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1.水道環境部関係予算について

 水道施設及び廃棄物処理施設は、国民生活の向上を実感できる快適な生活環境を確保するうえで、欠くべからざる極めて重要な施設であることから着実に整備を図っていくこととしている。
 このため、平成11年度予算案においては重点化枠で243億円を確保し、環境衛生施設整備費総額として3,593億円(要求額3,624億円)を確保したところである。
 これは、今回新たに計上された地域戦略プラン(公共事業分 2,000億円)を除く公共事業全体の伸び率が対前年度比2.8%という中で、環境衛生施設全体では3.9%の増であり、厚生省分としては対前年度比4.5%増となった。この結果、公共事業に占める環境衛生施設整備費のシェアは、平成10年度の3.88%から3.92%となったところである。
 なお、平成11年度予算案は、景気対策の観点から平成10年度第3次補正予算と一体的な予算とするいわゆる「15か月予算」の考え方の下で編成されており、切れ目のない公共事業予算の執行が期待されている。
 水道、廃棄物処理施設関係の平成10年度第3次補正予算においては、補正予算限りの時限的な事業等について予算措置がなされているので、これが予算の有効活用について積極的な取組方をお願いしたい。

(1)平成11年度予算案について

ア.平成11年度水道施設・廃棄物処理施設整備費の予算額(案)

(単位:百万円)
環境衛生施設 平成10年度
予算額
平成11年度 差引増△減額 対前年度比
(%)
予算額(案) うち重点化枠分
水道施設 (188,160)
135,040
(195,094)
140,497
(12,256)
10,239
( 6,934)
5,457
(103.7)
104.0
 簡 易 水 道 ( 46,340)
36,629
( 48,544)
38,920
( 3,600)
3,600
( 2,204)
2,291
(104.8)
106.3
 上 水 道 (141,820)
98,411
(146,550)
101,577
( 8,656)
6,639
( 4,730)
3,166
(103.3)
103.2
廃棄物処理施設 (157,763)
146,061
(164,215)
153,344
(12,081)
10,999
( 6,452)
7,283
(104.1)
105.0
 ごみ焼却施設等 (141,995)
130,751
(147,688)
137,337
(11,246)
10,164
( 5,693)
6,586
(104.0)
105.0
 合併処理浄化槽 ( 15,768)
15,310
( 16,527)
16,007
( 835)
835
( 759)
697
(104.8)
104.6
合 計 (345,923)
281,101
(359,309)
293,841
(24,337)
21,238
( 13,386)
12,740
(103.9)
104.5
※ 下段は厚生省分。上段( )書は他省庁を含めた総計。


イ.公共事業費における環境衛生施設の予算額及びシェアの推移

(単位:百万円、%)
  7年度 8年度 9年度 10年度 11年度(案)
予 算 額 334,385 361,169 372,635 345,923 359,309
シェア(%) 3.65 3.78 3.85 3.88 3.92
一般公共事業費 9,171,544 9,550,144 9,676,985 8,917,658 9,163,028
(注)平成11年度の一般公共事業費は「地域戦略プラン」を除いてある。

ウ.主な公共事業関係費

(単位:百万円、%)
区 分 10年度予算額 11年度予算額(案)
  伸 率 シェア   伸率 シェア
治 水 1,112,108 △13.2 12.47 1,182,843 6.4 12.91
道路整備 2,617,613 △ 3.3 29.35 2,626,843 0.4 28.67
住宅対策 1,016,130 △13.9 11.39 1,056,340 4.0 11.53
下 水 道 1,112,109 △ 7.0 12.47 1,129,228 1.5 12.32
環境衛生 345,923 △ 7.2 3.88 359,309 3.9 3.92
港 湾 332,121 △ 8.5 3.72 339,896 2.3 3.71
農業農村整備 1,083,653 △11.8 12.15 1,090,925 0.7 11,91
一般公共事業費 8,917,658 △ 7.8 100.00 9,163,028 2.8 100.00
(注)平成11年度一般公共事業費の伸率、シェア欄及び合計は「地域戦略プラン」を除いてある。


(2)適正な予算執行の確保について

 環境衛生施設整備費の適正執行については、従来から配慮を願っているところであるが、会計検査院の平成9年度決算検査報告において、廃棄物処理施設の建設に係る工事契約の一部に「高率な最低制限価格を設定したため、割高な契約を締結することとなった」事例があった旨指摘され、割高相当額を返還することとなった。
 最低制限価格の設定については、地方自治法施行令第167条の10第2項により「当該契約の内容に適合した履行を確保するために特に必要があると認めるとき」に限定されていることに鑑み、最低制限価格を設定する場合にあっても、合理的な根拠に基づき、予定価格に対し高率な設定を行うことにより、競争の利益を失うことのないよう管下市町村等に対する指導を行うとともに、実際に契約業務を行う契約担当部局に対する十分な周知徹底をお願いする。
 また、地方自治体のごみ焼却施設等の発注に関し、現在、公正取引委員会が独占禁止法違反の被疑事件として調査を実施しているところである。工事請負契約関係業務の公正、透明性を最大限確保するよう併せてお願いする。
 なお、近年、公共事業に対する補助金の執行について、上記のような様々な批判、問題点が指摘されていることから、水道施設及び廃棄物処理施設の事業の実施に当たっては、「環境衛生施設整備費の適正執行について」(平成10年5月26日付け衛水第39号・衛環第47号水道整備課長・環境整備課長通知)に基づく入札手続の厳格化、各種関連事業との整合性の確保による重複投資を避けた建設コストの低減及び事業の必要性についての再評価等を適切に実施することにより、公正かつ効果的、効率的な整備に努めるようお願いするとともに、貴管下市町村等へ周知、指導について特段の御配慮をいただきたい。また、入札結果等の公表についても、透明性の確保の観点から、その徹底を図るよう、「環境衛生施設整備事業費国庫補助事業の適正執行について」(平成9年6月30日付け衛水第197号・衛環第207号水道整備課長・環境整備課長通知)を併せて御配慮いただきたい。


2.生活環境審議会への「今後の廃棄物対策の在り方について」の諮問について

(1)経緯

 平成10年10月30日に、厚生大臣から生活環境審議会会長に「今後の廃棄物対策の在り方について」(厚生省発生衛第216号)を諮問し、生活環境審議会廃棄物処理部会に付議されたところである。
 今後、廃棄物白書の刊行や循環型社会推進国民会議(仮称)の開催などを通じて広く国民の意見を求めつつ、検討を進める予定である。

(2)趣旨

 ダイオキシン類対策、廃棄物処理施設整備をめぐる地域紛争等廃棄物処理についての国民の関心は高く、より安全な廃棄物処理やリサイクルなど廃棄物の発生そのものを抑制する方策の確立を求める意見が多方面から指摘されている。
 このため、これらの課題に応え、国民がより安心して生活できる空間を創出するため、改正廃棄物処理法、容器包装リサイクル法、新たに制定した特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)等の現状や効果を見極めつつ、今後の廃棄物対策の在り方を総合的に検討する必要がある。

(3)諮問の背景

1)廃棄物処理の実施体制

 廃棄物処理においては、廃棄物の衛生的処理、最終処分量の削減等の観点から焼却処理が引き続き必要と考えられ、これに伴い発生するダイオキシン類等の有害物質対策の徹底とその強化が引き続き必要である。
 このため、市町村や廃棄物処理業者において、焼却処理や焼却灰の処理等について、より高度な技術的対応が求められる。
 また、最終処分場は、埋め立てられた廃棄物が安定するまでの相当な長期にわたり確実な管理が必要となる。
 このような高度な技術への対応や長期にわたる確実な管理といった課題に対応し、より安全な廃棄物処理を推進するためには、一般廃棄物処理についての市町村を越えた広域的な役割分担、産業廃棄物処理への公的な役割の強化が求められている。
 このような状況に対応するため、現行の処理責任原則(一般廃棄物についての市町村処理責任、産業廃棄物についての排出事業者責任)を原則として維持しつつ、現下の廃棄物処理の現状を踏まえ、廃棄物処理の実施体制の在り方を検討する必要がある。

2)公共関与等による安全な廃棄物処理施設整備

 現行制度においては、国や都道府県の関与による安全で安心できる廃棄物処理施設の整備の方法として、

・ 廃棄物処理センター等による広域的廃棄物処理施設の整備

・ 廃棄物処理センター等の整備に対する支援措置

・ 環境事業団による建設譲渡事業

・ 首都圏等における広域処分場整備

等が考えられる。
 今後、これらの制度や民間企業の活力、技術等の効果的な活用に向けて具体的な検討が必要である。

3)廃棄物処理に係る技術開発

 他方、安全で安心できる廃棄物処理施設を整備するためには、廃棄物処理に係る技術開発の推進が重要である。
 ダイオキシン類対策等の基礎的研究の推進に加えて、リサイクルや有害物質の無害化処理についての既存技術の応用等多彩な実証実験等の調査研究及び技術評価の実施が重要である。
 このため、これら技術開発の推進方策について検討する必要がある。

4)循環型社会構築と適正な廃棄物処理の必要性

 今後、処理しなければならない廃棄物の発生を抑制する観点から、リサイクルを進めるための各種の方策を検討し、循環型社会の構築を進めることが必要である。
 なお、リサイクルを推進しても処理せざるを得ない廃棄物がなくなることにはならないことから、最終的には廃棄物として適正に処理できる体制を確保しておくことが循環型社会構築の基礎的条件であることを念頭に置きつつ、国民が安心して生活するための条件を整備していく必要がある。

(4)今後の予定(廃棄物処理部会における審議経過及び予定)

平成10年
10/30  諮問(今後の廃棄物対策の在り方について)
11/26 関係省庁等における廃棄物対策への取組状況の説明
(環境庁、農林水産省、その他)
12/ 3 関係省庁における廃棄物対策への取組状況の説明
(通商産業省、運輸省、建設省)
平成11年
2月目途  ・環境事業団法改正等廃棄物関連法案について
・平成11年度予算及び廃棄物処理の状況(平成8年度速報値)について
4〜6月 自治体関係団体、経済関係団体、労働団体、消費者団体等からの意見聴取及び廃棄物処理の課題等について討議
6月 論点整理等について
7〜8月 今後の廃棄物対策について、国民各界各層の意見を幅広く集約(廃棄物白書の発行、循環型社会推進国民会議(仮称)の開催等)
9月〜 論点ごとの集中審議
12月 中間報告


3.コンピュータ西暦2000年問題について

(1)問題の概要

 コンピュータが年数の表示を下2桁(例えば、1998年を98年として)で表したデータを処理する場合、経過時間の計算、期間の比較等を実行するプログラムが、2000年を「00」として扱い、間違った結果を生じるばかりでなく、システム停止にまで至る可能性がある。
 このため、国民生活に密接に関係する分野について、上記のような支障の有無や対策を講じておく必要がある。

(2)政府全体の取組

 内閣総理大臣を本部長とした高度情報通信社会推進本部は、平成10年9月11日、「コンピュータ西暦2000年問題に関する行動計画」を発表し、官民を挙げた具体的な行動の徹底を図ることとした。
 また、当該問題への適切な対応を図るため、高度情報通信社会推進本部の下、専門的かつ優れた見識を有する者を顧問とする「コンピュータ西暦2000年問題に関する顧問会議」(以下「顧問会議」とする。)を設置し、当該問題に関する意見の開陳を求めている。
 顧問会議においては、社会経済上重要である金融、エネルギー、情報通信、交通及び医療の民間重要5分野等について特に取り組んでいるところであるが、国民生活に不可欠なライフラインである水道についても、民間重要5分野等の一つとしての認識が高まっているところである。

(3)厚生省の取組

1)厚生省全体の取組

 厚生省としても、コンピュータ西暦2000年問題の重要性、緊急性にかんがみ、西暦2000年までに万全な対策を講じることを目的として、省内に官房長を議長とした「コンピュータ西暦2000年問題対策検討会議」及び大臣官房政策課を中心とした「コンピュータ西暦2000年問題対策作業部会」を設置したところである。
 また、平成10年10月22日、「厚生省コンピュータ西暦2000年問題対策実施要領」(以下「対策実施要領」とする。)を策定し、当該問題に対する対応体制を整備したところである。

2)水道環境部の取組
ア 厚生省が保有するシステムへの対応

 平成10年11月には対策実施要領に基づき、省内のシステムを、人の生命、生活又は公共の安全の維持など国民生活に密接に関連するものなどをAランク、他の行政機関に影響が及ぶものをBランク、その他のシステムをCランクに分類し、点検を行ったところである。
 水道環境部に係るシステムとしては、産業廃棄物処理業者台帳検索システム(WISH)がBランクに位置付けられ、当該システムに関連するプログラムは2000年問題に対応しているという結果を得たところである。

イ 国所管法人等が保有するシステムへの対応

 厚生省が保有するシステムに関する調査と同時に、各部局所管の法人等が保有するシステムについても同様の調査を行ったところである。調査は、電子マニフェストシステム、産業廃棄物処理業者許可番号システム及び水道データベースシステムについて行い、いずれもCランクに位置付けられ、修正措置の必要がないという結果を得たところである。

ウ 民間部門等が保有するシステムへの対応

 対策実施要領では、民間部門等が保有するシステムについては、優先分野と優先分野以外の分野の二つに区分し、それぞれについて実施要領を定めている。優先分野の目安として、2000年問題によってシステムが停止した場合、国民に多大な影響を与える可能性のあるものが挙げられ、医療分野が該当するとされた。
 浄水場及び配水システム等の水道基幹施設等が保有するシステムについても、電気・ガス・通信等と同じく、社会経済上重要であるという観点から、優先分野の一つとしての認識の高まりを踏まえ、各事業者に対して、コンピュータ西暦2000年問題に関する調査を実施しているところであり、今後も各水道事業者等へのコンピュータ西暦2000年問題の周知を図るとともに、対策の徹底を入念に指導していくこととしているので、各都道府県におかれても市町村及び管下水道事業者に対する指導方よろしくお願いする。
 廃棄物焼却施設については、国民生活に密接に関連するという観点から、各事業者に対して、念のためコンピュータ西暦2000年問題に関する調査を実施したところである。
 なお、各事業者に対する調査結果については、平成10年度中に厚生省のホームページを通じて情報提供を行う予定である。

エ 西暦1999年問題への対応

 「西暦1999年問題」は、過去作られた多くのプログラムの中に「99」を特別の意味(データの終わり、日付未確定)として使ったものが存在するというものであり、西暦1999年1月1日以降、「注文や売り上げ等のデータが入力できない」「データが削除される」等のプログラム上の問題が発生する可能性があるものとして、指摘されているものである。
 水道環境部においては、当該問題について、平成10年12月に都道府県所管部(局)長、所管団体を通じて事業者等への周知徹底を図ったところであるので御了知願いたい。


4.ダイオキシン対策の徹底について

(1)平成14年施行の基準達成

 廃棄物焼却施設から排出されるダイオキシン類の削減を図るため、平成9年8月に廃棄物処理法施行令及び同法施行規則を改正して焼却施設に係る構造及び維持管理基準を強化し、同年12月1日から施行しているところである。既存の施設に関しては、昨年12月1日より排出基準80ng-TEQ/Nm3など、施設の簡易な改造等で対応可能な基準が既に施行されている。より厳しいダイオキシン類排出濃度を含め施設等の大幅な改造が必要となる基準は、平成14年12月1日から適用される予定である。しかし、これに適合するための対策は、できる限り早期に実施される必要がある。
 このため、平成10年度第3次補正予算に182億円を計上し、平成14年の基準に適合したごみ焼却施設の整備について、11年度新規着工予定分を前倒しで実施するものに対し、国庫補助を行うこととしている。
 さらに、同補正予算において、ダイオキシン類の削減に有効である焼却灰・飛灰の分離排出を行うために必要なごみ焼却施設の改造等について補助対象としている。
 また、平成11年度予算において、平成12年度までの時限措置として、ごみ焼却施設の新設・増設及び改良事業については、補助対象を拡充することとし、従来補助対象外となっているごみ焼却施設の建物を補助対象とすることとしている。各都道府県におかれては、管下の市町村に対し以上の国庫補助の趣旨を周知の上、ダイオキシン削減対策の前倒し実施に特段の御配慮をお願いする。

(2)廃棄物焼却施設の維持管理状況等の総点検調査

 ごみ焼却施設敷地内やその近傍土壌から高濃度のダイオキシンが検出された事例については、

1) 燃焼管理及び排ガスの温度管理に起因するダイオキシン類の発生

2) 排ガス中のダイオキシン類の洗煙水及び冷却水への移行、濃縮

3) 開放型冷水塔からのダイオキシン類を含む飛沫の飛散

などの要因が重なった結果と推定されている。
 このため、廃棄物焼却施設におけるダイオキシン類削減対策の徹底の指導をお願いするとともに、全国の市町村の設置するごみ焼却施設を対象として、構造及び維持管理基準の適合状況等の総点検調査を実施したところである。
 平成9年8月に改正した構造及び維持管理基準については、(1)で述べたように平成10年12月1日からその一部が適用されており、総点検調査の結果に基づき、基準の遵守の徹底について指導いただいているところであるが、引き続き、更なるダイオキシン類の削減対策及び平成14年12月から適用される基準への対応について、必要な指導をお願いする。
 また、総点検調査の結果を踏まえ、厚生省において必要な措置を検討したいので、総点検調査の結果を速やかに報告いただきたい。

(3)開放型冷水塔に係る維持管理基準

 廃棄物焼却施設の排ガスの洗浄水及び冷却水にダイオキシン類が移行、濃縮していたことから、廃棄物処理施設の維持管理基準を改正し、開放型冷水塔からの飛沫の飛散、湿式洗煙塔の洗浄水及び冷却水の流出により生活環境保全上の支障が生じないよう廃棄物焼却施設の維持管理を行わなければならないこととし、平成10年11月17日に施行したところである。
 具体的な措置としては、開放型冷水塔の密閉型間接冷却装置への変更、飛沫飛散防止のための装置の設置等による維持管理が考えられるが、市町村の設置するごみ焼却施設については、平成10年度第3次補正予算において、開放型冷水塔の改造事業、排水処理施設改造事業及びこれらに関する調査・設計、解体処理に要する費用を補助対象としているところであるので、市町村において積極的に対応するよう、指導をお願いする。
 なお、この維持管理基準は、洗浄水及び冷却水に含まれる重金属類等により生ずる生活環境保全上の支障も念頭に置いていることに留意されたい。

(4)産業廃棄物焼却施設の対策

 産業廃棄物焼却施設についても、(1)で述べたように昨年12月1日より既存の焼却施設に対してこれまで適用が猶予されていた構造・維持管理基準の一部が適用されたところであり、基準に適合していない又は適合していないおそれのある施設の設置者に対しては、施設の改善命令や使用停止命令の発動を積極的に行う等厳格に対処するようお願いする。また、昨年11月25日付けで各都道府県等へ依頼している焼却施設の構造基準等への>適合状況に関する調査について御協力方お願いする。
 さらに、許可対象規模未満の焼却設備を用いた処理についても、処理基準に照らし厳格な指導をお願いする。
 ダイオキシン類の削減のための産業廃棄物焼却施設の改造等に係る税制上の優遇措置については、昨年度税制改正において、ダイオキシン類の排出を抑制するための設備の設置又は更新のための費用を特別償却の対象とすることが認められているところである。また、産業廃棄物処理施設に係る公的な融資制度については、環境事業団、中小企業金融公庫等の融資制度があるが、特にダイオキシン類の削減のための施設の改造等に必要な費用について、環境事業団において「ダイオキシン対策促進融資制度」が導入されているところである。
 これら制度を十分に活用しつつ、平成14年12月から適用される基準についても、できる限り早期に対応するよう設置者への周知徹底をお願いする。


5.一般廃棄物対策の適正処理の確保について

(1)最終処分場の技術上の基準の強化等

1)共同命令の一部改正

 「一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める命令」(総理府、厚生省の共同命令)の一部を改正し、最終処分場の構造・維持管理基準の強化・明確化を行うとともに、平成9年6月の廃棄物処理法改正によって必要となった最終処分場の廃止の確認を行うための基準を設定したところである。これについては、昨年6月17日から施行しているところであるが、その詳細及び施行に当たっての留意事項等について別途通知しているところであり、的確な運用をお願いしたい。

2)最終処分場の適正化

ア 市町村の設置する一般廃棄物処分場については、厚生省の調査により多くのものについて、遮水工又は浸出液処理設備が設置されていないこと等の実態が明らかになり、昨年3月公表したところである。

(ア)全国1901施設のうち、遮水工又は浸出液処理設備を有しないものが538施設あった(このうち、共同命令違反と認められるものが80施設)。

(イ)焼却灰を遮水構造のない場所で保管するといった保管基準違反のおそれが強い焼却灰の保管事例が19例あった。

イ このため、市町村において速やかに必要な改善を図るとともに、周辺の地下水等の水質調査を行い、万が一汚染が見られた場合には必要な対策を検討・実施するよう該当する市町村に対する指導を指示したところである。水質調査については、平成10年9月末までに厚生省に報告するよう指示しているところであるが、未報告の施設については速やかに報告するよう市町村を強く指導されたい。

ウ さらに、平成10年度補正予算(第1次)により、不適正最終処分場の安全対策及び適正閉鎖対策事業についての国庫補助を計上しているところである。各都道府県においては、管下市町村の処分場の実態を踏まえた上で、適切な対応をとるよう、市町村を強力に指導するようお願いする。
エ なお、昭和46年以前に設置された処分場における処分に対しては従前は処分基準が適用されていなかったが、平成9年12月の廃棄物処理法施行令の改正に伴い、平成11年6月17日からは、昭和46年以前に設置された処分場における処分に対しても処分基準が適用されることとなったので、留意されたい。

(2)広域化計画の策定

 ごみ処理の広域化計画の策定については、ダイオキシン削減、国庫補助の重点化等の観点から、遅くとも平成10年度末までに策定するよう通知しているところであるが、現在までのところ12道県のみが策定している。未策定の都府県におかれては、早急に策定をお願いするとともに、策定した広域化計画については、すみやかに提出願いたい。
 また、ごみ焼却施設から排出される灰を広域的・効率的に処理するため、平成11年度から廃棄物処理施設整備費に灰溶融施設の単独設置についても、広域処理推進の観点から補助対象としたところである。
 なお、ごみ焼却施設については、平成11年度においても、ダイオキシン対策、熱エネルギーの利用、建設コストの削減の観点から、離島及び沖縄を除き、100トン/日以上の処理能力を有する全連続式の焼却施設及びごみ固形燃料(RDF)を広域的に受け入れる100トン/日以上のRDF発電等焼却施設(都道府県が設置するものを含む。)を補助対象としているところであるので、これらの整備について、鋭意市町村を指導するとともに、RDF発電等焼却施設の整備について都道府県におかれても整備について検討されたい。

(3)ごみ処理施設性能指針

 廃棄物処理施設整備国庫補助事業に係るごみ処理施設の構造に関する技術上の基準については、昭和61年8月15日付けで「ごみ処理施設構造指針」を通知し、国庫補助事業採択に当たっての基準の一つとするとともに、指針に定めのない施設については個別の協議(指針外協議)により補助事業としての妥当性を審査してきた。しかしながら、近年の廃棄物処理法に基づく技術上の基準の強化・明確化において、構造指針の主要な内容を基準化してきたこと、新技術の開発などによる廃棄物処理技術の多様化に迅速に対応する必要があること等を踏まえ、「ごみ処理施設構造指針」の内容を整理して新たに「ごみ処理施設性能指針」(以下「性能指針」という。)を策定し、平成11年度以降新たに着手する国庫補助事業から採択基準の一つとすることとし、平成10年10月28日付けで通知したところである。
 廃棄物処理施設整備に係る国庫補助の申請に当たっては、申請の対象となる廃棄物処理施設が廃棄物処理法その他の関係法令等の規定に適合していることに加え、性能指針に定める事項を満足していることについて、補助事業者である市町村等において事前に十分な検討が行われるよう指導するとともに、各都道府県において申請書類等による的確な審査を行われたい。

(4)再生利用認定制度

 行政改革推進本部規制緩和委員会(委員長:宮内義彦オリックス社長)において、昨年5月以降、保安・環境ビジネスを含む13の行政分野について、関係省庁・団体等との意見交換、調査審議を実施、昨年12月15日に、規制緩和委員会としての見解がまとめられたところである。 廃棄物処理の分野では、「廃棄物処理、リサイクルの推進」をテーマとし、検討が進められ、具体的には、「リサイクル及び技術開発の推進及びに事業者の負担軽減のため、対象となる廃棄物の範囲を拡大するとともに、認定基準を満たすものについては積極的に認定すべきである。当面は、廃プラスチック等、事業者から要望の出されているものに関し、再生利用認定制度の対象物とするか否かについて検討し、速やかに結論を出すべきである。また、対象者の認定基準の明確化を図るべきである。」との見解が示されている。
 今年度末に、規制緩和推進3か年計画が改定され、規制緩和委員会の見解が計画に盛り込まれることとなる予定であるが、厚生省としては、生活環境保全上の支障が生じないことを前提とした上で、規制緩和委員会の見解において示された点について検討していくこととしている。

(5)民間資金等の活用による公共施設等の整備(PFI)の動向

 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律案」(いわゆる PFI法案)は、昨年5月、第142回国会に提出されて以来、継続審議となっている。
 厚生省としては、PFI 手法により、民間事業者の資金、経営能力等を活用して廃棄物処理施設の整備を進めていくことは、効率的な廃棄物処理、財政負担の軽減などの観点から重要であると考えており、平成10年度第1次補正予算において、PFI手法による一般廃棄物処理施設整備事業に対する国庫補助制度を設けるとともに当該事業を日本開発銀行及び北海道東北開発公庫の低利融資の対象としたところである。
 また、平成11年度予算案においても、一般廃棄物処理施設整備の補助事業として、日本開発銀行等における低利融資制度として措置したところである。
 税制措置については、 PFI法案に規定する選定事業により整備される廃棄物処理施設の用に供する土地に係る特別土地保有税の非課税措置を講ずることとされた。

(6)し尿等の海洋投入処分の削減

 平成8年11月のロンドン条約締約国特別会合で採択された「1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の1996年の議定書」(ロンドン条約新議定書)においては、ロンドン条約による規制の強化を目的として、海洋投入処分が禁止される廃棄物の範囲の拡大、海洋投入処分を行う際の環境アセスメントに義務付け、海洋投入処分に関する許可手続きの見直し等が規定されている。
 新議定書は締約国数が26か国になった日の30日後に発効することとされているが、依然として締約国数は少ないこと及び我が国が新議定書の締約国となるか否かについては、現在、政府部内において検討中であることから、今後の見通しについては明確でない。しかしながら、海洋環境の保全を図る観点から、廃棄物の海洋投入処分に対する規制を強化する必要があることは国際的に共通の認識となっており、我が国においても、その趣旨に沿った対応が必要である。
 し尿及び浄化槽汚泥の海洋投入処分については、既に、平成8年度から平成14年度を計画期間とする第8次廃棄物処理施設整備計画において、し尿等の海洋投入処分量をなくすことを目標としてし尿処理施設の整備を進めることとし、し尿等の海洋投入処分を行っている市町村に対する指導をお願いしているところであるので、上述のような状況にかんがみ、可能な限り早期にし尿処理施設の適正な整備や関係市町村間の調整が行われ、し尿等の海洋投棄が廃止できるよう市町村に対する指導の強化をお願いする。
 なお、下水道の整備等により影響を受けるし尿処理業者等については、その業務の安定を確保する必要があることから、「下水道の整備等に伴う一般廃棄物処理事業等の合理化に関する特別措置法」(昭和50年法律第31号)に基づく合理化事業計画の策定等により、市町村において適切な対策が講じられるよう市町村に対する指導方お願いする。

(7)廃棄物関係統計

 廃棄物関係の統計については、「日本の廃棄物処理」等の作成について、御協力いただいているところであるが、今後の廃棄物処理行政の在り方を検討していく上で、統計の整備は極めて重要であり、廃棄物処理部会等においても早期の統計作成を要請されているところである。
 昨年、一般廃棄物について各都道府県において作成の統計資料集の送付方依頼しているところであり、既に送付いただいたところもあるが、未送付の都道府県におかれては、統計の集計が出来次第、できるだけ速やかな送付をお願いする。
 また、産業廃棄物についても、統計整備の早期化を図っているところであり、統計の照会等にあっては早期の回答をお願いする。


6.産業廃棄物対策の適正処理の確保について

(1)適正処理確保のための指導・監視について

1)排出業者に対する指導・監督の強化

 排出事業者処理責任の原則に立って産業廃棄物の適正処理を確保するため、排出事業者に対して更に廃棄物処理法による規制の周知・徹底を図り、排出事業者自ら行う産業廃棄物の適正な分別、保管、運搬、処分等の確保を図るとともに、適正な処理委託の徹底化を図られたい。
 特に処理委託については、委託基準の徹底を図るとともに、委託に当たっては処理業者の許可証や処理能力の確認が確実に行われるように指導されたい。
 また、管理票制度については産業廃棄物の移動に関する排出事業者による管理体制を強化し、不適正処理の防止、処理過程における事故の防止を図る観点から、昨年12月より全ての産業廃棄物について管理票交付が義務付けられているところであり適切な指導をお願いする。
 なお、同制度のより迅速かつ効果的な運用に資するため、電子化された管理票制度も同時に開始されているところである。

2)産業廃棄物処理業者に対する指導・監督の強化

 処理能力を超えた産業廃棄物を受託したことにより、その産業廃棄物の処理を他の業者に再委託し、不法投棄につながった事例などがあることに鑑み、産業廃棄物処理業者に対する報告徴収や立入検査などにより、処理能力を受託や不適切な保管が行われることがないよう引き続き指導・監督を徹底されたい。

3)産業廃棄物処理施設に対する指導・監督の強化

 産業廃棄物処理施設の設置及び管理を適正に行うことは、産業廃棄物の適正な処理を確保する上で極めて重要である。特に最終処分場における廃棄物の埋立処分においては、その類型に応じた適正な埋立処分が行われるよう、混入防止のための搬入時の選別等の措置の徹底を図り、最終処分場についての環境保全対策を推進するため、指導を強化されたい。

4)有価物を装う脱法行為や処理基準違反防止の徹底

 排出事業者から実質的に処理料金を受け取って廃棄物を引き渡されたにも拘らず、形式的に有価物を装い、不適正な処理を行うことがないよう法の運用に厳正を期されたい。
 さらに、産業廃棄物を有価物と称し大量に保管する事例や野焼き等の処理基準違反が行われながら、報告徴取や改善命令等が時機を失し、事態を悪化させる事例があるので、法の趣旨に則った厳格・迅速な対応をお願いする。

5)産業廃棄物再生利用指定制度の活用

 再生利用指定制度は、再生利用の目的となる産業廃棄物を処理する事業者を厚生大臣又は都道府県知事等が指定し、その事業者について産業廃棄物処理業の許可を不要とするものであり、この指定制度を適切に活用した再生利用の促進は、産業廃棄物の減量化及び資源の有効利用に貢献するものであるから、指定制度の周知及び適切な運用の拡大につき、各都道府県に相談が寄せられた際には、随時、厚生省に相談をお願いする。(資料8参照)

(2)不法投棄防止対策の強化について

 産業廃棄物の排出量の増大や質の多様化及び最終処分場を始めとした産業廃棄物処理施設の不足等により、依然として不法投棄や悪質な不適正処理が見られ社会的な問題となっていることを踏まえ、改正法において不法投棄等に対する罰則の強化、マニフェスト制度の拡充、原状回復の制度等が措置されたところである。
 これらの施策をより効果的なものとするためには、監視の強化など不法投棄の未然防止対策の強化が必要不可欠であり、法改正の趣旨に沿った厳格な取締りをお願いしたい。不法投棄等不適正処理への対応としては、特に発覚後の警察、関係部局等との連携について、投棄者究明等のため、初動が迅速かつ的確になされることが必要であり、行政の不手際が事態を拡大する場合もあることもあることから適切な対応をお願いする。
 また、産業廃棄物の過剰保管が結果として不法投棄等の不適正処理につながる事例が多く、例えば倒産間際に非常に安い料金で処理できる量を超えて大量に受託し、倒産して、未処理の廃棄物が残置されるような事例も見受けられることから、立入検査や報告聴取等により、こうした事態を未然に防止できるよう適切な対応をお願いする。改正後の保管基準については、本年4月1日から施行されるので、事業者等に対する指導、不適正保管への迅速な対応をお願いする。
 なお、平成7年度から、廃棄物適正処理監視等推進費として、都道府県が先駆的に行う産業廃棄物の適正処理監視等不法投棄防止対策事業に対し、モデル事業として補助を行ってきたところであるが、改正法の施行に併せて、昨年度から関連予算を大幅に増額し、全ての都道府県(政令市を含む。)において実施することとしたので、本年度においても、都道府県におかれては本事業の活用が図られるよう積極的な対応をお願いする。

(3)施設設置手続について

 昨年6月から生活環境影響調査の実施、申請書等の告示・縦覧、関係住民や市町村長からの意見聴取等を盛り込んだ新しい施設の設置手続が施行されている。廃棄物処理施設については、いわゆる迷惑施設であることに加え、近年の住民の環境意識の高まりや不信感の増大の下で、施設の設置に伴う地域紛争が多発しているところであるが、新しい設置手続により、地元の意向を適切に踏まえつつ、地域の生活環境に十分配慮された形で施設の適正な設置を行うことが可能となったものと考えられるところであり、新しい設置手続の円滑かつ適切な施行をお願いしたい。
 なお、施設の設置手続については、多くの都道府県及び保健所設置市が要綱等を定めているところと承知しており、昨年も改正法の施行に併せ、法の趣旨に則った要綱の適切な運用をお願いしたところであるが、依然として一部の都道府県等において、要綱を理由に法に基づく施設の設置許可申請を受理しないといった不適正な事務処理が見られ、申請者から厚生省に対し不服申立てがなされた案件もある。行政指導のルールを明確にするという意味において要綱を定めること自体法の趣旨に反するものではないが、要綱を理由に法に基づく申請を受理しないとの運用は行政手続法に明らかに違反するものであり、改めて、法の定める規制を超えるような要綱については必要な改正を行うなど、法の趣旨に則った要綱の適正な運用を厳にお願いしたい。

(4)産業廃棄物処理に係る基準の明確化

 産業廃棄物の適正処理を推進し、産業廃棄物の処理に関する信頼性、安全性の向上のため、昨年3月に廃棄物処理法施行規則を、また同年6月に一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める命令を改正し、施行令の改正を踏まえた保管基準、PCB処理基準等の改正並びに最終処分場に係る構造及び維持管理基準を強化、明確化したところである。
 PCBの処理については、近年の無害化処理技術の開発とその実用化、欧米における処理の動向等に鑑み、新技術を踏まえた処分基準等の見直し等を行った。また、これら規定の整備を踏まえ、現在、都道府県等に対しPCBを含む廃棄物等の保管状況等に関する調査をお願いしているところである。
 これらの新たな基準のうち、保管基準は本年4月1日から施行されることから、その遵守について排出事業者及び処理業者への周知徹底をお願いする。また、最終処分場に係る基準のうち、既存の最終処分場に対する適用が1年間猶予されているものについては、本年6月17日より適用されることから、その遵守について該当する施設の設置者への周知徹底をお願いする。さらに、それぞれの基準の適用の期日以降、設置者等への報告徴収又は立入検査等により、基準への適合状況を確認いただくとともに、必要に応じ厳格な指導をお願いする。

(5)産業廃棄物管理票の適用等

 廃棄物の管理票制度については、従来から廃棄物処理法に基づき特別管理産業廃棄物について適用されていたところであり、また、業界によっては自主的な取組が行われてきたところである。
 平成9年6月の法改正により、昨年12月1日から全ての産業廃棄物に管理票制度が適用されることとなり、対応する廃棄物処理法施行規則が昨年10月23日付けで公布されたところである。
 管理票は、様々な廃棄物情報を記入した排出事業者の交付する伝票であり、廃棄物処理法に基づきその写しを回付、送付等することが行われることにより、産業廃棄物の流れを明らかにし、不法投棄や不適正処理を防止するものである。従来の特別管理産業廃棄物を対象とした管理票と比較して基本的に同様の仕組みのものであり、その普及について排出事業者等に十分な理解が得られるよう格段の指導をお願いする。
 電子情報を活用した産業廃棄物管理票制度については、昨年7月に当該業務を取り扱う情報処理センターとして(財)日本産業廃棄物処理振興センターを厚生大臣が指定したところであり、昨年12月1日から業務を開始しているところである。これは、情報処理センターで管理する大型コンピューターにより、排出事業者、収集運搬業者、処理業者からのマニフェスト情報を公衆回線経由で受発信するとともに、記憶、処理していこうとするものである。
 産業廃棄物の排出業者が電子情報を活用した場合には、紙の場合に義務付けられている都道府県等への年1回の報告や管理票等を保存する義務が排出事業者にかからなくなるなど、特に多量排出事業者等にとって意義が大きいと考えられるので、その理解と普及に努められるようお願いする。

(6)原状回復措置について

 産業廃棄物の不法投棄についてその未然防止が第一であるが、その撤去等を行う原状回復措置は、基本的に投棄者等の原因者がこれを行うべきであることはいうまでもないところである。また、改正前の廃棄物処理法においても原状回復措置を命ずることができるとなっていたところである。
 しかしながら、投棄者等が不明又は資力が無い場合について、従来これをどのように措置したらよいかについて定めの無かったところであり、平成9年6月の法改正により、原状回復基金制度を設けたところである。
 同制度は、投棄者が不明等の場合に原状回復措置を行う都道府県等に対して基金から資金を出えんすること(原状回復措置に要した費用のうち都道府県等1/4、3/4を基金から補助)としている。また、基金については、厚生大臣が指定した産業廃棄物適正処理推進センターにおいて造成・運用されるものである。基金の造成は、国の補助金及び産業界からの拠出金によって賄われることとなっている。
 原状回復基金制度については、法施行後の事例について適用されることとなっており、具体的な運用に当たっては、産業廃棄物適正処理推進センターの設ける委員会において取扱を審議することとしているところであるので、制度の適用を希望する場合には、産業廃棄物適正処理推進センターとして指定された(財)産業廃棄物処理事業振興財団及び厚生省に問い合わせをされたい。

(7)廃棄物処理センターの整備促進

 産業廃棄物については、排出事業者処理責任の下に適正な処理が行われるのが原則であるが、その補完的措置として公共関与による産業廃棄物の処理が必要な状況であり、このため、廃棄物処理センターによる施設整備を促進することが重要となっている。
 ついては、各都道府県における産業廃棄物の処理状況及び公共関与が必要な産業廃棄物の把握に努めることや、既存の公社等について廃棄物処理センターへの改組の可能性について検討し、廃棄物処理センターの設立及び同センターによる施設整備を積極的に推進されたい。
 なお、廃棄物処理センターに対しては、一般廃棄物や公共活動によって生じる産業廃棄物を処理する施設に対する国庫補助の他、最終処分場の安全性及び信頼性確保のための施設に対する国庫補助、事業の用に供する土地に係る特別土地保有税の非課税等の措置が講じられているところであるので、これらの活用を図りつつ、廃棄物処理センターによる処理施設の整備に努められたい。また、厚生省では廃棄物処理センター整備に係る基本構想調査を本年度も実施することとしているので、廃棄物処理センターの設立について検討している場合には、早めに連絡願いたい。

(8)産業廃棄物処理特定施設整備法の活用

 産業廃棄物処理特定施設整備法に基づき、厚生大臣の認定を受けた特定施設は、現在5件である。そのうち、平成5年3月8日に認定した(財)クリーンいわて事業団(廃棄物処理センター)の施設が平成7年9月より供用を開始しているのをはじめ、3件が稼働中、2件が整備中となっている。
 特定施設のうち、一定の要件を満たすものについては、日本開発銀行又は北海道東北開発公庫より、NTT−C型無利子・低利子融資及び財投融資(特利4))を受けることができる。また、特定周辺整備地区において整備される研修施設等については、特別土地保有税及び事業所税の非課税措置が講じられるなど、税制上の優遇措置も講じられている。
 各都道府県にあっては、この法律による施設整備支援制度の周知徹底に努めていただくとともに、特定施設の整備の促進をお願いする。
 なお、特定周辺整備地区における公共施設等の整備方針の策定等については、特定周辺整備地区施設整備方針作成調査事業を平成6年度より実施しているので、積極的な活用をお願いする。


7.大都市圏における廃棄物広域処理体制の整備について

 大都市圏域における廃棄物の最終処分場の確保は、極めて困難となっているため、都府県の区域を越えた広域的な最終処分場を港湾区域内の海面に整備する広域最終処分場計画(フェニックス計画)を運輸省と共同で推進している。

(1)近畿圏においては、2府4県にまたがる「大阪湾フェニックス計画」が策定され、平成元年度から広域処理対象区域内で排出される廃棄物の最終処分を行っている。平成9年度には、広域処理対象区域内において発生する一般廃棄物の最終処分量の約3割、産業廃棄物のうち上下水汚泥の最終処分量の約5割、その他の産業廃棄物の約2割の受け入れを行い、近畿圏における廃棄物の安定的な処分のため重要な機能を果たしてきている。また、平成7年度の阪神・淡路大震災に伴う災害廃棄物を約280万トン受け入れており、震災復興にも大きく貢献している。
 今後の廃棄物の受入れ量予測の結果、既存の埋立処分場の管理型区画は平成12年度に埋立てが終了すると見込まれるため、平成9年3月に基本計画の変更の大臣認可を行い、神戸沖に新たな埋立処分場を整備しているところである。

(2)首都圏については、平成10年11月の第39回七都県市首脳会議において、広域処理について次のような取りまとめが行われたところである。

七都県市では、廃棄物処理に係る最終処分場の確保が今後ますます困難になることが予想されているとともに、廃棄物の一部が七都県市域を越えて他地域に移動し処理が行われている現状がある。
 また一方で、地球環境や資源循環への対応が、ますます重要になってきていることから、最終処分場に依存せず、廃棄物の発生から処分までの全ての過程において、環境への負荷を極力低減する資源循環型社会の構築を目指し、共同・協調し、廃棄物の発生・排出抑制や再資源化、適正処理に全力で取り組んでいくことを合意し、「七都県市資源循環型社会づくり宣言」を採択した。また、都県域を越える一般廃棄物の広域処分場については、今後も最終処分場の残余容量や将来見通し等について、定期的に調査・検討を行うこととし、その結果広域処分場の必要性を確認した時点において、その設置について検討・協議を行うこととした。さらに、産業廃棄物については、事業者に対する指導の強化や不法投棄等の不適正処理の未然防止に関する広域的な取組を推進することを確認した。

 厚生省としては、首都圏においても、廃棄物の一部が圏域を越えて他圏域に移動している現状、阪神・淡路大震災における災害廃棄物処理の経験を踏まえると首都圏で大規模地震が発生した場合には大量のがれき等の災害廃棄物が発生しその処理は困難を極めると予想されること等から、広域的な処理体制の確立が必要と考えており、都や市町村における一般廃棄物についてのリサイクル等減量化への取り組みの徹底や、都県における産業廃棄物に対するリサイクルや処理についての公的な取り組みの措置の徹底のほか、引き続き関係自治体間の広域処理についての取り組みの検討を期待しているところである。
 今後とも、東京都等首都圏の関係自治体に積極的な取組みをお願いする。


8 リサイクルの推進について

(1)容器包装リサイクルの推進

1)容器包装リサイクル法の施行状況及び11年度の分別収集、再商品化の予定

 ごみの減量化及び資源の有効利用を目的として、一般廃棄物の中で大きな割合を占める容器包装廃棄物についてリサイクルを進めるべく「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に係る法律」により、ガラスびん及びペットボトルについて分別収集及び再商品化が行われ、スチール缶、アルミ缶及び飲料用紙パックについて分別収集及び有償又は無償での引き取りが行われている。
 現在までの施行状況をみると、分別収集量は月別でみた計画量に比べて少ないものの、毎月着実に増加しており、再商品化は概ね順調に行われている。
 平成10年12月28日付で平成11年度の再商品化の実施に必要な主務省令・告示の改正を行ったところであり、その内容は以下のとおりである。

a 再商品化計画の変更(告示)
・ペットボトルの平成11年度以降の再商品化可能量を3万400トン/年から4万6,600トン/年に変更
b 特定事業者責任比率及び再商品化義務総量の改定(告示)
c 特定事業者の再商品化義務量の計算に関する数値の改定(省令、告示)
・再商品化義務量算定のための容器包装廃棄物比率(省令)
・その他再商品化義務量算定のために必要な量、比率等(告示)

 また、11年度の分別収集に関する予定は以下のとおりであり、円滑な分別収集、再商品化の実施に向け、引き続き市町村への御指導をお願いしたい。

平成11年1月  平成11年度に市町村が使用する保管施設の指定
指定法人において、市町村の保管施設ごとに平成11年度の再商品化事業者を選定
2〜3月 特定事業者は再商品化義務量を算定し、指定法人に平成11年度分の再商品化を委託
4月1日 平成11年度の分別収集・再商品化開始

2)平成11年度の市町村の分別収集の見込みについて

 平成11年度の分別収集見込み量の全国合算量については、平成8年12月27日に告示されているが、この量はガラスびん、ペットボトルとも平成8年5月17日に告示された再商品化見込み量(ペットボトルについては平成10年12月28日に変更)を上回っており、計画通りに収集された場合には次年度以降への繰越保管が想定される。
 現在の分別収集、再商品化の状況から見て、平成10年度からの繰越量はゼロとしたところであるが、各都道府県においては、平成10年度同様に、市町村における排出抑制についてさらに指導を図られたい。また、再商品化能力を拡大していくために、調達等において再商品化製品の利用に努めること等再商品化物の需要拡大に努められるとともに、貴管下の市町村に対してもこの旨要請をお願いしたい。

<再商品化製品の具体例>

a 公共事業におけるガラスカレットの路盤材等への利用
b 公共事業におけるガラスカレットタイル製品の利用
c ペットボトル再生繊維製作業服等

 当省においても、分別収集及び再商品化の状況を全国的に把握するため、昨年度から厚生省と都道府県間をオンラインで結んだ「容器包装リサイクル情報システム」により、厚生省に転送いただいた都道府県の入力データのとりまとめを行っているところである。今後とも、貴都道府県管下の市町村の状況把握及び整理について、同システムの適正な運営に特段のご協力をお願いしたい。

3)平成12年度に向けた国の準備状況について

 平成12年度からは、容器包装リサイクル法の完全施行により、ペットボトル以外のプラスチック製容器包装(その他プラ)と飲料用紙パック以外の紙製容器包装(その他紙)の分別収集と再商品化が開始されるが、既に施行されたガラスびん、ペットボトルと比べると以下のような課題がある。

a 多種多様な商品の容器包装に用いられている。

b 中小事業者が対象となることとも相まって、再商品化義務対象事業者数が飛躍的に増大する。

c 市町村における分別収集の取組がこれまでにほとんどない。

 現在関係省庁において、上記課題に対応しつつ平成12年4月に容器包装リサイクル法を完全施行するための検討作業を進めており、平成10年10月には、その他プラとその他紙の分別基準(案)についてお知らせしたところである。今後、本年春頃を目途に基本方針や再商品化計画の改定等を予定している。こうした検討内容及び検討経過については逐次、都道府県及び市町村に情報提供する予定である。
種別 再商品化の考え方
段ボール 有償又は無償で引き取られる物として位置づけることができるかどうか検討中
その他の紙製容器包装 製紙原料及び製紙原料以外のマテリアルリサイクルは可能な限り推進すべきであるが、課題の克服に相当な努力と時間が必要。サーマルリサイクル(固形燃料等)について、何らかの留保条件を付して慎重に検討。
ペットボトル以外のプラスチック製容器包装 材料リサイクルを推進し、さらに拡大する努力。高炉吹き込み、油化、ガス化等のケミカルリサイクルが太宗となると想定。これらのマテリアルリサイクルを原則とするが、分別収集量と再商品化可能量の間に相当程度の乖離がある場合等に、サーマルリサイクルについて、何らかの留保条件を付して慎重に検討。

4)市町村における第2期分別収集計画の策定について

 平成12年度以降、容器包装廃棄物の分別収集を実施する市町村にあっては、平成11年度早期に分別収集計画の策定、保管施設の設置等の体制整備を行う必要がある。容器包装廃棄物の分別収集を実施するか否か、また、容器包装廃棄物のうちどの項目を分別収集するかについては、市町村が状況に応じて判断すべき事項である(計画策定は義務ではない)が、容器包装廃棄物を分別基準に適合する形で保管すれば、全国各地場所を問わず、特定事業者責任で再商品化されるべき量については指定法人が無償で引き取ることとしている。このため、各都道府県においては、市町村の諸条件を勘案しつつ、分別収集の実施を積極的に検討するよう御指導方よろしくお願いしたい。また、平成12年度からの新規項目に係る分別収集開始を希望する貴管下市町村が計画策定や体制整備等の対応に迅速に対応できるよう、御対応をよろしくお願いしたい。
 なお、市町村の分別収集計画の策定に当たっては、当該市町村の廃棄物処理計画との整合性を考慮し、適宜広域化等の対応を取られるよう、御指導をお願いしたい。特に、分別収集が実施される容器包装廃棄物以外の一般廃棄物の処理についても、広域処理等を含め、計画的な対応が必要であるので御留意願いたい。
 当省においても、平成10年度に引き続き平成11年度予算(案)において、平成12年度からその他プラ、その他紙の分別収集を行う市町村において、試行的に分別収集を実施するモデル事業を行い、容器包装リサイクル法の完全施行までに解決すべき課題等について調査・検討するとともに、分別収集計画を策定しようとする市町村の取組を支援することとしている。

(2)家電リサイクルの推進

1)特定家庭用機器再商品化法の施行

 近年の最終処分場のひっ迫等の廃棄物処理をめぐる諸問題、廃棄物処理やリサイクルに関する国民の関心の高まり等を踏まえ、特定家庭用機器再商品化法が平成10年6月5日に公布され、同年12月1日より施行された。
 ただし、小売業者の引取り・引渡し義務、製造業者等の引取り・再商品化等の実施義務が発生する本格施行については、平成13年度を予定している。本格施行までに、政省令等必要な事項について、関係省庁との検討等を経て、定めることとしている。
 なお、この旨了知の上、貴管下市町村への周知方お願いする。

2)対象機器について

 平成13年度からの本格施行当初において対象となる特定家庭用機器については、平成10年11月27日に特定家庭用機器再商品化法施行令(政令第378号)により、以下の4品目を定めたところである。
 a ユニット形エアコンディショナー(ウィンド形エアコンディショナー又は室内ユニットが壁掛け形若しくは床置き形であるセパレート形エアコンディショナーに限る。)
 b テレビジョン受信機(ブラウン管式のものに限る。)
 c 電気冷蔵庫
 d 電気洗濯機

(参考)特定家庭用機器再商品化法における対象機器の要件

一般消費者が通常生活の用に供する電気機械器具その他の機械器具であって、

(ア) 市町村等による再商品化等が技術的に困難であるもの。
(イ) 再商品化等が資源の有効利用に特に資するもののうち、当該再商品化等に係る経済的な制約が著しくないもの。
(ウ) 設計又はその部品若しくは原材料の選択が、その再商品化等の実施に重要な影響を及ぼすもの。
(エ) 相当数が配送品であることから、小売業者による円滑な収集を確保できるもの。

3)特定家庭用機器処理基準等専門委員会の設置と検討について

 特定家庭用機器再商品化法の本格施行に当たり検討が必要な次の事項等について、生活環境審議会廃棄物処理部会の下に、特定家庭用機器処理基準等専門委員会を設置し、平成10年9月より、専門的技術的知見に基づく検討を開始している。
 この委員会においては、まず廃家電品4品目に関する以下の基準等について検討を行い、来年度早期にとりまとめを行う予定である。

ア.再商品化等の量に関する基準(いわゆる「リサイクル率」)

 製造業者等が義務として引き取った特定家庭用機器廃棄物の量(重量)のうち、どの程度(割合)が再商品化等されなければならないかを定めるもの。

イ.再商品化等の実施と一体的に行うことが特に必要かつ適切であるもの

 製造業者等による再商品化等の実施に際して、生活環境の保全に資する事項として実施することを義務付ける事項。
 有害物質対策の観点から、現在のところ、フロンの回収・破壊を想定している。

ウ.廃棄物処理法の廃棄物処理基準

 製造業者等のみならず、廃棄物の処理を行う全ての者(市町村、廃棄物処理業者等)が特定家庭用機器廃棄物の処理に当たって遵守すべき事項。
 本格施行後においては、製造業者等が義務として行う再商品化等と概ね同水準の処理を確保するよう廃棄物処理基準を改正することとしている。

4)本格施行後の市町村の役割について

 特定家庭用機器再商品化法では、市町村が収集した特定家庭用機器廃棄物を製造業者等に引き渡すことができる旨規定している(法第54条)。
 なお、市町村が自ら処理を行うことも可能であるが、その場合は、廃棄物処理法に基づき、製造業者等が行う再商品化等と同程度の処理(リサイクル)を行わなければならなくなる。


9.合併処理浄化槽による生活排水対策について

(1)合併処理浄化槽の設置整備の推進

1)合併処理浄化槽設置整備事業の推進

 し尿と生活雑排水を併せて処理する合併処理浄化槽は、短期間にかつ容易に設置できる等の特長を有し、生活排水対策の重要な柱の一つとなっている。
 厚生省では、昭和62年度から合併処理浄化槽に対する国庫補助制度を設け、その整備促進を図ってきており、合併処理浄化槽設置整備事業に取り組む市町村は、平成10年度には全国の市町村の約70%に当たる2200市町村を超え、平成11年度には更に多くの市町村が同事業に取り組むものと見込まれている。
 このため、平成11年度予算案においては、国庫補助金として他省庁計上分を含め、前年度より4.8%増の約165億円(うち特定地域生活排水処理事業15.8億円)を計上したところである。
 各都道府県におかれては、各市町村が生活排水処理計画の中で合併処理浄化槽の整備区域を積極的に設定し、国庫補助制度の活用により合併処理浄化槽の計画的整備が図られるよう、市町村に対する指導方よろしくお願いする。
 おって、平成11年度においても、引き続き平成10年4月3日付け衛浄第14号浄化槽対策室長通知の国庫補助の優先配分の基本方針に基づき国庫補助を行うこととしているので、管下市町村に対して基本方針の趣旨の周知徹底をお願いする。

2)特定地域生活排水処理事業の推進等

 平成6年度に創設された特定地域生活排水処理事業は、市町村自らが設置主体となって合併処理浄化槽の面的整備を図るものであり、個人設置型の事業と異なり、設置費用全体に対して国庫補助を行うことから住民負担の軽減が図られるとともに、市町村負担分についても起債措置がなされ毎年度の負担の平準化が図られる、などの特長を有している。厚生省としては、本事業が合併処理浄化槽の面的整備の促進に極めて有効であると考えており、国庫補助について優先的に採択することとしている。
 しかしながら、現在、1000を超える市町村で事業の地域要件を満たしているものの、平成10年度における本事業の実施市町村は32市町村にとどまっている。
 既に全ての都道府県で汚水処理施設の整備に関する総合的な「都道府県構想」が定められ、合併処理浄化槽により生活排水の処理を行うこととなる地域が明らかとなってきているところであり、このような地域においては、面的整備のため本事業が極めて有効であると考えられる。
 ついては、後述する対象地域の拡大とあわせ、該当市町村に対し、本事業の積極的な活用につき特段の指導方よろしくお願いする。
 また、自治省において、単年度に20戸未満の住宅に合併処理浄化槽を設置する事業(個別排水処理施設整備事業及び小規模集合排水処理施設整備事業)を実施しているので、国庫補助による合併処理浄化槽の整備事業との調整を十分に図り、地域の実情に応じ効果的・積極的な活用を図るよう、指導方よろしくお願いする。
 なお、国庫補助事業の実施に当たって、都道府県における人槽ごとの竣工基数を確認するなどにより、補助金の適正支出等の確認を強化するように留意いただくとともに、貴管下市町村に対する指導の強化について特段の配慮をお願いする。

3)平成11年度予算案における合併処理浄化槽の国庫補助制度の拡充について

 合併処理浄化槽に係る補助制度につき、平成11年度予算案において次のとおり拡充がなされているので、趣旨につき御理解の上、その活用について検討をお願いする。

ア 高度処理型合併処理浄化槽の国庫補助基準額の設定
(趣旨)

 湖沼、内湾などの閉鎖性水域の富栄養化を防止する観点から、窒素やりんの除去能力を有する高度処理型合併処理浄化槽の普及を図っている市町村が増加してきているが、通常の合併処理浄化槽より複雑な構造を持つため設置費用が高額となっており、その一層の普及を図るために、窒素の除去能力を有する高度処理型の小型合併処理浄化槽に対し、現行の国庫補助基準額より高い国庫補助基準額を新たに設定することとしたものである。

(制度の対象地域)

 以下の全てを満たす市町村とする。

・高度処理型合併処理浄化槽に対し、通常の合併処理浄化槽に対する補助額よりも高額の補助を行っているもの。

・水質汚濁防止法に基づく「窒素含有量又はりん含有量についての排水基準に係る湖沼」又は「窒素含有量又はりん含有量についての排水基準に係る海域」に係る排水規制の対象地域であること。

・水質汚濁防止法に定める生活排水対策重点地域であること。

・汚水衛生処理率が、一定率未満であること。


イ 特定地域生活排水処理事業の対象地域の拡大
(制度改正の趣旨)

 水質汚濁防止の観点から、特定地域生活排水処理事業の実施の必要性の高い湖沼水質保全特別措置法の指定地域及び水質汚濁防止法の生活排水対策重点地域につき、それぞれ単独で対象地域とするとともに、農業集落排水事業と連携して効率的な生活排水対策を行う観点から、農業集落排水事業の周辺地域を新たに対象地域とする。

(新たな対象地域)
1)指定湖沼地域、生活排水対策重点地域

 次のとおり対象地域を拡大
 ○ 「湖沼法の指定地域
かつ
生活排水対策重点地域」
 →  湖沼法の指定地域
又は
生活排水対策重点地域
 (汚水衛生処理率30%未満の要件は、従前のとおり。)

2)農業集落排水事業との連携

 農業振興地域内であって農業集落排水事業の実施区域の周辺地域
 (特定地域生活排水処理事業と農業集落排水事業とで一体的な事業計画を策定。)

4)汚水処理施設連携整備事業の推進

 生活排水の処理については、合併処理浄化槽、下水道、農業集落排水施設等により実施されているが、これらの事業については、効率的かつ計画的な整備が求められているところである。
 このため、厚生省、農林水産省、建設省の3省では、従来から、課長級で構成する汚水処理施設の整備等に係る関係省連絡会議(自治省がオブザーバー参加)の設置や、汚水処理施設の整備に関する構想策定の基本方針について連名で通知する等により、各事業の連携を図ってきたが、平成9年度からは、汚水処理施設の効率的かつ計画的な整備を一層進めるため、「汚水処理施設連携整備事業」を実施している。
 当該事業は、関係省が連携してそれぞれの特色を活かした各種事業を実施することにより、公共用水域における水質保全効果がより一層促進されると見込まれる市町村において、汚水処理施設の効率的かつ計画的な整備を図るものであり、事業を実施するに当たっては、市町村が連携整備事業計画を策定し、これを都道府県において選定した上で、関係省連絡会議において事業を認定し、認定された事業については、関係省が、重点的に支援(新規採択、予算配分の際に配慮)するものである。
 平成9年度においては12市町村、これに追加して、平成10年度においては5市町村の事業を認定したところであり、引き続き、各都道府県におかれては、本制度の市町村への一層の周知を図り、その積極的な活用がなされるよう指導方お願いする。

5)汚水処理施設整備に係る統一指標

 従来、合併処理浄化槽、下水道、農業集落排水施設等の汚水処理施設の整備状況については、厚生省、建設省、自治省で、時点、対象等が異なる調査をそれぞれ行っており、汚水処理施設の関係者間で共通に使用、比較できる指標がなかった。
 このため、平成8年度から、厚生省、建設省、農林水産省の間で調整を図り、各種の汚水処理施設の利用人口による統一的な整備指標をとりまとめ、汚水処理施設整備状況として公表することとした。
 平成10年8月には、平成9年度の整備状況につき公表したところであるが、これによると、平成9年度末の整備率は64%となり、平成8年度末の整備率62%と比較して、2ポイント上昇したところである。
 またこのうち、合併処理浄化槽の平成9年度の整備率は6.0%であり、平成8年度の整備率(5.7%)と比較して、0.3ポイント上昇した。
 厚生省をはじめ関係省においては、今後、この統一指標の普及を図っていくこととしており、各都道府県におかれても統一指標の趣旨を御理解いただくとともにその活用方お願いする。(資料14〜16参照)

(2)単独処理浄化槽の新設廃止の推進

 平成7年8月、「単独処理浄化槽に関する検討会」において、「単独処理浄化槽の廃止に向けて」と題する報告書が取りまとめられ、「おおむね3年後には単独処理浄化槽の新設を廃止し、さらに21世紀初頭には既設の単独処理浄化槽もすべて合併処理浄化槽等に転換すること」が目標として提言された。
 平成10年度は節目となる重要な年度であり、厚生省としても全力を挙げて取り組んでいるところであるが、この目標達成のためには、すべての関係者が連携をとり、一体となって総合的な対策を推進することが必要である。
 現在、関係者が様々な努力を行っているところであり、例えば、浄化槽工業会においては、厚生省の要請を受け、会員の浄化槽製造業者が自主的に平成11年3月末限りで単独処理浄化槽の製造廃止に取り組む「単独処理浄化槽廃止自主活動推進プログラム」を実施中である。厚生省としては、同プログラムが単独処理浄化槽の新設廃止に重要な役割を果たすものと期待するとともに、これに対し必要な支援を行っている。
 合併処理浄化槽の全国の新設率は、平成9年度で41.0%、平成10年度上半期においても47.6%であり、年々向上してきているが依然として50%を下回っている。さらに、浄化槽の設置状況を都道府県別にみると、平成10年度上半期の実績で、長野県において合併処理浄化槽の新設率が99%に達するなど、23都道府県で50%以上となっている一方で、5県では未だに20%未満にとどまっており、また、未だに多数の単独処理浄化槽が新たに設置されている県が存在するなど地域格差が極めて大きい状況にある。(資料17〜20参照)
 生活排水対策の現状を主な指標について都道府県別にみると資料21のとおりである。合併処理浄化槽の新設率が全国平均以下の府県では、汚水処理施設整備率(合併処理浄化槽、下水道、農業集落排水施設等の整備状況を人口の割合で表したもの)が全国平均以下で生活排水処理施設の整備が遅れているにもかかわらず、市町村による合併処理浄化槽の整備事業の取組が低調である県が相当数に上っており、自治体による生活排水対策に大きな格差がみられる。
 このようなことから、単独処理浄化槽の新設廃止を全国的に実現するため、特に新設率が低位にとどまっている都道府県をはじめ各都道府県におかれては、以下のような観点を踏まえ、貴管下保健所・市町村に対する指導の徹底をお願いする。

ア 新設廃止の具体的目標の設定、条例・要綱等による新設廃止の検討等についての取組状況を再点検し、浄化槽関係団体が行っている各種の取組とも連携を取りつつ、取組が不十分な点について各都道府県自ら積極的に取組むとともに、管下市町村に対し新設廃止への取組を積極的に指導すること。
イ 合併処理浄化槽設置整備事業未実施市町村に対して、事業実施につき積極的に指導すること。
ウ 住民をはじめとする関係各方面に対し、「単独処理浄化槽は公共用水域の水質保全、生活環境の保全の観点から問題となるものであり、家庭から排出される有機的汚濁負荷の面からみても、くみ取りによる状態から単独処理浄化槽を設置すると逆に負荷が増加すること」、「いったん単独処理浄化槽を設置すると、公共用水域や生活環境に与える悪影響が長期間固定化してしまうこと」など、早急な新設廃止について具体的内容をもって積極的啓発活動を行うこと。
エ 浄化槽工業会における「単独処理浄化槽廃止自主活動プログラム」に参加する各社による単独処理浄化槽の製造廃止計画が確実なものとするため、厚生省はもとより、各都道府県、市町村における新設廃止の取組と相まったものであることが重要であることから、浄化槽工業会との活動の連携を密にすること。
(3)浄化槽の維持管理の強化等

1)法定検査の徹底について

 浄化槽法第7条及び第11条の水質に関する検査については、浄化槽がその所期の目的を発揮していることを公的な第三者機関が検査するものであり、その受検が浄化槽管理者に義務付けられているが、平成9年度の受検率は浄化槽設置後に行う7条検査で約60.3%、毎年1回行う11条検査で12.3%と十分に行われておらず検査の実施の徹底が課題である。
 厚生省では、法定検査の効率的な推進等を図る趣旨から、平成7年6月に検査項目、検査方法等の一部を改正して通知したところである。この趣旨に沿って、11条検査にBODを導入した場合には他の検査項目の一部を軽減できることとし、その実施に当たっては技術的な妥当性を十分に検討した上で、厚生省と個別に協議するよう指導している。
 これを受け、福岡県及び宮城県においては、既に厚生省との協議を終えて新たな方法による検査が実施されているが、他の都道府県においても必要な検討を進められ、随時、厚生省と協議されるようお願いする。

2)設置届出の際の放流同意

 浄化槽法第5条第1項の浄化槽の設置等の届出の際に、放流同意書の添付を義務づけさせることについては、「いわゆる「放流同意問題」について」(昭和63年10月27日付け衛浄第64号厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課浄化槽対策室長通知)により、違法であることを明らかにしており、従来から、その旨を指導してきたところである。
 しかしながら、近年においてもなお放流同意書の添付を義務づける例が散見されたため、平成9年4月、あらためて、浄化槽対策室長名で各都道府県あて同様の趣旨を通知したところである。各都道府県におかれては、引き続き、貴都道府県及び管下保健所設置市における取扱の現状を把握し、放流同意書を添付させている事例があれば、浄化槽対策室に報告するとともに、直ちに改善措置を講ぜられたい。
 なお、建築確認申請の際に放流同意書の添付を義務づけさせることは違法である旨、別途、建設省からも特定行政庁あて通知されているところである。

3)組織的維持管理

 浄化槽の維持管理は、浄化槽法上個々の浄化槽管理者(地域住民)の義務となっており、また、設置基数が非常に多いことから、維持管理を確実にするためには、適正な維持管理体制の整備が必要である。そこで、合併処理浄化槽設置整備事業を実施する市町村の中には、浄化槽管理者等により維持管理組織の運営を支援し、あるいは、下水道等の利用者との公平性を考慮して、浄化槽の維持管理費用を助成するケースも増えている。このような市町村の取組は、浄化槽の適正な維持管理を確保していく上で極めて有効であり、全国合併処理浄化槽普及促進市町村協議会が平成7年1月に取りまとめた「浄化槽維持管理組織の設立事例集」を参考とし、浄化槽管理者と関係者が一体となった維持管理体制の整備について、積極的な指導方お願いしたい。

4)機能保証制度

 合併処理浄化槽は、適正に製造、設置されてはじめてその機能が発揮されるものであり、その製造や設置に当たっては十分な注意が必要であるが、まれに機能異常を生ずる場合がある。
 こうした場合に、合併処理浄化槽の機能の正常化のために必要な措置を確保し、設置者(住民)の負担を軽減するとともに、合併処理浄化槽に対する社会的信頼を高めるため、(社)全国浄化槽団体連合会が行っている機能保証制度は重要な役割を果たしている。
 各都道府県におかれては、本制度が市町村において積極的に活用されることにより本来の機能が十分発揮され、また、本制度が適正に運用されるよう、引き続き、御協力をお願いする。

5)下水道等に関する行政監察結果について

 下水道等についての行政監察結果を踏まえ、昨年10月に総務庁から当省に対し勧告等がなされ、合併処理浄化槽の関係では、

ア 下水道事業、農業集落排水事業等との間における調整の推進、

イ 合併処理浄化槽設置整備事業における浄化槽の人槽規模の決定、

ウ 農業集落排水事業における維持管理の徹底、

につき改善を要するとの指摘を受けたところである。(資料22参照)
 厚生省においては、関係省庁と協議しながら改善措置を検討の上、各都道府県、各市町村に対し必要な指示を行う予定であるので、対応方よろしくお願いする。


10.水道整備の推進について

(1)今後の水道施設整備の基本的考え方

 全国の水道普及率は、96.1%(平成9年度末)に達し、水道は国民生活の質の向上に直結する基盤施設として極めて重要なものとなっている。
 しかしながら、農山漁村を中心に全国で未だ水道を利用できない491万人にも及ぶ人口への水道の普及が急がれる一方、地震あるいは渇水に強い水道を構築するなど、次世代に継承するにふさわしい質の高い水道として整備することが要請されている。
 平成6年10月に策定された公共投資基本計画においても「安全で良質な水道水の安定的な供給の確保を図るため、水質、水量、水圧の水準の向上を推進する」ことが主要な施策とされているところであり、今後とも、このことを水道施設整備の基本として積極的に取り組む必要がある。平成11年度政府予算案の水道施設整備費においても、他省庁計上分を含めて、1,951億円(対前年度比103.7%)を確保し、1)地方の生活基盤となる簡易水道の整備・近代化、2)安全で安心できる生活を支える水道の整備、3)地震・渇水に強い水道施設の整備の促進を一層図ることとしている。都道府県におかれても、こうした水道整備の課題を踏まえた基本構想及び広域的水道整備計画の策定・改定などによって、計画的な水道整備の推進が行われるよう水道事業者に対する指導等に努められたい。
 なお、簡易水道等施設整備費補助においては水道未普及地域解消事業について重点的に推進することとしているが、自治省においても、平成10年度から平成12年度までの間、病原性大腸菌O−157や地下水汚染に対応するため早急に簡易水道を整備する地域を対象として、簡易水道未普及解消緊急対策事業が創設され、厚生省と連携して事業を行っているところであるので積極的に活用されたい。
 また、特に阪神・淡路大震災や平成6年の大渇水等における被害を踏まえ、地震や渇水に強い水道づくりを推進することが急務となっている。こうしたことから、貴職におかれても、緊急時応援給水拠点確保、水道広域化施設整備、貯水池の浚渫事業等の国庫補助制度を活用しつつ、震災時の広域的応急対策計画の策定、水道施設の耐震化の計画的・効率的実施等について水道事業者等を指導するなど、地震対策を推進するとともに、利用者への節水PR、漏水防止、広域化を促進するほか、事業計画の認可等に際し、水資源開発の適正な規模についての検討や、その有効活用の推進を行うなど、渇水対策の充実に努められたい。

(2)国庫補助制度の見直し等

 平成11年度政府予算案では、簡易水道等施設整備において、維持管理面、経営面等で脆弱性を有している小規模水道の統合広域化を推進するため、簡易水道統合整備事業の対象となる上水道の給水人口を1万人未満から5万人未満に緩和し、上水道との統合整備を促進することとし、また、水道水源開発等施設整備費においては、安全な水道水質確保を図るため水質検査施設整備費の国庫補助対象施設にクリプトスポリジウム等の病原性微生物等を測定するための顕微鏡及びウランを測定するための誘導結合高周波プラズマ質量分析計を追加することとしたので、当該事業の積極的な活用を図られたい。
 また、水道広域化施設整備においては、平成11年度から国庫補助制度の一部を見直すこととし、一般広域化施設整備費の新規採択については、「広域的水道整備計画」に基づく事業であることを条件とし、国庫補助の対象に配水施設、調査費及び事務費を追加することとし、広域化促進地域上水道施設整備費の新規採択については、将来的に用水供給と統合することを条件とすることとしたので、ご留意いただきたい。


11.水道水質の衛生確保の徹底について

(1)水道水質に関する基準の見直しと水道水質管理の強化

 水道の普及率が96.1%に達し、国民生活の水道への依存度が極めて高くなっている今日においては、衛生上安全で良質な水道水を常時供給するために水質管理を充実することの重要性は益々増大している。
 WHO飲料水水質ガイドラインの改定や監視項目に係る監視結果の集積等に対応して、生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会において水道水質に関する基準の見直しが行われ、監視項目の追加等を内容とする報告が平成10年12月にとりまとめられた。これを踏まえ、速やかに所要の措置を講ずることとしている。
 また、水道の水質管理では、水質検査が確実に実施されることが重要であり、水質管理専門委員会においても、今後も水質の管理のあり方に関して検討していく予定である。各都道府県におかれては、それぞれの水道水質管理計画に基づく検査体制の整備を推進するほか、水道事業者等における内部精度管理及び地方衛生研究所等との間の外部精度管理の実施を徹底されたい。

(2)水道水源の水質保全対策の推進

 水道水の安全性を確保する上で、適切な水道水質管理と浄水処理を実施することは不可欠であるが、浄水処理方法の改善等水道事業者等の努力のみによっては将来にわたって水質基準に適合した水道水を供給することが困難と判断される場合には、「水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律」(平成6年法律第8号。以下、「水道原水法」という。)の積極的な活用などによって、早期に水道原水の水質保全対策の推進が図られる必要がある。
 平成11年1月までに、水道原水法に基づく水道事業者等の要請は11箇所からなされ、それについて県計画が策定済又は策定中であるが、都道府県計画の策定に必要な経費については国庫補助制度を設けているところであるので、同法の活用が必要と認められる箇所においては、関係水道事業者等と連携のうえ策定の推進に努められたい。
 特に、トリハロメタンの低減化が必要な水道事業等において、応急的な対策の実施のみにとどまっているところが多いが、渇水期等を含めて常に安全な水道水を供給できるよう、適正な浄水処理への改善と水道原水水質保全による恒久的な対策の実施について、管下の関係水道事業者等を指導するとともに、都道府県における取り組みを強化されたい。

(3)クリプトスポリジウムに関する指針の改正と対策の強化

 水道におけるクリプトスポリジウムの対策については、平成10年6月に「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」について試験方法の拡充等の改正を行ったところであり、水道事業者等がこれに基づく対策を的確に講ずることができるよう引き続き、指導・支援に努められたい。
 厚生省としても、今後も「水道におけるクリプトスポリジウム等病原性微生物対策検討会」において、調査研究成果等新たな知見を踏まえ、暫定対策指針の見直し・充実を図るとともに都道府県及び水道事業者における緊急時の対応を支援する体制について検討を行っているところである。この関連で、平成11年1月末を目途にクリプトスポリジウム等の検査結果のクロスチェックの実施に関する要領を策定し、都道府県に通知する予定である。また、「水道水を介して感染するクリプトスポリジウム及び類似の原虫性疾患の監視と制御に関する研究班」において、引き続き迅速で容易かつ正確な検査方法の改良あるいは開発について取り組んでいるところである。
 また、厚生省から、環境庁、建設省及び農林水産省に呼びかけ、関係省庁連絡会を設置し、連携を図っているところであることから、都道府県においても、関係部局との十分な連携を図られたい。

(4)飲料水健康危機管理の対応

 飲料水を原因とする健康被害の発生予防、拡大防止等の危機管理の適正な実施については、「飲料水健康危機管理実施要領について」(平成9年4月10日付け衛水第162号厚生省生活衛生局水道環境部水道整備課長通知)により、お願いしているところであるが、最近、食品への毒物等の混入事件が頻発していることから、水道水をはじめとする飲料水の安全確保について一層の配慮が行われるよう改めて関係者に周知いただくとともに、飲料水に係る健康危険情報を入手した場合は、厚生省への連絡等について適切に対応されるよう格段の配慮をお願いする。
 また、水道水質の異常時における迅速かつ的確な対応のための、初動体制の整備が肝要であることから、都道府県においても緊急時連絡体制の整備、水質異常時の対応指針の策定とともに、管下水道事業者等において水質の異常時に適切に対応するための実施要領の策定に取り組むよう指導されたい。
 なお、厚生省において「危機管理実施要領策定マニュアル」を作成中であり、近く参考までに配布する予定である。
 飲用井戸及び受水槽の管理については、「飲用井戸及び受水槽の衛生確保について(平成8年7月18日付け各都道府県・政令市・特別区衛生行政主管部局長あて水道環境部長通知)」に示しているところであるが、最近、飲用井戸が感染源と疑われる赤痢が集団発生したため、消毒その他の衛生確保に万全を期するよう再度通知しているところである。このような状況を踏まえ、それぞれの設置者又は管理者に対し、水質検査及び検査の結果に基づく適切な措置の実施により衛生確保に万全を期すよう、指導の徹底をお願いする。


12.水道分野における規制緩和について

(1)給水装置工事事業者に係る経過措置期間の終了等について

1) 給水装置工事事業者に係る経過措置期間の終了

 規制緩和推進計画(平成8年3月29日閣議決定)に基づく、水道指定工事店制度の見直し(平成8年6月 水道法改正)については、平成10年4月から全面施行されているところ(詳細は資料編参照)であるが、平成11年3月末をもって既存の給水装置工事事業者等に対する経過措置が終了するので、以下の事項に留意しつつ、その周知徹底に努められたい。

(ア)法律の施行の時点で水道事業者の指定を受けていた工事店のうち届出により指定給水装置工事事業者の指定を受けた者とみなされたものについては、給水装置工事主任技術者をおかずとも指定の取り消しを受けないこととなっていたが、平成11年3月末日をもって経過措置期間が終了するので、これらの工事店においても給水装置工事主任技術者を選任することができない場合は指定の取り消しが必要となること。

(イ)地方公共団体の水道条例等による給水装置工事責任技術者(これに類する名称のものも含む)の資格を有する者であって、厚生大臣が指定する給水装置工事に関する講習会(以下「経過措置講習会」という。)の課程を修了した者については、給水装置工事主任技術者試験の全部を免除することとなっているが、この経過措置講習会は、平成11年2月をもって終了の予定であること。

(ウ)現在までの状況
1)給水装置工事主任技術者試験の実施

第1回試験
 受験者数
平成9年10月26日
17,549人 合格者数 9,984人
第2回試験
 受験者数
平成10年10月25日
29,921人 合格者数 13,774人

2)給水装置工事主任技術者経過措置講習会開催

 平成9年11月より 全国160会場で開催
 (平成11年2月をもって終了の予定)
  受講申込者数 約16万人

3)給水装置工事主任技術者免状交付数
 平成10年12月1日現在 119,606件
(エ)その他留意事項
 以下について、水道事業者に対し、周知徹底されたいこと。
 給水装置工事事業者の指定制度を実施する水道事業者は、指定の基準、指定の申請手続に関する事項、指定給水装置工事事業者の遵守事項及び指定の取り消しに関する事項については、水道法及び水道法施行規則の規定によることとし、これらについて水道事業者が別に独自の内容を供給規程に定めることはできないこと。
 なお、指定の申請に当たって、高額な申請料を必要とする特定の団体を経由した申請を従前通り義務付けているとの苦情がいくつか寄せられていることから、指定申請の受理に当たりかかる義務付けを行わさせないよう十分注意されたいこと。

2) 給水装置使用規制の合理化

 規制緩和推進計画(平成8年3月29日閣議決定)に基づき、給水装置の使用規制の合理化が行われ、基準適合性の証明は、製造、販売、輸入業者の自己認証を基本とし、第三者認証を義務付けないこととなった。したがって、特定の規格等を取得した製品の使用を義務付けることはできないので、特定の製品の使用義務付けといった要綱等が存在しないか再点検するなど水道事業者の自発的な取り組みが行われるよう、引き続き規制合理化の趣旨について周知徹底に努められたい。
 また、給水器具の基準適合性に係る情報について、平成9年10月より「給水装置データベース」としてインターネットを通じて提供しているところであるが、平成10年7月に新たに基準適合性に係る国民からの意見を募集する機能を追加したので、積極的に活用するよう関係者に周知されたい。

(2)水道の水質検査を行う者の厚生大臣の指定基準の緩和

 「水道法第20条第3項に規定する厚生大臣の指定に関する規程」(厚生省告示第263号。以下「規程」という。)が、平成10年11月30日に公布され、即日施行されたので、必要に応じ水道水質管理計画を見直す等水道水の水質管理業務の円滑な運営に御配慮願いたい。

ア.経緯

 水道法(昭和32年法律第177号)第20条第3項の規定に基づく水質検査を行う者の厚生大臣の指定については、平成9年3月28日に閣議決定された規制緩和推進計画において、水道事業者が水質検査を委託する機関に係る厚生大臣の指定基準の在り方について検討することとされたところである。これに基づき、生活環境審議会水道部会において検討した結果、公益法人に限定する基準を撤廃するとともに、現在の技術水準に照らし、検査担当者の人的要件、精度管理等の技術的基準の強化、一定期間ごとの財政的基盤の継続性・安定性の審査を要件として追加する方向で指定基準を見直すべきとされたことから、これを踏まえて規程を定めたものである。

イ.留意事項

・水道法第20条第3項の規定に基づく指定を受けようとする者は、申請書を厚生大臣に直接提出することとされている。

・この規程の施行の際に、現に水道法第20条第3項の規定に基づく指定を受けている者については、平成11年11月29日までは、なお従前の例によることとされている。


13.水道・廃棄物分野の国際協力について

 開発途上国においては、水道施設や廃棄物処理施設の整備が遅れているため、生活環境の衛生水準が低く、伝染病などで毎年多くの死者を出している。このため、国連の提唱による「1980年代の10か年計画」に引き続き、平成2年12月の国連総会、平成4年6月の地球サミット等において1990年代も国連が中心となり、水道・廃棄物の施設整備等を積極的に推進することとなっており、この分野の開発援助の必要性はさらに高いものと考えている。
 厚生省としても、開発途上国への協力の一環として(社)国際厚生事業団(JICWELS)を通じ、各種の事業を行っている。従来より、海外協力案件の発掘・形成のための調査団の派遣、開発途上国の水道行政を担当する幹部級の行政官に対する研修事業の実施、産業廃棄物の適正処理技術に関する講習を開発途上国で開催するとともに、浄化槽の円滑な導入を図るために、途上国の実情調査及び現地講習などを実施している。
 今年度も、フィリピンにおける産業廃棄物に関する技術移転セミナーの開催、インドネシアに対する浄化槽の技術移転の継続、ミャンマーにおける水道事情に関する調査を実施した。また、太平洋島嶼国を対象とした水道行政官研修の開催などについても計画を進めている。
 水道及び廃棄物分野の政府開発援助については、厚生省のみによって実施できるものではなく、厚生省の推薦によって専門家として海外で活躍して頂いている方々の努力、専門家派遣等の事業の実施に協力頂いている地方公共団体及び民間団体の方々などの理解と支援に負うところが非常に大きい(平成9年度実績として、長期専門家派遣26名(継続含む)、短期専門家派遣52名、海外研修員受け入れ126名)。
 厚生省としては、今後とも技術協力に携わる専門家の派遣、開発途上国からの研修員の受け入れ、派遣専門家への支援等について、より一層の御協力をお願いする。また、国際協力事業団(JICA)が実施する専門家養成研修への積極的な参加についても格別の御配慮をお願いする。


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