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4 雇止めに関する裁判例の類型化
第二の検討事項である「雇止め等有期労働契約の反復更新に係る裁判例の動向の
把握及び分析」のため、本研究会では、有期労働契約の雇止めが争点となった最近
10数年の裁判例にこの分野のリーディングケースを加えた計38件の裁判例を収集し
たところ、当該契約関係の状況に対する裁判所の認定(判断)を概ね類型化できる
のではないかと考え、4つのタイプへの分類を試みた*32。また、裁判所が当該契
約関係の状況を判断するに当たっての判断要素を6項目に整理し、各裁判例におけ
る6項目に関する状況を4タイプごとにチェックすることにより、裁判例の傾向を
分析した。
なお、個々の事案ごとに有期労働契約を取り巻く状況、当該契約の内容等が異な
るため、当該契約の雇止めに対する評価は、まさに多種多様な判断要素を総合的に
勘案して判断されている。したがって、ここで試みた類型化は確立したものではな
いことはもとより、個別具体的な有期労働契約一つ一つについて、6項目それぞれ
に関する状況を整理しても、当該契約が4タイプのいずれに該当するかを必ずしも
直ちにかつ明確に判断できるものではない。しかしながら、有期労働契約の雇止め
の問題を考えるに当たって、このような類型化は一定の意義を有するものと考える。
4−1 雇止めに関する裁判例の分類
<有期労働契約の4タイプと6項目の判断要素>
有期労働契約は、民法の原則のもとでは、期間の定めがある契約であるという
契約の本旨にしたがって、契約期間の満了により契約関係は当然に終了するもの
である。
しかしながら、有期労働契約の雇止めについて争われた裁判例をみると、原則
どおり期間満了により契約関係が終了すると判断している事案ばかりではなく、
実質的には期間の定めのない契約であると認めたもの、契約更新への労働者の期
待が合理的なものであると認めたものなど、期間満了による契約の終了に対して
何らかの制約を加え、有期契約労働者の保護を図っている事案も少なくない。
そこで、裁判所が、当該契約関係の状況について判断している記述をもとに裁
判例の整理を試みると、原則どおり契約期間の満了によって当然に契約関係が終
了するとしているタイプ(<1>)、契約関係の終了に制約を加えているタイプ
(<2>〜<4>の3タイプ)の計4タイプに整理することができる*33。
<1> 純粋有期契約タイプ
裁判所により、次の<2>〜<4>のいずれにも該当しない契約であるとされたも
の *34
<2> 実質無期契約タイプ
裁判所により、当該有期契約は期間の定めのない契約と実質的に異ならない
状態に至っていると認められたもの *35
<3> 期待保護(反復更新)タイプ
裁判所により、<2>とは認められなかったものの 、雇用継続への合理的な期
待は認められる契約であるとされ、その理由として相当程度の反復更新の実態
が挙げられているもの *36
<4> 期待保護(継続特約)タイプ
裁判所により、<2> とは認められなかったものの、格別の意思表示や特段の
支障がない限り当然更新されることを前提として契約が締結されているとし、
期間満了によって契約を終了させるためには、従来の取扱いを変更して契約を
終了させてもやむを得ないと認められる特段の事情の存することを要するとす
るなど、雇用継続への合理的な期待が、当初の契約締結時等から生じていると
認められる契約であるとされたもの *37
また、裁判例における判断の過程をみると、主に次の6項目に関して、当該契
約関係の実態に評価を加えている。
a 業務の客観的内容
従事する仕事の種類・内容・勤務の形態(業務内容の恒常性・臨時性、業務
内容についての正社員との同一性の有無等)
b 契約上の地位の性格
契約上の地位の基幹性・臨時性(例えば、嘱託、非常勤講師等は地位の臨時
性が認められる。)、労働条件についての正社員との同一性の有無等
c 当事者の主観的態様
継続雇用を期待させる当事者の言動・認識の有無・程度等(採用に際しての
雇用契約の期間や、更新ないし継続雇用の見込み等についての雇主側からの説
明等)
d 更新の手続・実態
契約更新の状況(反復更新の有無・回数、勤続年数等)、契約更新時におけ
る手続の厳格性の程度(更新手続の有無・時期・方法、更新の可否の判断方法
等)
e 他の労働者の更新状況
同様の地位にある他の労働者の雇止めの有無等
f その他
有期労働契約を締結した経緯、勤続年数・年齢等の上限の設定等
<各タイプにおける雇止めの判断に当たっての法的構成及び雇止めの
可否の状況>
まず、検討の対象とした裁判例(34件)を、契約関係の状況について述べてい
る部分の記述によって上記の<1>〜<4>のいずれかに分類し、分類した4タイプの
それぞれにおいて、雇止めの可否を判断するに当たってどのような法的構成をと
っているか、結果としての雇止めの可否にどのような傾向がみられるかにつき分
析してみると、次のとおりである。
純粋有期契約タイプ(<1>)に分類された事案は 、雇止めはその事実を確認的
に通知するものに過ぎず、期間満了により当該有期労働契約は当然に終了するも
のとされている。
一方、他の3タイプに分類された事案をみると、ほぼ全ての事案において、
○ 解雇に関する法理の類推適用により *38、
あるいは
○ 信義則上の要請に照らして *39、
あるいは
○ 「更新拒絶権の濫用」という枠組により *40
雇止めの可否についての判断を行っている。なお、解雇に関する法理が類推適用
される場合には、ほとんどの裁判例において、期間の定めのない契約の下にある
労働者の解雇の判断において判例上用いられている解雇権濫用法理が類推適用さ
れている。
このように、純粋有期契約タイプ以外の3タイプについては、雇止めの判断に
当たっての法的構成は共通であるが、結果としての雇止めの可否の判断を3タイ
プごとにみると、次のように一定の差異がみられ、雇止めが認められたケースも
認められなかったケースもある。
実質無期契約タイプ(<2>) の事案では、結果として雇止めが認められなかっ
たケースがほとんどである。
期待保護(反復更新)タイプ(<3>)の事案では 、経済的事情による雇止めの
事案で、正社員の整理解雇とは判断基準が異なるとの理由で結果として雇止めを
認めたケースがかなりみられる*41。
期待保護(継続特約)タイプ(<4>)の事案では 、当該契約に特殊な事情等の
存在を理由として雇止めを認めないケースが多い。
4−2 契約関係の各タイプごとの判断要素における相違
次に、各タイプに分類された裁判例における前述a〜fの判断要素の状況を整
理することにより、タイプごとに判断要素についてどのような特徴がみられるか
を分析することとする。
<純粋有期契約タイプの事案の契約関係の実態>
まず、純粋有期契約タイプに分類された事案について、契約関係の実態をみる
と、次の項目について、他の3つのタイプに分類された事案と比較してかなり明
確な特徴がみられる。
イ 業務の客観的内容
業務内容が恒常的である事案が多く、また正社員との同一性が認められる事
案もある。これらの点では他のタイプにも同様の事案が相当みられるが、一定
期間で作業終了が予定される補助業務についているなど業務内容の臨時性が認
められる事案がみられる点では他のタイプと異なる。
ロ 契約上の地位の性格
非常勤講師、嘱託、臨時工等、地位が臨時的なものが多い。他のタイプにお
いても地位の臨時性が認められる事案はあるが、割合としては純粋有期契約タ
イプで最も高い。
ハ 当事者の主観的態様
裁判所が当事者の主観的態様に言及した事案をみると、長期間継続雇用する
等の言動を使用者がしていない、あるいは契約期間について明確に説明してい
ること等により、労働者が期間満了による契約終了を認識しているものと認め
られる事案が多い。この点は、他のタイプのほとんどの事案で、継続雇用を期
待させる使用者の言動が認められていることと対照的である。
ニ 更新の手続・実態
更新の手続・実態への言及がみられる事案をみると、必ず期間満了前に契約
書を作成しているもの、雇用量調節のための有期契約であることを確認する旨
の念書を交わしているもの、期間満了に先立ち所属長が面接して更新希望を調
査した上で審査等を経て更新を決定していたもの等、手続の時期・方法が厳格
である事案が多い。この点も、他のタイプでは多くの事案で契約更新手続が形
式的な処理となっていることと対照的である。ただし、これまでの裁判例にお
ける指摘もあり、使用者は雇止めが否定されないよう更新の手続を厳格に行っ
てきているため、最近の裁判例では、契約関係の判断に当たって更新の手続が
厳格であることは必ずしも決定的でないようである*42。
ホ 他の労働者の更新状況
他の労働者の更新状況への言及がなされた事案をみると、ほとんどの事案で
過去に同様の地位にある労働者について当該事業場での雇止めの例がある。こ
の点、他のタイプでは、多くの事案で雇止めの例がほとんどないことと対照的
である。
以上が、純粋有期契約タイプであると認定された事案の特徴であり、<1> 業務
内容や契約上の地位が臨時的であること又は正社員と業務内容や契約上の地位が
明確に相違していること、<2> 契約当事者が有期契約であることを明確に認識し
ていると認められる事情が存在すること、<3> 更新の手続が厳格に行われている
こと、<4> 同様の地位にある労働者について過去に雇止めの例があること、とい
った状況が全て認められる有期労働契約は、純粋有期契約タイプに該当する可能
性が高いということがいえる。逆に言えば、<1>〜<4>のいずれかを満たしていな
い有期労働契約であれば、純粋有期契約タイプに必ずしも該当しないこととなり、
したがって、期間満了のみを理由とした雇止めは認められず、上記のように別途
その適否を判断すべきことが原則となる。
<純粋有期契約タイプ以外の事案の契約関係の実態>
また、実質無期契約タイプ、期待保護(反復更新)タイプ、期待保護(継続特
約)タイプの事案については、次のような傾向がみられる。
<1> 実質無期契約タイプと認定された事案について、契約関係の実態をみると、
aタイプ:裁判所がそのように認定した理由の一つとして相当程度の反復更新
の実態が挙げられているもの又は相当程度の反復更新の事実が認定
されているもの
bタイプ:それ以外のもの
とに大別できる。
aタイプ、bタイプに共通の傾向として、業務内容の恒常性や更新の手続が
形式的であることが広く認められるほか、当事者の主観的態様について言及さ
れた事案においては、雇用継続を期待させる使用者の言動が認められたものが
多く、また、同様の地位にある労働者の更新状況について言及された事案にお
いては、これまでに雇止めの例がほとんどないものが多い。その他の項目につ
いては、aタイプとbタイプで以下のような差異がみられる。
すなわち、aタイプにおいては、契約上の地位が臨時的な事案が多く、更新
回数も多い(なかには勤続20年以上の事案もある)のに対し、bタイプでは契
約上の地位が臨時的ではなく、更新回数は1〜6回と概して少ないほか、同一
会社において正社員から雇用形態を変更した事案、もともとは期間の定めのな
い契約であった事案など、当該有期契約の締結の経緯等が特殊なものが多い。
<2> 期待保護(反復更新)タイプと認定された事案の契約関係の実態をみると、
実質無期契約タイプのうちaタイプとの共通点が多い。ただし、業務内容につ
いて必ずしも正社員との同一性が認められないこと、過去に同種の労働者につ
いて雇止めされた例があることなどの点で違いがみられる。
<3> 期待保護(継続特約)タイプと認定された事案の契約関係の実態をみると、
更新回数が0〜5回と概して少ないこと、もともとは期間の定めのない契約で
あった事案等当該有期契約の締結の経緯等が特殊であるケースが多いことなど
の点で実質無期契約タイプのうちbタイプとの共通点が多い。ただし、更新の
手続・方法が厳格な事案があるという点で違いがみられるほか、1度も更新が
なされていない事案でも契約締結の経緯等により本タイプであるとして雇止め
が認められなかったもの *43もあり、更新回数の多寡は契約関係の状況の認定
に当たり重視されていないといい得る。
4−3 雇止めの判断基準における正社員との差異
ここまでみてきたように、契約関係の状況について純粋有期契約タイプ以外の
タイプに分類されるケースについては、裁判所は、契約関係の実態を検討し、解
雇に関する法理の類推適用等を行って雇止めの可否を判断することにより、有期
契約労働者の保護を図っている。
しかしながら、例えば、日立メディコ事件(期待保護(反復更新)タイプ)
*44 では、解雇に関する法理が類推されるとしながら、「しかし、臨時員の雇用
関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものであ
る以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間
の定めのない労働契約を締結している本工を解雇する場合とはおのずから合理的
な差異があるべきである。」としており、また、丸子警報器事件(期待保護(反
復更新)タイプ) *45では、反復更新の事実から権利濫用の法理ないし信義則に
より使用者側の一方的都合での雇止めが規制されるとしながら、「臨時社員の側
に雇用継続への期待があるというならば、被告の側にも臨時社員を採用した本来
の趣旨であるところの、雇用調整を容易にするために雇止めを機能させるという
期待もあったといえるのであって、被告に臨時社員という採用形態を選択するこ
との自由を認める以上は、被告側のこの期待も尊重されなければならない。」と
している。このように、裁判所は、解雇に関する法理の類推適用等による実質的
保護を図りながらも、その場合の具体的な判断基準が正社員の解雇の場合と全く
同一であるとまではしておらず、正社員との間に一定の差異があることは容認し
ている。
もっとも、正社員との間に差異が存在すること自体は認められているとしても、
その差異の内容は必ずしも明らかではなく、個々の事案の具体的な状況により裁
判所の判断も一律ではない。例えば、日立メディコ事件のように正社員との差異
を認め、「(正社員の)希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われても
やむを得ないというべきである」として、雇止めに合理的理由を認めた事案があ
る一方で、三洋電機事件 *46のように、正社員と定勤社員(有期契約従業員のう
ち臨時社員に比べ契約期間及び1日の労働時間が長く、臨時社員としての2年以
上の継続勤務等が採用の要件となっている社員)との差異を認める一方で、「定
勤社員の雇止めをするとしても、ただ定勤社員であるというだけの理由で直ちに
全員を雇止めの対象とすることまで正当化されるとは解し難く、まず削減すべき
余剰人員を確定し、定勤社員の中で希望退職者を募集するなどの手段を尽くすべ
き」とし、雇止めに合理的理由はないとしたものもある。また、丸子警報器事件
のように、期間の定めのない労働契約における整理解雇の場合に検討されるべき
4点に準じる検討が必要であるとし、そのうちの1つである雇止めについての経
営上の必要性について、「それをしなければ企業の維持存続が危殆に瀕するほど
に差し迫った程度のものでなければならないとすると、雇用調整を容易にすべく
臨時社員制度を採用した意義が損なわれることになり、ひいてはそのような雇用
形態を設ける自由をも否定することになってしまうから、そこまで厳格に解する
べきではない。」としつつ、雇止めに先立っての希望退職者の募集などの十分な
回避措置及び労使間の事前協議を経ていない点で明白な信義則違反があるうえ、
経営上の必要性を満たしていると認めることはいささか困難であるとして、雇止
めは権利の濫用としたものもある。
このように、裁判所の判断において認められる差異の具体的内容については、
個々の事案ごとには把握できる裁判例もあるが、本研究会において裁判例全体の
傾向を明らかにすることは困難であった。
*32 38件の裁判例の概要及び分析の詳細は、報告書参考資料2及び3(裁判例
の分析、雇止めに係る裁判例集)を参照されたい。
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*33 4タイプに分類し、分析を行った裁判例は、38件中、特殊なケースである
4件(私法上の労働契約関係ではないとされたもの2件、期間の定めが試用
期間であるとされたもの1件、黙示の更新により期間の定めのない契約とし
て継続しているとされたもの1件)を除いた34件である。
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*34 例えば、亜細亜大学事件(昭 63.11.25 東京地裁判決)は、継続雇用を
期待させる使用者の言動がなかったこと、専任教員と非常勤講師との職務内
容、責任、雇用条件の相違等の契約関係の実態を認定した上で、「以上のよ
うな諸事情を考慮すると、原・被告間の雇用契約は、20回更新されて21年間
にわたったものの、それが期間の定めのないものに転化したとは認められな
いし、また、期間の定めのない契約と異ならない状態で存在したとは認めら
れず、期間満了後も雇用関係が継続すると期待することに合理性があるとも
認められない」と判示している。
*35 例えば、有期労働契約の雇止めに関するリーディングケースとなっている
東芝柳町工場事件(昭49.7.22 最高裁第一小法廷判決)は、「実質におい
て、当事者双方とも、期間は一応2ヶ月と定められてはいるが、いずれかか
ら格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思で
あったものと解するのが相当であり、したがって、本件各労働契約は期間の
満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異なら
ない状態で存在していたものといわなければなら(ない)」と判示している。
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*36 例えば、日立メディコ事件(昭 61.12.4 最高裁第一小法廷判決)は、
「本件労働契約が期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異な
らない関係が生じたということもできないというべきである。」としつつ、
「柏工場の臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のため
に雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されてい
たものであり、上告人との間においても5回にわたり契約が更新されている
のである」と判示している。
*37 例えば、福岡大和倉庫事件(平2.12.12 福岡地裁判決)は、「期間の定
めのない雇用契約であると解することはできないものの、その期間の定めは
一応のものであって、単に期間が満了したという理由だけで雇止めになるも
のではなく、双方に特段の支障がない限り雇用契約が更新されることを前提
として協議され、確定されてきたものである」と判示している。
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*38 前出東芝柳町工場事件最高裁判決は、「あたかも期間の定めのない雇用契
約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければならず、本
件各雇止めの意思表示は右のような契約を終了させる意思のもとにされたの
であるから、実質において解雇の意思表示に当たる。そうである以上、本件
各雇止めの効力の判断に当たっては、その実質にかんがみ、解雇に関する法
理を類推すべきである。」とした原判決を肯認している。
*39 例えば、龍神タクシー事件(平3.1.16 大阪高裁判決)は「その雇用期間
についての実質は期間の定めのない雇用契約に類似するものであって、申請
人において、右契約期間満了後も被申請人が申請人の雇用を継続するものと
期待することに合理性を肯認することができるものというべきであり…(
略)…従前の取扱いを変更して契約の更新を拒絶することが相当と認められ
るような特段の事情が存しない限り、被申請人において、期間満了を理由と
して本件雇用契約の更新を拒絶することは、信義則に照らし許されないもの
と解するのが相当である」としている。
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*40 更新拒絶権の濫用という枠組は必ずしも理論的に確立してはいないと考え
られるが、例えば、ダイフク事件(平7.3.24 名古屋地裁判決)は、「本件
労働契約は、…(略)…実質的には期間の定めのない雇用契約と異ならない
状態で存続していたものというべきである。それ故、被告から、解雇の意思
表示がなされた場合はもとより、単に更新拒絶(の意思表示)がなされた場
合においても、少なくとも解雇に関する法理が準用され、解雇において解雇
事由及び解雇権の濫用の有無が検討されるのと同様に、更新拒絶における正
当事由及び更新拒絶権の濫用の有無が検討されなければならないというべき
である。」としている。
*41 例えば前出の日立メディコ事件がある。4-3参照。
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*42 例えば、芙蓉ビジネスサービス事件(平8.3.29 長野地裁松本支部決定)
では、期間を明定した定期社員雇用契約書に労働者本人が更新の度ごとに署
名押印して雇用契約を締結するという手続が実践されていた事案について、
就業規則の規定や反復更新の事実、他の社員の更新状況等から、「特段の事
情のない限り、契約期間満了後も継続して定期社員として雇用することが予
定されており、雇止めをするについては、解雇に関する法理が類推され、正
当な事由が認められる場合に雇止めが有効になると解すべきである」として、
純粋有期契約タイプとは判断していない。
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*43 使用者が有期契約は形式的なものであると断言し、期間満了後の雇用につ
いては双方に支障がない限り更新を前提に組合と協議する旨の協定が成立し
ていた事案(前出の福岡大和倉庫事件)、臨時運転手について、従来、自己
都合退職者を除き例外なく契約が更新されてきており、更新手続も形式的で
あるとともに、本雇運転手の欠員には臨時雇運転手で希望者の中から適宜の
者を登用して補充しており、制度導入後、直接本雇運転手として雇用された
者はいなかった事案(龍神タクシー事件 平3.1.16 大阪高裁判決)や、パ
ートについて、過去契約が更新されなかった例はなく、特段の事情変更がな
ければ当然に更新されるのが通例の扱いであった事案(協栄テックス事件
平 10.4.24 盛岡地裁判決)がある。
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*44 昭61.12.4 最高裁第一小法廷判決
*45 平11.3.31 東京高裁判決
*46 平2.2.20 大阪地裁決定
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