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3 有期労働契約の更新・雇止めの状況

 3−1 有期労働契約の更新に関する状況

  <有期労働契約は、多くの場合、更新の可能性があることを前提に締結されて
   いる>
   契約の更新についての一般的な傾向を事業所調査でみると、「契約更新をしな
  い」とする事業所は、臨時雇で11.9%と他の雇用形態に比べやや高いものの、い
  ずれの形態でもかなり少ない *10。一方、「個々のケースごとに判断する」は各
  雇用形態で約半数を占めているほか *11、「労使のいずれからも終了を申し出な
  ければ自動的に更新する」も2〜4割あり *12、一般的には、企業側も更新の可
  能性があることを前提にして有期労働契約を締結している。

  <契約更新について実情と合わない説明を行っている例がみられる>
   最初の契約締結時において労働者に更新に関して説明した内容について、事業
  所調査でみると、「特に説明していない」とする事業所が各雇用形態とも4〜5
  %程度ある*13が、「原則として更新しない旨説明」した割合は少なく*14、「期
  間満了の都度、更新の可否を判断する旨説明」*15 と「特別の事情がなければ自
  動的に更新する旨説明」*16 とで大半を占めており、更新についての一般的な傾
  向の状況とほぼ同様の結果を示している。
   しかしながら、事業所調査による更新の一般的な傾向と労働者に対する説明内
  容とをクロス集計してみると、例えば「契約の更新はしない」傾向にあるとした
  企業でも「特別の事情がなければ自動的に更新する旨説明」している割合が、パ
  ートタイマーで16.1%、その他有期13.3%、契約社員で11.8%となっているほか、
  「個々のケースごとに判断する」傾向にある企業で「特別の事情がなければ自動
  的に更新する旨説明」とする割合がその他有期で19.4%、契約社員15.1%、臨時
  雇で14.0%みられるなど、更新の一般的傾向よりも更新されやすい旨を労働者に
  説明しているケースが少なくない。

  <1割の労働者は契約更新について説明を受けていない>
   一方、労働者調査で、会社から受けている現在の契約の更新についての説明を
  みると、「原則として更新しない旨の説明」は 3.2%と少ないのに対し、「期間
  満了の都度、更新の可否を判断する旨の説明」が44.6%、「特別な事情がなけれ
  ば自動的に更新する旨の説明」が35.6%と多く、概ね事業所の説明状況と合致す
  る結果となっている。ただし、「特に説明はない」がその他有期で21.5%、臨時
  雇で18.3%など、有期契約労働者全体でも13.2%あり *17、契約の更新について
  何ら説明を受けていないとする者が少なくない。

  <有期労働契約を更新する場合には、平均4〜6回の更新により4年程度の
   勤続>
   事業所調査で、有期労働契約を更新する場合の平均的な更新回数をみると、パ
  ートタイマー6.4回、臨時雇5.9回であるのに対し、契約社員は 3.8回、その他有
  期は 3.7回と差があるが、契約社員の契約期間はパートタイマーや臨時雇に比べ
  相対的に長いことから、平均勤続年数はパートタイマー4.3年、臨時雇3.9年、契
  約社員4.2年と、その他有期(2.5年)を除き約4年となっている。また、契約を
  更新する場合に事業所が想定している有期契約労働者の勤続年数は、その他有期
  で3.3年とやや短いのを除き、他の雇用形態では5年程度となっている*18  <契約を更新された労働者は6〜7割、その場合の平均更新回数は6回>
   労働者調査で、実際に有期労働契約が更新されたかどうかをみると、現在の勤
  務先で更新されている者が68.1%となっており(調査時点で更新されていない労
  働者についても、期間満了時に更新される可能性はある。)、更新されている場
  合の平均更新回数は6.4回となっている。
   また、以前の勤務先で有期労働契約を「会社が更新してくれなかった」または
  「初めから一定の更新回数が決まっており、当該回数に達した」ために当該契約
  の更新ができなかった労働者(以下「過去に雇止めの経験がある労働者」という。
  *19)について、以前の勤務先での有期労働契約の更新状況*20をみると、1回も
  更新されなかった者が29.4%、1回以上更新された者が59.2%となっている。1
  回以上更新された者の平均更新回数は6.1回となっている。

  <更新の判断基準としては、「労働者の勤務成績・勤務態度」「本人の意思」
   などが多い>
   事業所調査で契約更新をするか否かの判断理由(複数回答)をみると、総じて
  「労働者の勤務成績・勤務態度による」「本人の意思による」「期間満了時の景
  気変動などに対応した仕事の量による」の割合が高くなっている* 21。ただし、
  契約社員では、「必要な能力を持った人材かどうかによる」の割合が50.1%と、
  他の雇用形態では2〜3割であることと比べ高い一方、「期間満了時の景気変動
  などに対応した仕事の量による」は37.4%と、他の雇用形態では約半数を占めて
  いるのに比べ低い。
   また、更新回数や勤続年数について上限を設定している企業は1割以下とわず
  かであるが、年齢については、約4分の1の企業で雇用の上限年齢を設定してい
  る*22 3−2 有期労働契約の雇止めに関する状況

  <雇止めをしないとする事業所は約1割>
   事業所調査で、雇止めの有無及び雇止めを行う場合の理由(複数回答)を尋ね
  たところ、まず「雇止めはしない」とする割合は各雇用形態とも約1割にとどま
  る *23。すなわち、先にみたように有期労働契約は更新の可能性があることを前
  提として締結することが多いのであるが、その一方で雇止めの可能性があること
  を念頭に置きつつ契約を締結していることが確認できる。

  <雇止めの理由としては、「労働者の勤務成績・勤務態度の不良」「景気要因
   などによる業務量の減少」などが多い>
   雇止めを行う理由(複数回答)を事業所調査でみると、各雇用形態とも「労働
  者の勤務成績・勤務態度の不良」と「景気要因などによる業務量の減少」が3〜
  6割と多く、これに「労働者の傷病などによる勤続不能」が次いでおり、「プロ
  ジェクトの終了など従事していた業務の終了・中止」は1割程度にとどまってい
  る*24。

  <事業所側の雇止めの理由と労働者側の認識の相違>
   労働者調査において、過去に雇止めの経験がある労働者(当該契約について1
  回以上の更新がされていた場合に限る。)に以前の勤務先における当該雇止めの
  理由(複数回答)を聞くと、「契約期間の満了」が45.9%と最も多く、「経営状
  況の悪化」(28.7%)、「景気要因などによる業務量の減少」(26.8%)が続き、
  「勤務成績・勤務態度」は 1.3%に過ぎない。なお、「担当していた業務・職務
  の終了」が18.5%、「特に説明なし」が3.2%となっている。
   この結果と、先に見た事業所調査の雇止めを行う場合の理由とを比較すると、
  労働者調査では個別具体的な契約についての回答であるのに対し、事業所調査で
  は雇止めを行う場合の一般的な理由についての回答であること、また設問の対象
  となっている契約が全く異なることから、単純な比較はできないものの、企業側
  が勤務成績・勤務態度の不良などを実質的理由として雇止めを行っている場合で
  あっても、労働者には契約期間の満了という形式的理由のみを伝えている場合が
  少なくないものと推測される。

  <雇止めに関してトラブルがあった事業所は1割に満たない>
   事業所調査でみると、有期契約労働者の契約の更新をしなかったことでトラブ
  ルがあった事業所は 9.2%と1割に満たず、77.8%の事業所はトラブルとなった
  ことがない。トラブルがあった事業所においても、その8割近くは本人との円満
  な話し合いにより解決している。
   トラブルがあった事業所についてその原因をみると、「雇止めの理由について
  納得してもらえなかったため」(36.0%)、「更新への期待についての認識の違
  い」(23.8%)、「雇止めの人選について納得してもらえなかったため」(12.2
  %)となっており、契約の更新への労働者の期待と事業所側の認識のギャップが
  トラブルの要因として大きなものであるといえる。

  <過去に雇止めの経験がある労働者の過半数が雇止めに不満>
   一方、労働者調査により、過去に雇止めの経験がある労働者(「自分からやめ
  た」とする者を除く。当該契約について1回以上の更新がされていた場合に
  限る。)*25 に当該雇止めの際の感想を聞いたものをみると、「非常に不満だっ
  た」25.5%、「多少不満を感じた」31.2%を合わせて、過半数の者が不満を感じ
  ている。
   また、雇止めの際の感想と更新回数の関係をみると、更新回数が多くなると
  「非常に不満だった」又は「多少不満を感じた」とする者の割合が増加する傾向
  がみられる*26。勤続年数との関係についても同様の傾向にある*27。
   一般に、契約の反復更新がなされている労働者ほど、次回も契約が更新される
  との期待を生じやすくなることから、雇止めを告知された際に不満を感じやすく
  なるものと考えられる。


 3−3 契約更新・雇止めの手続の状況

  <契約更新の手続は書面で期間満了前に行われるのが8〜9割>
   まず、事業所調査で契約更新の手続の時期をみると、各雇用形態とも約8〜9
  割の事業所で契約期間満了前に行っており、雇用形態別に差はみられない*28。
  一方、「契約期間満了後」に行っている事業所や「原則として特段の手続きはと
  らない」とする事業所も雇用形態ごとにそれぞれ4〜9%、5〜11%と若干存在
  する。
   また、更新手続の形式をみると、約8〜9割の事業所で「書面」で行っている
  *29。

  <雇止めの場合、多くの事業所では30日以上前に労働者に予告>
   つづいて、雇止めをする場合に、雇止めに先立ってどのような手続を行ってい
  るかを事業所調査でみると、契約期間の満了前にあらかじめ更新しない旨を伝え
  る事業所が各雇用形態ともに7割程度(書面によるものが2割、口頭によるもの
  が5割程度)と多い *30。また、あらかじめ契約を更新しない旨を伝えるとした
  事業所について、期間満了時から何日程度遡って契約しない旨を労働者に伝えた
  かをみると、9割以上の事業所で30日以上前に労働者に伝えている*31。
   なお、「契約を更新しない旨をあらかじめ伝えることはしないが期間満了時に
  一定の手当を支払う」とする事業所は各雇用形態について1%未満と少ないが、
  「期間満了時に、雇止めの旨を伝えるのみ」とする事業所は雇用形態ごとに2〜
  8%程度ある。

   
 *10 パートタイマー 2.8%、臨時雇11.9%、契約社員 1.6%、その他有期 6.1%。
 
 *11 パートタイマー49.5%、臨時雇53.4%、契約社員59.2%、その他有期37.8%。
 
 *12 パートタイマー40.1%、臨時雇23.5%、契約社員32.2%、その他有期17.1%。
 
 *13 パートタイマー 4.3%、臨時雇 4.5%、契約社員 4.0%、その他有期 5.3%。
 
 *14 パートタイマー 2.5%、臨時雇13.1%、契約社員 1.9%、その他有期 4.9%。
 
 *15 パートタイマー54.3%、臨時雇49.6%、契約社員58.4%、その他有期28.0%。
 
 *16 パートタイマー34.2%、臨時雇22.0%、契約社員29.9%、その他有期19.5%。
 
                                 本文へ戻る
 
 
 *17 パートタイマー15.4%、臨時雇18.3%、契約社員 9.1%、その他有期21.5%。
 
 *18 パートタイマー 5.1年、臨時雇 4.9年、契約社員 5.2年。その他有期 3.3年。 
                                 本文へ戻る
 
 *19 労働者調査で以前の有期労働契約をやめた理由をみると、
   「自分からやめた」72.1%、「会社が更新してくれなかったため」13.3%、
   「はじめから更新回数が決まっており、当該回数に達したため」11.7%となっ
   ている。
 
 *20 調査方法上の制約(労働者調査の調査票を事業所調査実施事業所の有期契約
   労働者に配布)により、このような設問となっている(サンプル数は 265)。
 
 *21 「労働者の勤務成績・勤務態度」は、パートタイマー67.3%、臨時雇68.9%、
   契約社員63.4%、その他有期59.2%。「本人の意思」は、パートタイマー61.5
   %、臨時雇52.1%、契約社員60.6%、その他有期57.7%。「期間満了時の景気
   に対応した仕事量」は、パートタイマー55.2%、臨時雇63.0%、契約社員37.4
   %、その他有期48.6%。
 
 *22 雇用の上限年齢を設定している割合は、パートタイマー 25.7%、臨時雇24.7
   %、契約社員29.6%、その他有期19.0%。雇用の上限年齢を設定している事業
   所において、上限年齢が60〜64歳である割合は、パートタイマー56.7%、臨時
   雇42.6%、契約社員37.3%、その他有期25.9%であり、上限年齢が65〜69歳で
   ある割合は、パートタイマー26.3%、臨時雇40.7%、契約社員49.3%、その他
   有期44.4%。
                                 本文へ戻る
 
 *23 パートタイマー10.2%、臨時雇 6.7%、契約社員 9.1%、その他有期 7.3%。
 
 *24「労働者の勤務成績・態度の不良」
    パートタイマー57.6%、臨時雇49.3%、契約社員56.5%、その他有期32.9%。
   「景気要因などによる業務量の減少」
    パートタイマー51.5%、臨時雇53.0%、契約社員41.0%、その他有期30.5%。
   「労働者の傷病などによる勤続不能」
    パートタイマー37.5%、臨時雇36.6%、契約社員41.7%、その他有期19.1%。
   「プロジェクトの終了など従事していた業務の終了・中止」
    パートタイマー 8.4%、臨時雇14.9%、契約社員12.9%、その他有期 6.5%。

                                 本文へ戻る

 
 *25 過去に雇止めの経験がある労働者の定義については、*19の本文を参照された
   い。(サンプル数は157)。
 
 *26 更新1〜2回45.9%、3〜5回57.5%、6〜9回63.2%、10回以上73.3%
 
 *27 勤続1年未満28.6%、1〜3年未満52.7%、3〜5年未満 56.1%、5〜10年
   未満62.9%、10年以上77.8%。
                                 本文へ戻る

 
 *28 パートタイマー85.6%、臨時雇77.6%、契約社員88.4%、その他有期78.9%。
 
 *29 パートタイマー87.2%、臨時雇82.2%、契約社員88.2%、その他有期76.8%。
 
 *30 「あらかじめ、契約を更新しない旨を書面で伝える」
    パートタイマー20.1%、臨時雇19.0%、契約社員22.2%、その他有期19.0%。
    「あらかじめ、契約を更新しない旨を口頭で伝える」
    パートタイマー51.2%、臨時雇49.8%、契約社員48.9%、その他有期54.0%。
 
 *31 契約しない旨を伝える事業所において「30日以上前に伝えている」
    パートタイマー94.3%、臨時雇91.8%、契約社員94.8%、その他有期90.2%。

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