第2部 欧米諸国における就業形態の多様化

4 今後の展望

(1) イギリス

 97年6月にEU社会労働政策への参入を表明したことから、EUパートタイム労働指令についても2000年までに国内法制化の運び。既に多くの企業においてパートタイム労働は常用労働と均等に取り扱われているため、同指令の影響は大きくないものと考えられるが、パートタイム労働の就労分野に広がりがみられるものと考えられる。政府は、99年1月、労働党政権による労働政策の転換の大きな柱の一つとなる「雇用関係法案」を提出した。この法案は、個別的労使関係、集団的労使関係等に関する規定を含むものであるが、その中には、不当解雇に対する不服申立て権を得るための勤続年数要件の2年から1年への短縮、雇用保護法制の対象範囲の拡大、パートタイム労働者の保護等就業形態の多様化に影響があると考えられる内容が含まれている。
 労働組合は、就業形態の多様化を肯定的にとらえ始め、積極的に議論に参加していくこととしている。使用者側も、EU社会政策への参加を不可避的なものと受け止め姿勢を転換しつつある。

(2) ドイツ

 パート労働者に占める女性の割合が非常に高く、近年の女性の労働力率は横這いあるいは低下気味であることから、今後の女性の労働市場への進出は緩やかなものと考えられる。高年齢労働者のパートタイム労働への転換促進の取り組みが行われているが、最近の厳しい失業情勢の中で今後の政府の取り組みが注目される。労働組合の中にも、雇用維持のための時短と絡めてパートタイム労働の活用を図る動きが見られる。

(3) フランス

 政府は、失業対策としてのパートタイム雇用を積極的に推進しており、政府等による失業者直接雇い入れ措置に際してパートタイム労働者を対象としたり、失業者をパートタイムで雇用する事業主に対して特定の条件下で社会保険料の減免を行う等の助成措置を講じている。

(4) オランダ

 今後も、積極的にパートタイム労働の導入が促進される見通し。特に、男性優位の職種、専門性の高い職種等におけるパートタイム労働の促進が目標として掲げられている。
 99年1月より、「労働市場の柔軟性及び雇用の安定に係る法律」が施行された。その主な内容は、1)解雇規制の緩和、2)派遣労働者等の雇用形態による労働者の法的地位の強化、3)労働者派遣事業に係る許可制の廃止等。この法改正により、オランダの労働市場における柔軟性と安定性は一つの到達点に達すると公労使は一致して見ている。

(5) アメリカ

 パートタイム労働者等に関する政府のスタンスは、基本的には、契約自由の原則に基づき特段の方針は無い。使用者側は、労働力需給に応じてパートタイム労働者等を活用しようとしている。労働組合側も、基本的にはパートタイム労働者等のみに焦点を当てた活動は展開していない。

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