第1節 ものづくり基盤技術に関する研究開発の推進等
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1. | ものづくり基盤技術に関する研究開発の実施及びその成果の普及
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(1)国の研究開発制度の利用
製造技術を核とした企業が、その技術水準を維持し更に向上させるためには、ものづくり基盤技術を活用し、新たな製品、製造方法等の開発に取り組むことが重要である。
このため、ものづくり事業者の研究開発を支援することにより、ものづくり事業者の技術革新を支えるものづくり基盤技術の維持・発展に向けた取組を促進するとともに、国立試験研究機関等によりものづくり事業者の技術の高度化に資するものづくり基盤技術に関する研究開発を実施し、その成果を広く提供していく。
また、ものづくり事業者がものづくり基盤技術に関しリスクの高い研究開発を推進するためには、国による補助金等を積極的に活用していくとともに、国からの受託研究等を通じて国の研究開発に参加していくことが効果的である。
このため、研究開発に係る産学官の連携の促進、ものづくり基盤産業を支える中小企業者等に対する研究開発のための補助金等の支出の機会の増大に努めるとともに、各種研究開発の評価を適切に行うよう努める。
さらに、大学、国立試験研究機関等の研究成果の特許化や、かかる研究成果に基づく新技術の育成、事業化開発、民間へのあっせん、国の委託によって開発された技術の特許権等を受託者が保有できるようにすることにより、研究開発成果の事業化等を促進する。
(2)研究開発成果の普及
ものづくり基盤技術の高度化や、新たな創造については、特許取得後の積極的な技術の普及、技術利用の拡大及びそれらの技術を利用した更なる技術革新の促進が必要である。
このため、大学、国立試験研究機関等の研究開発活動に関する情報のデータベース化、各種技術展示会等の実施、技術交流等の促進等により研究開発成果の普及を推進する。
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2. | ものづくり基盤技術に関する研修及び相談・助言
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(1)ものづくり基盤技術に関する研修
ものづくり事業者が、ものづくり基盤技術を維持・発展させていくためには、基礎的な技術に関する知識を習得するとともに、ものづくり事業者の直面する環境問題や情報化等の新たな課題に対する知識を習得することが重要である。
このため、これら知識の習得に資する中小企業者向け研修の充実等の施策を講じる。
(2)ものづくり基盤技術に関する相談・助言
ものづくり事業者が多様なニーズと技術力の向上に対応するためには、公設試験研究機関等が実施しているものづくり基盤技術に関する相談・助言を継続的に充実強化させることが重要である。特に、地域の中小企業から技術に関する相談相手として期待されている公設試験研究機関が国立試験研究機関、大学等と密接な連携を図りつつ、ものづくり事業者に適切な助言等を行うことは、ものづくり事業者の技術力の向上等に効果的である。
このため、公設試験研究機関の職員がものづくり事業者に対し、的確な研修及び相談・助言を行うことができるよう、当該職員に対し必要な研修を行う。
また、産学官のネットワーク等を活用して、公設試験研究機関等が行うものづくり基盤技術に関する相談・助言において蓄積される技術情報の提供を図る。
(3)ものづくりに係る技能・ノウハウの客観化・マニュアル化
公設試験研究機関などがものづくり事業者に研修や助言などを行う場合に、ものづくりに係る技能・ノウハウが客観化・マニュアル化されていると効率的である。 また、ものづくり事業者にとっては、これまでに蓄積された技能・ノウハウを情報技術の活用などにより科学的に分析し、再現性のある技術として機械等に代替していくことを通じて、効率的な設計・生産やこれらの技能・ノウハウの維持・発展を図ることが重要である。
このため、これらの技能・ノウハウを客観化し、データベースやマニュアルとして体系化、保管し、ものづくり事業者が広く活用できるようにすることを推進する。
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3. | 特許権その他の工業所有権に関する情報の提供等
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ものづくり基盤技術を振興するためには、特許権その他工業所有権の適切な保護及び利用の促進が重要である。
このため、これらの知的所有権に関する国際調和、迅速な権利化、特許裁判の迅速化等を図るほか、知的財産権に関する情報の提供、知的財産権の取引市場の発展に資する施策を講じることにより、その利用を促す環境づくりに努める。
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第2節 ものづくり事業者と大学等の連携
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1. | 大学等との連携の必要性 |
ものづくり事業者が、新たな付加価値を生み出し、高めていくにあたっては、自己の経営資源のみならず、外部に存在する経営資源を有効に活用することが極めて重要である。特に、ものづくり事業者が既存製品の改良、新製品の開発に必要となる研究開発を行うためには、大学、高等専門学校及び大学共同利用機関(以下「大学等」という。)における研究成果や研究者の持つ技術・知識等を活用することが重要である。
また、次代を担うものづくり産業を背負って立つ人材を育成する観点からも、大学等は重要な役割を果たすことが期待される。
このため、ものづくり事業者と大学等の連携を促進する必要がある。
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2. | 大学等との連携の円滑化 |
ものづくり事業者と大学等との円滑な連携を進めるには、大学等による積極的な情報の発信及び大学等の情報に対するアクセス環境を整備することが必要である。このため、大学等の研究者とものづくり事業者との間で、産学官交流の場を設け、大学等の研究者による研究内容の紹介、個別相談等を実施することや、ものづくり事業者のニーズに合わせ、大学等の研究者を紹介・引き合わせる仲立ち役の活動を円滑化する環境整備を推進する。
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3. | 大学等の能力を活用した研究開発の促進
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ものづくり事業者と大学等の研究者との共同研究等による研究開発を行うことは、大学等の持っている研究能力とものづくり事業者の持つ技術力等を結集することにより、優れた研究成果が期待されるとともに、大学等との交流を通じて、ものづくり事業者の研究能力を高めることが期待される。
このため、現在、国立大学に連携・協力の窓口として整備されている共同研究センターにおける共同研究や受託研究、研究情報の提供、研究者等に対する技術研修、技術相談を促進する。また、高等専門学校に整備されている地域共同テクノセンターにおける技術相談を促進する。さらに、大学等との共同研究制度や産学官連携型の研究開発制度の利用を促進するほか産学官連携型の共同研究施設の整備を促進する。
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4. | 大学等の研究成果の利用の促進 |
大学等には、我が国の研究資源の多くが集中しており、多くの研究成果が生み出されている。それらの研究成果の中には、ものづくり基盤技術の高度化、新技術の開発につながるものとして有望なものも存在すると考えられることから、大学等における研究成果がものづくり事業者へ円滑に移転されるようにするための措置を講じることが必要である。このため、研究成果を民間企業へ移転する技術移転機関(TLO)の整備の促進等に努めるとともに、移転された研究成果を活用する民間企業に対する支援措置の積極的な活用を促進する。また、大学教官等の民間企業等への兼業を通じたものづくり基盤技術の移転の促進が期待される。
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5. | 研究開発に係る人材の育成 |
ものづくり基盤技術を担う研究開発に係る人材の育成には、大学等をはじめとした教育機関と連携したインターンシップ(学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと)の活用を図ることが有効である。また、高度なものづくり基盤技術を支える大学等における技術者教育の充実向上を目指すことが必要である。
このため、インターンシップの導入を促進する支援措置の実施を図るとともに、産業界における人材ニーズを反映した、大学等における技術者教育の外部認定制度(アクレディテーションシステム)の導入を推進する。
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第1節 失業の予防その他雇用の安定 |
1. | 雇用創出に対する支援 |
新分野進出等を行う中小企業に対する支援を通じた雇用機会の創出を図ることは、ものづくり労働者の雇用の安定のためにも重要な課題となっているが、それら中小企業にあっては雇用管理についての知識・ノウハウの蓄積に欠けている場合も多いため、雇用管理改善に取り組む企業に対する助成金等の各種支援措置のほか、創業に必要な能力の習得を付与する機会を提供することなどにより、新分野進出等を支援する。また、官民の各機関・団体による連携の場の構築、ベンチャー企業等に対する相談援助等や起業家に対する情報提供を推進する。
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2. | 失業なき労働移動の支援 |
ものづくり労働者にとっても、いったん離職すると直ちに再就職することに困難が伴う中でできるだけ失業を経ずに新たな就業機会を得ることが必要であることから、雇用調整を余儀なくされている事業所から出向・再就職のあっせんにより労働者を受け入れる事業主や労働移動前後の教育訓練を行う事業主に対する助成を行うことなどにより、産業間・企業間の失業なき労働移動を支援する。
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3. | 景気循環に対応した雇用の維持・安定対策 |
ものづくり労働者の雇用の維持を図ることは、労働者の雇用の安定のみならず、ものづくり基盤産業の維持・発展、ものづくり労働者の職業能力の有効発揮の観点からも重要な課題である。
このため、景気の変動、産業構造の変化等に伴い事業活動の縮小を余儀なくされ、休業、教育訓練又は出向を行う事業主を対象とする雇用調整助成金について、その機動的、弾力的運用を図るなど、企業の雇用維持努力に対する支援に努める。
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4. | 労働力需給調整機能の強化 |
ものづくり労働者にとっても、労働力需給のミスマッチを解消し、失業期間の短縮が図られるようにすることが必要であることから、公共職業安定機関の情報提供機能の強化等を図るほか、公共職業安定機関と民間職業紹介事業者等がそれぞれ特性を十分に活かしつつ需給調整の役割を果たすようにするなど労働市場全体の需給調整機能の強化を図る。
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5. | 技能を活用した地域雇用開発等の推進 |
特に製造業が集積している地域においては、生産拠点の海外移転等の経済上の理由により雇用状況の悪化が懸念されるが、その一方で、我が国のものづくりの基盤となる技能が集積しており、これらの技能を活用した雇用開発が緊急の課題となっている。 このため、このような地域における技能の継承・発展やそれらの技能を活かした新事業展開による雇用機会の創出、人材育成の取組等を推進し、ものづくり労働者の雇用の安定を図る。
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6. | 若年者に対する職業意識の啓発等 |
新規学卒者の早期離職等により若年者の完全失業率が上昇し、また、若年者のものづくり離れが言われる中で、ものづくり労働者となる若年者に対しても、ものづくりの重要性を含め職業意識の啓発を図るとともに、自己の適性にあった適切な職業選択を支援することが重要である。
このため、在学中からセミナーや職場見学を実施するほか、インターンシップの導入等を促進する。
また、職業の変化・多様化が進む中で、職業や技能の重要性等に対する理解を深めるため、様々な職業に関する体験機会や職業情報の提供を充実する。
さらに、大学等の新規学卒者等の就職支援を推進すると同時に、就職先が決まらないまま卒業した者について早期就職を支援するほか、卒業後早期の離転職者に対する相談機能を強化する。
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7. | 65歳までの雇用・就業機会の確保等 |
急速な高齢化が進展する中で、高齢者の雇用・就業を促進することは、ものづくり労働者の確保の観点からも重要な課題である。
このため、向こう10年程度の間においては、65歳定年制の普及を目指しつつも、少なくとも意欲と能力のある高年齢者が再雇用又は他企業への再就職などを含め何らかの形で65歳まで働き続けられるようにしていくこととし、65歳までの雇用機会その他の多様な就業機会の確保等を図る。
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第2節 職業能力の開発及び向上 |
1. | 産学官の連携による人材育成の推進 |
今後我が国経済を新生させ、社会を活力あるものとするためには、新たなフロンティアを切り拓き、個性と創造性に富んだ人材の育成を図ることが重要となっている。
このため、今後の我が国経済社会において必要とする人材の効果的な育成を図るため、地域の特性等に応じた産学官の連携による人材育成システムを構築するとともに、必要な教育訓練機会の開発・整備、人材ニーズに応じた最適な教育訓練機会の提供等を推進し、これらを通じてものづくり労働者の職業能力の開発及び向上を図る。
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2. | 公共職業訓練の推進 |
今後、経済・産業構造の転換や技術革新等が一層進展することが見込まれる中で、これらの変化に的確に対応し、個々の労働者がその有する能力を最大限に発揮できるようにすることが重要となっている。
このため、事業主団体等と連携し、情報技術化への対応をも図りながらものづくり労働者の技能の向上を図るための職業訓練や今後のものづくりを担おうとする者を養成するための職業訓練を、訓練ニーズに応じて公共職業能力開発施設で積極的に推進する。
また、職業転換を図ろうとする者が必要とする職業能力を習得するための職業訓練について、専修学校等の民間教育訓練機関の効果的な活用を含めその推進を図る。
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3. | 事業主が行う職業能力開発の推進 |
ものづくり労働者の技能の向上を図るためには、事業主がこれらの労働者に対して職業能力の開発及び向上を推進することが重要である。
このため、事業主が行う職業能力開発が効果的に推進されるよう、必要な情報提供、相談援助等の充実に努めるとともに、中小企業事業主を中心に必要な助成を行う。
特に、事業主等が行う職業訓練のうち訓練内容等が一定の基準に適合する認定職業訓練については、その運営に対し補助を行う等の支援を行う。
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4. | 労働者の自発的な職業能力開発のための環境整備 |
産業構造の変化が進み、労働移動が増加する中で、ものづくり労働者についても自発的な職業能力の開発及び向上に取り組むことが重要となっている。
このため、教育訓練給付を効果的に活用することによりその取組を促進するとともに、自発的な職業能力の開発及び向上のための時間の確保等の環境整備を図る。
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5. | ものづくり人材育成のための大学の設立の取組への支援 |
産業界の現場で役立つ技術・技能双方に通じた人材育成等を基本理念として掲げ設立準備をしている「ものつくり大学」(仮称)の取組を支援するとともに、その人材育成機能の積極的活用を図ることとする。
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第3節 ものづくりに関する能力の適正な評価、職場環境の整備改善等 |
1. | 職業能力評価制度の整備 |
ものづくり労働者の職業能力の開発及び向上を図るためには、その職業能力を評価できる制度の整備を図る必要がある。
このため、ものづくり労働者の職業能力の公正な評価に資するよう、技能検定制度を適正に運用するとともに、民間において行われる職業能力検定について、ものづくり労働者の職業能力を公正に評価するために適当と認められるものを基準に基づき認定する制度を整備する等の支援を行う。
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2. | 技能の尊重気運の醸成 |
ものづくり基盤産業の発展を担う優れた技能が維持・継承されるためには、広く国民がものづくり労働者の有する技能の必要性、重要性について理解を深め、技能や熟練技能者が尊重される社会を形成することが必要である。このため、卓越した技能を有する者の表彰等により、その社会的評価の向上に努めるとともに、技能競技大会や技能展等の積極的な開催により、技能者に努力目標を与えるとともに、広く国民一般が優れた技能に身近に触れる機会を提供するなど、技能や熟練技能者が尊重され、適切に処遇されるための気運の醸成の推進に努める。
また、教育現場等においても、ものづくりの楽しさ、素晴らしさと同時に大切さについて次世代を担う若年者等に認識してもらうための施策の推進に努める。
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3. | 熟練ものづくり労働者の活用等 |
若年者を中心としたものづくり離れ、さらには熟練技能者の高齢化等により、我が国の経済発展を担う優れた熟練技能の継承が困難になりつつある。このため、高度な技能を駆使して高精度・高品質の製品を作りだすこと等ができる高度熟練技能者を選定し、その協力を得て、高度な熟練技能の内容、技能習得のプロセス等の情報を収集し、広く提供する。さらに、実技指導等の場を確保し、高度熟練技能者の積極的な活用を図る。また、熟練ものづくり労働者の製作した製品について、製作したものづくり労働者の名を明記することについて、企業が取り組むよう働きかける。
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4. | 職場環境の改善その他福祉の増進 |
労働者がその生活時間の多くを過ごす職場について、疲労やストレスを感じることの少ない快適な職場づくりを推進することは、労働災害の防止、健康障害の防止のみならず、ものづくり労働者が能力を十分に発揮できる環境の整備やものづくり労働者のモラールの向上を通じて、職場の活性化に資するものである。
このため、快適な職場づくりについての調査研究活動、事業者に対する相談・情報の提供等の支援を行うとともに、事業者の策定した快適職場推進計画について認定を行うことにより、事業者による継続的かつ計画的な快適職場づくりを促進する。
また、ものづくり労働者が安心して生活し、ゆとりと豊かさを実感できる社会を作るため、労働時間の短縮のための施策を推進するとともに、勤労者財産形成促進制度の充実、中小企業退職金共済制度の普及等勤労者福祉対策の推進を図る。
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第1節 産業集積の推進等 |
1. | ものづくり事業者の新たな集積の促進及び既存の集積の有する機能の強化 |
製造業が集積し、我が国の基幹産業を支える部品、金型等を製造している地域において、近年、生産拠点の海外移転等により、その産業集積の空洞化が懸念されているため、これらの産業集積の維持活性化を図っていく必要がある。
このため、これらの地域において、ものづくり事業者の技術の高度化や新分野への進出を支援することにより、ものづくり事業者の新たな集積の促進及び既存の集積の有する機能の強化を図る。
また、ものづくり事業者の新たな集積の促進及び既存の集積の機能の強化のためには、地域の産業立地基盤の整備に重要な役割を果たす工業団地等の産業支援施設の整備が有効である。
このため、これらの地域において、技術の高度化や新分野への進出に取り組む企業等が入居し、重点的な支援を受けるための工業団地や賃貸工場等の施設整備等を行う。
さらに、産業集積の持つ機能を十分に発揮させるため、ものづくり事業者同士の交流及び連携、ものづくり事業者と地域の大学、教育機関、研究機関等との交流及び連携を促進する。
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2. | 新規創業等に係る支援機能の充実等 |
今後、我が国のものづくり基盤産業の振興を図っていくためには、ものづくり事業者による新規創業等を通じ、ものづくり基盤技術の高度化やものづくり基盤産業の競争力を高めていくことが重要である。また、ものづくり基盤産業における新規創業等の円滑化を図るためには、ものづくり事業者に対する施設、人材、情報等の提供、円滑な資金の供給等新規創業等にかかる支援機能を充実させていく必要がある。
このため、地域において中核的な機関を中心として既存の各種産業支援機関を統合・ネットワーク化し、個人あるいは企業が事業展開に至るまでの過程で遭遇する技術面、資金面、人材面等の課題に対して適切な支援を行う総合的な支援体制を整備するとともに、新規創業等に取り組む企業等が入居し、重点的な支援を受けるためのインキュベータや賃貸工場等の施設整備等を行う。
また、今後、新たな事業が円滑に創業されるような環境を整備し、政策資源をかかる創業の支援に投入していく。
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第2節 中小企業の育成 |
1. | 中小企業の経営基盤の強化 |
中小企業の活力ある発展にとって、専門性、創造性の発揮がますます必要となる中で、ものづくり基盤技術の向上は極めて重要な課題である。
このため、中小企業の技術力に係る実態把握に努め、技術力の向上に必要な情報等の整備、技術の標準化を推進する。また、ものづくりを担う中小企業のこれらの経営資源に対する円滑なアクセス、中小企業が抱える情報化等の経営資源の確保に関する問題に対するきめ細かな対応を可能とするため、都道府県の公設試験研究機関、大学、国立試験研究機関等に加え、中小企業・ベンチャー総合支援センター、都道府県等中小企業支援センター、地域中小企業支援センターを含めた総合的な連携体制の整備を図る
さらに、政府の調達に係る契約の締結に当たっては、WTO政府調達に関する協定及び関係国内法令との整合性を確保しつつ、技術力のある中小企業者の入札参加機会が適正に確保されるよう努める。
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2. | 取引の適正化 |
ものづくり基盤技術の継承や発展のためには、地域経済の発展に寄与している下請中小企業の有するものづくり基盤技術に対する適切な処遇が必要である。
このため、下請中小企業に対する大企業等による優越的地位の濫用を防止し、公正な取引の促進を図るとともに、法律的な知識等の経営資源の不足している中小企業が、様々な取引上の問題に対する適切な対応のための支援等の施策を講じる。
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3. | 中小企業の経営の革新及び創業の促進 |
(1)中小企業の経営の革新
ものづくり基盤技術を活用するためには、中小企業が市場の変化に対応して自らの経営課題に積極的に取り組むことにより、競争力のある製品やサービスを提供していくことが極めて重要である。
このため、中小企業がものづくり基盤技術などの経営資源を最大限活用できるよう、生産性の向上や経営管理の合理化、経営効率の改善等を支援することにより、その経営の革新を図る。
(2)創造的な事業活動の促進
多様な中小企業の中には、独創的な技術や問題解決型の技術による新製品の開発を通じ、新たな事業分野を創造する企業が登場しつつある。機動性と柔軟性を備えた中小企業が、ものづくり基盤技術を活用しつつ、著しい新規性のある製品の開発や提案を行うことにより、新分野の開拓や他分野への参入に積極的に取り組むとともに、こうした取組によりものづくり基盤技術がさらに発展していくことが重要である。
このため、中小企業がこのような創造的な事業活動を行うことを支援するための措置を講じる。
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4. | 新たな設備の設置等 |
ものづくり基盤技術の発展に向け、中小企業が新たな設備を設置することは重要であり、中小企業の設備導入に対する資金供給の円滑化を図ることが必要である。このため、政府系金融機関の融資制度や信用補完制度の的確な運用、民間金融機関に対する中小企業向けの適正な融資の指導等の必要な施策を講じる。
また、ものづくり基盤技術を活用する中小企業が自己資本を充実させ、経営基盤を強化することが望まれる。
このため、中小企業に対する投資の円滑化の施策を講じる。
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第1節 学校教育におけるものづくり教育の充実 |
1. | 初等中等教育におけるものづくり教育の充実 |
(1)小・中・高等学校等におけるものづくりに関する体験的な学習等の充実
自ら学び、自ら考え、自ら行動し、問題を解決する力などの「生きる力」を育成することを基本的なねらいとした新しい学習指導要領に基づき、関係教科の中にものづくりなどの体験的な学習を積極的に取り入れるとともに、新たに創設された「総合的な学習の時間」において、各学校の創意工夫を生かした教育活動の中で、ものづくりなどの体験的な学習の推進を図る。
また、ものづくりを実際に体験することや、産業や地域社会に関する学習を通じて、我が国の産業を支えているものづくり基盤技術や、これを支える技術者や技能者の社会的な役割の重要性を理解させ、これらを尊重する態度の育成を図る。
こうした学習の実施に当たっては、学校と地域や産業界との連携を図り、地域の熟練ものづくり労働者などの教育力を積極的に活用するとともに、地域の製造現場等における職場見学の実施などの取組を図る。
(2)高等学校における専門教育の充実
工業高校をはじめとする専門高校は、我が国のものづくり基盤産業の担い手となる技術者を養成するという大きな役割を担っている。
専門高校における工業教育等の充実を図るため、電子技術による生産の自動化や情報通信技術の高度化などの技術革新の進展等に対応した教育内容の改善及び充実を図るとともに、産業教育担当の教員に対する各種の研修機会の充実、優れた技能及び知識を有する熟練ものづくり労働者等の積極的な活用等を進めるほか、産業教育に係る実験・実習施設・設備について、製造現場における技術の進展等に対応した実習が可能となるよう整備を図る。
また、産業の現場における実際的な知識や技術に触れることにより学習意欲を喚起し、主体的な職業選択の能力や職業意識の育成などを図ることができる高校生のインターンシップの積極的な推進を図る。 さらに、専門高校卒業生の継続教育の場を確保するため、大学等高等教育機関への受け入れの円滑化を図るとともに、催しもの等の開催により、広く国民の産業教育及びものづくり教育への理解促進に努める。
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2. | 高等教育におけるものづくり教育の充実 |
(1)ものづくりを中心に据えた実践的な教育の充実
大学や高等専門学校などの高等教育機関において、ものづくりを教育の中に取り入れるなどにより、より実践的な教育を行っていく必要が高まっている。このため、学生が自らテーマを選んで、講師として現場のものづくりに係わる技術者等の指導を受けながら、実践的なものづくりに関する調査研究を行う「創造教育プログラム」の開発実施を行う。また、企業と大学の学部や大学院が共同で教育内容や方法を開発することなどを通じて、実践的な人材の養成を行っていくため、「産学共同教育プログラム」の開発及び実施を行うほか、ロボット制作などの課題に取り組むことにより、学生の主体的な学習を促す問題解決型学習の推進を図る。 さらに、ものづくりを中心に実践的な教育を行う高等専門学校等について、今後の時代の変化等を踏まえ、その在り方を検討していく。
そのほか、学生が在学中に製造業メーカー等において自らの専攻、キャリアに関連した就業体験を行うインターンシップの推進を図る。
(2)大学等における理工系教育充実のための環境整備
技術の高度化に対応して教育内容の高度化を図っていくためには、最先端の教育設備を整備していく必要がある。このため、学生が自らの考えと発想により、ものづくりを通じて問題解決の道筋を模索し、能力を高めていけるよう、実験・実習工場等の利活用の推進を図るとともに、学生が自主的に企画、設計し、試作・実証・評価するための実験基盤施設設備を整備していくなど、大学等における理工系教育充実のための環境整備を図っていく必要がある。
(3)ものづくり労働者に対する技術のリフレッシュ教育の推進
技術の複雑化・高度化に伴い、今後は、現場のものづくり労働者が必要に応じ、高等教育機関において学習を行い、その成果を活用してさらに活躍するという高等教育機関と産業界等との往復型社会に転換していくことが予想される。
このため、現場のものづくり労働者にとって、利用しやすいよう高等教育システムの弾力化を図ることとし、社会人特別選抜の導入を進めるほか、夜間大学院、昼夜開講制大学院の充実に努めるとともに、学生のニーズも踏まえつつ、大学院のいわゆるサテライト教室(職業人を対象とした本校キャンパス以外の教育の場)などの環境整備を図っていく必要がある。
(4)技術者教育の外部認定制度(アクレディテーションシステム)の導入
大学等高等教育機関における技術者教育の内容を審査し、一定水準以上のプログラムを認定する制度(アクレディテーションシステム)を導入することにより、大学等の技術者教育の充実向上を目指していく。さらに、この技術者教育の認定制度を国際的な共通標準に準拠させることにより、我が国の技術者教育の国際的な通用性の担保を図る。また、本制度と技術士資格との整合性、一貫性を確保し、質の高い技術者の育成を図る。
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第2節 ものづくりに係る生涯学習の振興 |
1. | 専修学校教育を通じたものづくり教育・学習の振興 |
社会の要請に即応した実践的な職業教育や専門的な技術教育が望まれる専修学校については、ものづくり基盤技術に係る教育水準の維持向上を図るため、その特性を生かした着実な発展が望まれるとともに、産業界との連携を図る必要がある。また、専修学校が有する教育機能を生かした体験的な学習機会の提供等により、子どもたちのものづくりに対する興味・関心やものづくりに関わる職業に対する意識の向上を図る。
さらに、ものづくりに関してより高い能力や企業家精神・経営マインドを有し、社会が求める高度職業人の育成を図るため、産学連携による専修学校教育の高度化及び起業家育成事業等、先導的な教育を展開する。
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2. | 一般市民や若年層に対する普及啓発 |
ものづくりの楽しさや重要性については、一般市民や若年層に対して普及啓発を図ることが必要である。このため、地域において、様々な企業、国立試験研究機関等の協力を得て、工場や事業所、研究所等の見学や体験学習の機会の積極的な提供や、ものづくりの現場におけるこうした取り組みについて、子どもたちやその家族等への広報・周知を図るための環境整備を図る。
また、ものづくり教育・学習の振興にあたっては、専門高校や大学等が有する教育・研究機能を活用することも重要である。このため、専門高校等の開放日を設け、様々な体験活動やものづくり教室等の多様な学習機会を提供するとともに、大学公開講座や大学等地域開放特別事業(大学子ども開放プラン)等の活用を図る。さらに、テレビ等の活用によって広く大学教育の機会を提供している放送大学の活用等によって、広く国民に対し体系的かつ継続的に高度なものづくり教育・学習の機会の提供を図る。
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3. | 公民館、博物館等における多様な事業の展開 |
博物館・科学館・美術館における参加体験型の展示の開発やハンズ・オン活動(見て、触って、試して、考える)、公民館や科学館、教室開放における科学実験教室、遊びを通じて先端科学技術に親しむロボット技術を競うイベント等の体験型イベントの積極的な開催・支援の推進に努める。また、地域の商店街や地場産業等における子どもたちの商業活動体験の充実のための環境整備に努める。
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4. | ものづくり学習の成果の評価 |
青少年・成人が習得した知識や技能の水準を審査・証明することは、その水準を高める上で有効である。このため、引き続き技能審査認定制度等を通じてものづくり学習を奨励し、ものづくり学習をはじめとする生涯学習の成果の多元的な評価の拡充に努める。
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5. | 文化活動の機会の提供 |
子どもたちを心豊かに育む環境を醸成していく観点から、将来の文化立国を担う子どもたちに対し、美術品や文化財に親しむとともにものづくりの楽しさ、素晴らしさ等を学ぶことのできる機会の提供に努める。
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