急速に変化する労働市場と新たな雇用の創出


 我が国の雇用・失業情勢は、これまでにない厳しい状況を迎えている。完全失業者数は1998年の前半に一気に50万人も増加し、完全失業率は4月以降4%台と我々がこれまで経験したことのない水準に達している。また、雇用者数が比較可能な1954年以来初めて暦年ベースで前年より減少し、特に製造業、建設業の減少が著しい。
 こうした動きは、我が国経済全体の景気の低迷によるところが大きいが、それだけではなく、1990年代に入ってバブルが崩壊した後、労働市場が中長期的・構造的に変化していることの反映でもあると考えられる。
 すなわち、完全失業率はバブル期にいったん低下した後、1990年代にじりじりと上昇を続けており、しかも、上昇のスピードは1970年代、1980年代と比較してもかなり速い。また、我が国経済全体がグローバル化、情報化等のうねりの中で急激な構造変化のただ中にあり、このことが労働市場の構造に大きな変化をもたらしている。一方、労働力供給面においても、急ピッチで進む高齢化、女性の職場進出等が大きな影響を与えている。また、パートタイム労働者が急激に増加するなど就業形態の多様化が進んでおり、若年層を中心に失業や転職に関する意識が大きく変化しつつある。
 したがって、今後の雇用・失業情勢を展望し、雇用政策の在り方を検討するためには、労働市場の中長期的・構造的変化を分析することが重要であり、雇用の安定・確保のため、雇用創出の状況について把握することが不可欠である。
 そこで、「平成11年版労働経済の分析」(平成11年版労働白書)では、第 I 部「平成10年労働経済の推移と特徴」において、景気の動向等を反映して、厳しさを増していった労働経済の動向について、1998年を中心に分析した。また、第 II 部「急速に変化する労働市場と新たな雇用の創出」においては、上のような観点に立って、失業を中心とした労働市場の実態とその構造的変化について分析するとともに、雇用創出の状況を把握し、21世紀に向けて雇用構造の円滑な転換を進め、雇用の安定を図るための課題を検討した。
 その概要は以下のとおりである。


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