

私たちがヤングケアラーだった頃。
いまヤングケアラーとよばれる、こどもたちのために、
知ってほしい幾つかのこと。
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【PR版】貫地谷しほり×元ヤングケアラー
―ヤングケアラー「ほんとのきもち」― -
【特別対談】貫地谷しほり×元ヤングケアラー
―ヤングケアラー「ほんとのきもち」―
「ヤングケアラー」とは、本来大人が担うと想定されている
家事や家族の世話などを日常的に行っているこどものこと。
こどもが家事や家族の世話をすることは、ごく普通のことだと思われるかもしれません。
でも、ヤングケアラーは、本当なら享受できたはずの、
勉強に励む時間、部活に打ち込む時間、将来に思いを巡らせる時間、友人との他愛ない時間…
これらの「こどもとしての時間」と引き換えに、
家事や家族の世話をしていることがあります。
まわりの人が気付き、声をかけ、手を差し伸べることで、
ヤングケアラーが「自分は一人じゃない」「誰かに頼ってもいいんだ」と思える、
「こどもがこどもでいられる街」を、みんなでつくっていきませんか。
それはきっと、すべての人が幸せに暮らせる社会をつくる一歩になるはずです。
ヤングケアラーとは
ヤングケアラーとは、
例えばこんなこどもたちです
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障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
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家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている
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障がいや病気のあるきょうだいの世話や見守りをしている
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目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている
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日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている
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家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている
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アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している
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がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている
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障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている
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障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている
ヤングケアラーの現状

澁谷 智子先生
東京大学教養学部卒業後、ロンドン大学ゴールドスミス校大学院社会学部、東京大学大学院総合文化研究科で学ぶ。学術博士。大学院では「聞こえない親を持つ聞こえる子どもたち」について研究(『コーダの世界――手話の文化と声の文化』医学書院)。日本学術振興会特別研究員、埼玉県立大学・立教大学非常勤講師などを経て、成蹊大学文学部現代社会学科教授。専門は社会学。著書に『ヤングケアラーってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『ヤングケアラー --介護を担う子ども・若者の現実』(中公新書)など。

ヤングケアラーはどれくらいいるのですか?
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令和2年度に中学2年生・高校2年生を、 令和3年度に小学6年生・大学3年生を、それぞれ対象にした 厚生労働省の調査 では、世話をしている家族が「いる」と回答したのは小学6年生で6.5%、中学2年生で5.7%、高校2年生で4.1%、大学3年生で6.2%でした。これは、回答した中学2年生の17人に1人が世話をしている家族が「いる」と回答したことになります。
ヤングケアラーは、毎日家事や家族の世話をしているのですか?
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世話をしている家族が「いる」と回答した人に頻度について質問すると、半数近くが「ほぼ毎日」世話をしているという結果になっています。
令和2年度に埼玉県が高校2年生に行った調査では、ヤングケアラーが平日にケアにかける時間は「1時間未満」が4割、「1時間以上2時間未満」が3割でした。しかし、同年行われた厚生労働省の調査では、平日1日あたりに世話に費やす時間として、中学2年生は平均4時間、全日制高校2年生は平均3.8時間と、さらに長い結果になっています。
ヤングケアラーは具体的にどんなことをしているのでしょうか?
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ヤングケアラーがしていることとして多いのは、食事の準備や掃除や洗濯といった家事、見守り、きょうだいの世話、感情面のサポートなどです。
家族のケアをすることで、ヤングケアラーの生活にはどんな影響が出るのでしょうか?
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人にもよりますが、自分の時間が取れない、勉強する時間が充分に取れない、ケアについて話せる人がいなくて孤独を感じる、ストレスを感じる、友人と遊ぶことができない、睡眠が充分に取れない、というヤングケアラーは少なくありません。 このように、こどもや若者が担うケアの負担は大きいものがありますが、家事や家族の世話などを若い頃に担った経験をその後の人生で活かすことができている、と話す元ヤングケアラーがいることも事実です。


学業への影響
遅刻・早退・欠席が増える、勉強の時間が取れない等

就職への影響
自分にできると思う仕事の範囲を狭めて考えてしまう、自分のやってきたことをアピールできない等

友人関係への影響
友人等とコミュニケーションを取れる時間が少ない等
ヤングケアラーは、本人・保護者が「当たり前」だと思っていたり、
家庭内の問題のため人に言いにくいというこどもも多く、表面化しづらいのが現状です。
こどもたちのどんなところを見ておけばよいか?外部機関とどのように連携すればよいか?
スクールソーシャルワーカーとして活動されている黒光さおりさんに聞きました。
黒光さおりさん
社会福祉士。公認心理師。元ヤングケアラー。14年間の生活保護ケースワーカーを経て、現在は、尼崎市、宝塚市の小中学校および兵庫県立湊川高等学校でスクールソーシャルワーカーとして勤務。小中学生・高校生のヤングケアラーを含む児童生徒への支援に従事している。尼崎ティーンズ応援ネットワークを立ち上げ、尼崎市内でヤングケアラー当事者会を主催。ヤングケアラー支援のあり方について、現場や当事者の思いを伝えるため、各地で講演活動を行っている。

「ヤングケアラーかも?」と気づくために、普段からどんなポイントに注目しておけばよいでしょうか?
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特徴としては、以下のようなことが挙げられます。
- ・遅刻や欠席が多い
- ・眠そうで覇気がない
- ・運動好きな児童生徒が運動量の少ないクラブに入部している
- ・校外学習などお弁当や準備のいる活動を休む
- ・教科書や学用品に小さいこどもの落書きや食べ物のシミがある
- ・保護者の返信が必要なお手紙が毎回返ってこない
- ・給食エプロンがシワシワ
- ・体操服や制服・上靴が洗えていない
ですが、これらの特徴があれば、必ずヤングケアラーである、というわけではありません。明るくしっかりしており、周りの様子をよく見て行動する児童生徒の中にも、ヤングケアラーはいます。
気付きやすいポイントは、その子らしくない行動が増えること、持っている力が発揮できなくなることなどの変化です。例えば、きっちりしたタイプの児童生徒が、「急に忘れ物が増えてくる」、「宿題ができていない」、「遅刻が増える」、「弁当を持ってきていない」、「部活や習い事をやめる」、「保健室への来室が増える」などのような変化が見られます。
ヤングケアラーかもしれないと思っても、こどもはなかなか自分のこと・家のことを話したがりません。どうすれば話してもらえるでしょうか。
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児童生徒は、家庭の事情を話すことで、大切な家族が責められたり悪く思われることを強く恐れています。聞き出そうとする姿勢を前面に出しすぎると、誰しも警戒し、嫌な気持ちになります。大切なのは、事実を無理に突き止めることではありません。児童生徒にとって話したくなる信頼できる大人ができること、「いつでも聴くからね」という言葉や態度でのメッセージを投げかけ続けることが大切です。
いきなり家庭の話から始めるのではなく、普段から会話を楽しむ中で、話す準備ができるのを待ちましょう。そうすると、何気ない会話の中でポロリと家庭の話が出てくることが多いです。
また、教員自身が弱みを見せると、話しやすくなることもあります。その児童生徒にとって、どの教員や支援者なら話しやすいか、どんなシチュエーションが安心かを工夫した上で、待つことが必要です。
また、「ヤングケアラー」という言葉は、大人が児童生徒を理解するための言葉であり、児童生徒に自覚を迫るために使わないよう配慮をお願いします。
ヤングケアラーかもしれないこどもがいたときに、学校の現場だけでは対応できない部分も出てきます。そんな時はどこと連携すればよいでしょうか。
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日頃からスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー、キャンパスカウンセラーなどを含めた校内支援会議で、心配な児童生徒の情報共有を行うことをお勧めします。幼稚園や保育所、小・中学校などその児童生徒が前に所属していた校園や、兄弟の所属する校園との連携により、重要な情報が得られることがあります。児童福祉関係機関と連携する必要が出てくれば、校内の意思決定に伴い、スクールソーシャルワーカーが連携の連絡調整を行います。スクールソーシャルワーカーが配置されていない学校の場合は、管理職や生徒指導担当教諭などから、各自治体の児童福祉関係機関に連絡していただくとよいでしょう。そこから、児童ケースワーカー等がその家庭に必要な関係機関(高齢、障害、保健など各関係機関)との支援の調整を行うことになります。
ヤングケアラーの場合は、心理的な支援だけでなく、家庭支援や環境調整が必要であり、関係機関との連携は大切です。個人情報に配慮の上、連携してください。


ヤングケアラーに関する相談窓口
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24時間こどもSOSダイヤル(文部科学省)
- 電話番号
- 0120-0-78310
- 受付時間
- 24時間受付(年中無休)
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こどもの人権110番(法務省)
- 電話番号
- 0120-007-110
- 受付時間
- 平日8:30~17:15※土・日・祝日・年末年始は休み
「いじめ」や虐待などこどもの人権問題に関する専用相談電話です。
- ※一部IP電話からは接続できません。
- ※接続できない場合はこちらの電話番号をご利用ください。(通話料有料)

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Yancle community(ヤンクルコミュニティ)
「Yancle community」は主に40歳以下のヤングケアラー・若者ケアラーが参加するオンラインコミュニティです。 チャットサービスのSlackを用いて当事者同士で相談や交流、情報収集・交換ができるオンライン上の居場所です。 「返信不要の独り言」「悩みを相談したい時」「仕事の相談」などお題ごとに分かれたチャットルームで会話をします。定期的にZoomを用いてオンライン交流会も開催しています。元ヤングケアラーの社会福祉士や看護師、ケアラー専門のキャリアカウンセラーなどの専門職もいるので、悩みがあるときも安心です。家族のケアを担う若きケアラーたちが、当事者同士で支え合い、前を向いて自分の人生を歩んでいくための共助型コミュニティを目指しています。

各種広報・啓発の取り組み
ヤングケアラー広報・啓発 movie
【30秒版】「子どもが子どもでいられる街に。
~ヤングケアラーって、知っていますか?~」
【特別対談編】「武井壮×元ヤングケアラー特別対談
~ヤングケアラーって、知っていますか?~」