1 遺骨収集等慰霊事業について
(1) 遺骨収集
- ア ソ連抑留中死亡者の遺骨収集
平成4年度から本格的に実施してきており、平成11年度までに9,558柱の御遺骨を収集したところである。平成12年度においても、ハバロフスク地方等8地域について実施するほか、「遺骨収集応急派遣事業」を実施することとしている。
- イ モンゴル抑留中死亡者の遺骨収集
平成11年度までにモンゴル国内にあるすベての埋葬地(埋葬地が特定できない4埋葬地を除く。)について遺骨収集を実施し、1,501柱の御遺骨を収集し、モンゴル国内の遺骨収集を概了したところである。
- ウ 南方地域における戦没者の遺骨収集
平成12年度においてはこれまでの間に寄せられた残存遺骨情報に基づき、2地域において実施するほか、「遺骨収集応急派遣事業」を実施することとしている。
(2) 墓参及び慰霊巡拝
- ア ソ連抑留中死亡者の墓参
埋葬地がある全ての地域(州、地方等)において計画的に墓参を実施しているところであり、平成11年度までに延べ427ヶ所について実施したところである。なお、平成12年度においては8地域について実施することとしている。
- イ 南方地域等の戦没者慰霊巡拝
主要戦域となった陸上及び遺骨収集の望めない海上戦没者を対象として実施しており、平成12年度においてはフィリピン等6地域について実施することとしている。
- (3) 慰霊友好親善事業
財団法人日本遺族会への委託・補助により実施している「戦没者遺児による慰霊友好親善事業」については、新たに旧ソ連邦、モンゴル地域を対象地域に加え10地域において実施することとしたほか、参加募集人員も400名から720名に増員し、より多くの戦没者遺児が参加出来るよう事業を拡大することとしている。また、事業内容についても友好親善のための記念事業(記念植樹等)を追加して事業の拡充することとしている。
(4) 慰霊碑の建立
- ア ソ連抑留中死亡者の小規模慰霊碑
平成12年度以降、旧ソ連邦において遺骨収集の概了した地域や遺骨収集が事実上実施できない地域であって、無償での土地の提供及び将来的な維持管理を保証しうる州又は共和国ごとに順次計画的に小規模慰霊碑を建立することとしており、平成12年度においてはタタールスタン共和国をはじめとした3つの地域に建立を予定している。
- イ モンゴル抑留中死亡者の慰霊碑
平成11年度をもってモンゴル国内の遺骨収集が概了したことから、現地政府からの要望をも考慮し、「モンゴル抑留中死亡者の碑」(仮称)を建立することとし、平成11年度に建立場所特定のための調査を実施した。なお、平成12年度に慰霊碑の設計を実施し、平成13年度に建立を予定しているところである。
2 戦傷病者関連施策について
(1) 目症戦傷病者特別慰藉事業の実施について
- ア 事業の目的
終戦後半世紀以上が経過し、戦傷病者の高齢化、体験の風化が進む中で、特に目症の戦傷病者については、これまで戦傷病を理由とする年金たる恩給等の給付が行われていないことを踏まえ、これら目症者のこれまでの労苦を慰藉することを目的とする。
- イ 事業の実施主体
この事業は、厚生省が各都道府県に一部事業を委託して行う。
- ウ 事業の概要
目症者たる戦傷病者手帳の所持者(平成12年4月1日において健在の者。なお、事業実施期間内に目症者として手帳交付を受けるに至った者を含む。)に対し、内閣総理大臣名の書状及び内閣総理大臣の刻印の入った銀杯を交付する。
- エ 事業の実施方法(案)
- (ア) 申請の受付
各都道府県より目症者たる戦傷病者手帳の所持者等に対し、事業の概要及び書状、銀杯の交付申請の案内を行う。
- (イ) 書状及び銀杯の引き渡し
厚生省は、(ア)の結果に基づき各都道府県に書状及び銀杯を引き渡す。
- (ウ) 贈呈式の実施
各都道府県は、書状及び銀杯の贈呈式を行う。
- オ 予算額
約296百万円 | うち都道府県への委託費は約72百万円 (1県あたり平均:約150万円) |
- ※ 詳細については追って連絡する。
(2) 戦傷病者乗車券類引換証制度の改正について
- 戦後半世紀以上が経過し、戦傷病者の高齢化が進んでいることを踏まえ、障害の程度が軽度な場合でも、介護者の無賃同行が可能となるよう、昨年9月に戦傷病者特別援護法施行令の一部改正を行ったところである。
上記改正については、平成11年度の特例として、一定の条件で従来の引換証を介護者との無賃同行扱いに変更できることとし、その交付事務を厚生省で行っているところであるが、今年4月からは本格施行され、従来どおり各都道府県において改正内容を踏まえた引換証交付事務を行うこととなるので、制度の周知及び準備をお願いしたい。
(参考1)
改正内容
障害の程度 |
改 正 前 |
改 正 後 |
甲 種
(戦傷病者と介護者) |
乙 種
(戦傷病者のみ) |
甲 種
(戦傷病者と介護者) |
乙 種
(戦傷病者のみ) |
特別項症〜第2項症 |
12枚 |
− |
12枚 |
− |
第3項症〜第4項症 |
6枚 |
12枚 |
6枚 |
12枚 |
第5項症〜第1款症 |
− |
6枚 |
3枚 |
6枚 |
第2款症〜第5款症 |
− |
4枚 |
2枚 |
4枚 |
第1目症〜第4目症 |
− |
2枚 |
1枚 |
2枚 |
(参考2)
今回の改正による介護者無賃同行扱いの対象者数(平成10年度交付者数)
-
現行制度(甲種数) | 6,266人 |
改正による増加 | 67,120人 |
3 中国残留邦人等に対する援護施策について
(1) 中国残留邦人
- ア 最近の状況
中国残留邦人の援護対策は、中国残留邦人の高齢化が進んでいることを踏まえ、帰国希望者の受入に努め、関係省庁と連携し、都道府県はじめ地方公共団体の協力を得て、日本社会における早期の自立及び生活の安定を目指すこととしている。
各都道府県におかれても、地域社会の受入れ及び公共住宅の確保等について引き続き協力をお願いしたい。
なお、平成11年11月の中国残留孤児の訪日肉親調査については、20名の孤児を日本へ招致し1名の身元が判明、4名が血液鑑定中であり、1名でも多くの肉親が判明することを期待している。
- イ 訪日肉親調査の見直し
これまでの集団による訪日肉親調査を見直すため、現在、中国政府と協議を行っている。
- ウ 不法入国問題
中国残留邦人の帰国制度を悪用して、偽の家族等が日本へ入国する事件があり、厚生省としても、中国残留邦人に対して、犯罪に巻き込まれることのないよう周知を図っている。各都道府県においても、自立指導員及び身元引受人等を通じ引き続き指導をお願いしたい。
(2) 樺太等残留邦人
- ア 最近の状況
永住帰国を希望する残留邦人が増加傾向にあることから、平成10年10月より永住帰国を希望する世帯は、所沢の中国帰国者定着促進センターへ入所させることとするなど、中国残留邦人と同様の施策の充実を図ってきているところである。
- イ 現地調査の実施
平成12年度においては、当局職員を現地に派遣し、面接方式により樺太残留邦人の帰国に関する意識及び帰国希望時期等の調査並びに樺太残留邦人の消息調査を行い、残留邦人の具体的数の把握をするとともに、今後の帰国援護方策を策定することとしている。
[参考]訪日肉親調査の見直し(概要)
1 訪日調査の見直しは、
- (1) 近年孤児自身が持っている肉親情報が少なく、平成2年度からの判明率は10%前半で推移し、平成8年及び9年は10%を割り込んで、肉親が判明する者は数人にとどまった
- (2) 孤児の中には長い時間の経過のため、肉親が判明しなくとも仕方がないとする見方があり、それよりも日本での速やかな定着自立に関心が高まっている
- (3) 参加孤児の高齢化に伴い、日本滞在中に健康を損なう孤児が出る現実を踏まえ、訪日自体が孤児に身体的負担を負わせている
などの理由による。
2 このため、平成12年度より集団による現行方式に替えて、中国現地で日中共同の調査(面接等)を行った後、日本において顔写真、特徴、離別状況等の孤児情報を公開し、日本側に肉親情報がある者のみを訪日対面調査に招致し、また、肉親情報がない者については、日中両国で孤児と認めた者であるので、訪日調査を行わず、直接帰国させる方法等に改めようとするものである。
3 昨年、中国側と基本的な合意に達し、現在中国側と最終的な協議を行っているところである。
4 昭和館について
平成11年3月27日に開館した昭和館は、戦没者遺族の援護施策の一環として、戦中・戦後の国民生活上の労苦を伝えようとするものであり、実物資料の陳列、図書資料等の閲覧、関連情報の提供事業を行っている。
開館以来、事業運営は順調に推移しており、総入館者数は延べ12万人(平成11年12月末現在)に達したところである。
昭和館の広報協力については、平成11年5月25日社援画第73号により厚生省社会・援護局援護企画課長から依頼したところですが、今後とも様々な機会をとらえて広報していただけるようご協力願いたい。
(1) 施設の概要等
- ア 場 所 東京都千代田区九段南1−6−1
- イ 構 造 地上7階、地下2階
- ウ 各階構成
7、6階 |
常設陳列室
戦中・戦後の生活用品約800点を陳列 |
5階 |
映像・音響室
検索用ブース、ビデオブースを整備 |
4階 |
図書室
約7万冊の図書を収蔵 |
3階 |
研修室・会議室 |
2階 |
広場 |
1階 |
総合案内、事務室 |
- エ ホームページ http://www.showakan.go.jp
(2) 予 算 額
-
総 経 費 | 123億円 |
12年度予算案(運営費) | 6億円 |
(3) 運 営 財団法人日本遺族会に委託
5 戦傷病者戦没者遺族等援護法の改正について
戦傷病者及び戦没者の遺族に支給する障害年金及び遺族年金等の額を、恩給の改善(基本額の0.25%引上げ及び遺族加算の増額)に準じて引き上げることとし、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正法案を次期通常国会に提出する予定である。
(例1)障害年金(公務傷病、第5項症の場合)
-
(現行) | | (平成12年4月から) |
2,508,000円 | → | 2,514,000円 |
(例2)遺族年金、遺族給与金(公務死の場合)
-
(現行) | | (平成12年4月から) |
1,948,700円 | → | 1,956,200円 |
6 北朝鮮在住の日本人配偶者故郷訪問について
(1) 最近の情勢
- ア 超党派代表団との合意(平成11年12月3日)
村山元総理を団長とする超党派の代表団と朝鮮労働党代表団とが合意。
「日朝両国が関心を持っている人道問題解決の重要性について合意し、それぞれの政府の協力の下で、赤十字に対してこのためにお互い協力していくよう勧告することにした」
- イ 日朝赤十字会談の共同発表(平成11年12月21日)
アを受けて日朝の赤十字が会談し、共同発表。
「第3回日本人配偶者の故郷訪問を来春を目途に再開し、過去に合意した手続きと方法により、これを行うこととした。」
(2) 故郷訪問事業について
- ア 概要
北朝鮮による帰還事業(昭和34年12月〜59年7月)により、在日韓国・朝鮮人と婚姻して北朝鮮への帰還に随行した日本人配偶者については長年に亘り故郷訪問の機会がないことから、人道的見地に立ち平成9年9月に日朝赤十字連絡協議会で里帰りを行うことで合意され実施されたものである。
なお、北朝鮮に戦前から居住している残留邦人もこの事業の対象となっている。
- イ これまでの経緯
平成9年11月、10年1月の2回にわたり実施し(計27人)、第三回の訪問予定候補者の名簿提出を外務省から北朝鮮側に申し入れていたところ、平成10年6月北朝鮮の朝鮮中央通信より「日本側の非人道主義的行動により、日本人配偶者の故郷訪問事業が計画通り進んでいない」との放送があった後、現在まで中断していた。
(3) 再開後の都道府県の業務
- 都道府県に対しては、第1,2回の故郷訪問時と同様に、受入の前提となる訪問予定者の戸籍確認、親族の所在確認、面会の意向確認等の業務を厚生省よりお願いすることとなる。
なお、具体的時期、人数等については、今後、日朝赤十字連絡協議会において詰めていくことになっている。