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1.医薬品等の承認審査等について


(1)承認審査

ア.医薬品等の審査体制について

(ア)医薬品の承認審査体制については、平成9年7月に、承認審査事務を専門的に行う医薬品医療機器審査センター(以下「審査センター」という)を設置し、薬学、医学、獣医学、統計学等を専門とする審査官によるチーム審査の実施や、審査レポートの作成を通じて、審査の質の向上や責任の明確化を図ったところである。また、平成9年度からの3カ年計画で厚生本省、審査センター、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構の審査官等の倍増を図ったところである。

(イ)さらに、昨年11月には、中央薬事審議会について、より効率的かつ十分な審査を行う観点から、従来の62調査会のうち新薬の承認審査等に係る46調査会を廃止するとともに、審査センターの事務局審査等において、品目毎に中央薬事審議会の委員の中から専門的な知見を有する方々に逐次御意見をいただく方式に改めたほか、各部会の再編・充実を図ったところである。

(ウ)これらの取組により、本年4月以降に申請される新薬の承認審査期間を現行の18ヶ月から12ヶ月に短縮することとしている。

(エ)一方、新薬に関する情報については、新医薬品の承認時点における有効性・安全性の評価等に関する十分な情報を迅速に医療関係者等に提供することにより、当該医薬品の適正使用を推進することが必要であることから、昨年11月から、全ての新医薬品について、審査報告書に当該医薬品の試験成績等をとりまとめた資料を加えた「新薬承認情報集」を作成し、承認後に公表しているところである。

イ.医薬品

(ア)平成11年は新医療用医薬品として新有効成分39成分が承認された。

(イ)新医薬品の承認申請のための試験の標準的方法として平成11年に公表したガイドライン等は次のとおりである。
・反復投与毒性試験に係るガイドラインの一部改正 (平成11年4月5日)
・骨粗髭症用薬の臨床評価方法に関するガイドライン(平成11年4月15日)
・医薬品のがん原性試験に関するガイドライン(平成11年11月1日)
・医薬品の遺伝毒性試験に関するガイドライン(平成11年11月1日)

ウ.医療用具について

(ア)平成10年3月に、医療用具の新しいクラス分類の考え方を導入し、承認不要範囲の拡大、臨床試験要求範囲の見直し、販売業の届け出不要範囲の拡大等を行ったところであり、本年度内には更なる臨床試験要求範囲の見直し等を実施する予定である。

(イ)薬事法第42条第2項に基づく基準(42条基準)の見直しについては、平成10年3月に医療現場での使用実績がない又は極めて少ない品目についての5基準を廃止したことを始めとして、平成11年には人工心臓用ディスポーザブルセット基準等の6基準を廃止し、新たにこれらの医療用具に係る承認審査のガイドラインを定めたところであり、残る6基準についても順次見直しを進めている。
 また、JIS基準についても、平成9年度からゼロベースの見直し作業を行っており、順次、廃止、改正等を進めることとしている。

(2)国際的調和の推進

ア.医薬品

(ア)近年、優れた新医薬品の地球的規模での研究開発の促進と患者への迅速な提供を図るため、承認審査資料の国際的調和の必要性が指摘されており、我が国としても、日・米・EU三極医薬品規制調和国際会議(ICH)や、国際共同研究の推進への積極的参加等を通して、医薬品規制の国際的調和を推進することとしている。

(イ)ICHにおいて合意されたガイドラインは、各地域で実施されることとされており、現在までに約40のガイドラインを公表したところである。
また、平成12年11月には第5回日・米・EU三極医薬品規制調和国際会議(ICH5)が開催される予定である。ICH5においては、医薬品承認申請データ項目の配列及び内容をハーモナイズするガイドライン(CTD)の作成が中心課題とされており、現在、品質(化学合成品、バイオテクノロジー応用医薬品)、安全性及び有効性の3作業部会に分かれてガイドラインの作成が進められている。昨年12月には、CTDのデータ項目の配列及び安全性のサマリー部分の案を公表したところである。

イ.医療用具
 医療用具規制の国際的調和については、「医療用具規制国際整合化会合(GHTF)」において、日、米、EU、加及び豪の規制当局及び産業界代表が参加して進められており、昨年は、本会合・作業グループにおいて、医療用具に求められる基本的要件の検討、医療用具のクラス分類の整合化作業等が行われた。
 また、個別の規格基準の国際的調和については、国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準化会議(IEC)において作業が進められている。

(3) 臨床試験の円滑な実施

ア.治験を円滑に推進するための検討会報告
 平成9年4月より新GCPが施行されたところであるが、わが国では被験者の積極的な治験参加を求めていくための体制や治験実施医療機関内の治験実施体制の整備が不十分であることから、治験の停滞が指摘されている。このため、平成10年2月に医薬安全局長の私的検討会として「治験を円滑に推進するための検討会」を設置し、平成11年6月に報告書がとりまとめられたところである。この報告書では今後の取り組みとして、
1) 治験の意義についての積極的な広報活動の実施
2) 被験者募集のための情報提供活動の推進
3) 被験者に対する診療体制の整備
4) 被験者の負担の軽減
5) 治験コーディネーターの育成・確保
 等が掲げられたところである。

イ.治験を推進するための施策
 上記報告書の提言を受け、平成11年度において以下の施策を行っている。

(ア)被験者の参加を得るための施策
1) 治験の情報提供について治験薬の商品名を特定しない範囲で治験薬につき治験実施医療機関及び治験依頼者が情報提供を行うことが可能であることを示した通知(平成11年6月30日医薬監第65号医薬安全局監視指導課長通知)の発出
2) 国立病院及び国立大学に対し、被験者の治験参加による時間的拘束、交通費の負担増をはじめとした種々の負担に対する金銭の支給に係る通知(平成11年7月2日政医第196号保健医療局国立病院部政策医療課長通知)の発出
3) 治験に関する公開講座の開催
 治験推進協議会(治験実施医療機関の長により構成)に参加している医療機関において一般向け公開講座の開催。((財)医療研修推進財団への委託事業)

(イ)医療機関の体制整備のための施策
1) 治験推進協議会の運営
 治験推進協議会を平成10年度に設置し、医療機関相互の連携を図っている。((財)医療研修推進財団への委託事業)
2) 治験コーディネーター養成研修の実施
 ((財)日本薬剤師研修センターへの委託事業)
3) 治験のための標準運用指針の策定
 モニタリング、監査に関する指針について標準運用指針策定委員会において検討中。
 なお、上記以外に健康政策局及び保健医療局国立病院部において、治験事務局の設置スペースである治験管理施設の整備補助等を行っている。

(4)細胞・組織利用医薬品等の品質及び安全性確保対策

ア. 細胞・組織利用医薬品等の現状
近年、バイオテクノロジーの進展に伴い、組織工学・細胞治療技術を利用して、人や動物由来の細胞・組織に薬剤処理を施したり、細胞の生物学的特性を改変させたり、遺伝子組換えを施すなどの加工を施した新しい医薬品、医療用具の開発が急速に発展している。これらの製品の特徴として、原料が生体由来であることから、原料由来の感染因子が混入するおそれがあることや、培養等の加工を行う段階で細胞ががん化を起こすなどの品質の変化の可能性が懸念されるなど、従来の医薬品・医療用具とは異なった観点から製品の品質や安全性を確保することが必要となっている。

イ. 品質及び安全性確保対策
このため、昨年7月には「細胞・組織を利用した医療用具又は医薬品の品質及び安全性の確保について」(平成11年7月30日医薬発第906号 医薬安全局長通知)により、人又は動物由来の細胞・組織を加工した医薬品、医療用具については、治験の届出を行う前に、厚生大臣宛に品質及び安全性の確認を求めることとした。また、中薬審バイオテクノロジー部会に「細胞・組織利用医薬品等検討小委員会」を設置し、これらの製品の品質及び安全性確保のための規制の在り方等に関する検討作業を進めているところであり、検討結果を踏まえて必要な省令の改正等を行うこととしている。

(5)再審査・再評価

 再審査については、これまでに1,854品目について実施し、そのうち139品目が承認事項を変更する必要があるとされた。
 なお、平成8年度より再審査のために収集された安全性等の情報を広く医療機関に提供することを目的に、再審査概要(SBR)の作成を開始し、公表している。また、医療用医薬品の再評価については、昭和55年3月以前の承認分について、21,709品目全ての再評価を終了している。昭和63年より現行の新再評価制度において、順次必要なものにつき再評価指定を行い、現在までに3,962品目について再評価を終了しており、今後とも医療現場、学会等の意見を踏まえ、必要な再評価の実施について検討することとしている。

(6)後発医薬品の品質確保対策

 医療用医薬品の経口固形製剤の一部には後発品を中心にその品質が不十分なものがあるのではないかとの指摘がある。経口固形製剤の品質の確保のためには、溶出試験規格の策定、遵守が必要であることから、平成7年4月以降申請分の新医薬品について規格の策定を義務付け、溶出試験規格の設定のない医療用医薬品約550成分5,000品目以上について平成16年度までの間に順次再評価を行っているところである。
 再評価にあたっては、国立医薬品食品衛生研究所及び10都府県(埼玉県、東京都、神奈川県、富山県、静岡県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県)の衛生研究所の協力を得て溶出試験規格を策定しており、引き続きご協力方お願いする。なお、再評価の結果については「医療用医薬品品質情報集(日本版オレンジブック)」として公表している。
 また、後発医薬品製造業者については、情報収集・提供が十分に行われていないとの指摘もある。医療用医薬品の製造業者に対しては、副作用情報の収集や医師等への情報提供体制を確保するため、薬事法を改正し、平成8年4月より「医薬品の市販後調査の実施に関する基準」(GPMSP)の遵守を義務づける等の措置を講じているところであるが、後発医薬品製造業者に対して、先発医薬品製造業者と同等の情報収集・提供体制を定着させるための事業について、平成10年度より都道府県に委託して実施しているので引き続き御協力をお願いする。



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