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10.麻薬・覚せい剤等の対策について


(1)規制対象物質の指定
 平成11年6月、クアゼパムについて医薬品の承認と併せて、麻薬及び向精神薬取締法に基づく向精神薬に指定した。
 また、平成11年9月には、ジヒドロエトルフィン及びレミフェンタニルについて、「1961年の麻薬に関する単一条約及び1972年の議定書で改正された同条約」の対象に追加する旨の国連からの通知を受けて、同法に基づく麻薬に指定した。

(2)薬物乱用防止対策推進本部

ア.薬物乱用が中・高校生を中心とした若年層の間で急増している問題に対して、政府をあげて取り組むため、内閣総理大臣を本部長とする薬物乱用対策推進本部において平成10年5月に「薬物乱用防止五か年戦略」が決定された。
 五か年戦略では、4つの具体的目標を設定し、各省庁の連携協力のもとに各種の薬物乱用防止対策を進めている。
目標1:中・高校生を中心に薬物乱用の危険性を啓発し、青少年の薬物乱用傾向を阻止する。
目標2:巧妙化する密売方法に的確に対処し、暴力団、一部不良外国人の密売組織の取締りを徹底する。
目標3:密輸を水際でくい止め、薬物の密造地域における対策への支援などの国際協力を推進する。
目標4:薬物依存・中毒者の治療と社会復帰を支援し、再乱用を防止する。

イ.「薬物乱用防止五か年戦略」は、各都道府県に設置されている薬物乱用対策推進地方本部に対しても、薬物乱用対策のより一層の強化を要請しているところであり、各都道府県におかれては、指導監督、啓発活動、中毒者対策等における効果的・積極的な取組をお願いする。

(3)麻薬・覚せい剤等の取締り

ア.我が国における薬物事犯は、覚せい剤事犯が最も多く、平成10年の検挙者は約2万人で、薬物事犯の約9割を占めている。
 覚せい剤事犯については、平成7年以降3年連続して増加し、「第3次乱用期」に入ったとも言われており、平成10年においては検挙者数が17,084人 (前年19,937人)で若干の減少がみられるものの、覚せい剤の押収量は 549.7kg(前年172.9kg)、平成11年には11月末現在で1,848kgと大幅に増加しており、引き続き警戒すべき状況にある。
 また、最近の覚せい剤乱用の憂慮すべき点としては、中・高校生の乱用が拡大していることであり、平成7年以降3年連続して増加し、平成10年においては減少傾向がみられるものの引き続き注視すべき状況にある。
 なお、最近の覚せい剤事犯の傾向としては、暴力団に加え、来日イラン人等の外国人による事犯数が増加していることや検挙者の国籍が多様化しているといったことのほか、携帯電話やインターネットを用いての密売など、その事犯はますます複雑かつ巧妙化している。

イ.このため、厚生省としては、インターネット等を利用した取引の取締活動や特別捜査班による取締活動の強化を図りつつ、薬物の供給側である密売人等と薬物の需要先である乱用者に対する取締りに一層努力することとしており、都道府県におかれても、麻薬取締官に対する捜査協力等に特段の御配慮方お願いする。

(4)啓発・相談指導の推進

ア.平成11年7月に「薬物乱用防止対策事業」実施要綱を通知し、全国約2万人の「覚せい剤乱用防止推進員」について、「薬物乱用防止指導員」に改め、従来の啓発活動に加えて相談指導にも対処していただくとともに、「薬物乱用防止指導員地区協議会」の運営費を補助している。各都道府県におかれては、薬物乱用防止指導員を中心とした効果的な地域活動の推進に努めていただくようお願いする。
イ.また、同実施要綱により、従来の保健所での薬物相談事業の実施に加え、新たに全国の精神保健福祉センターにおける「薬物関連問題相談事業」として、1)技術指導及び技術援助、2)薬物関連問題に関する知識の普及、3)薬物関連問題に関する家族教室の開催、4)個別相談指導の実施を定めたところである。各都道府県におかれては、本事業の円滑な推進に努められ、精神保健福祉センターを中核として関係機関間における薬物乱用・依存に関する相談・指導業務のネットワークの整備を図られるようお願いする。

ウ.(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターへの委託事業として実施している「薬物乱用防止キャラバンカー」の運行については、平成9年度は203カ所、平成10年度は613カ所の学校等において啓発活動を展開してきたところである。このような実績等を踏まえ、平成11年度の補正予算により2台の増設(北海道・東北地区、中国・四国地区)を行い、平成12年度から6台の体制で全国の中学、高校等において効果的な啓発指導を行うこととしているので、今後とも一層の活用をお願いする。

エ.毎年、「不正大麻・けし撲滅運動」、「『ダメ。ゼッタイ。』普及運動」、
「麻薬・覚せい剤禍撲滅運動」を実施しているところであり、平成12年度においても一層の御協力をお願いする。
 なお、「ダメ。ゼッタイ。」普及運動においては、(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターが国連支援募金を行うほか、街頭キャンペーン等に参加したヤングボランティアの中から「民間国連ヤング大使」を選んで国連に派遣している。

(5)医療用モルヒネ製剤の適正使用の推進
 モルヒネの消費量については、がん患者に対する疼痛緩和目的での使用の普及により、ここ数年急増しており、平成10年の消費量は塩酸塩と硫酸塩合わせて954kg(前年930kg)となっている。
 また、通院、在宅がん患者へのモルヒネ製剤の使用の普及により、麻薬小売業者の免許をもつ薬局の数も平成10年には14,657件(前年11,485件)に増加している。
 厚生省としては、医療関係者を中心にがん疼痛に対するモルヒネ等の適正な使用の普及を図るため、平成7年度より全国で開催されている「がん疼痛緩和と医療用麻薬の適正使用を推進するための講習会」を支援しており、各都道府県においてもモルヒネを中心とした医療用麻薬の適正管理及び適正使用につき、医療関係者に対する指導方お願いする。
(6)麻薬取扱者等に対する指導監督
 医療用麻薬、向精神薬等及びこれらの原料物質の製造施設、卸売業者、医療施設、研究施設等に対する立入検査等の監督は、乱用薬物の不正ルートへの横流れを防止する上で重要であり、各都道府県の麻薬取締員等によりその実施に尽力いただいている。
 本年1月には、立入検査実施要領について、制度改正及び諸情勢の変化を踏まえて、全面的な見直しを行い、都道府県に通知したところである。(平成12年1月7日付医薬発第17号)
 また、医薬分業の進展に伴い、麻薬、向精神薬を取り扱う薬局が増加していることから、昨年8月には、「薬局における麻薬・向精神薬管理マニュアル」を都道府県及び日本薬剤師会等関係団体に配布したところである。
 向精神薬の病院、診療所からの盗難件数は、平成10年には32件(前年26件)に増加しており、近時の向精神薬等を用いた犯罪の発生も踏まえ、今後とも管理の徹底が図られるよう、一層の指導監督方お願いする。

(7)国際協力の取組
 「海外麻薬行政官研修」((社)国際厚生事業団実施)及び「日米協力による開発途上国薬物乱用防止啓発活動研修」((財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター実施)が、関係都道府県の協力を得ながら毎年実施されており、今後とも関係都道府県の御協力方お願いする。
 なお、1月24日から27日にかけて、我が国の提案により1998年の国連麻薬特別総会のフォローアップとして世界に先駆けて、東アジア及び東南アジア地域における覚せい剤対策の強化を図るための「アジア覚せい剤乱用予防対策会議」を東京において開催することとしている。



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