まとめ


 我が国経済は第1次石油危機以来の激動の時代にあり、労働市場も大きく変化している。こうした状況の中で、雇用の安定を図るために重要なことはバランスと多様性の確保である。第1に、経済の構造調整と社会や生活の安定のバランスが重要である。もちろん、構造調整による経済の活性化なしに社会や生活の安定はありえないが、それが目的となって安定がなおざりになっては人々の生活が混乱するおそれがある。第2は、活力と公平のバランスである。我が国経済の発展にとって企業家精神が重要であり、才能ある人が能力を発揮しそれに応じた報酬を得る機会を与えられることが求められている。しかし、我が国の経済成長は多くの人がそれぞれの役割を真しに果たすことによって支えられていることを無視すべきではない。第3に、短期的な視点と長期的な視点のバランスも重要である。短期的な視点のみに重点がいって長期的な構造調整を阻害してしまうことは適当ではないが、長期的な必要性のみを強調して現状の厳しさを看過すべきでもない。逆に企業にとっては、短期的な収益の維持は重要であるが、併せて長期的な視点からの人材の育成や企業の成長に向けた取組が望まれる。また、以上のようなバランスを確保する上でも、年齢、産業・職業、就業形態等によって様々な性格を持つ労働市場・雇用に対して、多様な状況に応じたきめ細かな対応をとることが雇用の安定を図る上で重要である。




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