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結核感染症

1.インフルエンザ対策

(1)今冬のインフルエンザ対策について

 インフルエンザは、毎年冬季に流行を繰り返し、患者数の多さや症状の重篤性から国民の健康に対して大きな影響を与えている感染症であるが、さらに、近年は、高齢者施設における集団感染、高齢者の死亡の問題が指摘され、その発生の予防とまん延防止が重要な課題となっている。このため、昨年11月17日付けで「今冬のインフルエンザ総合対策の推進について」の課長通知を発出しているところであり、貴管下市町村及び関係機関に対する指導方についてよろしくお願いする。

(2)インフルエンザに関する特定感染症予防指針について

 感染症法第11条において、特に総合的に予防のための施策を推進する必要があるものについて、予防の総合的な推進を図るための特定感染症予防指針を作成し、公表するものとされている。このため、公衆衛生審議会の諮問・答申を経て、平成11年12月21日付け厚生省告示第247号にて公表したところであり、貴管下市町村及び関係機関に対して周知徹底方お願いする。

(3)インフルエンザに係る発生動向調査の強化について

 インフルエンザの発生動向については、感染症法に基づく発生動向調査事業の中で行われているところであるが、昨シーズンにおいて、インフルエンザによる患者数及び死亡者数の把握が、迅速かつ十分に行われていないとの指摘等があった。このため、インフルエンザ対策の緊急性に鑑み、現行の発生動向調査とは別個に、特にインフルエンザの流行期における死亡者数及び患者数の早期把握事業を今年度から実施することとし、インフルエンザによる患者発生状況の迅速把握(毎日報告)については既に1月中旬から開始し、インフルエンザ疾患による死亡者数の把握については1月末から実施する予定なので、協力方よろしくお願いする。

(4)脳炎・脳症を発症した患者の発生動向調査について

 インフルエンザに合併して脳炎・脳症が発生する可能性があるとの専門家の指摘を受けて、昨年、調査を行ったところ217例の報告があり、うち死亡例が58例あったことが判明した。本年についても、インフルエンザの臨床経過中において脳炎・脳症を発症した患者の発生動向調査を実施する旨の課長通知を発出しているところであり、貴管下の保健所及び地方衛生研究所並びに関係医療機関等へのご協力方よろしくお願いする。

(5)新型インフルエンザ対策について

 新型インフルエンザウイルスは、10年から40年の周期で不連続変異により出現し世界的に大きな被害(インフルエンザパンデミック)をもたらしてきた。そこで、新型ウイルスによる地球的規模での流行が発生した場合に、ワクチンを緊急に製造する体制を整備する事業(ウイルス株の選別・保存・診断機材の作成)を、全国の地方衛生研究所の協力を得て平成10年度から開始しているが、平成12年度においても引き続き協力方よろしくお願いする。

2.結核対策

(1)「結核緊急事態宣言」について

 平成11年6月30日公衆衛生審議会から「21世紀に向けての結核対策(意見)」が提出され、同年7月26日に医療関係団体、老人福祉施設等の関係団体及び関係省庁等による結核対策連絡協議会を開催し、厚生大臣から「結核緊急事態宣言」を行った。
 当宣言において、1)医療関係者や行政担当者を含めた国民一人一人が結核を過去の病気として捉えるのを改め、国民の健康を脅かす大きな問題として取り組んでもらうこと、2)厚生省自らが結核対策を強化していくとともに、地方自治体、医療関係団体等においても、各々の立場で結核対策を強化していくこと、3)国民においては、結核に対する正しい知識を理解し、結核の予防に努めてもらうことを要請した。
 また、同日には、全国結核対策担当課長会議を開催し、各都道府県等に対しても関係団体等による結核対策連絡協議会を設置するなどし、施策の見直しを行う等実効性のある結核対策の推進を図るよう要請した。

(2)公衆衛生審議会意見「21世紀に向けての結核対策(意見)」について

ア 経 緯
 平成11年6月30日公衆衛生審議会から、結核罹患率の減少速度の鈍化等の問題を踏まえ、再興感染症としての結核対策の充実強化を図るため、厚生大臣に意見が提出された。

イ 意見書の主な内容
 新規結核登録患者数や罹患率の反転上昇といった近年の我が国における状況に対応するため、これまでの基本的な政策に加えて、新たな視点を用いた結核対策を推進するため「結核緊急事態宣言」を厚生省が行うとともに、関係省庁、結核の専門家等からなる「結核対策連絡会議」の設置を提言した。

ウ 今後の結核対策の具体的進め方(ポイント)
・再興感染症としての結核の再認識と知識等の普及啓発
・我が国における再興感染症としての結核の実態調査の実施
・結核の地域間格差の明確化と是正
・BCG接種対策の見直し
・患者発見対策の強化
・多剤耐性結核対策の充実
・高齢者の結核対策の充実
・住所不定者の結核対策の充実
・結核集団感染対策の充実
・院内感染対策の充実
・結核に関する情報の収集、分析と提供・公開体制の見直し

エ 「結核緊急事態宣言」及び「21世紀に向けての結核対策(意見)」に関する平成12年度予算(案)の概要
(11年度予算額) (12年度予算額(案))
(ア) 多剤耐性結核等拠点施設整備
 多剤耐性結核等に対する治療の拠点となる施設における感染防止対策を講じた病室等の整備を推進する。(広域圏及び都道府県の拠点病院の整備)
 ・国立病院・療養所の整備(国立病院部実施分)
375,664千円 → 1,422,372千円
(イ)再興感染症としての結核緊急実態調査の実施
 定期及び定期外の健康診断、BCG接種の現状分析、結核患者の合併症や再発の状況、治療内容とその効果及び薬剤耐性の結核菌に関する調査等を行う。
0 → 32,828千円
(ウ)国民への啓発普及の実施(再興感染症としての結核問題の重要性について)
 行政担当者や医療関係者を始めとした国民一人一人が結核の脅威を再認識し、正しい知識を修得することが極めて重要であることから、再興感染症としての結核の再認識と知識等の普及啓発を行う。
 ・普及啓発用ポスターの作成
0 → 2,247千円

(3)結核患者収容モデル事業の拡大について

 平成4年12月10日付け保健医療局長通知により結核患者の高齢化等に伴って複雑化する、高度な合併症を有する結核患者に対して、一般病床において収容治療するモデル事業を実施してきたところであるが、平成11年度より精神病床において精神疾患(入院を要する精神障害者)と結核の合併症患者を収容治療する事業を加えた。

(4)結核病棟改修等整備事業(医療施設近代化施設整備事業)について

 結核病棟改修等整備事業は、老朽化した結核病棟又は結核病室の改修等を行うことにより病院における結核患者の療養環境、衛生環境等の改善を図るため、「医療施設近代化施設整備事業」の一事業(メニュー化)として行う。

(5)結核予防法における公費負担の取扱いについて

 結核予防法第34条の規定に基づく一般患者に対する医療の公費負担の取扱いについては、「結核予防法による公費負担及び命令入所取扱要領について(昭和36年9月22日衛発第757号公衆衛生局長通知)」の別添「結核予防法による公費負担及び命令入所取扱要領」及び「結核予防法における公費負担の取扱いについて(平成8年7月23日健医感発第74号エイズ結核感染症課長通知)」をもって行われているところであるが、未だ一部において公費負担の不適切なそ及承認事例が見受けられるため、本取扱要領の趣旨に沿って速やかに是正改善の徹底を図るよう、管下保健所、結核診査協議会及び指定医療機関等関係機関に対し周知、指導方よろしくお願いする。

(6)結核対策特別促進事業費補助金について

 従来より、結核予防対策については、結核予防法による定期の健康診断及び予防接種の着実な実施を図りつつ、結核の罹患率、有病率の高い地域において、地域の実情に応じた重点的な結核対策事業を実施するために、本補助金の積極的な活用をお願いしてきたところであるが、公衆衛生審議会からの意見等における多剤耐性結核問題、結核の院内感染問題、結核の罹患率減少速度の鈍化と地域格差の大きな要因となっている高齢者の問題や治療困難者の問題等の指摘を踏まえ、現在行われている結核対策特別事業を見直すとともに、地域の実情に応じた重点的な結核対策を再度検討していただき効果的な結核予防対策を行っていただきたい。
 特に、平成11年度新たに対象事業に追加した「高齢者に対するINH(イソニコチン酸ヒドラジド(イソニアジド))の投与事業」及び「大都市における結核の治療率向上(DOTS)事業」について、積極的な実施について検討願いたい。

(7)結核の集団感染の防止について

 一昨年、特別養護老人ホームにおける集団感染事例が報告された事を踏まえ、「結核集団感染事例報告の徹底について(平成10年7月27日健医感発第65号厚生省保健医療局結核感染症課長通知)」により、高齢者入所施設等の結核の集団感染防止対策の適切な実施をお願いしたところである。
 また、近年、結核の集団感染が増加しており、特に医療機関内で結核の集団感染が続発している実情も踏まえ、昨年、「結核院内(施設内)感染予防の手引き」作成し、各都道府県等に対し周知したところである。今後とも、病院及び高齢者入所施設等における結核の集団感染の予防及び結核患者の早期発見、感染拡大防止について万全を期すよう、管下関係機関等に対する指導の徹底をお願いする。
 なお、集団感染事例等の発生があった場合には、積極的結核疫学調査を実施し、また、厚生省においても都道府県等の要請により積極的結核疫学調査実施チームの派遣を速やかに行い、対策の支援を行うこととしているので、積極的な活用を図られたい。

(8)平成10年結核発生動向調査年報集計結果について

ア 新登録患者数、罹患率について
・平成10年の結核の年間新登録患者数は44,016人(前年比1,301人増)である(非定型抗酸菌陽性を除く新登録患者数は41,033人)。
・全国罹患率は人口10万対34.8(同、0.9増)人である。
・新登録患者数及び罹患率とも2年連続して前年を上回ることとなり、増加傾向となっている。
イ 結核登録者数について
・平成10年末現在の結核登録者数は113,469人(前年比8,293人減)である。
ウ 死亡者数について
・平成10年中の結核による死亡者数は2,795人(前年比53人増)である。
・死亡順位は全疾病中22位(前年同)である。
エ 地域間格差について
・罹患率の最高は大阪府の70.1、次いで兵庫県、徳島県の順であり、最低は長野県の16.7、次いで福井県、山梨県の順である。
・長野県と大阪府との罹患率の較差は4倍以上である。

* 今回の年報から、平成7年12月26日厚生省保健医療局エイズ結核感染症課長通知「活動性分類の運用について」に基づき、統計の分類を変更したため、前年との比較で若干内容が変わった部分がある。(平成9年の統計までは非定型抗酸菌陽性患者は結核患者として計上されてきた。)

3.感染症対策

 感染症対策の歴史的経緯や社会的背景を踏まえて、新しい時代の感染症対策を構築するための「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「感染症法」という。)が昨年4月に施行されたところである。

(1)第一種感染症指定医療機関の指定について

 全国的に第一種感染症指定医療機関の指定が進んでいない状況となっていることから、指定に向けて医師会、医療機関等関係者との間で早急な調整等を図るとともに、指定までの間においては、一類感染症患者等の発生に備え、隣県等との協力体制を取るなど、万全な体制の整備をお願いする。

(2)特定感染症予防指針について

 「インフルエンザに関する特定感染症予防指針」を平成11年12月21日に公示し、「性感染症に関する特定感染症予防指針」についても、近日中に公示される予定となっているところであるが、これらの指針に基づき、総合的な施策を推進し、その発生及びまん延を防止するとともに、患者等に対して良質かつ適切な医療の提供に努めるよう周知徹底方よろしくお願いする。

(3)感染症発生動向調査について

 感染症の発生・拡大に備えた事前対応型行政の構築の観点から、一類感染症から四類感染症について、一元的な情報収集、分析及び公表の体制を構築しているところである。今後とも、患者発生の迅速な把握に努めていただくとともに、積極的な情報の提供・公開をお願いしたい。

(4)感染症研究等協力機関体制整備について

 平成12年度において感染症法に規定する72の各感染症ごとに国立感染症研究所、国立国際医療センターをはじめ、大学病院、地方衛生研究所等を感染症研究機関(感染症リファレンスセンター)として指定し、感染症ネットワークの整備を図ることとしている。具体的には、都道府県に当該感染症への対策についての助言や協力、依頼に基づいた積極的疫学調査等を行うこととしているので有効に活用されたい。

4 予防接種制度の見直しについて

(1) 予防接種制度の見直しについて

 平成6年に改正された予防接種法の附則第2条において、施行後5年を目途としての検討規定が設けられていることから、公衆衛生審議会感染症部会のもとに、予防接種問題検討小委員会を設け、平成10年6月から予防接種制度のあり方全般について審議を行い、昨年7月5日に開催された感染症部会に報告書が提出されたところである。
 なお、同小委員会の報告書を受け、高齢者に対するインフルエンザの予防接種を制度的にどのように取り扱っていくかについて、感染症部会においてご審議いただいているところであり、近々その方向性が出される予定である。
 また、同小委員会の報告書を踏まえ、小児科診療の専門家が常勤している医療機関において、副反応が発生した場合の救急医療体制が確保されていること等を条件に、全身性発疹を起こすおそれ等があり、慎重に予防接種をする必要のある者等に対する予防接種、医療相談及び情報提供を行う予防接種センター機能を整備することとしているので了知願いたい。
 おって、予防接種従事者及び保護者等に対する予防接種に関する適切な情報提供のための予防接種ガイドラインを作成、配布することとしているので併せて了知願いたい。

(2) 予防接種の円滑な実施について

 予防接種対策については、公衆衛生水準や医療水準の向上、予防接種に関する国民の意識の変化等を踏まえ、平成6年に予防接種法等の改正を行い、新しい制度による円滑な推進を図っているところである。
 都道府県におかれては、今後とも以下の点に留意しつつ、管下市町村への周知・指導方よろしくお願いする。

ア 有効かつより安全な予防接種を推進する観点から、個別接種体制を整備するようお願いしているところであるが、未整備の市町村にあっては、早急に個別接種体制を整備されるよう引き続き指導方お願いしたい。やむを得ず集団接種により実施する場合であっても、的確な予診の実施を徹底し、事故防止に万全の配慮を期されたい。
イ 予防接種の意義及びその重要性について周知徹底を図り、予防接種が円滑に実施されるよう指導方お願いする。
ウ 適切な情報提供のため(財)予防接種リサーチセンター(東京都新宿区新宿1-29-8 電話03-3341-8864)において、保護者等に対して予防接種ホットラインによる電話相談(電話045-671-1858)を行っているところであり、その活用等について周知指導方併せてお願いする。

(3) 予防接種健康被害対策について

 予防接種による健康被害者に対する救済措置については、障害年金等救済給付金の支給が円滑に行われるよう指導方お願いする。また、(財)予防接種リサーチセンターにおいて行う保健福祉相談事業の充実に努めているところであり、これが事業の円滑かつ効率的な実施につき、支援・協力方お願いする。更に、予防接種健康被害者が重症心身障害児施設等への入所を希望する場合に、手続き等が円滑に行われるよう関係部局とも連携を図るなどのご配慮をお願いする。

(4) 予防接種後の副反応報告・健康状況調査について

 予防接種後副反応報告及び予防接種後健康状況調査については、都道府県、市町村等の協力を得て実施しているところであるが、その調査結果について、貴管下市町村を通じ関係機関等への情報提供をよろしくお願いする。
 予防接種後副反応報告については、平成6年10月から平成10年3月までのものを報告書No.1〜4として情報提供したところであり、平成10年度分についても本年3月中を目途に情報提供することとしているので了知願いたい。
 また、予防接種後健康状況調査については、先日、平成10年度前期分を報告書として情報提供したところであり、平成10年度後期分についても、本年3月中を目途に情報提供することとしているので了知願いたい。
 なお、これらの報告等については、今後とも協力方よろしくお願いする。


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