在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン
情報通信の高度化、パソコン等情報通信機器の普及に伴い、これらを活用して個人が在宅形態で自営的に働く在宅ワークが増加しています。それぞれの事情に合わせて柔軟に働くことができる在宅ワークは、仕事と生活を調和させることができる働き方として、その普及に対する社会的な関心や期待も大きいものとなっています。
しかし、一方で、口頭による契約のため報酬額、納期等基本的な内容が不明確であったり、契約が一方的に打ち切られたりするなど、契約をめぐるトラブルの発生も少なくない状況にあります。
こうした状況を踏まえ、厚生労働省では、在宅ワークの仕事を注文する者が在宅ワーカーと契約を締結する際に守るべき最低限のルールとして、「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」(平成12年)を策定し、周知を図ってきました。
その後、情報通信技術の更なる普及等により、従来のデータ入力やテープ起こしといった他の者が代わって行うことが容易な業務については、付加価値が低減し市場ニーズが縮小傾向になるとともに、個人情報保護の要請が高まる等、在宅ワークを取り巻く環境は大きく変わってきています。
このような実態を踏まえ、平成22年3月に、適用対象の拡大、発注者が文書明示すべき契約条件の追加など、ガイドラインの改正を行いました。
今後、在宅ワーカーに仕事を発注する方は、在宅ワーカーと契約を結ぶ際には、このガイドラインの内容を守るとともに、在宅ワーカーとよく協議した上で契約の内容を決めることが望まれます。
また、在宅ワーカーのみなさんも、仕事を受ける前に、このガイドラインの内容をよく知っておくことが望まれます。
ガイドライン | 解説 |
第1 趣旨
このガイドラインは、在宅ワークの契約に係る紛争を未然に防止し、かつ、在宅ワークを良好な就業形態とするために、在宅ワークの契約条件の文書明示や契約条件の適正化などについて必要な事項を示すものである。在宅ワークの仕事を注文する者は、契約を締結する際には、在宅ワーカーと協議した上で契約の内容を決定するとともに、第3に示す内容を守っていくことが求められる。
第2 定義
このガイドラインにおける以下の用語の意味は、それぞれに定めるところによる。
(1) 在宅ワーク
情報通信機器を活用して請負契約に基づきサービスの提供等(例えば、テープ起こし、データ入力、ホームページの作成、設計・製図等)を行う在宅形態での就労をいう(法人形態により行っている場合や他人を使用している場合などを除く。)。
(2) 在宅ワーカー
在宅ワークを行う者をいう。
(3) 注文者
在宅ワークの仕事を在宅ワーカーに注文する者をいう。
第3 注文者が守っていくべき事項
(1) 契約条件の文書明示及びその保存
イ 契約条件の文書明示
注文者は、在宅ワーカーと在宅ワークの契約を締結するときには、在宅ワーカーと協議の上、在宅ワーカーに対して、次のからの事項を明らかにした文書を交付すること。
ただし、契約期間が一定期間継続し、受発注が繰り返されるような場合、各回の受発注に共通する事項を包括的な契約とし、納期等各回の個別の事項をその都度の契約内容として、それぞれ明示することも可能であること。
注文者の氏名、所在地、連絡先
注文年月日
注文した仕事の内容
報酬額、報酬の支払期日、支払方法
注文した仕事にかかる諸経費の取扱い
成果物の納期、納品先、納品方法
契約条件を変更する場合の取扱い
成果物が不完全であった場合やその納入が遅れた場合等の取扱い(補修が求められる場合の取扱いなど)
成果物に係る知的財産権の取扱い
在宅ワーカーが業務上知り得た個人情報の取扱い
ロ 契約条件の文書保存
注文者は、在宅ワーカーとの契約条件をめぐる紛争を防止するため、上記イの事項を記載した文書を3年間保存すること。
ハ 電子メールによる明示
上記イのからの事項は、文書の交付に代えて電子メールにより明示してもよい。ただし、その場合でも、在宅ワーカーから文書の交付を求められたときは、速やかに文書をその在宅ワーカーに交付すること。
(2) 契約条件の適正化
イ 報酬の支払
報酬の支払期日
報酬の支払期日については、注文者が在宅ワーカーから成果物を受け取った日から起算して30日以内とし、長くても60日以内とすること。
報酬の額
報酬の額については、同一又は類似の業務に従事する在宅ワーカーの報酬、注文した仕事の難易度、納期の長短、在宅ワーカーの能力等を考慮することにより、在宅ワーカーの適正な利益の確保が可能となるように決定すること。
なお、報酬の額については、最低賃金を参考にすることも考えられる。
ロ 納期
納期については、在宅ワーカーの作業時間が長時間に及ばないように設定すること。その際には、通常の労働者の1日の労働時間(8時間)を目安とすること。
ハ 継続的な注文の打切りの場合における事前予告
同じ在宅ワーカーに、例えば6月を超えて毎月1回以上在宅ワークの仕事を注文しているなど継続的な取引関係にある注文者は、在宅ワーカーへの注文を打ち切ろうとするときは、速やかに、その旨及びその理由を予告すること。
ニ 契約条件の変更
契約条件を変更する場合には、在宅ワーカーと十分協議の上、上記(1)のイに掲げる事項の内容を確認し、文書を交付すること。在宅ワーカーが契約条件の変更に応じない場合であっても、それにより不利益な取扱いを行わないようにし、当初の契約内容を守ること。
ホ その他
成果物が不完全であったこと、その納入が遅れたこと等により損害が生じた場合に、上記(1)のイに基づきあらかじめ契約書において在宅ワーカーが負担すると決めている範囲を超えて責任を負わせないようにすること。
(3) その他
イ 注文者の協力
注文者は、在宅ワーカーが業務を遂行する上で必要な打合せに応じる等、契約内容を履行するために必要な協力を行うことが望ましいこと。
ロ 在宅ワーカーの個人情報の保護
注文者は、在宅ワーカーの個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的をできる限り特定すること。また、あらかじめ本人の同意を得ないで、利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱わないこと。注文者は、在宅ワーカーの個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じるほか、個人情報の保護に関する法律を遵守すること。
ハ 健康確保措置
VDT作業(注)の適正な実施方法、腰痛防止策などの健康を確保するための手法について、注文者が在宅ワーカーに情報提供することが望ましいこと。
ニ 能力開発に関する支援
注文者は、在宅ワーカーが能力の開発及び向上を図ることができるように、業務の遂行に必要な技能及びこれに関する知識の内容及び程度その他の事項に関する情報の提供等、在宅ワーカーの能力開発を支援することが望ましいこと。
ホ 担当者の明確化
注文者は、あらかじめ、在宅ワーカーから問い合わせや苦情等があった場合にそれを受け付ける担当者を明らかにすることが望ましいこと。
ヘ 苦情の自主的解決
注文者は、在宅ワーカーから苦情の申出を受けたときは、在宅ワーカーと十分協議する等、自主的な解決を図るように努めること。
(注)VDT作業とは、ディスプレイ、キーボード等により構成されるVDT機器を使用してデータの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業をいう(平成14年4月厚生労働省「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(参考参照)。 |
* 情報通信機器を活用して在宅形態で自営的に行われる働き方のうち、請負的にサービスの提供を行うもの等を「在宅ワーク」といいます。
在宅ワークには多種多様なものがありますが、ガイドラインの適用対象となる在宅ワークとは、その中でも保護の必要性の高いと考えられる、事業者性が弱いものです。
<主な職種>
文書入力…手書き原稿等のパソコン入力等の作業
テープ起こし…講演、座談会等の録音テープの内容のパソコン入力等の作業
データ入力…各種調査票等の氏名、住所、調査内容等の各種データの入力作業
ホームページ作成…HTML(ハイパーテキスト記述言語)を用いてホームページを作成する作業
設計・製図…パソコン上で行う設計・製図の作業
* 法人形態により行っている場合や他人を使用している場合などは事業者性が高いと考えられるのでガイドラインの適用対象とはなりません。
* なお、外部記憶媒体(CD-R/CD-RWなど)の提供又は受渡しを受けて、原稿を当該外部記憶媒体に入力し、それを納入する場合、家内労働法上の「家内労働」に該当しますので、このガイドラインの適用対象とはなりません。
* 自らの仕事を注文する者だけでなく、他者から仕事を請け負い、これを個々の在宅ワーカーに注文する者(仲介業者)も当然注文者に含まれます。
* 契約後に疑義を生じ、トラブルが発生することのないよう、注文者は在宅ワーカーと話し合ったうえで、左記からの基本的な事項について文書で明示しましょう。
* 注文者が特定でき、確実に連絡が取れるよう明確にしておきましょう。
* 仕事の内容について、双方に思い違い、誤解があることが、報酬の支払等へのトラブルにつながりがちですので、内容が明確に分かるように注意しましょう。
* 報酬の支払等に関するトラブルが少なくないので、明確にしましょう。
* 通信費、宅配料金等仕事にかかる経費において、注文者が負担する経費がある場合には、あらかじめその範囲を明確にしましょう。
* 報酬の支払期日は納品日から起算して○日以内とされる場合も多いので、確実に成果物が納品されることが重要です。
* 契約締結後に契約内容に変更が生じることがあるため、契約締結時にあらかじめ契約条件の変更に関する取扱いについて明らかにしておきましょう。
契約条件の変更に当たっては、その後のトラブルの発生を防止するため、新たに契約を締結し直しましょう。その場合には、以前の契約に基づく作業の成果物、報酬等の取扱いについても注文者と在宅ワーカー双方で十分話し合いましょう。
* 成果物が不完全であった場合や在宅ワーカーの責任で契約書に定めた内容が守られなかった場合には、注文者は在宅ワーカーに補修や損害の賠償を求めることがあり得ます。その場合の取扱いについて、在宅ワーカーの責任を含めあらかじめ明確にしておきましょう。
* コンピュータープログラム、物品のデザイン等、成果物に知的財産権(著作権、意匠権等)が付与される場合、知的財産権の帰属先、当該権利が注文者に移転される場合の対価、権利が在宅ワーカーに帰属する場合の使用許諾の対価等をあらかじめ明確にしておきましょう。
* 注文者は、個人情報の取扱いを在宅ワーカーに委託する場合、その個人情報が安全に管理されるよう、在宅ワーカーに対して、必要かつ適切な監督を行わなければなりません。そのため、契約範囲外での個人情報の利用を禁止することなど、在宅ワーカーが守るべき個人情報の安全管理に関する事項などをあらかじめ明らかにしておきましょう。
* 在宅ワークは情報通信機器を活用した働き方であり、電子メールでのやり取りが一般的に行われていることから、電子メールによる契約条件の明示も差し支えないとしたものですが、在宅ワーカーから文書の交付を求められたときは、速やかに文書を交付する必要があります。
* 最低賃金とは、最低賃金法による最低賃金、つまり地域別最低賃金及び特定最低賃金を意味します。
* 在宅ワーカーの報酬と最低賃金とを比較する際には、標準的な在宅ワーカーの時間当たりの作業量から想定される時間当たりの報酬額をもとに比較するという方法が考えられます。
* 「通常の労働者の1日の労働時間(8時間)を目安とする」とは、仕事の納期を定めるに当たって、通常の雇用労働者の1日の所定内労働時間の上限である8時間を在宅ワーカーの作業時間の上限の目安とするという趣旨です。
* 8時間を目安として納期を設定する際には、標準的な在宅ワーカーの時間当たりの作業量から想定される、発注した仕事に必要な作業時間数をもとに設定するという方法が考えられます。
* 継続的に同一の注文者から仕事を得ている在宅ワーカーにおいては、仕事が突然打ち切られると生活設計の変更を余儀なくされることがありますので、その影響をできるだけ小さくするため早めに予告するという趣旨です。
* 打ち切る理由としては、例えば、注文者が「業務量を縮小したため」や在宅ワーカーが毎回のように「納期を守らないため」、「仕事の出来具合に問題があるため」などが考えられるでしょうが、いずれにしろ、その理由を在宅ワーカーに明確にすることが必要です。
* 仕事の完成によって報酬が支払われる請負契約の性質から、プロジェクト期間が延長されると報酬の支払時期も遅くなるため、在宅ワーカーの経済的負担が大きくなることが予想されます。
当初の契約に基づく作業の進み具合に応じて報酬の一部を支払う特例を定めるなどの対応が望まれます。
* 成果物が不完全であった場合や納期が遅れた場合の取扱いについては、このガイドラインにおいて文書明示すべき事項としていますが、そのような場合で損害が生じたときに、あらかじめ契約に定められている範囲を超えて在宅ワーカーに責任を負わせないようにしましょう。
損害の発生に関して、注文者側にも責任がある場合は、責任分担を無視して一方的に在宅ワーカーに責任を課すなど、不当な負担を課すことがあってはなりません。
* 眼精疲労、腰痛等を感じる在宅ワーカーが多く、特にVDT作業対策や腰痛の防止対策が重要です。注文者は、VDT作業の適正な実施方法、腰痛防止対策などの健康を確保するための方法について情報提供を行うことが望まれます。
* 在宅ワークは自営的な働き方であるため、在宅ワーカーは主に自己啓発によって能力開発を行う必要がありますが、習得すべき知識・技能に関する情報は少なく、自己啓発を行いにくい状況にあります。このため、注文者は、在宅ワーカーに必要と思われる能力開発に関する情報を提供する等により、在宅ワーカーの能力開発に関する支援を行うことが望まれます。
* 在宅ワーカーが作業を進める中で、問い合わせや苦情を申し出たい場合が生じたらすぐに連絡できるようにしておくと、問題の早期発見、トラブル防止に役立ちます。注文者は、それを受け付ける窓口となる担当者の氏名、連絡先をあらかじめ、在宅ワーカーに明らかにすることが望まれます。
* 厚生労働省では、平成14年4月に「VDT作業のための労働衛生管理のためのガイドライン」を策定し、VDT作業における労働衛生管理等に関する事業場での自主的対策を示しています。 |
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(参考)
VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン(抄)
本編は、事務所において行われるVDT作業(ディスプレイ、キーボード等により構成されるVDT機器を使用してデータの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業)を対象として策定されたVDTガイドラインのうち、「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」の対象者に関連の深い項目を抜粋した抄録版である。
VDTガイドラインでは作業を6つの種類に分類して必要な対策を提示しているが、本編においては対象者の作業が「単純入力型」、「拘束型」、「対話型」あるいは「技術型」に相当するものと整理し、1日の作業時間に応じて以下のように作業区分を定義する。
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作業区分 |
作業の種類 |
作業時間 |
A |
単純入力型 |
1日4時間以上 |
拘束型 |
B |
単純入力型 |
1日2時間以上4時間未満 |
拘束型 |
対話型 |
1日4時間以上 |
技術型 |
C |
単純入力型 |
1日2時間未満 |
拘束型 |
対話型 |
1日4時間未満 |
技術型 |
「単純入力型」とは、すでに作成されている資料、伝票、原稿等を機械的に入力していく作業をいう。
「拘束型」とは、コールセンター等における受注、予約、照会等の業務のように、一定時間、作業場所に在席するよう拘束され、自由に席を立つことが難しい作業をいう。
「対話型」とは、作業者自身の考えにより、文章、表等を作り上げていく作業等をいい、単に入力作業のみを行う者は含まない。
「技術型」とは、作業者の技術等により、コンピューターを用い、プログラムの作成、設計、製図等を行う作業をいい、CAD業務等において、主に機械的に入力する作業を行う場合は、単純入力作業型に分類すること。 |
1 作業環境管理
(1) | 照明及び採光 |
イ | 室内は、できるだけ明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないようにすること。 |
ロ | ディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下、書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とすること。また、ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすること。 |
ハ | ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は、必要に応じて窓にブラインド又はカーテン等を設け、適切な明るさとなるようにすること。
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(2) | 必要に応じ、次に掲げる措置を講ずること等により、グレア(視野内で過度に輝度が高い点や面が見えることによっておきる不快感や見にくさのことで、光源から直接又は間接に受けるギラギラしたまぶしさなどをいう)や映り込みの防止を図ること。 |
イ | ディスプレイ画面の位置、前後の傾き、左右の向き等を調整すること。 |
ロ | 反射防止型ディスプレイを用いること。 |
ハ | 間接照明等のグレア防止用照明器具を用いること。 |
ニ | その他グレアを防止するための有効な措置(反射率の低いフィルターの取り付け等)を講じること。
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(3) | VDT機器及び周辺機器から不快な騒音が発生する場合には、騒音の低減措置(しゃ音及び吸音の機能をもつつい立てで取り囲む、機器そのものを消音ボックスに収納する、床にカーペットを敷く、低騒音型機器を使用するなどの方法)を講じること。
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(4) | その他、換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去、休憩等のための設備等、必要な措置等を講じること。
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2 作業管理
(1) | 作業時間等 |
イ |
一日の作業時間
(イ) |
作業区分Aの作業者については、視覚負担をはじめとする心身の負担を軽減するため、ディスプレイ画面を注視する時間やキーを操作する時間をできるだけ短くすることが望ましく、他の作業を組み込むこと又は他の作業とのローテーションを実施することなどにより、一日の連続VDT作業時間が短くなるように配慮すること。 |
(ロ) |
作業区分Bの作業者についても、同様に、VDT作業が過度に長時間にわたり行われることのないように指導すること。 |
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ロ | 一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分〜15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1回〜2回程度の小休止を設けること。
作業休止時間は、ディスプレイ画面の注視、キー操作又は一定の姿勢を長時間持続することによって生じる眼、頸、肩、腰背部、上肢等への負担による疲労を防止することを目的として、リラックスして遠くの景色を眺めたり、眼を閉じたり、身体の各部のストレッチなどの運動を行ったり、他の業務を行ったりするための時間であり、いわゆる休憩時間ではない。 小休止とは、一連続作業時間の途中でとる1分〜2分程度の作業休止のことである。 | |
ハ | 疲労の蓄積を防止するため、個々の作業者の特性を十分に配慮した無理のない適度な業務量となるよう配慮すること。
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(2) |
VDT機器等 |
イ | VDT機器を導入する際には、作業者への健康影響を考慮し、作業者が行う作業に最も適した機器を導入すること。
一般に、デスクトップ型は、一定の作業面の広さが必要であるが、キーボードが大きく、自由に移動させることができるため、作業姿勢も拘束されにくく、長時間にわたり作業を行う場合等に適している。
ノート型は、キーボードが小さく、自由に移動させることができないため、作業姿勢も拘束され易いが、作業面の広さは少なくてすむため、作業面の広さが限られている場合等に適している。 |
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ロ | デスクトップ型機器
(イ) | ディスプレイは、次の要件を満たすものを用いること。 |
a | 目的とするVDT作業を負担なく遂行できる画面サイズであること。 |
b | フリッカーは、知覚されないものであること。 |
c |
ディスプレイ画面上の輝度又はコントラストは作業者が容易に調整できるものであることが望ましい。 |
(ロ) | 入力機器(キーボード、マウス等) |
a |
入力機器は、次の要件を満たすものを用いること。
(a) |
キーボードは、ディスプレイから分離して、その位置が作業者によって調整できることが望ましい。 |
(b) |
キーボードのキーは、文字が明瞭で読みやすく、キーの大きさ及びキーの数がキー操作に適切であること。 |
(c) |
マウスは、使用する者の手に適した形状及び大きさで、持ちやすく操作がしやすいこと。 |
(d) |
キーボードのキー及びマウスのボタンは、ストローク及び押下力が適当であり、操作したことを作業者が知覚し得ることが望ましい。 |
|
b | 目的とするVDT作業に適した入力機器を使用できるようにすること。 |
c | 必要に応じ、パームレスト(リストレスト)を利用できるようにすること。 | |
ハ | ノート型機器
携帯性を重視した設計(画面が小さい、キーストロークが短い、キーピッチが小さいなど)のノート型機器では、例えば小さいキーボードを手が大きい作業者が使用する場合には、連続キー入力作業で負担が大きくなることがあり、小型の画面は文字が小さく視距離が短くなりすぎる傾向がある。また、キーボードとディスプレイが一体となった構成は、作業者に特定の拘束姿勢を強いることや過度の緊張を招くことなどがあるため、使用する作業者や目的とするVDT作業に適した機器を使用させる必要がある。 |
(イ) |
目的とするVDT作業に適したノート型機器を適した状態で使用させること。 |
(ロ) |
ディスプレイは、上記ロの(イ)の要件に適合したものを用いること。 |
(ハ) |
入力機器(キーボード、マウス等)は、上記ロの(ロ)の要件に適合したものを用いること。ただし、ノート型機器は、通常、ディスプレイとキーボードを分離できないので、小型のノート型機器で長時間のVDT作業を行う場合は、外付けキーボードを使用することが望ましい。 |
(ニ) |
必要に応じて、マウス等を利用できるようにすることが望ましい。 |
(ホ) |
数字を入力する作業が多い場合は、テンキー入力機器を利用できるようにすることが望ましい。 | |
ニ |
携帯情報端末は、長時間のVDT作業に使用することはできる限り避けることが望ましい。 |
ホ |
ソフトウェアは、次の要件を満たすものを用いることが望ましい。
(イ) |
目的とするVDT作業の内容、作業者の技能、能力等に適合したものであること。 |
(ロ) |
作業者の求めに応じて、適切な説明が与えられるものであること。(ヘルプ機能など) |
(ハ) |
作業上の必要性、作業者の技能、好み等に応じてインターフェイス用のソフトウェアの設定が容易に変更できること。 |
(ニ) |
作業者の操作の誤りにより、それまでに入力した膨大な量のデータが消失し、復元不可能な場合、作業者に大きな負担を与えることとなるので、操作ミス等によりデータ等が消去された場合に容易に復元可能なものであること。 |
|
ヘ |
椅子は、次の要件を満たすものを用いること。
(イ) |
安定しており、かつ、容易に移動できること。 |
(ロ) |
床からの座面の高さは、作業者の体形に合わせて、適切な状態に調整できること。
実際に座って、クッション材が2cm〜3cm圧縮された状態の座面の高さが37cm〜43cm程度の範囲で調整できることが望ましい。市販されている椅子の座面高の表示は、クッション材が圧縮されていない外形表面の高さが一般的であるので注意。椅子の調整範囲で調整できない場合は、フットレストの利用等必要に応じて対応することが望ましい。 | |
(ハ) |
複数の作業者が交替で同一の椅子を使用する場合には、高さの調整が容易であり、調整中に座面が落下しない構造であること。 |
(ニ) |
適当な背もたれを有していること。また、背もたれは、傾きを調整できることが望ましい。 |
(ホ) |
必要に応じて適当な長さのひじ掛けを有していること。 |
|
ト |
机又は作業台は、次の要件を満たすものを用いること。
(イ) |
作業面は、キーボード、書類、マウスその他VDT作業に必要なものが適切に配置できる広さであること。 |
(ロ) |
作業者の脚の周囲の空間は、VDT作業中に脚が窮屈でない大きさのものであること。 |
(ハ) |
机又は作業台の高さについては、次によること。 |
a |
高さの調整ができない机又は作業台の場合、床からの高さは概ね65cm〜70cm程度のものを用いることが望ましい。 |
b |
高さの調整が可能な机又は作業台の場合、床からの高さは60cm〜72cm程度の範囲で調整できることが望ましい。
|
|
(3) |
自然で無理のない姿勢でVDT作業を行うため、次の事項に留意して、椅子の座面の高さ、キーボード、マウス、ディスプレイの位置等を総合的に調整すること。 |
イ | 作業姿勢
(イ) |
椅子に深く腰をかけて背もたれに背を十分にあて、履き物の足裏全体が床に接した姿勢を基本とすること。また、十分な広さをもち、かつ、すべりにくい足台を必要に応じて備えること。 |
(ロ) |
椅子と大腿部膝側背面との間には手指が押し入る程度のゆとりがあり、大腿部に無理な圧力が加わらないこと。 |
|
ロ | ディスプレイ
(イ) |
おおむね40cm以上の視距離が確保できるようにし、必要に応じて適切な眼鏡による矯正を行うこと。 |
(ロ) |
ディスプレイは、その画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにすることが望ましい。 |
(ハ) |
ディスプレイ画面とキーボード又は書類との視距離の差が極端に大きくなく、かつ、適切な視野範囲になること。 |
(ニ) |
ディスプレイは、作業者にとって好ましい位置、角度、明るさ等に調整すること。 |
(ホ) |
ディスプレイに表示する文字の大きさは小さすぎないように配慮し、文字高さが概ね3 mm以上とするのが望ましい。 | |
ハ |
マウス等のポインティングデバイスにおけるポインタの速度、カーソルの移動速度等は、作業者の技能、好み等に応じて適切な速度に調整すること。 |
ニ |
ソフトウェアの表示容量、表示色数、文字等の大きさ及び形状、背景、文字間隔、行間隔等は、作業の内容、作業者の技能等に応じて、個別に適切なレベルに調整すること。
最近のVDT機器はソフトウェアによって、種々の条件の設定・調整が可能であり、ここに掲げているようなソフトウェアによる設定を徹底することによって、VDT作業の改善を図ることが可能である。例えば、多くのディスプレイは、画面サイズ等で最適な表示容量が存在するため、変更できるからといって、むやみに設定を変更すると(例えば大表示容量1600×1200画素等)文字等が読みにくくなる場合があるので注意を要する。
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3 点検及び清掃
(1) |
日常の業務の一環として、作業開始前又は一日の適当な時間帯に、採光、グレアの防止、換気、静電気除去等について点検するほか、ディスプレイ、キーボード、マウス、椅子、机又は作業台等の点検を行うこと。
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(2) |
照明及び採光、グレアの防止、騒音の低減、換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去等の措置状況及びディスプレイ、キーボード、マウス、椅子、机又は作業台等の調整状況について定期に点検すること。
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(3) |
日常及び定期に作業場所、VDT機器等の清掃を行い、常に適正な状態に保持すること。
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4 健康管理
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作業区分A |
作業区分B |
作業区分C |
配置前 |
定期 |
配置前 |
定期 |
配置前 |
定期 |
業務歴の調査 |
○ |
○ |
○ |
○ |
自覚症状を訴える者に対して、必要な項目の調査または検査を実施 |
既往歴の調査 |
○ |
○ |
○ |
○ |
自覚症状の有無の検査 |
眼疲労を主とする視器に関する症状 |
○ |
○ |
○ |
○ |
上肢・頸肩腕部及び腰背部を主とする筋骨格系の症状 |
○ |
○ |
○ |
○ |
ストレスに関する症状 |
○ |
○ |
○ |
○ |
眼科学的検査 |
視力検査 |
5m視力の検査 |
○ |
(矯正視力のみで可) |
○ |
(医師) |
近見視力の検査 (50cm視力または30cm視力) |
○ |
(矯正視力のみで可) |
○ |
(医師) |
屈折検査 (視力検査で異常がなければ省略可) |
○ |
(医師) |
○ |
(医師) |
眼位検査 |
○ |
(医師) |
○ |
(医師) |
調節機能検査 (視力検査で異常がなければ省略可)
|
○ |
(医師) |
○ |
(医師) |
筋骨格系に関する検査 |
上肢の運動機能、圧痛点等の検査 (問診で異常がなければ省略可)
|
○ |
○ |
(医師) |
(医師) |
その他医師が必要と認める検査 |
○ |
○ |
(医師) |
(医師) |
(医師):医師の判断により必要と認められた場合に実施
|
ハ |
健康診断結果に基づく事後措置
配置前又は定期の健康診断によって早期に発見した健康阻害要因を詳細に分析し、有所見者に対して次に掲げる保健指導等の適切な措置を講じるとともに、予防対策の確立を図ること。
(イ) |
業務歴の調査、自他覚症状、各種検査結果等から愁訴の主因を明らかにし、必要に応じ、保健指導、専門医への受診指導等により健康管理を進めるとともに、作業方法、作業環境等の改善を図ること。また、職場内のみならず職場外に要因が認められる場合(家庭における長時間にわたるインターネットの利用、テレビゲームを長時間行う等の直接的な眼疲労の原因となるもののほかに、生活習慣、悩みごと等の間接的な疲労要因が考えられる。)についても必要な保健指導を行うこと。
|
(ロ) |
VDT作業の視距離に対して視力矯正が不適切な者には、支障なくVDT作業ができるように、必要な保健指導を行うこと。(近見視力が、片眼視力で概ね0.5以上となるよう指導を行うことが望ましい。)
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(ハ) |
作業者の健康のため、VDT作業を続けることが適当でないと判断される者又はVDT作業に従事する時間の短縮を要すると認められる者等については、産業医等の意見を踏まえ、健康保持のための適切な措置を講じること。
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|
(2) |
作業者が気軽に健康について相談し、適切なアドバイスを受けられるように、プライバシー保護への配慮を行いつつ、メンタルヘルス、健康上の不安、慢性疲労、ストレス等による症状、自己管理の方法等についての健康相談の機会を設けるよう努めること。 また、パートタイマー等を含むすべての作業者が相談しやすい環境を整備するなど特別の配慮を行うことが望ましい。 |
(3) |
就業の前後又は就業中に、体操、ストレッチ、リラクゼーション、軽い運動等を行うことが望ましい。
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5 | 労働衛生教育
作業者に対して、次の事項について教育を行うこと。また、当該作業者が自主的に健康を維持管理し、かつ、増進していくために必要な知識についても教育を行うことが望ましい。
イ |
VDT作業の健康への影響 |
ロ |
照明、採光及びグレアの防止 |
ハ |
作業時間等 |
ニ |
作業姿勢 |
ホ |
VDT機器等の調整・使用法 |
ヘ |
作業環境の維持管理 |
ト |
健康診断とその結果に基づく事後措置 |
チ |
健康相談の体制 |
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職場体操等の実施 |
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その他VDT作業に係る労働衛生上留意すべき事項 |
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