別添

廃棄物焼却施設解体工事におけるダイオキシン類による健康障害防止について(案)


 本対策の基本的考え方について
(1) 廃棄物焼却施設においては、焼却炉本体、煙道設備、除じん設備、排煙冷却設備、洗煙設備、排水処理設備、廃熱ボイラ等がダイオキシン類に汚染されているおそれがあるとともに、これらの設備の解体に伴い、ダイオキシン類が作業場全体に拡散する可能性がある。
 このため、屋内の解体作業場全体(ただし、解体作業場が施設建物の一区画で他と隔離できる場合はその区画)を平成11年12月2日付基発第688号「ダイオキシン類による健康障害防止のための対策要綱」における第3管理区分として対策を講じるほか、以下に掲げる各項目に係る対策を講ずること。
 この解体工事には、上記汚染のおそれのある設備の解体を伴う工事を含むこと。
 なお、作業に当たっては、別紙1のフローに示す工程順を遵守すること。
(2) 本対策は、廃棄物の焼却を主たる目的とする施設の解体工事のため策定したものであるが、小型の焼却炉の解体作業においても、本対策に準じた対策を講じることが望ましいこと。

 保護具及び作業場所の管理
 サンプリング、汚染物除去作業、解体作業等においては保護具に関して以下の措置を講じること。
(1) 呼吸用保護具は、全面形面体のプレッシャデマンド形エアラインマスク(JIST8153を満たすもの)、全面形面体のプレッシャデマンド形空気呼吸器(JIST8155を満たすもの)、又は化学防護服のうち送気式気密服(JIST8155を満たすもの)を使用すること。)  また、高所作業等でエアラインのホースが作業の妨げとなる場合及びエアラインのホース延長が困難な場合は、複合式エアラインマスク等、エアラインを使用しないで移動が可能な保護具を使用するとともに、当該作業者の作業箇所近辺に十分な能力を有するエアラインの接続箇所を設置すること。
(2) 作業の際には保護衣として化学防護服(JIST8115)・化学防護手袋(JIST8116を満たすもの。ただし、開放型防護服は除く。)・化学防護長靴(JIST8117を満たすもの)を使用すること。
(3) 呼吸用保護具・保護衣等を着用する際は顔面・首筋・手首・足首等肌が露出しないよう注意し、着用状態を他の作業者が点検すること。また呼吸用保護具・保護衣等を作業中にはずさないよう徹底すること。
(4) 作業場と更衣室の間にエアシャワー等保護衣等の汚染除去設備を設け、かつ、水を流し、又は十分湿らせたマットを置く等労働者の足部に付着した焼却灰等を除去するための設備等を設けること。また、エアシャワー使用時は、粉じんへのばく露を防ぐため、呼吸用保護具・保護衣等は着用したままとすること。
(5) 呼吸用保護具・保護衣等の着脱は作業場外に設けた更衣場所において行い、汚染された呼吸用保護具・保護衣等は、更衣場所から汚染されたまま持ち出さないこと。また、当該保護衣等はそれ以外の衣類から隔離して保管させ、かつ洗浄等により速やかに汚染の除去を行うこと。
(6) 呼吸用保護具・保護衣等は汚染されていないことを使用前に確認すること。
(7) 作業場所は、空調又はスポットクーラーを使用することにより暑熱な状態にならないように管理すること。
(8) 作業内容及び作業強度を考慮し、昼休み等の時間以外に一定時間ごとに休憩するとともに作業時間等についても配慮すること。また、休憩場所は作業場以外の場所に設置すること。
(9) 作業場所出入り口付近にうがい、洗面等のできる洗浄設備を設置するとともに、使用しやすい場所にシャワー等の洗身設備を設置すること。
(10) 作業場内では飲食・喫煙は厳禁し、作業場内に飲食物・タバコ等を持ち込ませないこと。

作業環境中のダイオキシン類濃度の測定
 解体工事開始前、汚染物除去作業中、解体作業中に、それぞれ少なくとも1回以上、作業環境中のダイオキシン類濃度測定のための空気試料を採取し、その結果を記録すること。その際には、粉じん中のダイオキシン類とともに、ガス状のダイオキシン類についても測定を行うこと。
 なお、粉じん中のダイオキシン類の濃度測定については、平成11年12月2日付基発第688号「ダイオキシン類による健康障害防止のための対策要綱」の1(4)に示す「ダイオキシン類に係る作業環境測定及び評価方法」に準じて行うこと。

 解体対象設備のダイオキシン類汚染調査
 解体作業を行う前に、焼却炉本体、煙道、除じん設備、排煙冷却設備、洗煙設備、廃熱ボイラ、排水設備の内部等ダイオキシン類に汚染されているおそれのある箇所のダイオキシン濃度を調査すること。
(1) サンプリング時の安全対策
 サンプリング作業を行うに当たっては、サンプリング箇所のダイオキシン濃度が未知であることから、ダイオキシン類の飛散等による不測の事態を防ぐため作業は必ず複数の作業者により行うこと。
(2) サンプリング対象物
 サンプリング対象物は、焼却炉内焼却灰、炉壁付着物、廃熱ボイラ付着物、煙道内飛灰、除じん装置内飛灰、排煙冷却水、排水処理設備内沈殿物等とすること。
(3) サンプリング方法の選択
 焼却灰、焼却残渣、すす、タール等で固化したものについては、その性状、形状、量等を調査し、サンプリングに偏りがないようにすること。
(4) 追加的サンプリングの実施
 調査の結果、高濃度の汚染(3.0ng/g以上)が検出された場合は、追加調査によりその周囲の箇所における汚染状況の追加調査を行うこと。また、作業中に新たな固形付着物等が発見された場合等、新たにサンプリングを実施する必要が生じた場合には、速やかに当該箇所を隔離する等の措置を講じた上、当該箇所のサンプリングを実施すること。
(5) サンプリング記録の保存
サンプリングにあたっては以下の項目について記録すること。
@ 日時(年、月、日、時間)
A 実施者名
B サンプリング時の温度、湿度
C サンプリング方法(方法及び使用した工具等)
D サンプリング箇所を示す写真・図面
E その他
(6) ダイオキシン類汚染調査に係る精度管理
 サンプルの採取・分析は、国が行う精度管理事業等により、適切に精度管理が行われている機関において実施すること。

 サンプル中のダイオキシン類の分析結果の活用等
 サンプル中のダイオキシン類の分析結果は、解体作業及びその後の解体により生じた廃棄物の処理作業を行う際に重要な情報となることから、その結果を記録・保管するとともに、以下の措置により関係者に幅広く周知すること。
(1) ダイオキシン類分析結果の周知
 解体作業にあたる労働者及び解体廃棄物の取り扱い作業者等に対し、以下の情報を労働衛生教育等の際に周知するとともに、ダイオキシン類濃度等の情報を作業場の見やすい場所に掲示すること。
@ 解体対象設備に関連する試料中ダイオキシン類濃度
A ダイオキシン類の危険性
B 緊急時の措置
C サンプリング記録
D その他ばく露防止に必要な事項
(2) 作業方法の選定
 ダイオキシン類による汚染が認められた設備、当該設備の付属配管又はこれに付随する複雑な構造物等であって、汚染除去が確認できない箇所等については、手持ち工具・クローラ式鉄骨カッタ等を用いて解体作業を行うこと。
(3) 記録の開示及び保存等
 上記のダイオキシン類分析の結果等は、労働基準監督署長あて報告するとともに、幅広く開示すること。

汚染除去作業
 解体作業等の前に対象物の汚染除去を実施すること。また、汚染除去の実施に際しては以下の点に留意すること。なお、これらの準備作業において、槽、ピット等の内部において作業を行う場合は、事前に作業場所の酸素濃度等を測定すること。また、作業は複数の作業者により行うこと。
(1) 排水設備の準備
 解体作業における排水を貯留、処理するために、既存の排水設備の保守・点検等を行い、使用可能な状態としておくこと。また、設備の老朽化等によりこれらの設備が使用困難である場合には、別途代替可能な設備等を準備すること。
(2) 清掃の実施
 焼却灰等の堆積物は事前に清掃により取り除くこと。なお、作業は、散水又は水の噴霧により湿潤な状態にし、粉じんの発生を防止すること。
(3) 解体対象設備の汚染除去
 解体前に対象設備の汚染除去を以下の方法により行うこと。
@ 炉内壁及び設備内部等、対象部分が確認できる箇所については、高圧水洗浄等により汚染除去を行うこと。
A 煙道等、狭隘な場所については、フランジ部分を手作業により外した後、高圧水洗浄等により汚染除去を行うこと。
B ダイオキシン類に汚染されているおそれのある水管等、パイプ部分については洗缶剤の使用等により汚染除去を行うこと。
C ポンプ、ブロワー等構造が複雑な機器類は、機械油等を回収した上で汚染除去を行うこと。
D 稼動施設の一部設備解体工事で耐火物及び電気設備等、冠水により当該機器に障害が生ずるおそれのある場合には当該設備を養生等により隔離した上で作業を行うこと。また、これが著しく困難な場合は洗浄場所を隔離した上で乾式の汚染除去を行うこととしても差し支えないこと。
(4) 汚染除去結果の確認
 汚染除去結果の確認は、9(1)の作業責任者がレンガ、不定形耐火物、構造物材料の表面の露出を確認することにより行うとともに、当該場所の汚染除去前、汚染除去後の写真を記録すること。
(5) 汚染除去結果の報告
 汚染除去結果は、解体作業開始前に労働基準監督署長あて報告すること。

 解体作業
(1) 耐火物の解体作業等、粉じんを発生させるおそれのある作業は、散水又は水の噴霧により発じんを抑え、かつ汚れが流れ出さない程度の湿潤な状態にし、粉じんの発生を防止すること。また、すす等散水により粉じんの飛散防止措置をとることが困難な場合には、粉じん飛散防止処理剤による固化等によりこれを行った上で作業を行うこと。
(2) ダイオキシンで汚染されている物の溶断・溶接作業は行わないこと。また、これら材料を加熱する作業も行わないこと。
(3) 溶断・溶接対象箇所及びその周辺で伝熱等により加熱が予想される部分に汚染がないことを確認した上で、溶断・溶接作業を行う場合には、作業場所はシート等により内部の空気が外部に漏れないように密閉・区分し、内部の空気は換気装置を用いて換気するとともに外部に対して負圧に保つこと。また、この際にはHEPAフィルター並びにチャコールフィルターにより排気を適切に処理すこと。
 なお、パイプ類及び煙道設備等筒状の構造物等を溶断する場合は内部の空気を吸引・減圧した状態で、外部から作業を行うこと。

 排気・排水・汚染物の処理
(1) 汚染除去作業及び解体作業によって生じた汚染物は、関連法令に基づき必要な場合には、飛散防止措置を講じたうえで密閉容器に密封し、処理されるまでの間、作業の妨げとならない場所に隔離・保管すること。
(2) 汚染除去作業及び解体作業により生じるダイオキシン類により汚染された排水は、環境関係法令で定める排出水の基準を満たすことが可能な凝集沈殿法等の処理施設で処理した後、外部に排水すること。また、外部に排水する排水のダイオキシン類濃度を測定し、この結果と排水年月日、排水量等を記録すること。なお、上記の要件を満たす既存の排水処理施設がある場合、これにより処理して排水することとしても差し支えない。
(3) 作業場内から出る排気はプレフィルター、HEPAフィルター、チャコールフィルターの併用により適切に処理を行い排出すること。

 安全衛生管理体制
(1) 作業責任者の選任等安全衛生管理体制の整備
 作業に当たっては、第一種衛生管理者、衛生工学衛生管理者、労働衛生コンサルタント、又は特定化学物質等作業主任者の資格を有するなど、化学物質管理に関して十分な知識を有する者のうちから作業責任者を選任し、作業中常時、作業管理、作業環境管理、保護具の着用状況の確認等の職務に当たらせること。
(2) 労働衛生教育の実施
解体工事に従事する労働者に対して、次の事項について労働衛生教育を行うこと。
@ ダイオキシン類の性状、有害性等に関すること。
A 解体対象設備に関連する試料中のダイオキシン類濃度等に関すること。
B ダイオキシン類のばく露を低減させるための措置に関すること。
C 作業手順に関すること。
D 発散源を密閉する設備、作業を自動化又は遠隔操作する設備、局所排気装置等についての作業開始時の点検に関すること。
E 呼吸用保護具等の種類、性能、使用方法及び保守管理に関すること。
F 事故時等における措置に関すること。
(3) 記録の保存  サンプリング記録、ダイオキシン類分析結果、呼吸用保護具の使用記録、個々の作業記録、作業環境測定結果、排気・排水の記録等は30年間保存すること。

10 解体工事開始前の届出
 焼却能力が毎時200kg以上又は火格子面積が2u以上の焼却施設の解体工事の開始・再開に際しては、工事開始14日前までに必要事項を記載した上、別添様式(別紙2)に以下の書類を添付して労働基準監督署長あて提出すること。また、下記(5)の書類には本緊急対策に対応した対策を記載すること。
(1) 解体作業を行う場所の周囲の状況及び四隣との関係を示す図面
(2) 解体工事を行う焼却施設、建設物の概要を示す図面(平面図、立面図、焼却炉並びにこれに付帯した廃棄設備及び排水設備の概要を示すもの)
(3) 工事用の機械、設備、建設物等の配置を示す書面
(4) 工法の概要を示す書面又は図面
(5) ダイオキシン類ばく露を防止するための方法及び設備の概要を示す書面又は図面(除去処理工法、作業の概要、除去後の汚染物管理計画、使用する保護具等)
(6) 工程表

 なお、これらの書類に記載された内容に変更が生じるときにはその内容を速やかに労働基準監督署長あて提出すること。


(注) 下線部はご意見に基づき変更した個所である。

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