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「健やか親子21」によせて

 「健やか親子21検討会報告書」の公表に当たりまして、私の思いを述べさせていただきます。
 我が国の母子保健の水準は、20世紀の終わりを迎えるに当たり既に世界の最高水準に達しているところでありますが、妊産婦死亡率や乳幼児の事故死について改善の余地があるなどの残された課題や、思春期における健康問題や児童虐待など親子の心の問題の拡大などの新たな課題、小児医療や地域の母子保健活動の水準の低下を防止するなど保健医療環境の確保についても対応すべき課題があります。
 私自身、少子化に伴って小児科医の希望者が減少するなど、これまで我が国が達成した世界最高レベルの母子保健医療水準や地域保健サービスのレベルを低下させかねない事態を懸念しており、21世紀の母子保健においても、これまで達成した世界最高の水準を確保していくための対策の必要性を強く感じております。
 そういう点から「健やか親子21検討会報告書」がまとめられたことは大変意義があるものと喜んでおります。ただ、大事なことは、この報告書で提言された事項をどう具体化していくかであり、それには国民を始め、母子保健の関係者、関係機関・団体がそれぞれの立場から自主的な取組を推進していく必要があり、国を挙げて取り組んで行くことが重要だと思います。
 余談ではありますが、医療機関での出産で、退院した時に子どもの手形・足形の色紙を記念にプレゼントされることがありますが、私の地元の青森県からは縄文時代後期の遺跡から子どもの手形と足形の土製品が出土しています。これらは子どもの健やかな成長を願うあかしであるとされています。このように我が国では、縄文の昔から「健やかな親子」を願う取組がなされてきたと言えます。
 改めて申し上げるまでもなく母子保健は、生涯を通じた健康の出発点であると同時に、次の世代を健やかに生み育てるための基礎であることから、極めて重要なものであります。私は厚生大臣として、この「健やか親子21」が21世紀の我が国の母子保健のさらなる向上に寄与するものと確信しており、関係者をはじめ国民の皆様の「健やか親子21」へのご理解とご協力をいだだき、国民運動として展開されることを切にお願い申し上げる次第です。

平成12年11月17日
厚生大臣 津島雄二


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