また、保護者への指導を継続して行う必要がある場合には、子どもについての入所措置に併せ法第27条第1項第2号による保護者への指導の措置についても適切に実施する。
(3)  法第27条第4項の「親権を行う者又は未成年後見人の意に反して、これをとることができない」とは、これらの者が反対の意思を表明している場合には強行できないという意味であり、親権を行う者又は未成年後見人の承諾を得ない限り措置の決定ができないという意味ではない。しかし、できる限り承諾が得られるよう努める。
(4)  措置する児童福祉施設等の決定に当たっては、子どもや保護者の意向を十分尊重するとともに、その子どもにとって最も適合する施設の選定を行う。また、選定された施設との事前の連携を十分に図り、子どもの安定化が順調に行われるよう十分に配慮する。
(5)  平成9年6月の児童福祉法の改正により、児童自立支援施設の入所対象として「家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を必要とする児童」が加えられている。これは、家庭における保護者の長期にわたる養育怠慢・放棄等、家庭環境に問題があり、この結果、日常生活における基本的な生活習慣の習得がなされていない等により、施設において子どもの自立支援のために生活指導等を要する子どもを対象とするものである。具体的には下記のような事例が考えられる。
ア   親が長期にわたり育児を放棄した結果、日常生活を営む上での最小限必要な生活習慣等が身についておらず、また、将来に対する自立意欲を欠いており、社会的自立を図るためには施設への入所、通所、退所後の対応等の支援が必要な子ども。
イ   義務教育を終了した後就職したが、家庭環境等に起因する学力不足や対人関係の形成等の問題があり、仕事も長続きせず、あらためて学習指導を含めた生活指導等を必要としている子ども。
従って、家庭を通じ対応が可能な場合や生活習慣等の乱れが一時的な場合は対象とならない。また、いわゆる不登校児又は登校拒否児もしくは高等学校中退者について、小学校又は中学校に行っていないこと、もしくは高等学校を中退したことをもって入所理由とするものではない。
(6)  改正法により導入された児童自立支援施設における通所措置については、施設に入所させ保護者等と子どもを分離するよりも、家庭における保護者等との生活を基本としつつ通所により生活指導とその家庭環境の調整等を行うことが適切と考えられる子どもが対象となるものであり、具体的には、当初から通所措置が適当である子どもとともに、施設措置の解除の前段階として、通所措置により実社会における自立を図ることが適当である子ども等が対象として考えられる。なお、少年法に基づく保護処分の決定を受けた子どもについては、児童福祉法第27条の2に規定するように、通所措置の対象とはならない。
(7)  従来、乳児院は、乳児(保健上その他の理由により特に必要のある場合には、おおむね2歳未満の子どもを含む。)を、児童養護施設は、乳児を除く子どもをそれぞれ入所の対象としていたところであるが、乳児院に入所した児童がおおむね2歳を迎えると児童養護施設への措置変更を行わざるを得ず、愛着形成が重要な局面にある一方で、環境への適応能力が不十分な時期に生活環境の大きな変化を経験させることとなるため、子どもの健やかな成長に深刻な影響を及ぼす場合があることが指摘されていたところである。
このため、平成16年児童福祉法改正法により乳児院及び児童養護施設の年齢要件が見直され、乳児院については、「保健上、安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合」には幼児(概ね2歳未満の幼児に限定されない)を、児童養護施設については、「安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合」には乳児を、それぞれ入所させることができることとされた。
乳児院における「保健上、安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合」の具体的な例としては、
ア   子どもに疾病や障害があり、引き続き乳児院で処遇することが適当であると判断される場合(疾病や障害の内容・程度に鑑み、医療機関や障害児施設において対応するのが適当な場合は除かれる。)
イ   保護者の家庭環境が整備され、ほどなく家庭に引き取られることが明らかな場合や、近々に里親委託や養子縁組成立が見込まれる場合
ウ   きょうだいで別々の施設に措置することが子どもの福祉に反する場合
等のケアの連続性への配慮が求められる場合等が考えられ、児童養護施設における「安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合」の具体的な例としては、
ア   きょうだいで別々の施設に措置することが子どもの福祉に反する場合
イ   小学校就学後も家庭等に引き取られる見込みが極めて低い場合
等のケアの連続性への配慮が求められる場合等が考えられる。
乳児院又は児童養護施設への入所又は継続入所の判断は、職員との愛着関係の形成状況を始めとする子どもの状況や家庭環境の状況、保護者や施設長の意見等を踏まえ、児童相談所長が総合的に判断すべきものであるが、上記のような具体的な例を含め、「子どもの最善の利益」に資すると考えられる場合に限り、乳児院への入所及び入所継続措置並びに児童養護施設への入所措置を行うこと。
なお、児童養護施設への乳児の措置については、
ア   看護師による適切なケアが受けられること
イ   乳児院で行われている養育の内容(定時の授乳やおむつ交換等)が行われること
に十分留意する。 
(8)  子どもを児童福祉施設等に措置する場合には、子どもや保護者に措置の理由等について十分な説明を行うとともに、入所させようとする児童福祉施設等の名称、所在地、施設の特色、措置中の面会や通信の制限及び措置中の費用に関する事項について子どもや保護者に連絡する。また、子どもが有する権利や施設生活の規則等についても子どもの年齢や態様等に応じ懇切に説明するとともに、子ども自身がいつでも電話や来所等の方法により児童相談所に相談できることを連絡し、施設における苦情解決の仕組みや社会福祉協議会に設置される運営適正化委員会への苦情の申し出などについても説明をする。
なお、これらの説明を行う場合には、当該施設等の写真やパンフレット等を活用するなど、わかり易い媒体手段を工夫するとともに、必要に応じ事前に子どもや保護者に当該施設等を見学させるなど、子ども、保護者の不安を軽減するための十全の配慮を行うこと。また、既に一部都道府県で行われているいわゆる「児童の権利ノート」の活用等も考えられること。
(9)  施設入所措置等について、子どももしくはその保護者の意向が児童相談所の方針と一致しない等の場合は、法27条第3項、法27条の2第1項、第28条第1項第1号又は2号ただし書の規定により採るものを除き、都道府県児童福祉審議会の意見を聴取しなければならない(令第32条)が、その手続き等については、第3章第7節「都道府県児童福祉審議会への意見聴取」による。
(10)子どもを児童福祉施設等に措置する場合には、児童相談所は措置決定通知書に添えて、子どもの援助に参考となる図−4の(注)に示した資料を子どもを入所させる児童福祉施設等の長に送付する。また、必要に応じ事例担当者が施設に出向き、事例の内容の説明を行う。
(11)児童相談所は、児童福祉施設が自立支援計画を策定するに当たり、十分な協議をし、必要な協力を行う。
(12)児童相談所は、子ども及び保護者に事前に援助方針を伝え、その意向を十分に尊重するとともに、その子どもを入所させようとする児童福祉施設と十分に協議し、援助指針を策定する。
(13)措置の開始、解除、停止、在所期間の延長を行うに当たっては、その旨を保護者、児童福祉施設長等に通知する。
(14)国立児童自立支援施設及び国立知的障害児施設への措置については関連通知等により対応する。また、他の都道府県等に所在している児童福祉施設(国立児童自立支援施設、国立知的障害児施設を除く。)に子どもを入所させる必要がある場合には、当該施設所在地の都道府県等と十分に協議する。
 
2. 入所中の援助
(1)  児童相談所は、子どもが児童福祉施設等に入所した後も、その施設、保護者等との接触を保ち、適切な援助を継続的に行う。この一連の仕組みを図−4に示す。
(2)  児童相談所は、法第30条の2に基づき定期的に児童福祉施設に入所している子どもの養育に関する報告を施設(指定医療機関を含む。)から徴し、必要に応じ子どもや保護者等に関する調査、診断、判定、援助を行い、また定期的に施設を訪問したり、施設と合同で事例検討会議を行う等、相互の連携を十分に図るよう留意する。
なお、施設訪問の際には、極力子どもと面接する時間をとり、子どもの意向を把握する等、効果的な訪問に心がける。
(3)  子どもの養育に関する報告の回数は、全般的報告に関しては年2回程度、特別な問題を有する子どもに関しては、必要に応じてその回数を決めることが適当である。
(4)  特に、専門的な支援が必要な子どもの援助に当たっては、児童福祉施設等との連携が不可欠であり、子どもの援助を検討する施設の会議に児童相談所職員が参加することや、心理・精神医学的治療が必要な子どもについては、施設を訪問する、児童相談所に通所させる等、専門的見地からの指導・助言に努める。
(5)  入所中の子どもの相談については、その訴えを傾聴するとともに、受容的・非審判的態度で臨む。子どもの訴えの内容が児童福祉施設等に対する苦情や不満等に関するものである場合、必要に応じ本庁児童福祉主管課と連携を図りながら、児童福祉施設等の職員等からも事情を聴くなど、客観的事実の把握に努めるとともに、子どもの適切な援助を確保する観点から必要と認める場合は、児童福祉施設等に対し必要な助言、指導、指示等を行う。また、権利侵害性が高いと判断される相談についてその援助を決定する場合は、援助の決定の客観性を一層確保する観点から都道府県児童福祉審議会の意見を聴取することが望ましい。
(6)  懲戒に係る権限の濫用や虐待等が疑われる場合
児童福祉施設の長は、監護・教育・懲戒に関し子どもの福祉のため必要な措置を採ることができるが、懲戒に関する権限については、あくまでも子どもの健全な育成のために認められているものであり、決して濫用されるようなことがあってはならない。
もとより、児童福祉施設の職員は、入所してる子どもに対して、児童虐待防止法に規定する児童虐待その他子どもの心身に有害な影響を与える行為をしてはならないものであり、また、児童福祉施設の職員から虐待を受けた子どもは、法第25条の通告の対象となるものである。
入所している子どもやその保護者から、懲戒に係る権限の濫用や虐待等の訴え等があったときや法に基づく通告を受けたときには、あくまで客観的事実の把握に努め、事実に基づく対応をしなければならない。
その際、その子どもの最善の利益に配慮して適切なケアを行うこととし、必要に応じてその子どもの一時保護、措置変更を行うとともに、援助上の問題について施設に対し技術的助言、指導を行う。また、再発防止の観点から、必要に応じて児童福祉施設に対する指導権限を有する本庁と連携を図りつつ対応することが必要である。
なお、都道府県等の行った指導又は助言について、児童福祉施設最低基準(昭和23年厚生省令第63号)第14条の3第3項により、児童福祉施設は必要な改善を行わなければならないことが明示されている。
また、社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する法律(平成12年法律第11号)の施行に伴い、苦情解決の仕組みが整備されたことから、問題の解決に当たっては、都道府県等の本庁と緊密な連携を図るとともに、施設運営、法人運営について都道府県知事等が改善の勧告や事業の停止命令等の行政処分を検討する際には、児童相談所は子どもの権利擁護の観点から適切な対処に心掛ける。
(7)  施設入所中の子どもに関する面会、電話、文書等への対応
[1]   入所している子どもに関する面会、電話、手紙等の文書等への対応については、法第47条第2項に規定する施設長の監護、教育、懲戒に係る権限に基づき行われるが、その子どもの人権に十分配慮しつつ、その福祉向上の観点から行われる必要がある。
[2]   児童虐待防止法第12条において、法第28条の規定により家庭裁判所の承認のもと保護者の意に反して入所した子どもについては、子どもに対する保護者の監護権や居所指定権などの親権が制限されており、児童相談所長又は施設長は面会又は通信の制限ができることとされている。
[3]   親権を行う者の同意のもとに入所している子どもについて、子どもにとって最善の方法として面会や電話などを控える必要がある場合については、その必要のあることを説明する。それでも納得せず強引に面会を強要し、入所についての同意を撤回する等の場合には、施設長の連絡により、児童相談所長は、入所中であっても一時保護委託に切り替え、法第28条の規定に基づく申立てを行い、家庭裁判所の決定によって再度入所の措置をとる。
児童虐待防止法第12条の2においても、児童虐待を受けた子どもについて親権を行う者の同意のもとに施設入所等の措置が採られた場合において、当該虐待を行った保護者が子どもの引渡し又は子どもとの面会若しくは通信を求め、かつ、これを認めた場合には再び児童虐待が行われ、又は児童虐待を受けた子どもの保護に支障をきたすと認めるときは、児童相談所長は、法第28条の規定による施設入所等の措置を要する旨を都道府県知事等に報告するまでの間、一時保護を行うことができることが規定されている。
なお、一時保護をしている子どもについて、家庭裁判所に対し法第28条第1項の規定に基づく承認に関する審判を申し立てた場合は、家庭裁判所は、審判前の保全処分として、承認に関する審判が効力を生ずるまでの間、保護者について子どもとの面会又は通信を制限することができるので、保護者に対し説得を重ねたり毅然とした対応をとってもなお子どもの保護に支障をきたすと認められる場合などには、本保全処分の申立てを検討する。
 
3. 措置の解除、停止、変更及び在所期間の延長
(1)  基本的事項
ア   措置の解除、停止、変更及び在所期間の延長については、児童福祉施設等の長から届け出る場合と児童相談所長が職権により行う場合とがあるが、いずれの場合においても児童相談所長は現に子どもを保護している施設の長の意見を十分に聞かなければならない(令第28条)
その際には、これまで施設が行った子どもへの支援や家族調整などの効果に関する意見等を十分に聴くこととし、その上で、措置の解除等を検討すること。
イ   特に、措置の解除等について、保護者と子どもとの意向が異なる可能性がある場合には、子ども本人と面接し、その意向を聴取する等実情を十分調査する必要がある。その際、子どもの措置の解除等の後の援助についても十分考慮し、保護者、児童福祉施設等、福祉事務所等の長等と調整する必要がある。
児童虐待を理由として施設に入所した場合については、措置の解除に当たって、虐待を行った保護者に対する指導の進捗状況を踏まえて判断する必要がある。このため、その措置の解除に当たっては、保護者の状況が十分改善しているかどうかを勘案する観点から、実際に指導を行った児童福祉司等の意見を聴取しなければならないこととされている(児童虐待防止法第13条)。
ウ   措置の解除等について、子どももしくはその保護者の意向が児童相談所の方針と一致しない等の場合は、都道府県児童福祉審議会の意見を聴取しなければならない(令第32条)が、その手続き等については、第3章第7節「都道府県児童福祉審議会への意見聴取」による。
エ   児童養護施設において中学校卒業後、施設に入所しながら一定期間就労させることが適当な子どもについては、昭和63年3月29日児発第266号「養護施設入所児童のうち中学校卒業後就職する児童に対する措置の継続等について」に基づき、児童養護施設の長と緊密な連携を保つ。
オ   これらの措置については援助方針会議等において検討する。
(2)  解除
ア   措置の解除とは、法第26条第1項第2号、法第27条第1項第2号及び第3号若しくは同条第2項、同条の2第1項のいずれかの措置の継続中において、その生じている効果を将来に向かって消滅させることをいう。具体的には、児童福祉施設等に入所中の子どもが保護者のもとに復帰し、自立し又は他の法の保護を受ける等により、児童相談所における措置を終結することである。
イ   児童相談所は、措置を解除した後も子どもの自立を図る観点から必要と認める場合は、指導及び一時保護の実施を検討するとともに、さらに必要と認める場合には法27条第7項の規定に基づく児童自立生活援助措置を採ることや再度施設入所等の措置を採ることを検討する。
(3)  停止
ア   措置の停止とは、当該措置を継続すべき事由が完全に消滅したわけではなく、近い将来再び措置をとらなければならない場合に行われる措置の一時的中断である。具体的には、子どもが施設を無断外出し行方不明である場合、施設に入所している子どもに対し措置を変更又は解除するかどうかにつき検討する目的でその子どもを一時保護している場合、その他、家庭引取後の適応状況を見る必要がある場合等が考えられる。
イ   児童自立支援施設等から子どもが無断外出した場合は、関係機関と連携し、捜索の結果30日以上手掛りのない場合においては、当該施設の長から、直ちに則第27条に基づく措置の停止の申請をさせる。
ウ   措置の停止については援助方針会議で検討しその期間を付する。期間は確定期間、不確定期間いずれでも良いが、原則として1か月を超えてはならない。なお、特別の理由がある場合にはこの限りでない。
エ   停止の効果は定められた停止期間の終了と同時に失われる。ただし、当初定められた期間の終了を待たずに子どもが施設に戻った場合又は期間が不確定であった場合には、処遇会議で検討し、停止の解除を行い、その結果を施設長、保護者等に通知する。
(4)  変更
措置の変更とは、その子どもになした措置の重要な部分の更改を意味し、法第27条第1項第2号に基づく措置から同項第3号に基づく措置に改めることのほか、同項第3号に基づく措置であっても異なった種別の施設等への措置、同種の他施設等への措置、入所施設措置から通所施設措置等への変更も含まれる。措置の変更は、子どもにとって精神的負担が大きく、心的外傷体験になる危険性があることから、子どもへの影響に十分配慮しつつ行うことが必要である。特に里親委託の場合には、関係不調を示すこともあるので、措置変更の際には子どもの抱く失望感や里親が抱く喪失感を軽減できるよう、きめ細かな配慮が必要である。
(5)  在所期間の延長
ア   児童福祉施設等に入所した子どもが、18歳に達しても施設に入所を継続する必要がある場合には、20歳に達するまで(場合によってはその後も引き続き)更に施設入所を継続させることができる。(法第31条、附則第63条の)
特に子どもの自立を図るために継続的な支援が必要とされる場合には、積極的に在所期間の延長を行う。
イ   在所期間の延長は、施設長及び関係機関の意見を聞き、あらかじめ子ども、保護者等の意向を確認するとともに、子ども等の状況を再判定した結果、延長することが適当と判断された場合に行う。この手続きは、18歳に達する日までに完了し、延長年限を付して保護者、施設長に通知する。
 
4. 退所後の支援
(1)  近年、児童福祉施設に入所する子どもの中には、虐待を受けるなど、よりきめ細かな手厚い支援を要する者が増加しているが、こうした子どもが児童福祉施設退所後直ちに社会的に自立することは容易ではない。
こうした子どもの自立を支援するため、平成16年児童福祉法改正法により、乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設は、これらの施設を退所した者について相談その他の援助を行うこととされたところである。児童相談所においては、これらの施設による援助が円滑かつ適切に行われるよう情報提供その他の必要な支援を行う。
(2)  また、アパートを借りる際の当面の間の賃借料や就学に必要な資金等の貸付けを行う生活福祉資金制度や、雇用促進住宅の活用も考えられるので、各都道府県の社会福祉協議会や社会福祉部局、雇用対策部局、住宅対策部局等と連携して対応することが望ましい。
(3)  施設を退所した子どもに対し、相談や定期的な訪問等を行い子どもを見守るとともに、家族等に対しても精神的な支援等を行うためには、要保護児童対策地域協議会を活用することも有効と考えられるので、協議会との連携を確保しつつ、施設を退所した子どもが新しい生活環境の下で安定した生活を継続できるように必要な支援を行う。
 
5   障害児施設の利用契約
(1)  障害児施設又は指定医療機関(以下「障害児施設等」という。)への入所は、障害者自立支援法の施行により利用契約制度が導入されたことから、従来の「措   置」と「保護者の申請に基づく契約(以下「契約」という。)」の二通りとなる。
(2)  保護者等から障害相談等を受けた場合における障害児施設等の「契約」に至るまでの手続きは、第3章第5節の「判定」の段階までは同様であり、適切な対応を行う。(この手続きの中で保護者が法第24条の2に基づく施設利用を希望する場合には、障害児施設給付費申請書を提出させる。)
なお、他県において障害判定を受け施設を利用していた場合で当県に転居してきた場合や保護者から障害相談等を経ずに障害児施設給付費の申請があった 場合等で市町村の保健師や福祉事務所において施設利用が適当であるという一定の判断がなされている等、措置と同様の手続きを課す必要がないと児童相談 所において判断された場合には、上記手続きの一部を省略できるものとする。
(3)  「判定」の段階において、保護者が障害児施設等の利用を望み、契約を結ぶことが可能であると児童相談所長が判断した場合(法第24条の2第3項)には、これを都道府県等(都道府県知事(指定都市長及び児童相談所設置市長を含む。(以下「都道府県知事等」という。)から児童相談所長に権限の全部又は一部を委任している場合には、児童相談所長。以下(4)において同じ。(ただし、※部分を除く。))に報告し、都道府県等は障害児施設受給者証を利用者に交付する。(法第24条の3第6項)
(4)  一方で、障害児施設等の利用を希望した者のうち児童相談所長の判断(法第24条の2第3項)により、「措置」による入所が必要と判断される場合には、児童相談所長は、都道府県等に対して「措置」が適当である旨の意見を付す。都道府県等は児童相談所長の意見を踏まえ、「措置」が適当であると判断した場合には、「却下決定通知書」(法第24条の3第2項)を利用者に通知をするとともに、その後の対応については、1の「措置の決定等」により実施されたい。なお、施設利用が適当でないと判断される場合については、却下理由の説明を行うとともに「却下決定通知書」を利用者に通知する。(※)
※   都道府県等の障害児施設給付費に係る処分に不服がある保護者は、都道府県知事等に行政不服審査法に基づく「異議申し立て」を行うことができる。なお、児童相談所長に権限の全部又は一部を委任している場合は、都道府県知事等に対して、行政不服審査法に基づく「審査請求」を行うことができる。
措置が必要であるかの判断基準については、以下のとおり。
[1]   保護者が不在であることが認められ利用契約の締結が困難な場合
[2]   保護者が精神疾患等の理由により制限行為能力者又はこれに準じる状態である場合
[3]   保護者の虐待等により、入所が必要であるにもかかわらず利用契約の締結が困難と認められる場合
(5)  「契約」における入所の場合は児童相談所において施設との事前調整は必要としないが、都道府県等は利用者に対する「あっせん」又は「調整」を行うこととされており(法第24条の19)、児童相談所においても情報提供等利用者の利便向上に努めるものとする。
(6)  児童相談所及び都道府県等は、「契約」により障害児施設等に入所している障害児も含め生活実態の把握に努めるため、障害児施設等と相互連携を十分に図るよう留意する。当然のことながら「懲戒に係る権限の濫用や虐待等が疑われる」場合にあっては、契約による入所であるかどうかにかかわらず子どもの権利を擁護するための対応が求められる。
(7)  一方で障害児施設等から「契約」により入所した児童についての相談を受けた場合には、必要に応じ、子どもや保護者等に関する調査、診断、判定、援助を行い、定期的に施設を訪問する等相互の連携を十分に図るよう留意する。
(8)  他の機関において障害児施設等の利用に係る手続きを行う自治体においては、子どもの健全育成の観点から必要に応じて情報を共有するなど関係機関との連携を図ること。
(9)  上記に記載していない事項については、当節の1〜4を参考に取扱うこと。
 
第5節   児童自立生活援助措置
(1)  児童自立生活援助事業は、義務教育を終了したが、いまだ社会的自立ができていない子どもを対象として、就職先の開拓や仕事や日常生活上の相談等の援助を行うことにより、社会的自立の促進に寄与することを目的とする事業である。本事業の運営主体は都道府県・指定都市、市町村、社会福祉法人、民法第34条の規定により設立された法人、特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)に基づき設立された特定非営利活動法人等である。本事業による個々の子どもに対する援助の実施(援助措置)の適否は児童相談所が決定する。(法第27条第7項、第6条の2第11項)
(2)  本事業の対象となるのは、里親、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設に措置された子どもでその措置を解除されたものその他のものについて、都道府県知事等がその子どもの自立のために援助及び生活指導が必要と認めた子どもである。
(3)  児童相談所は、児童自立生活援助措置を希望する子ども、保護者等と面接を行い、その意向の把握等に努めるとともに、その子どもが措置を解除された施設等の協力を求めその意見を聴取する。また、受入れの可否や受入れの時期、受入れ後の援助等について運営主体とも十分な調整を図ったうえで、援助方針会議を経て実施の決定を行う。
(4)  児童相談所は、児童自立生活援助措置を行う場合には、その旨子ども及びその保護者並びに運営主体に通知する。
(5)  措置の開始、解除、援助を継続する措置を行うに当たっては、その旨を子ども及びその保護者並びに運営主体の長に通知する。
(6)  児童相談所は、措置の開始後も必要に応じ、運営主体の長から子どもの援助に関する報告を徴するとともに、子どもや保護者等に対する調査、診断、判定、援助を行い、援助ホームを訪問し、また、運営主体と合同で事例検討会議を行う等、相互の連携を十分に図るよう留意する。
(7)  児童相談所は、児童自立生活援助措置を解除する場合は、子どもの自立が円滑に行われるよう特に配慮するとともに、必要に応じ福祉事務所、児童福祉施設、児童委員、子どもの雇用先事業所、公共職業安定所、学校等と連携を図りながら、その子どもの自立に向け引き続き必要な援助を行う。
なお、児童相談所は、児童自立生活援助措置を解除する場合は、保護者等に対し解除の理由について説明するとともに、その意見を聴く。(法第33条の4)
(8)  近年、虐待を受けるなど、よりきめ細かな手厚い支援を要する者が増加しているが、こうした子どもが児童福祉施設退所後等に直ちに社会的に自立することは容易ではない。このため、平成16年児童福祉法改正法により、児童自立生活援助事業の内容として、日常生活上の援助及び生活指導に就業支援を加えるとともに、あわせてこうした子どもについて相談その他の援助を行うものとされたところである。児童相談所においては、これらの援助が円滑かつ適切に行われるよう情報提供その他の必要な支援を行う。
アパートを借りる際の当面の間の賃借料や就学に必要な資金等の貸付けを行う生活福祉資金制度や、雇用促進住宅の活用も考えられるので、各都道府県の社会福祉協議会や社会福祉部局、雇用対策部局、住宅対策部局等と連携して対応することが望ましい。
児童自立生活援助事業の対象となっていた子どもに対し、相談や定期的な訪問等を行い子どもを見守るとともに、家族等に対しても精神的な支援等を行うためには、要保護児童対策地域協議会を活用することも有効と考えられるので、協議会との連携を確保しつつ、その子どもが新しい生活環境の下で安定した生活を継続できるように必要な支援を行う。
 
第6節   福祉事務所送致等
(1)  次の場合においては、福祉事務所又は市町村に送致、報告又は通知しなければならない。
[1]   子どもや保護者等を福祉事務所の知的障害者福祉司又は社会福祉主事に指導させる必要がある場合(法第26条第1項第3号)
[2]   助産施設、母子生活支援施設への入所措置をとる必要がある場合(法第26条第1項第4号)
[3]   保育の実施が必要である場合(法第26条第1項第4号)
[4]   15歳以上の子どもについて身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)に規定する身体障害者更生援護施設又は知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)に規定する知的障害者援護施設に入所させることが適当である場合(法附則第63条の4、第63条の5)
(2)  これらの場合には、子どもや保護者等の意向を確認し、援助方針会議等で検討する。
(3)  福祉事務所に対する送致書等には、原則として保護者等の同意を得た上で子どもの援助に参考となる資料及び援助指針を添付する。また、事前に電話連絡をとる等子どもや保護者の利便を図る。
 
第7節   家庭裁判所送致
1. 法第27条第1項第4号の規定に基づく送致
(1)  この措置は、触法少年及びぐ犯少年について、専門的観点から判断して家庭裁判所の審判に付することがその子どもの福祉を図る上で適当と認められる場合に行う。
(2)  児童相談所における相談援助活動は、児童福祉の理念及び児童健全育成の責任の原理に基づき行われるものであり、その目的は子どもの福祉を図り、その権利を擁護することであるから、子どもの態様や家庭環境等に照らしてその子どもの福祉を図る観点から家庭裁判所の審判に付することが適当と認めた場合である。従って、送致の決定は、相談(通告)〜調査・診断〜判定〜(一時保護)〜援助の決定といった過程を経てなされることが原則であり、適切な調査・診断を行った上で、決定するものとする。
特に、児童相談所に係属したことのない子どもについてこの送致を行う場合には、児童相談所による実質的な判断を可能とするため、一時保護、委託一時保護等、児童相談所の持つ機能を十分に活用して行う。
(3)  家庭裁判所の審判に付することが適当と認められる例として以下に掲げる場合がある。
[1]   児童自立支援施設入所の措置をとることが適当と判断される子どもについて、その親権を行う者又は未成年後見人がその措置に反対し、かつ法第28条の要件に合致しない場合に、少年法第24条第1項第2号の保護処分により児童自立支援施設に入所させることが相当と認められる場合
[2]   14歳以上の児童自立支援施設入所児童等を少年法第24条第1項第3号の保護処分により少年院に入院させることが相当と認められる場合
(4)  家庭裁判所に事件を送致するに当たっては、親権を行う者又は未成年後見人等保護者及び子どもに対し事前にその事情を十分に説明する。また、審判の結果について親権を行う者又は未成年後見人等保護者及び子どもに予断を与えることのないよう留意する。
(5)  この送致は、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に対し、根拠法令の条項及び少年審判規則(昭和23年最高裁判所規則第33号)第8条第1項に定める事項、子どもの援助に関する意見を記載した送致書により行う。この場合、書類、証拠物、その他参考となる資料があるときは併せて送付し、また、文書のみでなく家庭裁判所と十分な連絡を行う。
 
2. 法第27条の3の規定に基づく送致
(1)   この送致は、児童自立支援施設に入所中、又は一時保護中の子どもであって無断外出等が著しく、親権行使又は一時保護として認められる場合を除き、行動自由の制限を行う真にやむを得ない事情があると認められる場合に行う。
(2)   「強制的措置を必要とする」とは、主として子どもが任意に出られないような設備のある特定の場所に入所させ、その行動を制限し又は自由を奪うことが必要とされる場合を言うが、これ以外の方法で親権の範囲を超え、子どもの意思に反してその身体の自由を拘束する場合、たとえば無断外出を防ぐため一室に入所させておくような場合も本条に該当する。
(3)   この送致を受けた家庭裁判所が少年法第18条第2項の規定に基づき、強制的措置をとることのできる期限を付し、とるべき保護の内容その他の措置を指示して、事件を児童相談所に送致した場合には、当該児童相談所は、家庭裁判所の指示に従ってこの措置をとる。
(4)   本条による送致も法第27条第1項第4号の規定に基づく送致と同様の手続により行う。なお、本条による送致で求めた強制的措置の許可が得られなかったときのために、予備的に法第27条第1項第4号の規定に基づく送致を併せて行う場合には、その旨を明記する。
(5)   家庭裁判所送致については、本指針に定めるほか、次の通知による。
[1]   昭和24年6月15日発児第72号「児童福祉法と少年法との関係について」
[2]   昭和25年7月31日児発第505号「児童福祉法において児童に対し強制的措置をとる場合について」
 
第8節   家庭裁判所に対する家事審判の申立て
1. 法第28条の規定に基づく承認に関する審判の申立て
(1)  施設入所の措置を採るに当たっては、施設入所後の子どもに対する援助及びその家庭環境の調整を円滑に図る観点から、親権を行う者又は未成年後見人の意向を十分聴き、その同意を得て行うことが望ましいが、これが困難な場合には、子どもの最善の利益を最優先した措置が確保されるよう、この申立てを行う。なお、これによっても子どもの福祉を守りがたい場合には、親権喪失宣告の請求も検討する。
(2)  この申立ては、具体的には次の場合に行う。
[1]   保護者が、その子どもを虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しくその子どもの福祉を害する場合において、法第27条第1項第3号の措置をとることが子どもの親権を行う者又は未成年後見人の意向に反する場合
[2]   上記[1]に該当する子どもで、子どもを現に監護している者から、親権を行う者又は未成年後見人に引き渡しても同様の児童虐待、監護の懈怠等が明らかに予想される場合等著しく子どもの福祉を害すると判断される場合
(3)  法第28条の規定による措置の期間は、当該措置を開始した日から2年を超えてはならない。このため、児童相談所においては、この間に親子の再統合その他の子どもが良好な家庭的環境で生活することができるようにすることに向けて、保護者に対する指導や施設や里親に措置(委託)された子どもの訪問面接等に努めるものとする。
(4)  このように入所措置の期間は2年を超えてはならないとされているが、当該入所措置に係る保護者に対する指導措置の効果等に照らし、これを継続しなければ保護者がその子どもを虐待し、著しくその監護を怠り、その他著しくその子どもの福祉を害するおそれがあると認めるときは、家庭裁判所の承認を得て、その期間を更新することができる(法第28条第2項)
特に、入所措置の更新について、保護者に対する指導措置の効果等に照らし判断する旨の規定は、衆議院において全会一致で修正・追加され、更新に際しては、指導措置の効果や子どもの心身の状態等を考慮することが明確化されたものであり、その経緯を踏まえ、適切に対応すること。
なお、この2年の期間制限は、法第28条の規定による措置を対象とするものであるため、例えば、法第28条の規定による措置を開始し、保護者に対する指導等に努めたものの、保護者に将来にわたり子どもを引き取る意思が全くない状態になったことなどから、措置を法第28条に基づくものから保護者の同意に基づくものに変更した場合などには、その制限は及ばないものである。
(5)  措置の解除は、措置期間が2年以内であっても可能である。その際には、本章第4節3「措置の解除、停止、変更及び在所期間の延長」に従い実施するものとする。
(6)  この承認(措置の期間の更新に際しての承認を含む。)は家事審判法(昭和22年法律第152号)第9条第1項甲類に規定する事項であるから、申立てをするには家事審判規則(昭和22年最高裁判所規則第15号)第2条及び特別家事審判規則(昭和22年最高裁判所規則第16号)第18条の規定に従い、申立ての趣旨及び事件の実情、法第27条第1項第3号の措置が適切である理由やその子どもに係る援助指針、施設入所後の自立支援計画などの書類(措置期間の更新の場合は保護者指導の効果(これまでの保護者指導措置の経過や保護者の現状等)などを明らかにする書類を含む。)とともに、証拠書類がある場合にはそれも添えて子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に対して行う。
なお、家事審判においては、管轄のない裁判所が事件を自庁対応することも可能であるので(家事審判規則第4条第1項ただし書)、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に措置期間の更新の承認に関する審判を申し立てることについて、措置先が探知され、子どもの生活妨害等の事態が予測されるなど不都合があると考えられる場合には、最初の承認時の家庭裁判所に自庁対応を求めることも検討する。
(7)  措置の期間の更新に際して行う本申立てについては、保護者に十分な説明を行った上で行うことが望ましく、また、家庭裁判所において審理が行われ、かつ、その審判が確定するためには一定の期間を要することから、事案ごとに、措置開始(又は更新措置開始)から2年が経過する日から審理及び審判の確定に要する期間(2〜3か月程度)を見込んだ上で前もって、所要の資料を準備し、申立てを行う。
しかしながら、この申立てを行ったにもかかわらず、やむを得ない事情から、措置開始(又は更新措置開始)から2年が満了するまでの間に、家庭裁判所の審判が出ない場合や審判が出た場合であっても確定しない事態が発生することも考えられることから、都道府県等は、この申立てを行った場合において、やむを得ない事情があるときは、当該措置の期間が満了した後も、当該申立てに対する審判が確定するまでの間、引き続き当該措置を採ることができる。(法第28条第4項本文)
(8)  家庭裁判所において申立てを却下する審判(措置の期間の更新を認めない判断)が出されたケースであっても、この審判について児童相談所側が不服申立てをし高等裁判所で争っている間(家庭裁判所の審判が確定するまでの間)は、法第28条第4項本文に基づき引き続き当該措置を採ることができる。ただし、確定していない下級審の審判とはいえ措置の期間の更新を不相当とする司法判断が出ていることは一定程度尊重されるべきであり、このようなケースで当該措置を継続することができるのは、申立てを却下する下級審の判断が出ていることを考慮してもなお必要があると認める場合に限られているのであるから(法第28条第4項ただし書)、継続の要否については慎重に検討する必要がある。
(9)  家庭裁判所は、この申立てがあった場合は、都道府県等に対し、期間を定めて、当該申立てに係る保護者に対する第27条第1項第2号の措置に関し報告及び意見を求め、又は当該申立てに係る子ども及びその保護者に関する必要な資料の提出を求めることができる。
この家庭裁判所による報告・意見の聴取については、[1]審判の申立前に行った保護者指導措置の結果に関する報告・意見のほか、[2]事例によっては審判の過程において一定期間保護者指導措置を継続し、その結果に関する報告・意見を求めることもある。
いずれの場合も、こうした報告・意見の聴取を行うか否かは家庭裁判所の判断によるが、まず[1]の場合については、家庭裁判所から求められるまでもなく、その迅速かつ適正な審理を期すため、申立時あるいは申立後速やかに児童相談所から家庭裁判所に提出することが望ましい。
[2]の場合については、虐待事例の中には、申立ての段階では法第28条の要件が整っているものの、家庭裁判所の審判の過程で子どもとの分離を目前にすれば、それを契機に保護者が児童相談所の指導に従い、養育態度等の改善につながる可能性があると判断する事例も存在すると考えられる。
こうした事例については、審判の過程においても一定期間保護者指導措置を継続し、その結果に関する報告や意見を児童相談所から聴取した上で、最終的に判断することが適当である旨の意見を、保護者指導措置の内容及びこれにより期待される効果などとあわせて申立時に提出することが適当である。また、家庭裁判所から求められた場合には、定められた期間内に保護者指導措置の結果及び意見を報告することが必要である。
(10)  家庭裁判所は、措置に関する承認の審判をする場合において、当該措置の終了後の家庭その他の環境の調整を行うため当該保護者に対し指導措置を採ることが相当であると認めるときは、当該保護者に対し指導措置を採るべき旨を、都道府県等に勧告することができる。
こうした勧告を行うか否かは、家庭裁判所の判断によるが、児童相談所としてこうした勧告が効果的であると判断する場合には、家庭裁判所への審判の申立時にその旨の意見を述べることが適当である。この場合、予定している保護者指導措置の内容とこれにより期待される効果などについても、併せて提出することが必要である。
(11)  この申立てについては、本指針に定めるほか、平成9年6月20日児発第434号「児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について」による。
 
2. 親権喪失宣告の請求及び保全処分(親権者の職務執行停止及び職務代行者選任)の申立て
(1)  親権は子の福祉を図ることを目的として、父母が有する特別の権利並びに義務であるから、不適切な行使をしている父母があった場合には、適切な行使をするよう指導する。その上で、親権の濫用又は著しい不行跡が認められる場合には、親権喪失宣告の請求を検討する。これには、児童相談所や施設の指導にもかかわらず、親権者が再三にわたって子どもを施設から強引に連れ戻し虐待等を続ける場合も含まれる。
なお、この親権喪失宣告の請求並びに3の未成年後見人選任及び解任の請求は、児童及び18歳以上の未成年者((2)及び(4)並びに3において「児童等」という。)について行うことができる。
(2)  親権喪失宣告の請求の検討に当たっては、児童等の意向を十分配慮するものとする。
(3)  この請求は親権者の住所地を管轄する家庭裁判所に所定の様式によって児童相談所長名で行う。この際、申立ての趣旨及び実情として、親権の濫用又は著しく不行跡である状況を明らかにし、それを証明する書類がある場合にはそれを添付する。
(4)  なお、親権喪失の審判があるまでの間、緊急に児童等を保護する必要がある場合には、家事審判規則第74条第1項に基づく審判前の保全処分(親権者の職務執行停止及び職務代行者選任)の申立てを検討する。
(5) &nbspこの申立ては本来の親権喪失事件が審理される家庭裁判所に所定の様式によって児童相談所長名で行う。この際、申立ての趣旨及び実情として、親権の濫用又は著しく不行跡である状況を明らかにするとともに、緊急に親権を停止し子どもの安全を確保することの必要性を明らかにし、それを証明する書類がある場合にはそれを添付する。
 
3. 未成年後見人選任・解任の請求
(1) &nbsp未成年後見人選任
ア   未成年後見人選任の請求は、親権を行う者及び未成年後見人がいない場合又はこれらの者が権限を行使することが事実上不可能なときの2つの場合に行う。
イ   これらに該当する児童等を単に保護する場合には選任を請求する必要はないが、特に財産管理の必要がある場合、養子縁組等の法律行為を行う場合には請求を行う。
ウ   この請求は、後見される児童等の住所地を管轄する家庭裁判所に所定の様式によって児童相談所長名で行う。
(2)  未成年後見人解任
未成年後見人解任の請求は、親権喪失宣告の請求に準じて行う。ただし、この請求は、解任される当該未成年後見人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行う。
 

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