別添2
規制の設定又は改廃に係る意見提出手続
平成11年3月23日
閣議決定
前文
   規制の設定又は改廃に伴い政令・省令等を策定する過程において、国民等の多様な意 見・情報・専門的知識を行政機関が把握するとともに、その過程の公正の確保と透明性 の向上を図ることが必要である。このような観点から、規制の設定又は改廃に当たり、 意思決定過程において広く国民等に対し案等を公表し、それに対して提出された意見・ 情報を考慮して意思決定を行う意見提出手続(いわゆるパブリック・コメント手続)を、 以下のとおり定める。
 
  (考え方)
 
(1) 「国民等」の「等」は、内外の事業者等を示すものである。

 対象
 広く一般に適用される国の行政機関等の意思表示で、規制の設定又は改廃に係るものは、本手続を経て策定する。
 なお、迅速性・緊急性を要するもの、軽微なもの等については本手続によらないことができる。
 
  (考え方)
 
(1)  具体的な案件が、本手続の対象であるか否かは、意思表示を行う行政機関(政令については、その事務を所掌する行政機関)が、本手続の趣旨に基づいて判断し、また、その判断の説明責任を負う。
(2)  本手続を経て策定されるべき意思表示は、政令、府令、省令、告示等である。「等」には、行政手続法上の審査基準・処分基準・複数の者を対象とする行政指導に共通して内容となるべき事項を含む。(ただし、公にしない審査基準等は除く。)
(3)  「広く一般に適用される」とは、特定の者を名あて人としないこと等を意味する。 したがって、個別具体的な処分・計画は本手続の対象ではない。
(4)  条約その他の外交文書(以下「条約等」という。)並びにその作成及び実施に関して行われる外国政府、国際機関等に対する意思表示は、本手続の対象ではない。
(5)  本手続で「国の行政機関等」とは、内閣又は府、省、委員会、庁若しくはこれらに置かれる機関若しくは部局等をいう。したがって、国の行政機関等の意思表示ではない法律・条例・地方公共団体における規則は、本手続の対象ではない。
(6)  懇談会等行政運営上の会合は行政機関ではないので、その意見は本手続の対象ではない。
(7)  特殊法人、認可法人、民法上の法人等が、法令により付与された処分権限に係る審査基準及び処分基準を定める場合についても、本手続に準じた手続きを経るよう、その規制の根拠となる法令を所管する行政機関が指導する。
(8)  本手続は、行政内で完結して広く一般に適用される意思表示を対象としているため、国会において審議を経る法律案は、本手続の対象ではない。
(9)  「規制の設定又は改廃に係るもの」について、本手続を経て策定することとしているので、白書のような事実認識や現状分析、組織令・定員令のように行政内部のみに適用されるもの、補助金要綱、年金の給付のような行政サービスに係るもの、施行期日政令のような事務的なものは、本手続の対象とはならない。
(10)  具体的な案件が、「規制の設定又は改廃に係る」ものであるか否かは、規制緩和白書(1998年8月総務庁)第6章に示されている「規制」の概念を踏まえて、判断されるものとする。
(11)  「迅速性・緊急性を要するもの、軽微なもの等」の「等」には、条約等に基づく規制の設定又は改廃について、条約等にその内容が詳細に規定されている場合のように、行政機関の裁量の余地がないものを含む。
(12)  本手続を経て策定されるべき意思表示について、公聴会付議や事前の告示等の手続が法令で定められている場合、当該法令にのっとった手続きをとることとなるが、本手続が定められた趣旨にかんがみ、その運用において可能な限り本手続に沿うよう努める。

 意見提出の手続
(1) 公表主体・公表時期
 本手続を経て策定する意思表示を行う行政機関は、最終的な意思決定を行う前にその案等を公表する。また、内閣の意思表示である政令については、その事務を所掌する行政機関が案等を公表する。
 
  (考え方)
 
(1)   公表される「案等」は、意思表示の案そのものに限らず、その内容を明確に示すもので差し支えない。また、事案に応じ、いくつかの代替案を同時に示すことが有効であるときは、そのような方法でも差し支えない。
 
(2)  公表資料
 行政機関は、一般の理解に資するため、案等の本体に加えて、可能な限り次に掲げた資料を公表する。
当該案等を作成した趣旨・目的・背景
当該案等に関連する資料(根拠法令、当該規制の設定又は改廃によって生じると思われる影響の程度・範囲等)
当該案等の位置付け
 
(3)  公表方法
 行政機関は、次のような公表方法を活用し、積極的に周知を図る。
ホームページへの掲載
窓口での配付
新聞・雑誌等による広報
広報誌掲載
官報掲載
報道発表
 なお、複数の方法を活用する場合であって、公表する内容が相当量に及ぶ場合には、案等の概要と公表資料全体の入手方法等を明確にしておけば、活用する公表方法の全てにおいては、公表資料全体を公表する必要はない。
 また、専門家、利害関係人には、必要に応じ、適宜周知に努める。
 
  (考え方)
 
(1)   公表資料については、関心を持つ一般の国民が入手できるようにする必要があり、公表資料自体がさまざまな方法によって広く周知されることが望ましい。
 
(4)  意見・情報の募集期間
 意見・情報の募集期間については、意見・情報の提出に必要と判断される時間等を勘案し、1か月程度を一つの目安として、案等の公表時に明示する。
 
  (考え方)
 
(1)   「1か月程度」という期間は、これまでの実績を基にした目安であって、案件に応じて、適宜定めるべきである。
 
(5)  意見・情報の提出方法
 意見・情報の提出方法として、郵便、ファクシミリ、電子メール等の手段を案等の公表時に明示する。
 また、公聴会の開催により意見・情報を聴取することもできるが、書面での意見・情報の提出の申し出があった場合には、これを受け付けなければならない。なお、公聴会の開催、書面での意見・情報の提出の申し出に関する手続を案等の公表時に明示する。
 
(6)  意見・情報の処理
 案等を公表した行政機関は、提出された意見・情報を考慮して意思決定を行うとともに、これに対する当該行政機関の考え方を取りまとめ、提出された意見・情報と併せて公表する。
 
  (考え方)
 
(1)  公表は、原則として意思表示の時点までに行う。なお、意思表示の時点において、公表された案等からの修正点を明らかにする。
(2)  「意見・情報」及びこれに対する行政機関の考え方は、適宜整理して公表しても差し支えない。なお、その場合、提出された意見・情報については、文書閲覧窓口における閲覧等の方法により、一定期間公にしておく。ただし、提出された意見・情報で、公にすることにより、個人又は法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものについては、行政機関の判断により、その全部又は一部を公にしないことができる。
(3)  意見・情報を提出した個人又は法人の氏名・名称その他の属性に関する情報を公表又は公にすることは、案等の公表に際して、これらを公表又は公にすることが予定されていることを明示している場合に限る。
(4)  公聴会による場合は、表明された意見を、行政機関において文書化する必要がある。
(5)  公表方法については、案等の公表方法に準じる。

その他
(1) 意思決定過程の特例
 本手続を経て策定されるべき意思表示であっても、その策定過程において、意思表示を行う機関以外の国の行政機関等が本手続に準じた手続きを経て意思決定を行い、それを受けて、それと実質的に同じ内容の意思表示を行う場合には、改めて本手続を経る必要はない。
 
  (考え方)
 
(1)   国の行政機関等が意思決定を行うに当たっては、意思表示を行う機関以外の国の行政機関等の意思決定を受けて行われる場合も少なくない。このような場合において、意思表示を行う機関以外の国の行政機関等により本手続に準じて案等を公表し、提出された意見・情報を考慮して意思決定が行われれば、これを受けて意思表示を行う国の行政機関等は、実質的に同じ内容である限りは、改めて本手続を経る必要はない。このような事例としては、次のようなものがある。
 審議会等が本手続に準じた手続を経て定めた答申を受けて、政令を定める場合や、各省大臣が省令、告示等を定める場合
 各省大臣が本手続に準じた手続を経て定めた通達を受けて、地方支分部局の長が審査基準を定める場合
(2)   意思表示を行う機関以外の国の行政機関等が案等を公表した場合には、当該行政機関等が、提出された意見・情報に対する考え方を取りまとめる。
 
(2) 一覧の作成
 各省庁は、本手続を行っている案件の一覧を作成し、ホームページに掲載するとともに、文書閲覧窓口に備えつける。 
 
  (考え方)
 
(1)   案件の一覧には、少なくとも次の事項を掲げる。
 案件名
 公表日、意見・情報締切日
 公表資料の入手方法
 問い合わせ先
 
(3) 実態の把握
 各省庁は、各省庁における規制の設定又は改廃に係る意見提出手続の実施状況を、当分の間総務庁に報告する。
 総務庁は報告された状況を取りまとめ公表する。
 
(4) 見直し
 本手続は、必要に応じ見直しを行う。 

 適用日等
 本手続は、平成11年4月1日以降の国の行政機関等の意思表示に適用する。ただし、本手続適用開始時に、すでに立案の途中にあるものについては、本手続の対象としないが、可能な限り本手続に準じた手続を経ることとする。



審議会目次へ  戻る