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【参考資料】 

参考資料5     

          職業保健専門家のための国際倫理規定 
 
                         職業保健国際委員会 1992


   INTERNATIONAL CODE OF ETHICS FOR OCCUPATIONAL HEALTH PROFESSIONALS 
     International Commission on Occupational Health (ICOH)


序論 

 職業保健専門家のための倫理規定は医療専門家のための倫理規定とは別個に、過去10
年の間に数か国で採用されるに至っている。各国の国内レベルおよび国際的にも職業保
健での倫理について関心が高まってきた背景にはいくつかの理由がある。ひとつには、
労働者、雇用者、一般公衆、管轄当局その他の諸機関(公衆衛生および労働関係官庁、
社会保障および司法当局)に対する職業保建と安全専門家の責任が、きわめて複雑で場
合によってはぶつかることがあることに対する認識が高まったことが挙げられる。もう
一つの理由として、強制的あるいは自発的にせよ、職業保健サービスが確立され、職業
保健の専門家の数が増加したことがある。さらに職業保建へのアプローチがより学際的
になり、部門間の垣根が取り払われたため、多様な職種の専門家が職業保建サービスに
従事するようになったことがあげられる。 
 今回の規定の目的上、「職業保健専門家」という表現には、職業保健ならびに安全に
関する活動に職業として従事するもの、または不定期であるにせよ職業保健サービスを
提供するものあるいは職業保健の実務に何らかの関係のあるものすべてが含まれる。技
術、社会、医療、法律などの側面がからむ、テクノロジーと健康とのインターフェース
にある職業保健には多くの分野が関わっている。職業保建専門家には、職業保健医、職
業保健看護婦、工場監督、職業衛生士、職業心理学者、人間工学や事故防止、労働環境
改善、職業保健や安全の研究に従事する専門家が含まれる。時に混成チームとして活動
することもある学際的なアプローチの枠組の中で、職業保健専門家の能力を動員しよう
という気運が高まっている。 
 化学、毒性学、エンジニアリング、放射線保健、疫学、環境保健、応用社会学、健康
教育など、他の多くの分野の専門家も、職業保健とそれぞれなんらかの関わりがある。
さらに、行政、経営者、労働者とその代表、救急医療従事者らも、職業区分でいえば職
業保建の専門家ではないが、職業保健についての政策や計画の実施において重要な役割
を果たし、直接責任を負う場合もある。また弁護士、建築家、製造業者、設計技師、作
業アナリスト、組合専従者、専門学校、大学その他の教師、マスメディア関係者も職場
環境や労働条件の改善に重要な役割を果たす。 
 職業保健活動の目的は、労働者の健康を守り、安全かつ健康な職場環境作りを推進し、
労働者の健康状態を考慮した上で仕事を労働者の能力に適応させることにある。弱い立
場にある人々や、報われることの少ない人々を最優先しなければならない。職業保健は
本来予防を旨とするものであり、個人あるいは集団をとわず雇用されている労働者の健
康を守らなければならない。このことは効率の良い経営の指標であり、かつ業績の優れ
た企業に当然みられる、健康で安全な労働条件と労働環境を企業が確立するのを助ける
ことになる。 
 職業保健は包括的な分野であり、雇用によって生じるあらゆる傷害、職業病を含む労
働災害および作業関連疾患、そして仕事と健康との相互関係にまつわるあらゆる側面を
カバーする。職業保健専門家はあらゆる機会をとらえて、健康と安全に関する設備、方
法や手順の計画設計に参画し、また労働者の参加を奨励するべきである。職業保健専門
家は労働者の健康促進に責任があり、健康上の障害やハンディキャップがあっても労働
者が仕事を獲得しこれを維持できるよう援助しなければならない。ここで用いている労
働者(workers)という言葉は広い意味で使っており、すべての雇用されている人、マ
ネージメントに従事する者、自営業者をも含んでいる。 
 職業保健におけるアプローチは学際的であり部門を超えたものである。これに関与す
る人々の義務は多岐にわたり、その関係も非常に複雑である。したがって、職業保健専
門家の役割、他の分野の専門家や他の保健専門家、経済、社会、保健政策と開発の領域
を担当する人々との関係を定義することが重要である。そのためには、職業保健専門家
の倫理と専門家としての行動規範について明確な考えをもつ必要がある。 
 一般に、任務や義務は法律の規制にしたがって定義される。雇用主は従業員の健康と
安全に責任を負わねばならない。職業ごとにそれそれ固有の義務とそれに伴う責任があ
る。いくつかの分野から専門家が集まって学際的なアプローチによる仕事を行う場合、
何らかの共通の倫理原則にもとづいて行動し、かつそれぞれの義務、責任、専門上の基
準を互いに理解することが重要になる。倫理面、わけても個人の権利と集団としての権
利はもちろん、雇用保全の権利と健康保護の権利、情報公開に対する権利と守秘義務の
権利など、相反する権利が関わっている場合は、特に注意が必要である。 
 職業保健専門家がその機能を果たす条件や職業保健サービスの運用条件は法の規制を
うけることが多い。健全な職業保健業務のための基本要件のひとつは完全な職業的独立
である。すなわち職業保健専門家は自己の知識と良心に基づいて、特定事業体に属する
労働者の健康と安全のために判断を下し助言を与えることができるよう、任務遂行にあ
たって専門家としての独立を確保する必要がある。 
 職業保健活動を受け入れ可能なものとするために必要な基本要件があるが、こうした
実施条件は国の規制の中に特記されている場合がある。基本要件として、作業現場に自
由に立ち入りができる、サンプル採取を行って労働環境を評価し、職務の分析を行い、
事故後の調査に参加することができる、あるいは事業体における安全と衛生基準の施行
について行政当局と協議を行うことができる、などといったことが特に重要である。職
業保健専門家が職務を正しくかつ高い水準で遂行するためにはそれ相当の予算がなけれ
ばならない。その中には適切な人材配置、訓練と再教育、サポート体制、必要な情報や
しかるべき上部組織へのアクセスなどが含まれる。 
 本倫理規定では、職業保健実施上の倫理に関する一般的な原則を決める。いくつかの
特別な分野についてのより具体的な規定については、各国で職業別に設けられた倫理規
定やガイドラインに詳しい。本書の末尾に職業保健における倫理に関する参考文献を挙
げた。本倫理規定は、職業保健活動に従事し、労働環境、労働条件の改善に力を注いで
いる人々の手引きとし、職業保健におけるチームワークと学際的アプローチのための共
通ルールの展開に貢献することを目的とする。 
 本倫理規定の作成について、ICOH理事会は1987年シドニーで討議を行った。モントリ
オールで草案を理事会メンバーに配布し、1990年末から1991年初頭にかけて協議にかけ
た。職業保健専門家のためのICOH倫理規定は、1991年11月29日理事会の承認を得た。本
書は定期的に見直しを行うことになっている。本書の内容改善に関するご意見をICOH事
務局長宛にお寄せいただきたい。 


基本原則

 以下に、国際職業保健委員会(ICOH)が作成した職業保健専門家のための国際倫理規
定の基盤をなす倫理原則を要約する。 
 職業保健活動は、専門家としての最高の水準を維持し、かつ倫理原則にのっとって実
施されなければならない。職業保健専門家は、個々の労働者およびに集団の労働者の健
康と社会的安寧に尽くさねばならない。また彼らは環境保健ならびに地域保健に貢献す
る。 
 職業保健専門家の義務は労働者の生活と健康を守り、人間の尊厳を守り、職業保健に
関する政策および計画における倫理原則の徹底を図ることにある。高潔な態度をもって
任務遂行に臨み、公平な立場に立って労働者の建康に関するデータの秘密や個人のプラ
イバシーを守ることは義務の一部である。 
 職業保健専門家はエキスパートであり、その機能の遂行にあたって職業上の完全な独
立を保証されなければならない。任務遂行に必要な能力を獲得し維持しなければならず、
また専門家としての倫理に基づき正しく任務を遂行するために必要な条件が整えられて
いなければならない。 


職業保健専門家の義務と責任 

目的と専門家としての役割 

 1.職業保健活動の第一の目的は労働者の健康を守り、安全で健康な労働環境を作り
  出すことにある。そのためには、職業保健専門家は信頼のおける方法を用いてリス
  ク評価を行い、有効な予防手段を提示し、その実施を見届ける義務がある。職業保
  健専門家は、雇用主が職場の安全と保健に関する責任を全うできるよう、専門家と
  しての適切な助言を与え、また労働者には仕事における健康を守りかつ推進するた
  めに誠実な助言を与える義務がある。安全と保健に関する委員会がある場合は、職
  業保健専門家はこれらと直接接触を保たねばならない。 


一般知識と専門知識 

 2.職業保健専門家は仕事と労働環境をよく知るだけでなく、自分の能力を高め、科
  学技術にする知識、職業上の危険要因、さらにこれらに関するリスクをなくすまた
  はへらすための効率的な手段などについての最新の知識をもつためのたゆみない努
  力を求められている。職業保健専門家はまた、定期的にかつ日常的に可能な限り、
  職場を訪問し、そこで行われている仕事について労働者、技術者、経営者の相談を
  受ける義務がある。 


方針と計画の展開 

 3.職業保健専門家は、労働者の健康を左右する職場での要因に関して、経営者と労
  働者に助言を与えねばならない。職業上の危険要因についてのリスク評価は、企業
  のニーズにあった職業安全・衛生に関する方針や予防計画の確立につながるような
  ものでなければならない。職業保健専門家は、最新の科学技術に関する専門知識や
  労働環境についての自分の知識に基づいてかかる方針を提起しなければならない。
  また職場で予想されるリスクにあわせて衛生と安全に及ぼす職業上の危険要因を管
  理し、監視し、そして万一の事故に備えて影響を最小限に止めるために必要な措置
  を含む予防計画を提案しなければならない。 


予防と迅速な対応の重要性 

 4.費用効果が高く、技術的安全で、実施が容易である簡単な予防策を迅速に行うこ
  とが特に重要である。さらに調査を重ねてこれらの予防策が効率がよいかどうかを
  チェックし、必要に応じてより完成度の高い対策を薦めなければならない。職業上
  の危険がどの程度ひどいかがはっきりしない場合は、慎重を期してただちに予防策
  を講じるべきである。 


改善措置のフォローアップ 

 5.過度のリスクを排除するための適切な手段を否定したり、躊躇する場合、あるい
  は健康や安全に対する危険が明らかに存在するのにこれを改善しようとしない場合、
  職業保健専門家は可及的速やかに、書面で経営上層部に対して問題と考える点をは
  っきりと伝えて、経営者に科学的知識を考慮し、被曝限界値を含め適切な健康を守
  る基準を適用する必要のあることを強調し、また雇用している労働者の健康を守る
  ために法律や規則を遵守する義務のあることを指摘しなければならない。必要に応
  じて対象となった労働者とその企業における労働者の代表に連絡をとり、かつ管轄
  当局にも連絡を行う。 


安全と健康に関する情報 

 6.職業保健専門家は、ばくろされる可能性のある職業上の危険について、労働者に
  対し事実を包み隠さず伝えかつ予防策を客観的で慎重なやり方で知らせる義務があ
  る。職業保健担当者は雇用主と協力し、彼らが予測される職業上の危険に関してわ
  かっている範囲で必要な情報とトレーニングを労働者と経営幹部に提供できるよう
  に力を貸さなければならない。 


企業秘密 

 7.職業保健専門家は、その活動で知り得た企業秘密を開示してはならない。ただし、
  労働者あるいは地域社会の安全と健康を守るうえで必要な情報を隠匿してはならな
  い。必要に応じて、職業保健専門家は当該分野での法の実施を監督する行政当局と
  相談しなければならない。 


ヘルスサーベイランス 

 8.ヘルスサーベイランスの目的と詳細は明確に定義し、労働者にもこれを伝えなけ
  ればならない。こうしたサーベイランスの有効性を評価しなければならず、サーベ
  イランスは労働者に通知の上同意を得て、管轄当局が承認する職業保健専門家が行
  うものとする。ふるいわけ集団検診やヘルスサーベイランスに参加した労働者とは
  結果のよしあしを問わず当人と話し合わなければならない。 
   


労働者に対する情報 

 9.ヘルスサーベイランスの一環として行われた検診の結果について、当事者である
  労働者に説明を行わなければならない。特定の職種に対する適性があるかどうか、
  健康診断の結果と、その職種に求められる要件や職場をよく知ったうえで評価しな
  ければならない。本人の関心や利害と矛盾する職業適性判断結果が出た場合、労働
  者にはこれについて反論する機会が与えられていることを告知しなければならない。
  これに関連して、訴えを扱う手続きをつくらなければならない。 


雇主に対する情報 

 10.国の法律、規制などで定められる検診の結果は、予定される職種に対する適性、
  任務割当あるいは労働災害の危険に関連する医学的立場からみて必要とされる制限
  事項などについてのみ、経営者に伝えるものとする。職業適性、健康あるいは労働
  災害による健康についての影響の可能性あるいは確率などに関する一般的な情報は、
  本人の同意を得てのみ提供することができる。 


第三者に対する危険 

 11.労働者の健康状態や仕事の内容が第三者の安全性を脅かすような性質のもので
  ある場合は、本人にその旨を明確に知らせなければならない。危険度が極めて高い
  場合は、第三者を守るために必要な対策について経営者や、国家の規則にその旨の
  規定がある場合は管轄当局に対しても情報を伝えなければならない。 


生物学的モニタリングと調査 

 12.生物学的試験や調査は、実験方法の感度、特異性、予測値の正確さを十分考慮
  に入れた上で労働者の健康を守るための有効性に基づいて選択されなければならな
  い。職業保健専門家は、仕事を割り当てる際の必要条件との関連で信頼性に欠けた
  り、十分な予測ができないスクリーニングテストや調査を用いてはならない。検査
  や方法に選択の幅があり、選択吟味することが望ましい場合には、常に労働者の健
  康に危険のない非侵襲性の方法や検査をまずとりあげるべきである。検査をうける
  労勤者の健康に害があるかもしれない侵襲性のある調査や検査は、その功罪をよく
  検討したうえ初めて勧告できるものであって、保険金請求との関連でこうした選択
  をしてはならない。このような調査を実施するには、労働者の情報に基づく同意が
  なげればならずまた実施にあたっては最高の専門水準を守らなければならない。 


健康推進活動 

 13.職業保健専門家は、健康教育、健康推進活動、集団検診などの活動を通じてさ
  まざまな形で公衆衛生に貢献できる。こうした活動を通して、職業保健専門家は雇
  用主、労働者双方に働きかけて活動の計画や実施に参加を促さなければならない。
  また職業保健専門家は労働者の健康に関する個人データの秘密を守らなければなら
  ない。 


地域社会と環境の保護 

 14.職業保健専門家は地域社会と環境保護における役割の自覚が求められる。企業
  の操業や工程で発生したりあるいは結果として生じる環境破壊を明らかにし、評価
  し、防止策についての勧告を行うといった活動のリーダーシップをとりかつ参加し
  なければならない。 


科学的知識に対する貢献 

 15.職業保健専門家は、新しく発生したまたは疑いのある職業上の危険およびそれ
  にかかわる予防法について、科学界に対して客観的な報告を行わなければならない。
  職業保健を専門とする研究者は専門家としての自主性を確保しつつ科事的な立場に
  立って活動の計画実施を図り、必要ならば独立の倫理委員会による評価を含めて、
  研究活動や医学研究に求められる倫理原則を遵守しなければならない。 


 
職業保健専門家の役割を果たすための条件 

 能力、誠実、公平 

 16.職業保健専門家は、常に労働者の健康と安全を最優先しなければならない。職
  業保健専門家は科事的な知識と専門家としての能力に基づいて判断を下し,必要に
  応じてそれぞれの分野の専門家の助言を仰がねばならない。職業保建専門家はその
  誠実さや公平さを疑われるような判断、助言、活動を慎まねばならない。 


専門家としての独立性 

 17.職業保健専門家は専門家としての独立を保ち、役割を果たすにあたって秘密を
  守るという原則を遵守しなければならない。職業保健専門家は、とりわけ職業上の
  危険要因や健康あるいは安全を脅かす危険のあることがわかっている状況に関連し
  て、雇用主や労働者またはその代表らに助言を与える際、いかなる場合もその判断
  や表明が相反する利害関係に左右されるようなことがあってはならない。 


公正、非差別、コミュニケーション 

 18.職業保健専門家は、職業保建サービス活動の対象となる人々との間に、信任と
  信頼と公正に基づく関係を確立しなければならない。すべての労働者は、年齢、性
  別、社会的地位、種族的背景、政治、思想あるいは宗教、病気の種類、あるいは職
  業保健専門家との相談のきっかけとなった原因によっていかなる差別も受けてはな
  らず、常に公正な取扱いを受けなければならない。職業保健専門家は、問題となっ
  た仕事および職場環境の条件に関して最終決定権をもつ最高経営幹部あるいは取締
  役会との間に風通しのよいコミュニケーションの道を開いておかねばならない。 


雇用契約における倫理条項 

 19.適切であると考えられるときは常に、職業保健専門家はその雇用契約に倫理に
  関する条項を含めるよう要求しなければならない。倫理条項には職業保健専門家が
  専門家としての基準と倫理原則を適用する権利を特に明記しなければならない。職
  業保健専門家は、望ましい専門基準や倫理原則に基づき任務が果たせないような職
  業保健の業務を受入れてはならない。雇用契約には利害衝突、わけても記録の取扱
  いや秘密を守ることに関する法律上、契約上および倫理上の立場についての手引き
  を含めなければならない。職業保健専門家は、自分の雇用またはサービス契約に専
  門家としての独立性を限定するような条項が含まれていないことを確めなければな
  らない。疑問がある場合は、管轄当局の助力を得て契約条件をチェックする必要が
  ある。 


記録 

 20.職業保健専門家は、企業内の職業保健に関する問題を明らかにするために所定
  の守秘義務にしたがい十分な記録を維持しなければならない。この記録には作業環
  境のサーベイランス・データ、職歴などの個人データ、職場でのばくろ歴などの健
  康データ、職業上の危険要因へのばくろについての個人モニタリング結果ならびに
  適性証明書などを含める。労働者は自分自身の記録を閲覧する権利を与えられなけ
  ればならない。 


医学上の守秘義務 

 21.個人の医療データおよび医学検査の結果は極秘医療ファイルとして、職業保健
  医または看護婦が責任をもって保管しなければならない。医療ファイルの閲覧、伝
  達および開示ならびにファイルの記載内容の利用は、国の法律または規則および医
  療関係者のための国の倫理規定の適用を受ける。 


集団の健康データ 

 22.個人が特定されるおそれがなければ、労働者集団の健康データは当該経営陣お
  よび労働者の代表あるいはもしあれば安全と健康に関する委員会などに公表して、
  ばくろを受けた労働者の健康と安全を守るという彼らの任務の一助とすることがで
  きる。労働災害および職業病は国の法律と規則に従って管轄当局に報告しなければ
  ならない。 


保健専門家との関係 

 23.職業保健専門家は職場での労働者の建康を守ることと関係のない個人的な情報
  を求めてはならない。ただし労働者が説明を受けて同意した場合は、職業保健医は
  労働者の健康を守ることを目的として、労働者のかかりつけの医師または病院の医
  療スタッフから医療に関する情報またはデータを取得してもよい。その場合職業保
  健医は、労働者がかかりつけの医師または病院スタッフに、自分の職責と医療に情
  報またはデータを必要とする理由を知らせなければならない。労働者の同意がある
  場合、職業保健医または看護婦は、必要に応じて労働者のかかりつけの医師に対し
  て関連データ、職場での危険、被曝や制約など労働者の健康状態からみて何らかの
  リスクを伴うようだ事態について情報を提供することができる。 


濫用しないこと 

 24.職業保健専門家は、他の保健専門家と連携して労働者の健康と医療に関するデ
  ータの秘密を守らなければならない。特に重要な問題がある場合は、職業保健専門
  家は本人が倫理原則に反すると考える手続や慣行、とりわけ口頭によるコメント、
  記録保管、記録を行う際の秘密保持、コンピュータに入れた情報の使用など医療上
  の守秘義務に関する手続や慣行を管轄当局に報告しなければならない。 


他の当事者との関係 

 25.職業保健専門家は、専門家として完全な独立を保つことの必要性について雇用
  主や労働者とその代表らの認識を高め、人間としての尊厳を守るためまた職業保健
  業務の必要や有効を広く認めさせるために、医療に関する秘密保持義務に対する干
  渉を排除しなければならない。 


倫理と専門家による監査の推進 

 26.職業保健専門家は雇用主、労働者およびその組織ならびに行政当局の支持をも
  とめて、職業保健業務の倫理を最も高い水準に維持するよう働きかけなければなら
  ない。適切な基準が設けられているか、そうした基準が守られているか、欠陥を指
  摘し矯正する機能が働いているかなどについて、職業保健専門家の活動を専門家が
  監査するための制度を設けるべきである。 

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