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1 食中毒の発生予防等について

(1)平成8年の腸管出血性大腸菌O157による集団食中毒以降、腸管出血性大腸菌による集団食中毒は減少しているものの、イカ乾製品によるサルモネラ食中毒の全国的発生など、サルモネラ、腸炎ビブリオ及びカンピロバクターによる食中毒は増加傾向を示しており、引き続き注意を要する状態にある。

(2)厚生省としては、このような状況を踏まえ、1)学校給食施設等の一斉点検の実施、2)食品中の食中毒菌汚染実態調査の実施、3)家庭、調理施設におけるHACCPの考えを取り入れた衛生管理指針の作成、4)カキの小型球形ウイルス及び卵のサルモネラ対策などの食中毒対策を進めてきた。
 都道府県市区においては、引き続き、学校給食、社会福祉施設等集団給食施設、弁当・仕出し屋等の大量調理施設を中心とした食中毒発生防止のための監視指導の強化、流通食品等の食中毒菌等の検査強化、地域住民に対する食中毒予防に関する知識の普及啓発等食中毒予防対策に努められたい。
 また、食中毒発生時には、被害拡大防止のために的確・迅速な対応を行うとともに、初動調査においては、病原微生物のみならず化学物質等が病因物質である可能性を考慮して実施されたい。
 更に、平常時から食中毒発生時に備え、食中毒対策要綱の策定等により原因究明体制の整備を図るとともに、今後の予防対策に資するために食中毒調査、特に汚染源の遡り調査を徹底されるよう重ねてお願いする。

(3)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の施行を踏まえ、昨年12月に食中毒事件票の一部改正により、病因物質にコレラ菌、赤痢菌、チフス菌、パラチフスA菌が追加され、旧伝染病予防法に基づく伝染病であっても、病因物質の種別に係わらず飲食に起因する健康被害(Foodborne Disease)については、食中毒であることが明確にされたところである。今後、これらの疾病の発生予防、被害拡大防止に当たって、これまで以上に食品保健部門と感染症対策部門との効果的な役割分担、連携が必要となるので、予防課等関係部局との連携体制の強化等に特段のご努力をお願いする。

(4)散発型の集団発生(いわゆるDiffuse Outbreak)の原因究明体制の強化を図るため、食品保健総合情報処理システムに食中毒発生時の速報収集、評価及び提供の機能を追加して充実を図ったところであるので、都道府県市区においては本システムの活用により、食中毒情報を報告するための情報処理体制の整備に特段のご努力をお願いする。
 なお、厚生省では、食中毒等の健康危機管理に迅速的確に対応するため、平成9年に「厚生省健康危機管理基本指針」及びこれに基づく「食中毒対策危機管理実施要領」を策定したところであり、また、昨年、食中毒発生時の緊急連絡体制の整備の一環として、緊急時の電話自動連絡システムの導入を行ったところであるのでご承知置きいただきたい。


2 食品等の安全性確保対策について

(1)監視指導・検査体制等の整備について
ア 監視指導の強化
 食品の製造・加工技術等の高度化、食品の多様化、食品流通の広域化及び国際化等に適切に対処するため、計画的・効果的な食品監視及び高度な科学的知見に基づく衛生指導の推進が必要である。このため市場衛生検査所、食品衛生監視機動班等の整備により専門的かつ広域的な衛生検査及び監視指導を推進するとともに、地域性の高い飲食店営業者等に対しては、保健所を中心とする監視指導を進め、専門的かつ技術的拠点としての機能を強化されたい。また、これらの監視指導に対応するために都道府県市区において、引き続き、食品衛生監視員等の資質向上のための研修等に努められたい。
 厚生省としても、今後とも最新の食中毒関連情報を提供するとともに、食品中からの分析法及び予防方法の確立、食品衛生監視員、地方衛生研究所職員を対象とした研修の実施等を引き続き進めてまいりたいと考えている。
イ 検査施設の整備
 残留農薬基準等の食品等の規格基準の整備、検査施設の業務管理基準の導入等に伴い、高度な機器分析による試験検査の需要の増加に対応するとともに、検査の効率化・合理化を図り、あわせて検査結果の信頼性を確保する観点から、衛生研究所、保健所、市場衛生検査所、食肉衛生検査所等各食品衛生検査施設の機能の高度化・集中化を行うことにより、その体制の整備を推進されたい。

(2)組換えDNA技術応用食品等の安全性確保について

1)組換えDNA技術応用食品の安全性確認の法的義務化
ア 組換えDNA技術応用食品・食品添加物(以下「遺伝子組換え食品」という。)については、現在、生活衛生局長通知に基づく「安全性評価指針」に基づき、アレルギー誘発性や有害物質の産生、遺伝子組換え技術の応用に伴う派生的な影響等を含め、詳細な審査項目を設けて、厚生省の食品衛生調査会において個別に審査して安全性確認を行っているが、これは、法律に基づかない任意の仕組みとなっている。
 遺伝子組換え食品は、近年、国際的にも急速に広がっており、今後ますます普及していくことが予想されるため、安全性確認を行う制度を法的に確立しておく必要があることから、安全性確認の制度を食品衛生法に基づく規格基準に規定し、法律上の義務とするものである。

イ 遺伝子組換え食品の安全性確認の法的義務化の具体的なあり方については、現在、食品衛生調査会において審議中であるが、今後、本年4月を目途に、新しい安全性確認手続きを施行し、平成13年4月を目途に、安全性確認を受けていない遺伝子組換え食品又はこれを原材料に用いた食品は、輸入、販売等が食品衛生法上できないこととする方向で準備中である。

2)食品衛生法に基づく表示について
 遺伝子組換え食品の表示については、消費者の選択に資する観点から、農林水産省が品質表示基準として、平成13年4月施行を目途に、表示の義務化を行うこととしている。
 一方、食品衛生法に基づく表示については、平成11年3月の食品衛生調査会表示特別部会の報告書では、表示を必要とする意見と必要としない意見との両論併記で継続審議となっていたが、この問題は、安全性確認の法的義務化と密接に関連する問題であることから、表示の問題についても、早急に表示部会で審議し、結論を得る予定である。

3)コーデックス委員会バイオテクノロジー応用食品特別部会について
 食品の国際規格を作成する国際政府間機関であるFAO/WHO合同食品規格計画食品規格委員会(CODEX委員会)の昨年6月の総会で、バイオテクノロジー応用食品特別部会を設置し、その議長国に日本が選出されたところであり、今後4年以内に、遺伝子組換え食品の安全性に関する国際的な基準等を作成することとされている。

(3)輸入食品の監視体制について

ア 近年、国民の食生活の多様化、食品の国際流通の進展等に伴い、食品の輸入件数は平成10年に約128万件となり、この10年間で約1.9倍となっている。
 また、我が国の食料需給率について、食料供給熱量(カロリーベース)でみるとその約59%は海外に依存しており、輸入食品の安全性を確保することは、国民の健康を守るうえで重要な課題となっている。
 このような社会情勢の変化に対応するため、輸入される食品等について、食品衛生法違反の蓋然性が高い輸入食品等に対する検査命令を実施し、その他の食品等については年間計画に基づくモニタリング検査を実施することによりその安全性を確保している。また、輸入手続の迅速化を図る観点からコンピュータを利用した届出等を可能とするため、輸入手続の電算化システム(輸入食品監視支援システム)を稼働させるとともに、大蔵省の通関情報処理システムとのインターフェイス化を実施しており、さらに、平成10年3月23日から、オーストラリア政府との間で、食肉に関する衛生証明書の電送化を本格的に開始し、より一層の輸入手続の電算化の推進を図っている。
 現在のところ、輸入食品監視支援システムの利用率は約85%となっており、輸入届出の大部分が電送化されているところである。
 厚生省においては、従来から、検疫所における輸入食品の監視体制について充実強化を図ってきたところであるが、平成12年度においても、次の措置を講ずることとしている。
(ア)輸入時検査の実施にあたっては、輸出国の状況、過去の違反事例等を踏まえ、個々の食品の食品衛生法違反の蓋然性に応じた計画的かつ科学的な検査を実施することが最も重要であることから、違反の蓋然性が高い食品については検査の命令を行うとともに、その他の食品に対するモニタリング検査の充実、強化を図る。
(イ)輸入米について、引き続き残留農薬等の検査を実施し、その安全確保対策に万全を期する。
(ウ)輸入手続きに関し、輸入食品監視支援システム(FAINS)と大蔵省の通関情報処理システムとのさらなる電算化の充実を図る。
イ 検疫所で発見された輸入食品の違反事例については、毎月、都道府県等に対しその情報を連絡しているところであるが、各都道府県における監視業務の実施に当たっては当該情報についても留意願いたい。
 また、都道府県等において輸入食品につき違反等が発見された場合にあっては、早急に厚生省及び関係都道府県等に連絡願いたい。

(4)いわゆる栄養補助食品の取扱いについて

 我が国では、国民の健康に対する関心が高まる中で、これまで、医薬品として使用されてきたビタミン、ミネラル等について、食品としてのより自由な流通を求める声が生じており、既に、政府の規制緩和推進計画及び市場開放問題苦情処理推進会議(OTO)報告において、ビタミン等に関して食薬区分を見直すとともに、こうした、いわゆる栄養補助食品を新しいカテゴリーとする対応をとることを検討することが決定されている。
 そこで、ビタミン等のいわゆる栄養補助食品の取扱いに関し、これらの食品に関する適正な摂取方法等、今後の取扱い及びその名称を含めた検討を行うため、平成10年12月に生活衛生局長の下の検討会として、「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会」を設置し、検討を進めているところである。
 検討会においては、中間報告を公表して一般からの意見も募るとともに、食品衛生調査会及び公衆衛生審議会の関連部会の検討状況や、関係部局における食薬区分の見直しの検討状況を踏まえ、平成11年度中にいわゆる栄養補助食品の取扱いに関する報告書をまとめることとしている。

(5)総合衛生管理製造過程の承認制度について

 HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)による衛生管理方法に基づく総合衛生管理製造過程による食品の製造等の承認制度については平成8年5月より施行されているところである。
 本制度の対象食品として、これまでに乳・乳製品、食肉製品、容器包装詰加圧加熱殺菌食品、魚肉ねり製品及び清涼飲料水を指定しているが、今後も指定食品の拡大を図っていくこととしている。
 厚生省においては、平成8年9月に策定した総合衛生管理製造過程承認制度実施要領に基づき、各都道府県等の食品衛生監視員を対象としたHACCPに関する講習会をブロック毎に開催しているところであるが、今後とも、各ブロックにおけるHACCP普及に指導的な役割を果たす食品衛生監視員を養成するための講習会を開催することとしているので、御協力をお願いする。
 また、総合衛生管理製造過程承認制度実施要領4(2)において、営業者は申請書等を作成する際には、HACCPに関する講習会を受講した都道府県等の食品衛生監視員による助言を受けることとなっているが、承認審査を円滑に実施するためには事前に都道府県等の食品衛生監視員による適切な助言が重要であることから、的確かつ教育的な助言について特段のご配慮をお願いする。
 なお、平成11年末現在、乳・乳製品716件、食肉製品160件、魚肉練り製品16件及び容器包装詰加圧加熱殺菌食品7件の承認を行ったところである。今後とも各都道府県等に対し、厚生省が実施する現地調査への食品衛生監視員の同行等を依頼することがあるので御協力をお願いする。
 さらに、HACCPによる食品の衛生管理の考え方や手法は、本制度の対象食品以外の食品製造加工施設においても有用であるので、様々な食品分野でこの考え方等を導入し、衛生管理を徹底するよう指導されたい。この場合、HACCPの円滑な導入推進には、HACCPについての知識を十分理解する者を育成することが不可欠であることから、各都道府県等においても営業者等を対象とした講習会の実施等についてご配慮をお願いする。
 また、一昨年7月に施行された「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法」に基づき、製造過程の管理の高度化を図ることが容易となる施設整備を行おうとする事業者に対しても、適切な指導、助言等をお願いする。

(6)残留動物用医薬品対策について

 畜水産食品中の動物用医薬品等の残留については、科学的根拠に立脚した基準値による規制を行うべく、国際基準値が設定される等安全性評価のために必要な資料が整備されたものについて、順次、食品衛生調査会の審議を経て、残留基準値の設定を進めているところである。
 これまで、平成7年12月にオキシテトラサイクリン等6物質及び平成9年3月にスルファジミジン等5物質の残留基準値を設定しているが、今般、平成11年11月26日に、抗生物質であるスピラマイシン及びベンジルペニシリン、内部寄生虫用剤であるモキシデクチン及びトリクラベンダゾールの計4物質について残留基準値を設定し、平成12年6月1日から施行することとした。
 また、これらの品目を含めて、引き続き平成12年度も畜水産食品中の残留物質対策としてモニタリング検査をお願いするので、畜水産食品の検査体制の整備を図るとともに、農林水産部局等との連携を密にし、残留基準に適合しない畜水産食品が流通することのないよう監視指導をお願いする。

(7)水産食品の衛生対策について

 水産加工品はこれまで伝統的な製法や業態で取り扱われてきたところであるが、近年の消費者嗜好や流通形態の変化、輸入食材の使用の増大等、水産加工品を取り巻く環境は、近年大きく変化している。
 特に、一昨年のいくら醤油漬けによるO157食中毒、昨年のイカ乾製品によるサルモネラ・オラニエンブルグ食中毒事例のように、非加熱で摂取する水産加工品について、従来、水産食品の食中毒原因菌としてはあまりみられなかった病原菌による大型の食中毒事例が発生している。
 このため厚生省では、イカ乾製品による食中毒事例の原因究明結果を踏まえ、昨年7月8日付け衛乳第141号により水産食品加工施設の緊急監視指導について各都道府県等にお願いしたところである。今後とも引き続き、関係省庁との連携を密にし、水産食品の衛生確保対策を推進していくこととしているので、各都道府県等においても、関係部局との連携を密にし、水産加工業者等に対する監視・指導の徹底についてよろしくお願いする。
 また、腸炎ビブリオ食中毒がここ数年急増していること、またO3K6などの新しい血清型の腸炎ビブリオによる食中毒が発生していること等から、平成10年の食品衛生調査会食中毒部会において、腸炎ビブリオ食中毒について有効な予防対策、被害拡大防止対策を検討するよう提言がなされたところである。
 厚生省では、このことを受け、水産食品に起因する腸炎ビブリオ食中毒防止対策を検討するため、食品衛生調査会乳肉水産食品部会に水産衛生対策分科会を設置し、当分科会において、腸炎ビブリオ食中毒の主たる原因食品を中心に必要な検討を行ってるところである。
 なお、調査研究については従来同様に国立感染症研究所、国立医薬品食品衛生研究所が中心となり、地方衛研も含め各自治体の協力を得ながら進めたいと考えているので、今後とも御協力をお願いする。

(8)動物由来感染症対策について

 近年の生活様式の国際化等にともない、エボラ出血熱及びマールブルグ病のような新興感染症、マラリアや結核のような再興感染症の台頭により、従来の感染症対策を抜本的に見直し、時代にあわせた感染症対策を講じるため、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が平成10年10月に公布された。このなかで、動物から人に感染し人に危害を及ぼす動物由来感染症については、感染源である動物対策が重要とされており、サルにおけるエボラ出血熱、マールブルグ病については昨年4月1日より発生時の届け出が、また本年1月1日より輸入禁止地域の制定及び輸入検疫制度が施行されたところである。
 また、感染症に関する情報の収集と国民への還元、調査研究・診断体制の整備等については国又は自治体の責務とされていることから、国内対策の一環として、動物由来感染症情報収集分析体制整備事業(疾病予防等対策費補助金)を本年度から実施しているところである。本年度は東京都、千葉県及び富山県において実施しているところであるが、来年度以降、各都道府県におかれても本事業を積極的に活用し、動物由来感染症の予防対策に活用されるようお願いする。
 なお、昨年8月青森県において、本州で初めてエキノコックス症の動物(豚)がと畜検査において発見されたことから、厚生科学研究事業において青森県、岩手県及び秋田県の3県における豚のと畜検査時の診断体制の確保等サーベイランス体制の整備を図っているところである。

(9)とちく場における衛生管理体制の強化について

 平成8年にと畜場法施行規則、平成9年にと畜場法施行令をそれぞれ改正し、とちく場の衛生保持、とちく業者等の講ずべき衛生措置及びとちく場の構造設備基準の強化を行い、これらの基準の遵守を法的に義務づけたところである。
 既存のとちく場については、これらの基準に適用に経過措置期間が設けられており、牛又は馬を処理するとちく場にあっては平成12年4月1日、豚、めん羊又は山羊を処理するとちく場にあっては平成14年4月1日より改正基準が適用されることとなる。
 各自治体におかれては、とちく場の設置者、管理者又はとちく業者に対して、政省令の適合に向けた適切な指導等に尽力されていると承知しているが、「と畜場法施行令及び施行規則に係る指導について」(平成11年6月14日付衛乳第127号)で通知したとおり、政省令の基準に不適合かつ改善計画が無いとちく場を管轄する自治体におかれては、さらに設置者に対し指導の徹底をお願いしたところである。
 平成12年3月31日までに政省令の改正基準に適合する見込みがない牛又は馬にかかるとちく場については、当該とちく場の設置者、管理者又はとちく業者に対し、設置許可の取消等の厳格な行政処分をとることを十分に説明されたい。また、処分にあたっては適正な行政手続をとった上で行われるようされたい。
 なお、公営とちく場においては保健衛生施設・設備整備国庫補助事業により洗浄・消毒等の今般設置が義務づけられた設備費用の1/2を補助することとし、特別地方債の還元融資制度においてはとちく場の施設・設備を対象とした融資を行っているところである。
 また民間とちく場においてはと畜場法施行令第1条に規定するとちく場の構造設備の改正基準に係る設備は、地方自治法による固定資産税の軽減措置制度が図られていることから、これらを積極的に活用するよう関係者への周知及び指導も併せてお願いする。
 なお、とちく及び食鳥処理行政の円滑な推進を図るため、「食肉・食鳥処理問題調整協議会について」(平成11年10月25日付生衛発第1543号・11畜A第2548号)で通知したとおり、食品行政に係る公衆衛生の観点からの施策と畜産振興等の観点からの施策の緊密な連携を確保するため、各自治体の食品衛生部局及び農林部局の両部局において、食肉・食鳥処理問題調整協議会を開催するようお願いする。

(10)食品中残留農薬対策の推進について

 新規登録農薬の増加、農産物及び加工食品の輸入増大等に伴い、食品中に残留する農薬の安全対策は重要な課題となっている。農薬が残留する食品に関しては、食品衛生法上の残留農薬基準が定められない限り、適切な流通規制ができないため、早急に残留農薬基準の整備を図ることが必要である。
 残留農薬基準は、現在、199の農薬について農産物ごとに約8,300の基準を設定しているところであるが、厚生省としては、農薬取締法に基づき新規に登録された農薬を中心に、引き続き基準策定を図ることとしている。
 また、農産物中の残留農薬実態調査を実施するとともに、輸入加工食品中の残留農薬実態調査及び食品中の残留農薬の一日摂取量調査を行うこととしているので、平成12年度においても、調査実施等について御協力方お願いする。

(11)食品添加物の安全対策の推進について

 平成8年5月から、添加物の指定制の範囲が、天然香料を除く全ての添加物に拡大された。改正された指定制においては、化学的合成品と天然品を区別していないが、その適正な運用につき今後とも御協力方お願いする。なお、既存添加物名簿に収載された489品目については、法改正後も流通が認められているが、その安全性を確保するため、安全性試験成績の収集及び毒性試験の実施等を行っているところである。
 また、食品添加物の安全性に係る一般消費者の不安を解消するため、平成11年度中に指定添加物及び既存添加物全般や、幼児、老人等の世代差等を視野に入れた市販食品の食品添加物一日摂取量調査を実施することとしているので、調査の実施等について御協力方お願いする。


3 環境衛生関係営業の振興対策について

(1)環境衛生関係営業の施設数は、平成11年3月末現在において、約255万施設あり、国民生活に極めて密着したものであることから、これら営業施設の衛生水準の維持向上、経営の安定化等が国民生活の向上、日本経済の安定の上から強く要請されている。
 このため環衛業の近代化・合理化を促進し、その経営の安定と健全化を通じ、衛生水準の向上と消費者に対するサービスの確保を図るため、従来から全国環境衛生営業指導センター及び都道府県環境衛生営業指導センターによる指導並びに国民生活金融公庫による融資等の施策を講じているところである。
 しかし、近年急速に進行してきた人口構造の高齢化や生活環境の変化、核家族化、情報化及び技術化の進展、更には規制緩和の要請など社会経済の構造的変化の中で、環衛業が新たな需要に的確に対応し、国民の生活の質的向上に十分貢献していくためには、これらの変化に即応した施策の実施が強く求められるようになってきている。

(2)このため、環衛業対策事業として、引き続き、全国環境衛生営業指導センターにおいては、地域福祉支援事業、衛生水準強化事業等の事業を行い、環衛業の総合的な活性化対策を推進することとしているので、都道府県におかれては、この趣旨を十分ご理解のうえ、ご協力をお願いする。
 また、都道府県環境衛生営業指導センターにおいては、環衛業者が新たな時代の社会的要請に応え、活力ある発展を遂げるために、メニュー化方式である活性化促進事業について、環衛業者が地域における福祉づくりに貢献するため、高齢者や障害者の視点に立ち、創意工夫を凝らし実施している先駆的なサービス等についての事例集の作成及び評価を行う地域福祉促進事業を創設するとともに、まちおこし推進事業についても実施対象か所数の増を行い一層の充実強化を図ることとしているので、各都道府県の実態に即して選択して実施いただくよう、より一層のご尽力をお願いする。
 さらに、環境衛生関係営業経営実態調査については、平成12年度調査より、都道府県等との委託契約に基づいて実施することとしており、これに伴い、環境衛生営業実態調査委託費を新たに計上させていただいたところである。各都道府県・政令市・特別区におかれては、調査の趣旨をご理解いただき、引き続きご協力のほど、よろしくお願い致したい。

(3)なお、国民生活金融公庫(環境衛生資金貸付分)の融資については、民間金融機関の貸し渋り対策を含み平成12年度の貸付計画額として3,200億円を確保するとともに、貸付条件については、「振興設備資金の貸付限度額の引上げ(クリーニング業・興行場営業)」、「一般設備資金の貸付限度額の引上げ(旅館業、一般公衆浴場業)」、並びに特利対象品目として「デビットカード関連機器(全業種)」、「自動券売機(一般公衆浴場業)」の追加等を行うこととしている。

(4)環境衛生関係営業振興助成交付金制度については、平成11年度末をもって廃止されることとなっているが、環境衛生営業振興に対する新たな財源措置として、来年度の普通交付税の単位費用を見直し、1交付税標準団体当たり500万円(全国需要額約4億円)の財源措置を行うこととなったので、引き続き、環境衛生関係営業の振興の推進について特段の御配慮をお願いしたい。

(5)税制関係については、中小企業新技術体化投資促進税制の適用期限の延長等、4項目が認められているので、都道府県におかれては制度の周知徹底方併せてお願いする。

(6)経営指導員による指導体制の充実・強化については従来よりご配慮を頂いているところであるが、相談内容の複雑・高度化等によりその必要性が益々高まっていることから、経営、金融、税務、衛生等の指導に的確に対応できるよう、中小企業診断士等の有資格者を設置できるよう最大限努力するとともに、研修等の実施により経営指導員の資質の向上に努めるなど、引き続き格段のご配慮をお願いする。


4 ダイオキシン類対策について

(1)ダイオキシン類による食品の汚染や健康影響について、国民に不安が高まっており、厚生省では、ダイオキシン類の健康影響の解明等のための調査研究、食品の汚染実態調査を行うとともに、廃棄物処理施設対策を推進している。

(2)政府では、昨年2月、「ダイオキシン対策関係閣僚会議」を設置し、3月には、「ダイオキシン対策推進基本指針」を決定して、今後4年以内に全国のダイオキシン類の総排出量を平成9年に比べ約9割削減することとし、1)耐容一日摂取量の見直しをはじめ各種基準作り、2)ダイオキシン類の排出削減対策、3)検査態勢の改善、4)健康及び環境への影響の実態把握、5)調査研究及び技術開発、6)廃棄物処理及びリサイクル対策、7)情報提供と情報公開、等について対策を策定し、推進しているところ。

(3)また、昨年7月には、議員立法により「ダイオキシン類対策特別措置法」が制定され、耐容一日摂取量、環境基準、排出基準等の規定が設けられており、環境庁の所管部分と厚生省所管部分がある。1月15日に施行されるので、厚生主管部局においてもよろしく対処されたい。

(4)耐容一日摂取量(TDI)については、昨年6月、厚生省の生活環境審議会、食品衛生調査会、及び環境庁の中央環境審議会の合同審議による報告書がまとまり、従来、体重1kg当たり10pgとしていたダイオキシン類の耐容一日摂取量を、4pgに改めたところである。(1pg(ピコグラム)は1兆分の1グラム)

(5)食品分野においては、平成4年度より、食品中のダイオキシン類汚染実態調査を実施している。食品から人が摂取するダイオキシン類の平均的な一日摂取量は、平成10年度調査で、体重1kg当たり2.0pgであり、大気等からの摂取を含めても約2.1pgであり、耐容一日摂取量の4pgより低くなっている。
 また、食品中のダイオキシン類量は、保存試料の調査結果によれば、この20年間で約3分の1程度にまで減少していることも判明している。
 食品に含まれるダイオキシン類の量は、食品の種類によっても異なり、同じ種類の食品でも産地や時期によって異なる。ある一日の食事をとれば、耐容一日摂取量の4pg/kg/日を超えることがあったとしても、一般的な食生活においては、長期間平均すればこれを下回っていると考えられる。各種の食品に含まれる栄養素は、健康のために大切であり、バランスの良い食事をするよう心がけることが重要であるので、ダイオキシン類と食品や健康との関係について、住民に正しい理解がされるよう、普及啓発に努められるようお願いする。
 なお、関係省庁共通パンフレット「ダイオキシン類」を、昨年12月に厚生省より各都道府県市に配布したので、活用されたい。

(6)また、昨年10月には、食品中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法暫定ガイドラインを策定、公表したところであり、都道府県等の検査担当者に対する研修を順次実施していくこととしているので、ご配慮方お願いする。

(7)厚生省では、ダイオキシン類対策の調査研究として、平成11年度に引き続き、平成12年度においても、年額19億6千万円の研究費を予定しているところであり、食品の汚染実態、人への健康影響等の健康影響の解明のための研究や、発生機構の解明、排出抑制技術、最終処分場対策等の排出源対策のための研究を推進していくこととしている。
 なお、ダイオキシン類と健康影響についての最近の研究成果に基づく普及啓発のため、昨年12月にシンポジウムを行ったが、2月に福岡で2回目を開催予定である。


5 内分泌かく乱化学物質対策について

(1)近年、有機塩素系農薬やプラスチック容器の可塑剤等種々の化学物質が生体の内分泌機能をかく乱し、人の健康に影響を及ぼすとの懸念が示され、「内分泌かく乱化学物質」と呼ばれている。この内分泌かく乱化学物質については、現在のところ、その有無、種類、程度など未解明な点が多いことから、国際的な機関と連携をとりつつ、調査研究を推進しているところである。
 厚生省では、平成8年度の厚生科学研究において、いち早くエストロゲン様化学物質がヒトに与える健康影響を取り上げており、欧米における検討状況や知見を収集した上で、さらに詳細なメカニズム等について研究を進めることとしている。
 平成10年4月から「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」を設置し、毒性学や分析学の専門家、消費者代表などの有識者による検討を行っており、同年11月には、厚生省としての内分泌かく乱化学物質問題に対する対応方針を明らかにするため、「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会中間報告」を公表した。
 (検討会資料、議事録等についてはインターネット(http://www.mhw.go.jp)で公開)
 本報告を受けて、内分泌かく乱化学物質の作用の有無、作用機序、ヒトへの健康影響の可能性等、未解明な点が残されていることから、引き続き調査研究を実施している。
 さらに、平成11年2月には、「OECD内分泌かく乱化学物質専門家会議」が東京において開催され、内分泌かく乱化学物質を検出するための新しい試験法を開発し、リスクアセスメント手法を国際的に統一することを目的に、哺乳動物を用いたスクリーニング試験法開発に関して検討されたところである。

(2)調査研究等の推進については、平成11年度予算において7億5千万円の研究費を計上し、1)内分泌かく乱化学物質の胎児、成人等への暴露、2)食品への残存や食器からの溶出、3)水道水からの暴露、4)繁殖影響と体内動態、5)通商産業省と共同での超高速分析法(HTPS)の開発評価、6)OECDと共同でのスクリーニング試験法開発などの研究を実施している。
 また、平成12年度予算(案)においても7億5千万円の研究費を計上しているところであり、引き続き内分泌かく乱化学物質についての調査研究を推進することとしているほか、新たに計上した予算により、食品の器具、容器包装中に含まれる化学物質や食品中の残留農薬、生産・使用量が多い化学物質等について、内分泌かく乱作用の有無を確認するため、新規スクリーニング法での試験を実施する予定である。

(3)本問題については、関係各省庁が緊密な協力連携を取りつつ、解決への方策を進めていくことが重要であり、平成9年には関係省庁による情報連絡会が設けられ、さらに平成10年からは総合的な検討を行うため、環境庁、通商産業省、農林水産省等の関係9省庁からなる関係省庁課長会議が設けられている。関係各省庁間で緊密に連携を取りつつ、それぞれの立場から種々の検討を行っているところであり、厚生省では、今後、人への健康影響を防止するため、本問題への取組を一層推進していくこととしている。
 また、本問題の取組については各地方自治体との連携も重要であり、今後とも情報提供等御協力方お願いする。


6 室内空気の化学物質汚染対策について

(1)近年、生活空間における化学製品の多様化、住宅の気密性の向上その他の要因により、室内空気の化学物質による汚染が指摘されるとともに、いわゆるシックハウス症候群、化学物質過敏症等の室内空気の汚染によるのではないかとされる健康被害を訴える事例が増加している。
 このような状況の中、厚生省としては、室内空気汚染化学物質対策の取組を進めているところである。

(2)平成9年6月、「快適で健康的な住宅に関する検討会議の健康住宅関連基準策定専門委員会」化学物質小委員会において、ホルムアルデヒドの室内濃度指針値(30分平均値0.1mg/m3以下)が提案されるとともに、総揮発性有機化学物質(TVOC)及びいわゆる化学物質過敏症についての考え方がとりまとめれた。

(3)厚生省では、平成9年度及び平成10年度に、既に室内濃度指針値が示されているホルムアルデヒド以外の揮発性有機化合物について、全国の一般家屋の居住環境中における実態調査を実施し、今般、その調査結果がとりまとめられた。(平成9年度:180戸、平成10年度:205戸)

(4)厚生省においては、これらの知見等を踏まえ、今後、個々の物質のリスク評価、室内濃度指針値の検討など、室内空気中の化学物質による健康被害防止のための対策を推進する予定である。
 また、厚生科学研究により、いわゆる化学物質過敏症と化学物質との関係等に関する研究を推進しているところである。


<企画課>

1 国民生活金融公庫(環境衛生資金貸付)の融資について

 環境衛生関係営業の衛生水準の向上、近代化の促進については、従来から公庫の融資により金融面からの支援策を講じているところである。(昨年10月に環境衛生金融公庫と国民金融公庫とが統合され国民生活金融公庫となる。)
 平成11年秋の臨時国会において中小企業基本法の改正が行われ、中小企業者の範囲が見直されたことに伴い、環境衛生資金貸付の融資対象の範囲について、拡大を図ったところであり、さらに平成11年11月には「経済新生対策」が経済対策閣僚会議において決定され、小企業等設備改善資金特別貸付、金融環境変化対応特別貸付、事業展開支援特別貸付及び運転資金円滑化特別貸付の融資制度について適用期間の延長を図ったところである。
 また、平成12年度においても資金需要に適切に対応するため、必要な融資額の確保及び融資制度の改善を図ることとしているところであり、その概要は次のとおりである。

(1)貸付計画額   3,200億円(前年度と同額)

(2)貸付条件の改善

1) 貸付限度額の引上げ

クリーニング業
 振興事業設備資金貸付 2億円以内 → 3億円以内
旅館業
 一般設備資金貸付 3億円以内 → 4億円以内
興行場営業
 振興事業設備資金貸付 5億3,000万円以内 → 7億2,000万円以内
一般公衆浴場業
 一般設備資金貸付 2億4,000万円以内 → 3億円以内

2) 振興事業設備貸付特別利率適用品目の追加
ア デビットカード関連機器(全業種(環境衛生同業組合又は同小組合も含む。))
イ 自動券売機(一般公衆浴場業)
3) 従業員宿舎の新設に係る償還期限の延長
(振興事業施設の設置又は整備で新設の場合)   18年以内 → 20年以内
4) 特別貸付の改善(平成11年度第2次補正予算で措置済。)

小企業等設備改善資金特別貸付
・貸付限度の特例(基本限度額550万円+別枠450万円)及び償還期限の特例
(6年以内→7年以内)の取扱期間の延長等
平成12年3月31日まで → 平成13年3月31日まで
金融環境変化対応特別貸付 ・取扱期間の延長
平成12年3月31日まで
 → 平成13年3月31日まで
事業展開支援特別貸付
運転資金円滑化特別貸付

2 建築物におけるレジオネラ症防止対策について

 建築物等におけるレジオネラ症防止対策については、従来より通知等に基づき指導等を行ってきたところであるが、平成10年、都内の特別養護老人ホームにおいて使用されていた循環式浴槽を感染源とするレジオネラ症患者が発生し、うち1名がレジオネラ肺炎で死亡したという報告があった。
 このような設備は、適切な維持管理をしなければ、一般的に抵抗力の弱い者等に対してレジオネラ症の感染源となるおそれがある。
 そこで、平成11年11月に「建築物等におけるレジオネラ症防止対策について」(平成11年11月26日付生衛発第1679号厚生省生活衛生局長通知)を各都道府県知事及び政令市市長あて通知し、冷却塔及び冷却水系、給水・給湯設備、循環式浴槽等について当面の対策を定めたところであるので、適切な対応をお願い致したい。

3 墓地、埋葬等について

 昨年3月、墓地、埋葬等に関する法律施行規則の一部を改正する省令が公布され、同年5月より改葬手続の見直し等に係る部分が、10月より墓地等の管理者に対する財務書類の備え付け義務等に係る部分がそれぞれ施行されているので、適切な対応をお願いしたい。
 また、墓地については、近年、経営に失敗した不適切事例も生じているので、墓地の経営許可、指導監督については、十分な配慮をお願いしたい。
 なお、厚生省においては、本年より「墓地経営・管理指針等作成検討会」を開催して、墓地の経営、管理の方法等について指針を作成する予定である。


<生活化学安全対策室>

1 家庭用品の安全対策について

(1) 家庭用品規制法と関係業界の自主基準

 各種家庭用品に使用される化学物質による健康被害の防止を図るため「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」に基づき、有害物質の指定及び規制基準の制定を行ってきており、現在までに17種類の有害物質に関する規制基準を設定した。
 なお、各種家庭用品に使用される化学物質で、既に規制基準が設定されているもの以外についても、必要に応じその安全性を評価するための毒性試験等を行い、その結果を踏まえ、順次、規制基準を設定することとしている。
 さらに、これ以外の家庭用品についてもその安全性等を確保するため、必要に応じ商品群毎に関係業界における自主基準を作成させる方向で指導してきたところであり、ウェットワイパー類、不快害虫用殺虫剤、芳香・消臭・脱臭剤、コンタクトレンズケア製品、綿棒等については、既に関係業界による安全衛生自主基準が作成されている。

(2) 家庭用品に係る健康被害病院モニター報告

 家庭用品に含有される化学物質による健康被害については、昭和54年度から大学医学部附属病院、公立病院等の協力を得て、モニター報告制度を設け、家庭用品による皮膚障害や小児の誤飲事故等の危害情報について、迅速かつ的確な情報を収集し、専門家による評価検討を行い、家庭用品による健康被害の拡大防止を図っているところである。さらに、平成8年度からは、呼吸器疾患等の吸入事故等の情報についても迅速かつ的確に収集するため、財団法人日本中毒情報センターを情報収集施設として新たに加え、情報の充実を図っている。
 近く公表予定の平成10年度のモニター報告において、皮膚科関係では、平成9年度に引き続き、皮膚障害の原因製品として洗剤が最も多く、装飾品、ゴム・ビニール手袋がそれに続いた。患者は女性が全体の72%を占め、特に20代の女性の割合が多く、全体の31%を占めていた。
 また、小児の誤飲事故では、あいかわらずタバコが約半数を占め、医薬品・医薬部外品、金属製品がそれに続く結果となった。
 吸入事故関係では、種類別では殺虫剤(医薬部外品も含む)、形態別では噴霧式による事故例が多く報告されている。

(3) 室内空気環境汚染化学物質対策の推進

 近年、家庭用品、建材等から室内空気中に発散する化学物質による健康への影響が注目されていることから、平成9年6月、ホルムアルデヒドについて室内濃度指針値を策定したところである。
 しかしながら、ホルムアルデヒドだけではなく他の揮発性有機化合物等に関しても的確な対策を講ずる必要があることから、国立医薬品食品衛生研究所及び一部自治体の衛生研究所の協力を得、平成9年度から室内空気汚染実態調査等を実施している。今後、それらから得られた知見を踏まえ、健康リスク評価、室内濃度指針値策定等を行うことにより安全対策を推進することとしている。

2 化学物質の安全対策について

(1) 化学物質の国内規制状況

 化学物質の安全対策については、人の健康を損なうおそれがある化学物質による環境汚染を防止するため、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」により、難分解性、高蓄積性であって、長期毒性を有する化学物質を第一種特定化学物質に指定し、製造等を禁止しているところである。また、難分解性、低蓄積性であって長期毒性の疑いがあるものは指定化学物質に指定し、そのうち特に必要のあるものは第二種特定化学物質に指定し、数量報告、構造設備基準の遵守等必要な規制が行われている。現在、第一種特定化学物質として9物質、第二種特定化学物質として23物質、指定化学物質として292物質が指定されている。
 また、政府全体で各種申請書類の電子化に向けた作業が進められているが、化審法においても、化審法の共管官庁である通商産業省と連携を図り、平成12年度より電子媒体を用いた届出の受付を開始するとともに、当該システムにおける審査用管理データの充実を図ることとしている。

(2) 化学物質の排出量の把握等の措置(PRTR)に係る対象化学物質の選定

 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(平成11年7月13日法律第86号、以下「PRTR法」という。)に係る対象化学物質については、厚生省、環境庁及び通商産業省が、それぞれの審議会の意見を聴いて政令案を作成することとされている。このため、厚生省の生活環境審議会、環境庁の中央環境審議会及び通商産業省の化学品審議会の各専門委員会レベルの合同開催により検討を進め、昨年11月、対象物質リスト案を公表したところであり、今年度内に政令指定を行うこととしている。

(3) 化学物質の安全対策に関する国際協力

 地球環境保全の一環として、OECD(経済協力開発機構)が推進している高生産量既存化学物質(HPV)の安全性点検(世界中で大量に使用されているにもかかわらず、安全性にかかる情報がほとんどない化学物質の毒性試験等の実施)事業に積極的に参加している。本事業は、2000年以降も加速化して実施することとされており、この成果は、国際的な貢献としてのみならず、我が国における既存化学物質の安全対策にも反映されている。
 また、国際化学物質安全性計画(IPCS)を主導とし、インタ−ネットによる地球規模化学物質情報ネットワ−ク(GINC)の構築が進められ、厚生省においても、それに向けた毒性データベースの整備を進めており、厚生省ホームページにおいて、必要な情報を提供している( http://wwwdb.mhw.go.jp/ginc/index-j.html)。


<指導課>

1 平成12年度税制改正について

 平成12年度における環境衛生関係営業関係の税制改正は、次の方針によって行われることとされ、所要の法律改正を経て実施される予定である。

○ 国税関係

(1)中小企業新技術体化投資促進税制の適用期限の延長(所得税・法人税)

 中小企業者である環境衛生関係営業者等については、生産性の向上及び経営の近代化の観点から対象設備について特別償却(所得価格の30%)又は税額控除(取得価格の7%)が認められているが、この適用期限を2年間延長する。(平成12年3月31日→平成14年3月31日)

(2)エネルギー需給構造改革投資促進税制の適用期限の延長(所得税・法人税)

 エネルギー需給構造改革推進設備を取得した場合の特別償却(取得価格の30%)又は税額控除(取得価格の7%)が認められているが、この適用期限を2年間延長する。(平成12年3月31日→平成14年3月31日)


○ 地方税関係

(1)公害防止用施設に係る課税標準の特例措置の延長(固定資産税)

 特定物質を用いて洗浄を行うドライクリーニング装置と一体となって設置され不可分の状態にある活性炭利用吸着式処理装置については、固定資産税の課税標準となるべき価格の1/6の額に軽減されている。
 テトラクロロエチレン等を含む地下水の水質を浄化するための地下水浄化設備については、固定資産税の課税標準となるべき価格の1/3の額に軽減されている。
 この特例措置の適用期限を2年間延長する。
 (平成12年3月31日→平成14年3月31日)

(2)公衆浴場の用に供する固定資産税に係る軽減措置の拡充(固定資産税)

 地方分権推進の観点から、今後、軽減税率を通知で示すことが困難となっため、従来の取り扱いを考慮し適宜免除又は軽減することが適当である旨の新たな通知を発出させることとした。


2 理容師・美容師国家試験の実施について

 理容師法及び美容師法の一部を改正する法律(平成7年法律第109号)に基づき、理容師及び美容師の厚生大臣試験が平成12年4月より施行されることとなっている。
 厚生大臣試験の実施については、財団法人理容師美容師試験研修センターに事務を委託する予定であり、試験の実施に向けて準備を進めているところであるが、各都道府県におかれても、円滑な実施にご協力方よろしくお願いする。

3 標準営業約款の推進について

 標準営業約款は、消費者保護の観点から、提供するサービスの内容や施設、設備の表示の適正化等を図ることにより、利用者又は消費者の選択の利便を図るため、営業方法又は取り引き条件について、1)サービスの標準化を行い、提供するサービスの内容を表示、2)管理基準に基づく、営業施設の維持・管理による衛生的サービス、3)損害賠償基準に基づいた損害賠償保険等の加入を定めたものである。
 現在、理容・美容・クリーニングの3業種について定められており、全国環境衛生営業指導センターにおいて、平成元年度より毎年11月を「標準営業約款普及登録促進月間」と定め、特にこの期間におけるキャンペーンを実施しているところである。
 また、当制度の登録有効期間については、3業種とも3年と定められて実施されてきたが、登録営業者における役務内容等の標準化、施設・設備の衛生水準等の着実な向上という実態及び登録営業者の再登録時の再登録合格率がほぼ100%である実状等を鑑み、(財)全国環境衛生営業指導センターにおいて登録に係る有効期間を新規登録は3年、再登録は5年(平成12年2月登録分より)に変更し、厚生大臣への届出がなされた。
 厚生省としても本制度の普及促進のため、広報誌への掲載等を利用した広報等を行っているところであるが、各地方自治体においても、再登録有効期間が延長されたことを踏まえ、当該約款登録の拡大について、地域広報誌への掲載、関係団体への協力依頼等を積極的に推進されるよう特段のご配慮をお願いする。
 特に消費者に最も身近な市町村レベルでの広報の活用等は、本制度の普及促進に大変効果的であるので市町村等への指導方配慮願いたい。
 なお、標準営業約款推進協議会について、未だ設置されていない都道府県におかれては早急に設置することとされたい。

4 クリーニング師の研修受講等の促進について

 クリーニング師の研修及び業務従事者の講習は、近年のクリーニング技術の高度化等に対応し、クリーニング所の業務に従事するクリーニング師等の資質の向上、知識の習得及び技能の向上を図るために実施しているところであるが、受講率の低い都道府県においては、受講の促進方についてより一層の配慮をお願いする。

5 環境衛生関係営業振興助成交付金制度について

 環境衛生関係営業振興助成交付金は、特別地方消費税が平成12年3月31日をもって廃止されることに伴い、特別地方消費税の税収の一部を財源とする同交付金は、特別地方消費税の廃止に合わせて、平成11年度末をもって廃止されることとなった。
 しかしながら、各都道府県等から環境衛生関係営業振興事業に対する財源の確保について強い要望があった。
 厚生省としては、環境衛生関係営業の振興と地域の活性化の観点から来年度以降の財源措置について自治省に対し、環境衛生関係営業全体を対象とする助成の存続又は新設の要望の働きかけを行ったところ、環境衛生営業振興に対する新たな財源措置として、来年度の普通交付税の単位費用を見直し、1交付税標準団体当たり500万円(全国需要額約4億円)の財政措置を行うこととなった。
 各都道府県においては、環境衛生関係営業全体に対して、経営の健全化を通じた衛生水準の維持向上や需要の開拓等地域の活性化や消費者サービスの向上を図られる地域の実情に合った各種事業が行えるよう財政措置を行っていただき、今後の環境衛生関係営業の振興の推進について引き続き特段のご配慮をお願いしたい。


<食品保健課>

1 自主的な衛生管理体制・情報提供の推進について

(1)食品衛生責任者の設置、食品衛生指導員の活動等を通じた営業者自らによる衛生上の管理、指導体制の確立を推進するため、厚生省としても引き続き(社)日本食品衛生協会に対し食品衛生指導員の巡回指導や業種別自主管理指導等の食品衛生指導員活動事業等について助成することとしている。
 自主的衛生管理の推進については、昭和59年1月21日環食第17号により、食品衛生指導員活動事業等に対するご協力をお願いしているところであるが、今後ともご配慮願いたい。

(2)食品の安全性についての国民の関心の高まりに対応し、消費者に対して、食品衛生に関する情報提供や窓口での相談を行う「食品安全情報等事業」についても、同協会への委託事業として行っているところであるが、事業の実施に当たりご協力をお願いいたしたい。
 また、食品保健に関する情報提供を推進することは重要であり、厚生省としては、同協会の協力を得て、「食品安全情報相談室」を開設しているとともに、担当課長等による「食品衛生行政説明会」を開催しているところである。

(3)輸入食品関係営業者の自主的衛生管理の推進を図るため、(社)日本輸入食品安全推進協会が輸入食品衛生管理者養成事業を実施しており、12年度においては、東京、大阪において講習会を開催する予定である。
 ついては、同協会が行う本事業について、関係営業者への周知に特段のご配慮をお願いするとともに、事業の実施に当たりご協力をお願いしたい。

(4)地域における食品衛生の向上を目的に、食品衛生推進員制度が平成8年5月から施行されているところであるが、関係団体と十分調整のうえ円滑な実施についてよろしくお願いする。

2 食材中の食中毒菌汚染実態調査について

 食中毒予防のためには、調理施設等における衛生管理の徹底に加え、流通段階における汚染食品の発見及び改善措置が必要である。そこで、本年度は全国19自治体において生食用牛レバー、ミンチ肉及び有機又は水耕栽培として売られている生食用野菜を対象として昨年8月から本年2月にかけて腸管出血性大腸菌O157及びサルモネラの汚染実態を調査している。当該事業については、次年度以降も同様の規模で実施する予定であるので、引き続きご協力をお願いしたい。

3 学校給食等の集団給食施設の一斉点検について

 児童、乳幼児及び老人など食中毒に関するリスクの高い人々が多い学校や社会福祉施設等の集団給食施設における給食施設の衛生管理向上を目的として、学校給食施設については平成9年、社会福祉施設等に対しては平成10年より一斉点検を実施し、その結果を公表するとともに、不備事項の改善指導について都道府県市区に対し通知しているところである。当該点検については、次年度以降も引き続き実施することとしているのでご了知ありたい。なお、改善がみられない社会福祉施設等の集団給食施設に対しては改善勧告も行う予定である。

4 食品保健総合情報処理システムの活用について

 食品保健総合情報システムは、平成7年より試行的に運用されていたものであるが、本年度、自治体の利便性をさらに図り、活用度を高めるためにシステムを新たに構築したところである。本システムは、厚生省、国立感染症研究所、地方自治体本庁、保健所を厚生行政情報処理システム(WISH)のネットワークを使用し、オンラインにて結び、食中毒情報等(食中毒発生速報、食中毒事件票、事業結果等)の情報を相互利用するものである。本システムを散発的集団発生事例(diffuse outbreak)の早期探知や食中毒の発生の未然防止、発生後の被害拡大防止対策に活用いただきたい。

5 調理施設におけるHACCP試行事業について

 調理施設におけるHACCPの考え方に基づく衛生管理手法の検討を行うため、平成9年10月から学校、病院及び保育所の給食施設、病院の院外調理施設、弁当製造施設等、16施設についてHACCP試行事業を行ってきたところである。
 これらの調理施設に対するHACCPの考え方に基づく衛生管理手法の成果について、各自治体に送付することとしているので今後の衛生指導の参考とされたい。

6 「指定法人等の指導監督に関する行政監察に基づく勧告」への対応について

 平成9年9月に総務庁より標記勧告がなされ、食品衛生法については、第14条(食品等の検査)、第15条第1項及び第2項(食品等の検査命令)について、その検査実績がないこと等から指定検査機関における指定事業の廃止を求められているところである。
 厚生省としては、勧告の趣旨を十分尊重しつつ、本制度が地方公共団体の事務量の軽減及び食品関係営業者の責任の明確化を趣旨としていること等から、「検査機関の指定事務の適正化について」(平成11年1月14日衛食第4号食品保健課長通知)により、措置を講じているので、ご協力をお願いする。

7 「公益法人に対する検査等の委託等に関する基準」の対応について

 平成9年12月に閣議決定がなされ、公益法人の指導監督の適正化等を図るため、公益法人の運営に関する指導監督基準等を決定し、これらの基準に基づき、公益法人に対する指導監督等を行っているところである。
 各自治体が所管する食品衛生法に基づく指定検査機関に指定されている公益法人に対して、「公益法人に対する検査等の委託等に関する基準」等に基づく指導監督方よろしくお願いする。


<新開発食品保健対策室>

1 特別用途食品制度について

 特別用途食品は、栄養改善法第12条に規定された食品で、厚生大臣の表示許可制度である。(栄養改善法第12条、特別用途表示の許可「販売に供する食品につき、乳児用、幼児用、妊産婦用、病者用等の特別の用途に適する旨の表示をしようとする者は、厚生大臣の許可を受けなければならない。」)
 特別用途食品には、病者用食品(低カロリ−食品、低ナトリウム食品などの病者用単一食品及び糖尿病食調製用食品などの病者用組合せ食品)、妊婦・授乳婦用粉乳、乳児用調製粉乳、高齢者用食品及び特定保健用食品があり、平成11年12月現在約500種類の食品に対する許可を行っているところである。
 さらに、平成10年度より、現在許可基準のない病者用食品についても特定保健用食品同様の個別許可が行えるよう体制を整備したところである。
 特別用途食品のうち、特定保健用食品については、平成3年7月11日に栄養改善法施行規則の一部改正を行い、「食生活において特定の保健の目的で摂取をする者に対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる」旨の表示を許可されたものとして栄養改善法に基づく特別用途食品の一部に位置付けた。
 この特定保健用食品の表示許可の適否については、生活衛生局内に設置された学識経験者により構成される「特別用途食品評価検討会」の評価検討結果等の意見を踏まえ判断しており、平成11年12月現在171商品について表示許可を行っているところである。
 特別用途食品及び特定保健用食品については、平成9年10月より申請者の申請手続きの簡素化を目的として、許可期間を無期限としているが、許可を受けた食品について、その品質の確保、表示内容の適正化等を図るため、毎年適宜収去検査等を実施しているところであり、引き続き本制度の円滑な実施について協力方よろしくお願いする。
 なお、申請に必要な資料について、申請を希望する者に理解し易いよう、平成10年度には「オリゴ糖を関与する成分とし、「おなかの調子を整える」等の旨を表示する特定保健用食品の申請・評価に関する指針」及び「代替甘味料を関与する成分とし、「むし歯にならない」等の旨を表示する特定保健用食品の申請・評価に関する指針」を策定したところであるので、申請を希望する者から照会があった際には活用されたい。また、特別用途食品評価検討会の議事概要が、厚生省の行政相談室、ホームページ上で公表されているので、申請を希望する者には、参考とするようお知らせ願いたい。

2 栄養表示基準制度について

 本格的な高齢化社会の到来、肥満や成人病の増加を背景として、健康に対する国民の関心が高まっている。
 このようなことから、新しい食品保健行政の基本的な在り方について提言をいただくために設けられた「食と健康を考える懇談会」(平成6年9月に設置、12月報告)の報告内容を踏まえ、食品衛生法の改正とあわせ栄養改善法の一部を改正し、食品の栄養成分に関する適切な情報を広く国民に提供することを目的に、新たに包括的な栄養表示基準制度が創設されたところである。(平成7年5月24日公布、平成10年4月1日全面施行)
 この制度は、販売する食品に栄養成分・熱量について邦文で何らかの表示を行う場合、その栄養成分・熱量だけでなく、国民の栄養摂取の状況からみて重要な栄養成分・熱量についても表示することを義務づけるほか、その表示が一定の栄養成分・熱量についての強調表示である場合には、含有量が一定の基準を満たすことを併せて義務づけたものであり、平成11年4月には、コレステロールに関する強調表示基準を新たに設定するための告示改正等を行ったところである。
 なお、栄養成分表示をした食品の収去を関係自治体に依頼しているところであり、今後とも引き続き制度の円滑な実施について協力方よろしくお願いする。


<検疫所業務管理室>

1 検疫感染症患者の隔離・停留に係る委託について

 検疫所において検疫感染症の患者が発見された場合の隔離・停留については、検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律(平成10年法律第115号:平成11年4月1日施行)により、原則として、一類感染症にあっては、厚生大臣が指定した特定感染症指定医療機関又は都道府県知事が指定した第一種感染症指定医療機関に、コレラの患者にあっては、特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関若しくは第二種感染症指定医療機関に入院を委託して行うこととなっている。
 このため、各検疫所においては、都道府県知事が指定した第一種感染症指定医療機関に対し、委託契約の締結に関する協議等を行っているが、各都道府県においても、委託契約について特段の御配慮、御協力方お願いをする。
 また、特に第一種感染症指定医療機関については、原則として、都道府県域毎に1ヶ所指定することとなっているが、いまだ相当数の道府県で指定がされていない状況にあり、第一種感染症指定医療機関が確保されていない道府県に所在する検疫所では、一類感染症患者発見時の受入先の確保が困難な状況となっている。
 ついては、貴都道府県に所在しない検疫所から、当該感染症指定医療機関に対し、委託契約の締結に関する協議等を行った場合にあっても、併せて、特段の御配慮、御協力方よろしくお願いする。


<乳肉衛生課>

1 狂犬病予防対策について

 狂犬病予防法に基づく予防注射の徹底等予防対策の推進に係る関係各位の御尽力により、昭和32年以降、国内の動物における狂犬病の発生はない。
 しかしながら、先進国を含む多くの諸外国(平成11年5月には韓国においても本病の発生が確認。)において発生が報告されており、近年の国際交流の進展も考慮すると、海外から狂犬病が侵入する危険性が今後一層危惧されているところである。このため、「検疫法及び狂犬病予防法の一部改正に関する法律」により、犬に加え猫、あらいぐま、スカンク、きつねについては、平成11年4月1日より国内発生時の届け出が、また本年1月1日より輸出入検疫制度が施行された。
 また、平成12年度より犬の登録等の事務が都道府県から市町村へ委譲されることから、円滑に事務の委譲を図るとともに、委譲後も狂犬病予防対策に支障のないよう引き続き、対応方よろしくお願いする。

2 食鳥検査制度について

 「食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律」に基づく食鳥処理場の施設設備及び衛生管理基準の遵守について、食鳥処理業者等に対する厳正な監視指導等に一層のご努力をお願いする。
 特に、認定小規模食鳥処理場は、食鳥検査員が常駐していないこともあり、監視指導が行き届かないとの指摘もあることから、処理羽数、食鳥処理衛生管理者の配置状況、確認の状況等監視指導の厳正な実施をお願いする。
 また、厚生大臣指定食鳥処理衛生管理者資格取得講習会については、(社)日本食品衛生協会、全国食鳥肉販売業環境衛生同業組合連合会及び(社)日本食鳥協会の3者共催により本年2月に全国3か所で開催されることは先般お知らせしたところであるが、関係者への周知について遺漏ないようよろしくお願いする。

3 対米輸出水産食品の衛生対策について

 対米輸出水産食品については、「対米輸出水産食品の取扱いについて」(平成9年12月1日付け衛乳第377号乳肉衛生課長通知。)に基づき、各都道府県等において適切に対応していただいているところであり、現在(平成11年12月末日現在)までに最終製品加工施設68施設、一次加工施設及び保管施設等関連施設36施設の計104施設が認定されている。
 昨年9月、米国FDA査察官によるわが国の対米輸出水産食品加工施設認定制度に対する査察が行われたところであり、今後の取扱いについては、本査察結果に基づき米国FDAとの間で協議を行っているところであるが、それまでの間は現行の制度により対米輸出水産食品を取り扱うこととするので、今後とも御理解と御協力をお願いする。


<食品化学課>

1 食品添加物の指定及び規格基準の改正について

 平成11年7月スクラロースについて新たに添加物として指定した。これにより、厚生大臣が定めている添加物は現在352品目となった。また、平成11年1月にはアセスルファムカリウムについて食品衛生調査会に諮問し、現在WTO通報中である。
 既存添加物については、安全性再評価を行ってきたところであるが、規格についても、より充実すべく検討を行うこととしており、平成12年度予算(案)において実態調査費を計上したところである。本調査の実施等について御協力方お願いする。

2 第7版食品添加物公定書について

 平成11年4月に第7版食品添加物公定書を公表したところである。今回の改正では、既存添加物名簿に収載されている60品目・3製剤について規格を新たに設定するとともに、分析技術の向上に伴い新たな試験法を採用している。これらの規格は国際的整合化を推進させるものとなっており、添加物の品質向上がさらに推進されるものと考えている。規格が設定されたものについては平成12年4月1日までに食品衛生管理者の設置が義務付けられることとなるので、対応について関係者の指導方お願いする。

3 食品添加物の一日摂取量の調査について

 食品添加物の安全性確保対策の一環として、市販食品の分析による食品添加物一日摂取量実態調査(国民栄養調査を基礎とするマーケット・バスケット調査方式)を実施してきたところであり、食品添加物の一日摂取量は、ADI(一日摂取許容量)よりも充分に低い値であることが報告されている。この調査とは別に、添加物の安全性に係る一般消費者の不安を解消するため、平成11年度中に指定添加物及び既存添加物全般や、幼児、老人等の世代差等を視野に入れた市販食品の食品添加物一日摂取量調査も実施することとしている。調査の実施等について御協力方お願いする。

4 未指定添加物使用食品について

 従来より、未指定の添加物の使用については、監視指導等適切な運用をお願いしているところである。現在、「食品中の食品添加物分析法」について改訂作業を行っているところであり、平成11年度中にも公表する予定であるが、新たにTBHQ等未指定添加物の分析法についても収載することとしている。今後とも未指定添加物の使用等について適切な対応を図るため、御協力をお願いする。

5 残留農薬基準の設定及び見直しについて

 平成11年9月22日、アシベンゾラルSメチル等17農薬の農産物中に残留する許容基準を設定すること及びイナベンフィド等18農薬の農産物中に残留する許容基準を見直すことについて、厚生大臣より食品衛生調査会に諮問した。
 今回の諮問は、平成10年8月7日の食品衛生調査会から厚生大臣あての「残留農薬基準設定における暴露評価の精密化に関する意見具申」において提言されていること等により、35農薬ごとに必要な農産物について残留基準値の設定又は見直しをしようとするものである。

6 食品中の残留農薬検査結果について

 地方公共団体において実施されている残留農薬検査結果について、検疫所の検査結果等と併せて、本年度中に取りまとめて公表することとしている。今後とも検査結果データの提供について、より一層の御協力をお願いする。

7 農薬の一日摂取量の調査について

 厚生省では、国民が日常の食事を介してどの程度の農薬を摂取しているかを把握するために、平成3年度より残留農薬の一日摂取量調査(国民栄養調査を基礎とするマーケットバスケット調査方式)を実施している。この調査は、実際の食生活における農薬の摂取量を把握するものであり、食品の安全性を確保する上で重要な調査と考えており、平成12年度においても調査を行うこととしている。実施に当たっては、各地方公共団体の御協力をお願いする。

8 残留農薬基準設定における暴露評価の精密化について

 従来、残留農薬基準設定に当たっては、理論最大一日摂取量方式を採用し、国民の平均摂食量のみを用いて暴露量を試算してきたところであるが、今後は平成10年8月に食品衛生調査会から意見具申された「残留農薬基準設定における暴露評価の精密化」により残留農薬基準を設定していくこととしている。
 具体的には、平成7年から食品摂取量の調査方式が変更されたことにより、幼小児、妊婦、高齢者のそれぞれの集団の摂食パターンを考慮した暴露量試算も可能となったことから、国民平均に加えて、各特定集団の暴露評価を実施する。さらに、作物残留試験成績、非可食部の残留農薬に関する試験成績、加工調理の残留農薬に関する試験成績等に基づく科学的な暴露量試算方式(日本型推定一日摂取量方式)を採用することにより、より精密に暴露量を試算し、これに基づいて残留農薬基準を設定することとしている。
 平成12年度予算(案)において、食品中の残留農薬の可食部における残留レベルや加工調理による残留レベルの調査費を計上したところであり、調査の実施等について御協力方お願いする。


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