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1 食中毒の発生予防等について

(1)平成8年の腸管出血性大腸菌O157による集団食中毒以降、O157による集団食中毒は減少しているものの、平成10年においてもO157による患者数は約1,400名(12月18日現在)を数え、また、サルモネラ、腸炎ビブリオ及びカンピロバクターによる食中毒は増加傾向を示すなど、引き続き注意を要する状態にある。

(2)このような状況を踏まえ、厚生省としてはこれまでに、1) 食中毒処理要領の一部改正、2) 食中毒発生時の調査指針の作成、3) 家庭、調理施設におけるHACCP(危害度分析に基づく重要管理事項)の考え方を取り入れた衛生管理指針の作成、4)3)に基づくパンフレット及びビデオの作成、5) O157及びサルモネラエンテリティディスの全国的な汚染実態調査の実施、6) 学校給食及び社会福祉施設給食の一斉点検の実施、7) 小型球形ウイルスによる食中毒の行政対応、8) 卵のサルモネラ対策、9) カキのSRSV対策、10) 生食用食肉等の衛生対策など、食中毒対策を進めてきた。
 都道府県市区においては、引き続き、社会福祉施設、学校給食等集団給食施設、弁当・仕出し屋等の大量調理施設を中心とした食中毒発生防止のための監視指導の強化、流通食品等の食中毒菌等の検査強化、地域住民に対する食中毒予防に関する知識の普及啓発等食中毒予防対策に努められたい。
 また、平常時から食中毒発生時に備え、食中毒対策要綱の策定等により原因究明体制の整備を図るとともに、今後の予防対策に資するために食中毒調査、特に汚染源の遡り調査を徹底されるよう重ねてお願いする。

(3)また、平成9年4月より、食中毒関連情報を収集、分析評価するため、食品衛生調査会のもとに「食中毒情報分析分科会」を設置した。本分科会ではこれまでに、O157の散発型の集団発生、最近のサルモネラ、カンピロバクター、腸炎ビブリオ等による食中毒について分析評価を実施し、広く情報提供を行ってきたところである。
 今後、更に食中毒情報の迅速な収集、分析評価を実施していくこととしているので、食中毒発生時の厚生省への迅速な報告をお願いする。さらに散発型の集団発生(いわゆるdiffuse outbreak)の原因究明体制の強化を図るため、食品保健総合情報ネットワークシステムに食中毒発生時の速報収集、評価、提供機能を追加する等の充実を図ることとしているので、都道府県市区においては当該情報処理体制の整備に特段のご努力をお願いする。

(4)厚生省としては、今後とも最新の食中毒関連情報を提供するとともに、食品中からの分析法及び予防方法の確立、更には、必要に応じて、食品衛生監視員、地方衛生研究所職員を対象とした研修の実施等を引き続き進めてまいりたいと考えている。
 都道府県市区においても、引き続き、食品衛生監視員等の資質向上、食品衛生検査施設の検査体制の強化、予防課等関係部局との連携体制の整備等に努められたい。

(5)また、昨年7月に和歌山市で発生したカレー毒物混入事件に端を発した一連の食品への毒物混入事件に対応するため、厚生省及び農林水産省は、内閣に設置された毒劇物対策会議の指示を受け、流通食品の安全確保を図るために、昨年11月を「食品安全確保推進月間」と定めた。この月間において、都道府県市区に対しては、食糧事務所と連携した食品小売業者の特別指導等をお願いしたところである。
 さらに、食中毒等の飲食物に起因する健康被害発生時の調査の初期段階で、これらの毒劇物による健康被害の有無を判定するため、食品からの毒劇物迅速検査キットを今年度中に各保健所に対し緊急的に配備するよう、準備を進めているところである。
 都道府県市区におかれても、販売者への指導、消費者に対する啓発、事故発生時の警察、消防、医療機関等の各部門との連携体制の整備とともに、速やかな原因究明のための体制整備を引き続きお願いする。

(6)なお、厚生省では、食中毒等の健康危機管理に迅速的確に対応するため、平成9年1月に「厚生省健康危機管理基本指針」、またこれに基づく食中毒分野の具体的要領として、同年4月に「食中毒健康危機管理実施要領」を作成したので、ご承知置きいただきたい。


2 食品等の安全性確保対策について

(1)監視指導・検査体制等の整備について
ア 監視指導の強化

 食品の製造・加工技術等の高度化、食品の多様化、食品流通の広域化及び国際化等に適切に対処するため、計画的・効果的な食品監視及び科学的知見に基づく衛生指導の推進が必要である。このため市場衛生検査所、食品衛生監視機動班等の整備により専門的かつ広域的な衛生検査及び監視指導を推進するとともに、地域性の高い飲食店営業者等に対しては、保健所を中心とする監視指導を進め、専門的かつ技術的拠点としての機能を強化されたい。また、食品衛生監視員の研修等を積極的に実施されるようお願いする。

イ 検査施設の整備

 残留農薬基準等の食品等の規格基準の整備、検査施設の業務管理基準の導入等に伴い、高度な機器分析による試験検査の需要の増加に対応するとともに、検査の効率化・合理化を図り、あわせて検査結果の信頼性を確保する観点から、衛生研究所、保健所、市場衛生検査所、食肉衛生検査所等各食品衛生検査施設の機能の高度化・集中化を行うことにより、その体制の整備を推進されたい。

(2)組換えDNA技術応用食品等の安全性確保について

ア 近年、食品の製造への組換えDNA技術の応用が進められており、既に一部の食品については国内外において商品化がなされている。
イ 厚生省としては、組換えDNA技術の食品への応用については、未だ応用経験が浅いこともあり、安全性の確保に一層の配慮が必要であることから、「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」を作成し、これに基づき申請者が行った安全性評価を厚生大臣が確認することとしている。
ウ 具体的には、個別の食品ごとに、食品衛生調査会のバイオテクノロジー特別部会において、指針に基づく慎重な審査を行っており、これまでに、除草剤に耐性を持つ大豆等22品種及び食品添加物6品目について、申請者の行った安全性評価が指針に沿って適切に行われていることを確認した。
エ 組換えDNA技術応用食品等の安全性評価の確認については、食品衛生調査会において、専門家により科学的な審議が行われているが、消費者等の間にその安全性についてなお漠然とした不安があることから、これら食品の安全性評価に係る情報の提供に努めていく必要がある。このため、食品衛生調査会の審議内容の公開や安全性評価に係る申請書の一般公開などを行っている。
オ 食品の表示については、衛生上の危害防止の観点からは食品衛生法で、消費者の選択の観点からは農林水産省の所管するJAS法でとの役割分担がなされている。
 昨年来、消費者団体や地方議会等より、組換えDNA技術応用食品に組換えDNA技術を用いた旨の表示を義務付けるべきとの要望が厚生省に対して出されているが、食品衛生法において、組換えDNA技術応用食品を他の食品と公衆衛生上区別して表示を義務付けることは以下の理由から、困難と考えられる。
1) 遺伝子が組み換わるという点については、従来の品種改良と同様である。

2) これらの食品は安全性評価指針への適合を確認している。

 しかしこの問題については様々なご意見もあることから、現在、食品衛生調査会表示特別部会において、組換えDNA技術応用食品を含め、食品の表示制度全般について検討をお願いしているところである。
 なお、現在農林水産省においては、消費者の選択の観点からの表示のあり方について検討がなされているところである。
カ 厚生省においては、組換えDNA技術応用食品に関する最新の知見の把握、情報の収集に努め、今後とも、その安全性確保を図っていくこととしている。

(3)食品衛生法に基づく表示の基準の見直しについて

ア 検討の背景及び経緯

 食品衛生法に基づく食品の表示は、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的に、公衆衛生の見地から行われているが、現在、表示の義務付けがなされているのは、主として容器包装に入った加工食品に限定されている。
 しかし表示基準を定めた当時からみると、現在食品の製造・流通形態は大きく変化しており、健康危害の発生を防止するための適切な表示の義務付けが不十分ではないかとの意見がある一方、逆に規制緩和の観点から、表示についてはできる限り自主的な取組に任せるべきである等、様々な意見が寄せられており、また近年の国際化の動向、整合性を十分に踏まえた対応についても重要となってきていることから、今般、食品衛生調査会に食品の表示のあり方全般を検討する「表示特別部会」を設置し、これらを踏まえた表示対象食品の範囲、表示の項目、表示基準等、今後の食品表示のあり方について再検討するとともに、提言等を行うこととした。

イ 表示特別部会の開催状況及び今後の予定
1) 平成10年9月11日の第1回表示特別部会開催より、これまで6回開催

2) 表示特別部会の開催に先立ち、食品の表示に関する国民の一般意見を公募

3) 平成10年12月18日、中間報告書を取りまとめ公表

4) 約1ヶ月間、中間報告書に対する国民の一般意見を公募

5) 平成11年1月下旬、国民の一般意見を踏まえ、報告書の取りまとめを予定

ウ 中間報告書において提言された早急に実施すべき事項
1) 難消化性糖質の過剰摂取に対する注意喚起表示

 難消化性糖質を一定量以上含む食品について、注意喚起表示のほか、物質毎の最大無作用量(最小作用量)、摂取目安量を示す表示ガイドライン等を作成し、それらについて関係業界の自主的対応とする。

2) アレルギー物質に関する食品の表示

 食品中のアレルギー物質について、健康危害の発生防止の観点から、これらを含有する食品に対し、表示を義務付ける。

3) 原材料の表示

 食品衛生法においても、原材料表示を義務付ける。

4) 原産国または国内産地の表示

 貝類や食肉にあっては、国内外を問わず生産海域あるいはと畜場の名称等の表示を義務付ける。

5) 遺伝子組換え食品に対する表示

 遺伝子組換え食品であるか否かを判定する検査方法等の技術的事項についての研究を推進するとともに、遺伝子組換え食品の安全性やその技術に関して消費者、企業、行政等関係者の一層の相互理解を図ることに務める。

(4)輸入食品の監視体制について

ア 近年、国民の食生活の多様化、食品の国際流通の進展等に伴い、食品の輸入件数は平成9年に約118万件となり、この10年間で約2.1倍となっている。また、我が国の食料需給率について、食料供給熱量(カロリーベース)でみるとその約58%は海外に依存しており、輸入食品の安全性を確保することは、国民の健康を守るうえで重要な課題となっている。
 このような社会情勢の変化に対応するため、輸入される食品等について、食品衛生法違反の蓋然性が高い輸入食品等に対する検査命令を実施し、その他の食品等については年間計画に基づくモニタリング検査を実施することによりその安全性を確保している。また、輸入手続の迅速化を図る観点からコンピュータを利用した届出等を可能とするため、輸入手続の電算化システム(輸入食品監視支援システム(FAINS))を稼働させるとともに、大蔵省の通関情報処理システムとのインターフェイス化を実施しており、さらに、昨年3月23日から、オーストラリア政府との間で、食肉に関する衛生証明事項の電送化を本格的に開始し、より一層の輸入手続きの電算化の推進を図っているところである。

 厚生省においては、従来から、検疫所における輸入食品の監視体制について充実強化を図ってきたところであるが、平成11年度においても、次の措置を講じることとしている。
(ア)輸入時検査の実施にあたっては、輸出国側の状況、過去の違反事例等を踏まえ、個々の食品の食品衛生法違反の蓋然性に応じた計画的かつ科学的な検査を実施することが最も重要であることから、違反の蓋然性が高い食品については検査の命令を行うとともに、その他の食品に対するモニタリング検査の充実、強化を図る。
(イ)ミニマム・アクセスにより輸入される米についても、引き続き残留農薬等の検査を実施し、その安全確保対策に万全を期する。
(ウ)輸入食品監視支援システム(FAINS)と大蔵省の通関情報処理システムとのインターフェイス化を推進し、輸入手続の電算化のさらなる充実を図る。

イ 検疫所で発見された輸入食品の違反事例について、都道府県等に対し毎月連絡しているところであり、当該情報を監視業務にご活用頂きたい。また、都道府県等において輸入食品につき違反等が発見された場合にあっては、早急に厚生省及び関係都道府県等に連絡願いたい。

(5)栄養表示基準制度について

 本格的な高齢化社会の到来、肥満や生活習慣病の増加を背景として、健康に対する国民の関心が高まっている。
 このようなことから、新しい食品保健行政の基本的な在り方について提言をいただくために設けられた「食と健康を考える懇談会」(平成6年9月に設置、12月報告)の報告内容を踏まえ、食品衛生法の改正とあわせ栄養改善法の一部を改正し、食品の栄養成分に関する適切な情報を広く国民に提供することを目的に、新たに包括的な栄養表示基準制度を創設した。(平成7年5月24日公布、平成8年5月24日施行、平成10年4月1日全面施行)
 この制度は、販売する食品に栄養成分・熱量について邦文で何らかの表示を行う場合、その栄養成分・熱量だけでなく、国民の栄養摂取の状況からみて重要な栄養成分・熱量についても表示することを義務づけるほか、その表示が一定の栄養成分・熱量についての強調表示である場合には、含有量が一定の基準を満たすことを併せて義務づけたものである。
 具体的な基準内容については、食品衛生法施行規則等の一部を改正する省令(平成8年5月23日、厚生省令第33号)及び栄養表示基準を定めた件の告示(平成8年5月20日、厚生省告示第 146号)をもって、

1) 規制の対象となる表示栄養成分・熱量の範囲

2) 表示すべき事項及び方法

 熱量、たんぱく質、脂質、糖質、ナトリウム及び表示された栄養成分の含有量を、この順で記載すること等

3) 強調表示の基準

 食物繊維、カルシウム等について「高」「含有」等を表示する場合に満たしていなければならない基準
 熱量、脂質等について「無」「低」等を表示する場合に満たしていなければならない基準

などが定められ、施行については平成8年5月23日衛食第 135号をもって生活衛生局長より各都道府県知事、政令市長、特別区長あて、その取扱いについては平成8年5月23日衛新第46号をもって新開発食品保健対策室長より各都道府県・政令市・特別区衛生主管部(局)長あて通知したところである。
 また、栄養表示基準におけるコレステロールの強調表示基準等については、平成10年4月13日に「脂質に関する栄養表示基準専門委員会」から公衆衛生審議会健康増進栄養部会に報告され、同年11月9日「コレステロールの強調表示基準」について答申された。
 なお、「コレステロールの強調表示基準」については、本年度中に告示改正等所要の整備をすることとしているので、告示改正後も引き続き制度の円滑な実施について協力方よろしくお願いする。

(6)いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会について

 我が国では、国民の健康に対する関心、知識の向上や食経験に基づく知見の積み重ねなどから、これまで、医薬品として使用されてきたビタミン等について、食品としての流通を求める声が強まってきた。このような動きを背景に、政府の規制緩和推進計画及びOTO市場開放問題苦情処理推進会議報告において、ビタミン等に関して食薬区分を見直すとともに、栄養補助食品を新しいカテゴリーとする対応をとることを検討することが決定された。
 そこで、ビタミン等のいわゆる栄養補助食品のあり方に関し、これらの食品に関する適正な摂取方法等、今後の取扱い及びその名称を含め、検討を行うことが必要である。
 このため、生活衛生局長の私的検討会として、「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会」を設置、第1回を昨年12月17日に開催した。
 なお、検討結果については、食品衛生調査会及び公衆衛生審議会の関連部会に報告するものとしている。

(7)総合衛生管理製造過程の承認制度について

 HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)による衛生管理方法に基づく総合衛生管理製造過程による食品の製造等の承認制度については平成8年5月より施行されているところである。
 本制度の対象食品として、これまでに乳・乳製品、食肉製品、容器包装詰加圧加熱殺菌食品及び魚肉ねり製品を指定しているが、現在、清涼飲料水の導入について検討を行っているところである。
 厚生省においては、平成8年9月に策定した総合衛生管理製造過程承認制度実施要領に基づき、各都道府県等の食品衛生監視員を対象としたHACCPに関する講習会をブロック毎に開催しているところであるが、今後とも、各ブロックにおけるHACCP普及に指導的な役割を果たす食品衛生監視員を養成するための講習会を開催することとしているので、ご協力をお願いする。
 また、総合衛生管理製造過程承認制度実施要領 4(2)において、営業者は申請書等を作成する際には、HACCPに関する講習会を受講した都道府県等の食品衛生監視員による助言を受けることとなっているが、承認審査を円滑に実施するためには事前に都道府県等の食品衛生監視員による適切な助言が重要であることから、的確かつ教育的な助言について特段のご配慮をお願いする。
 なお、現在までに乳・乳製品について562件、食肉製品について132件の承認を行ったところであるが、今後とも各都道府県等に対し、厚生省が実施する現地調査への食品衛生監視員の同行等を依頼することがあるのでご協力をお願いする。
 さらに、HACCPによる食品の衛生管理の考え方や手法は、本制度の対象食品以外の食品製造加工施設においても有用であるので、様々な食品分野でこの考え方等を導入し、衛生管理を徹底するよう指導されたい。この場合、HACCPの円滑な導入推進には、HACCPについての知識を十分理解する者を育成することが不可欠であることから、各都道府県等においても営業者等を対象とした講習会の実施等についてご配慮をお願いする。
 また、昨年7月に施行された「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法」に基づき、製造過程の管理の高度化を図ることが容易となる施設整備を行おうとする事業者に対しても、適切な指導、助言等をお願いする。

(8)卵によるサルモネラ食中毒の防止対策について

 近年、サルモネラによる食中毒が増加傾向にあることに鑑み、平成9年7月から食品衛生調査会において、卵によるサルモネラ食中毒の防止対策について検討を行い、意見具申としてまとめられた内容に基づき、昨年11月25日、食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準の一部改正(厚生省令第90号、厚生省告示第259号)を行い、その運用等について都道府県等に通知(生衛発第1674号)したところである。

 改正の主な内容は次のとおりである。

1.鶏の卵の表示基準

(1) 鶏の生食用の殻付き卵については、消費期限又は品質保持期限(賞味期限)を表示すること。
(2) 生食用の鶏の殻付き卵については、生食用である旨、品質保持期限経過後は飲食に供する際に加熱殺菌を要する旨、10℃以下で保存することが望ましい旨の表示をすること。
(3) 加熱加工用の鶏の殻付き卵については、加熱加工用である旨及び飲食に供する際に加熱殺菌を要する旨の表示をすること。
(4) 殺菌した液卵(殻付き卵から卵殻を取り除いたもの)については、その殺菌温度・時間を表示すること。
(5) 未殺菌の液卵については、未殺菌である旨及び飲食に供する際に加熱殺菌を要する旨の表示をすること。

2.鶏の卵の規格基準

(1) 食品の製造、加工及び調理に使用する殻付き卵は食用不適卵(腐敗卵、カビ卵、異物混入卵、血液が混入している卵、液漏れをしている卵、卵黄が潰れている卵(物理的な理由によるものを除く。)及び孵化中止卵。以下同じ。)であってはならないこと。

(2) 鶏の殻付き卵又は未殺菌液卵を使用して食品を製造、加工又は調理する場合はその工程中において70℃で1分間以上加熱するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌しなければならないこと。ただし、品質保持期限内の生食用の正常卵を使用して割卵後速やかに調理し、その食品が調理後速やかに摂食される場合は除かれること。なお、正常卵とは、食用不適卵、汚卵、軟卵及び破卵以外の鶏の殻付き卵をいうこと。

(3) 鶏の液卵を「殺菌液卵」及び「未殺菌液卵」に分け、殺菌液卵について25g当たりサルモネラ属菌陰性、未殺菌液卵について1g当たり細菌数(生菌数)100万以下とする成分規格を設けたこと。
 これらの改正は、本年11月1日から施行されることとなっている。
 都道府県等におかれては、卵によるサルモネラ食中毒を防止するため、今回の改正等に基づき、集団給食施設や菓子製造施設等における卵の衛生的な取扱いの徹底、充分な加熱殺菌の実施等について監視、指導方をお願いするとともに、消費者への啓発普及に特段のご配慮をお願いする。

(9)生食用かきの衛生確保対策について

 近年、冬季にSRSV(小型球形ウイルス)が原因と疑われる食中毒が多数発生しており、原因食品が特定された事例のうち、かきが原因とされる事例が最も多く報告されている。SRSVによる食中毒は、かきがSRSVを取り込むことにより発生する場合があると考えられることから、当該かきの採取海域までの遡り調査を緊急に行えるとともに、食中毒の被害拡大防止に資するため、平成10年12月28日厚生省令第98号をもって、食品衛生法施行規則の一部を改正し、生食用かきの表示すべき事項に採取海域の表示を追加したところである。
 本改正は、平成11年10月1日より適用されるものであり、都道府県等におかれては、適正な採取海域の表示が行われるよう関係営業者に対する周知、指導方よろしくお願いする。

(10)動物由来感染症対策の強化について

 エボラ出血熱等の新興感染症やこれまで制圧したと考えられていた結核、マラリア等の再興感染症が世界的に問題となり、また、国際交流の活発化や航空機による迅速大量輸送により、感染症は地球上のあらゆる地域から、国内に持ち込まれるおそれがあること等感染症を取り巻く状況の変化を鑑み、わが国における感染症対策に係る施策の再構築が必要となった。
 このため、伝染病予防法の廃止等関係法律の整備を行い、平成10年10月2日に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が公布されたところである。
 本法の中に動物から人に感染する動物由来感染症対策についても盛り込み、エボラ出血熱、マールブルグ病を媒介するおそれのあるサルについて、輸入検疫等の措置を講ずることとした。
 また、これらの感染症が国内で発生した場合にあっては、迅速に感染症のまん延防止措置が行われるよう、感染症に罹患した動物についての獣医師等からの届出を規定している。
 また、同日に「検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律」も併せて公布された。これにより、猫、あらいぐま、きつね、スカンクを輸出入検疫対象動物として追加し、狂犬病の海外からの侵入防止をより一層強固なものとした。また、国内でこれらの動物において狂犬病が発生した場合の所要の措置を講ずることとした。
 これら動物由来感染症対策のためのモニタリング体制の構築等、種々の施策を平成11年度から行うこととしているので協力をお願いする。

(11)とちく場における衛生管理体制の強化について

 健康な家畜の消化管内に生息している腸管出血性大腸菌O157やサルモネラ等による食中毒を未然に防止し、安全で衛生的な食肉を提供するためには、とちく場における衛生管理体制の強化が不可欠である。
 このため、平成8年12月25日にと畜場法施行規則の一部改正を行い、とちく場の設置者又は管理者並びにとちく業者等が講ずるべき衛生管理の基準を規定したところであり、平成9年11月12日にと畜場法施行令の一部を改正し、食肉冷却設備、器具の洗浄・消毒設備等の衛生管理に重要な設備を一般とちく場の許可基準に加えたところである。この衛生管理の基準の施行及び実施状況については、とちく検査員が中心となって厳正に検証し、この運用に遺憾のないようお願いする。
 これらとちく場の構造設備基準の強化に対応するため、平成10年度から保健衛生施設等設備整備費補助金で、地方公共団体のとちく場を対象に新たに義務づけられる設備について補助を行っているところである。
 さらに、民間のとちく場については、新たに義務づけられる設備のうち食肉冷却設備等の特定の設備について、平成10年度から固定資産税の課税標準を最初の3年間は2分の1とする措置の創設をしたところである。
 なお、構造設備基準の適用については、改善に要する期間を考慮して、牛又は馬のとさつ又は解体を行うとちく場は平成12年3月31日まで、豚、めん羊又は山羊は平成14年3月31日まで経過措置期間を設けてあるが、今年度内に改善指導事項を的確に把握し、統廃合を含めた整備又は構造設備の改善等の今後の計画について関係営業者への的確な助言・指導の徹底方お願いするとともに、整備・改善等が見られないとちく場に対しては厳正な態度で対応し、とちく場の衛生確保に努められたい。
 また、とちく検査においても、食肉衛生検査施設の機器整備やとちく検査員の資質の向上に引き続き努めるなど、検査体制のより一層の整備に特段のご努力をお願いする。

(12)食品中残留農薬対策の推進について

 新規登録農薬の増加、農作物及び加工食品の輸入増大等に伴い、食品中に残留する農薬の安全対策は重要な課題となっている。農薬が残留する食品に関しては、食品衛生法上の残留農薬基準が定められない限り、適切な流通規制ができないため、早急に残留農薬基準の整備を図ることが必要である。
 残留農薬基準は、現在、179の農薬につき農作物毎に約8300の基準を設定しているところであるが、厚生省としては、2000年までに使用量の多いもの等少なくとも200農薬について基準を定めることを目標に、基準策定を図ることとしている。
 このため、農作物中の残留農薬実態調査の拡充を行うとともに、輸入加工食品中の残留農薬実態調査を行うこととしているので、平成11年度においても、調査実施等について御協力方お願いする。

(13)食品添加物の安全対策の推進について

 平成8年5月から、添加物の指定制の範囲が、天然香料を除く全ての添加物に拡大された。改正された指定制においては、化学的合成品と天然品を区別していないが、その適正な運用につき今後とも御協力方お願いする。なお、既存添加物名簿に収載された489品目については、法改正後も流通が認められているが、その安全性を確保するため、安全性試験成績の収集及び毒性試験の実施等を行っているところである。


3 環境衛生関係営業の振興対策について

(1)環境衛生関係営業の施設数は、平成10年3月末現在において、約253万施設もあり、国民生活に極めて密着したものであることから、これら営業施設の衛生水準の維持向上、経営の安定化等が国民生活の向上、日本経済の安定の上からも強く要請さてている。

(2)このため環衛業の近代化・合理化を促進し、その経営の安定と健全化を通じ、衛生水準の向上と消費者に対するサービスの確保を図るため、従来から全国環境衛生営業指導センター及び都道府県環境衛生営業指導センターによる指導並びに環境衛生金融公庫による融資等の施策を講じているところである。

(3)しかし、近年急速に進行してきた人口構造の高齢化や生活環境の変化、核家族化や女性の社会進出、情報化や技術化の進展、更には規制緩和の要請など社会経済の構造的変化の中で、環衛業が新たな需要に的確に対応し、国民の生活の質的向上に十分貢献していくためには、これらの変化に即応した施策の実施が強く求められるようになってきている。

(4)このため、環衛業対策事業として、平成11年度では、全国環境衛生営業指導センターにおいて、地域福祉づくりに貢献するために環衛業者が行う事業を支援するための指針を策定する環衛業地域福祉支援事業を行うとともに、衛生水準強化事業、調査研究事業、消費者対応事業、情報化整備事業等の事業を行い、環衛業の総合的な活性化対策を推進することとしているので、都道府県におかれては、この趣旨を十分ご理解のうえ、ご協力をお願いする。
 また、都道府県環境衛生営業指導センターにおいては、環衛業者が新たな時代の社会的要請に応え、活力ある発展を遂げるために、メニュー化方式である活性化促進事業の実施対象か所数の増を行い一層の充実強化を図ることとしているので、各都道府県の実態に即して選択して実施いただくよう、より一層のご尽力をお願いする。

(5)なお、環境衛生金融公庫の融資については、民間金融機関の貸し渋り対策を含み平成11年度の貸付計画額として3,200億円を確保するとともに、貸付条件については、「振興設備資金及び振興運転資金の貸付限度額の引上げ(全業種)」並びに特利対象品目として「全自動手指洗浄消毒器(全業種)」、「省電力機器(全業種)」の追加を行うとともに、振興設備資金特別利率適用施設整備の「店舗等」の増・改築についての面積制限の撤廃を行うこととしている。

(6)また、税制関係については、中小企業等の事業基盤強化設備に係る特別償却制度等の適用期限の延長等、6項目が認められているので、都道府県におかれては制度の周知徹底方併せてお願いする。

(7)経営指導員による指導体制の充実・強化については従来よりご配慮を頂いているところであるが、相談内容の複雑・高度化等によりその必要性が益々高まっていることから、経営、金融、税務、衛生等の指導に的確に対応できるよう、中小企業診断士等の有資格者を設置できるよう最大限努力するとともに、研修等の実施により経営指導員の資質の向上に努めるなど、引き続き格段のご配慮をお願いする。


4 環境衛生金融公庫と国民金融公庫との統合について

 環境衛生金融公庫と国民金融公庫との統合については、平成9年9月の閣議決定を踏まえ、平成11年10月1日(目途)に統合することとしている。このため、平成11年通常国会に統合法案を提出する予定である。


5 ダイオキシン類対策の実施について

(1)はじめに

 廃棄物焼却施設等から排出されるダイオキシン類による健康影響のおそれが問題になっており、全政府的なとりくみが求められている現状にある。
 その中において、厚生省では、主に廃棄物処理施設の排出源対策及びダイオキシン類等の健康影響の解明を行っている。
 排出源対策については、廃棄物処理法に基づく規制措置、廃棄物処理施設に対する財政支援、低利融資等によってダイオキシン類の早期削減を図るとともに、厚生科学研究費によって、排出メカニズムの解明、排出削減技術、最終処分場対策等の研究を推進しているところであり、健康影響の解明については、食品の汚染実態調査、人への健康影響に関する研究(母乳による乳幼児への健康影響を含む)等を推進しているところである。
 ダイオキシン類対策を円滑に実施するためには、各地方自治体との連携が重要である。従来より「全国ダイオキシン類調査連絡会議」を開催し、情報交換等を行っているところであるが、今後とも調査研究の実施等につき御協力方お願いする。

(2)調査研究の推進について

 ダイオキシン類対策を効果的に進めるためには、廃棄物処理施設から排出されるダイオキシン類の削減、分解技術等を開発し、根本的な排出源対策技術を早期に確立すること、及びダイオキシン類の健康影響を早期に解明して、適切なリスク評価を行うことが重要である。
 それに対応するため、厚生科学研究費ダイオキシン類総合対策研究費等として、平成10年度は6.2億円、平成11年度予算案として19.6億円を計上しているところである。
 本研究事業は平成9年度より5年計画で行っているものであり、平成11年度末には中間報告を行う予定である。なお、個別の研究成果については、逐次公表しているところであり、その内容については、厚生省ホームページ(http://www.mhw.go.jp/)を御覧いただきたい。

(3)ダイオキシン類の耐容一日摂取量(TDI)の見直しについて

 従来は、ダイオキシン類の評価の考え方として、厚生省のTDI(10pg/kgbw/day)と環境庁の健康リスク評価指針値(5pg/kgbw/day)が示されていたところであったが、昨年5月にWHOの専門家会合においてダイオキシン類の健康リスクの再評価が行われ、TDIとして1〜4pg/kgbw/dayが合意された。
 これを受けて、我が国においてもダイオキシン類の健康リスクの再評価を行う必要があり、厚生省及び環境庁にそれぞれ設置されている審議会の合同で検討を行う予定である。
 現在、WHOでの議論に使用された種々の文献、WHOからの正式な見解等を収集しているところであり、必要な準備が整い次第、早期に検討を開始する予定である。

(4)平成9年度に実施した調査研究結果について

1)食品の汚染実態調査

 食品中のダイオキシン汚染実態調査を平成4年度より実施しているところである。平成9年度の調査結果によると、食品からのダイオキシン類の平均1日摂取量は0.96pg/kgbw/dayとなり、さらにコプラナーPCBを含めると2.41pg/kgbw/dayとなる。この値はWHOの調査による先進国のダイオキシン類の暴露レベルである2〜6pg/kgbw/dayと比較しても、特段に高いものとは考えられない。なお、食品中のダイオキシン類の汚染実態調査については、引き続き実施することとしている。

2)ヒトのダイオキシン類暴露状況調査

 平成9年度は、血中ダイオキシン類濃度について測定方法の検討を行うとともに、健常人の血中ダイオキシン類濃度等から我が国における人体の暴露状況を探った。日本の健常人の血中ダイオキシン類濃度は欧米の報告値とほぼ同じレベルであった。

3)母乳中のダイオキシン類調査
1)4都府県調査

 4都府県における出産後300日までの母乳中のダイオキシン類等の濃度を現在測定しているところである。現時点(150日目)までの結果によって、母乳中のダイオキシン類等の濃度の実態が把握されたとともに、廃棄物焼却施設から居住地までの距離と母乳中ダイオキシン類濃度の間には相関が見られなかった。

2)保存母乳調査

 大阪府で凍結保存されていた母乳中のダイオキシン類等の濃度を測定した結果、濃度は1973年から1996年にかけてほぼ半分近くに減少していた。

4)火葬場からの排出実態調査

 平成9年度には、全国10カ所の火葬場の実態調査を行った。ダイオキシン類の排出濃度は最も高い施設で6.5ng-TEQ/立法メートル、最も低い施設で0.0099ng-TEQ/立法メートルであった。


6 内分泌かく乱化学物質対策について

(1)はじめに

 近年、有機塩素系農薬やプラスチック容器の可塑剤等種々の化学物質が生体の内分泌機能をかく乱し、人の健康に影響を及ぼすとの懸念が示され、「内分泌かく乱化学物質」と呼ばれている。この内分泌かく乱化学物質については、現在のところ、その有無、種類、程度など未解明な点が多いことから、国際的な機関と連携をとりつつ、調査研究を推進しているところである。
 厚生省では、平成8年度の厚生科学研究において、いち早くエストロゲン様化学物質が人に与える健康影響を取り上げており、欧米における検討状況や知見を収集した上で、今後、さらに詳細なメカニズム等について研究を進めていくこととしている。
 また、平成10年4月から「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」を設置し、毒性学や分析学の専門家、消費者代表などの有識者による検討を定期的に公開で開催しており、その検討資料、議事録等についてはインターネット(http://www.mhw.go.jp)上で公開している。この検討会においては、これまでの内分泌かく乱化学物質に係る内外の研究内容について検討するとともに、米国環境保護庁(EPA)や経済協力開発機構(OECD)などの本問題に関する担当者を迎え、内分泌かく乱化学物質問題の現状を把握し、今後の対応方針に関する議論を行っている。さらに、これまでの議論を踏まえて、厚生省としての内分泌かく乱化学物質問題に対する対応方針を明らかにするため、平成10年11月に中間報告書を公表している。

(2)調査研究の推進について

 平成10年度の補正予算において10億円の研究費を計上(政府全体として内分泌かく乱化学物質の影響に関する調査研究費:112億円)し、1)内分泌かく乱化学物質への胎児、成人等の暴露、2)食品への残存や食器からの溶出、3)水道水からの暴露、4)繁殖影響と体内動態、5)通商産業省と共同での超高速分析法(HTPS)の開発評価、6)OECDと共同での毒性試験法開発などの研究を行っている。また、平成11年度予算においても7億5千万円の研究費を計上しているところであり、本年度も引き続き内分泌かく乱化学物質についての調査研究を推進する予定である。

(3)関係各省庁について

 本問題については厚生省のみならず関係各省庁が緊密な協力連携を取りつつ、解決への方策を進めていくことが重要であり、平成9年には関係省庁による情報連絡会が設けられ、さらに平成10年からは総合的な検討を行うため、環境庁、通商産業省、農林水産省等の関係9省庁からなる関係省庁課長会議が設けられている。関係各省庁では緊密に連携を取りつつ、それぞれの立場から種々の検討を行っているところである。

 このように内分泌かく乱化学物質問題に取り組むための体制が整備されつつある。厚生省では、今後、人への健康影響を防止するため、本問題への取組を一層推進していくこととしている。
 また、本問題の取組については各地方自治体との連携も重要であり、今後とも情報提供等御協力方お願いする。


<企画課>

 環境衛生金融公庫の融資について
 環境衛生関係営業の衛生水準の向上、近代化の促進については、従来から環境衛生金融公庫の融資により金融面からの支援策を講じているところである。
 平成10年8月には「中小企業等貸し渋り対策大綱」が閣議決定され、環境衛生金融公庫においては、小企業等設備改善資金特別貸付、金融環境変化対応特別貸付、事業展開支援特別貸付及び運転資金円滑化特別貸付等の融資制度について適用期間の延長及び貸付対象の拡大等を図ったところである。
 また、平成11年度においても環境衛生金融公庫に対する資金需要に適切に対応するため、必要な融資額の確保及び融資制度の改善を図ることとしているところであり、その概要は次のとおりである。

(1)貸付計画額   3,200億円

(2)貸付条件の改善

1) 貸付限度額の引上げ
ア 振興事業設備資金貸付

(ア)一般業種 1億2,000万円以内 → 1億5,000万円以内
(イ)クリーニング業 1億6,000万円以内 → 2億円以内
(ウ)旅館業 5億3,000万円以内 → 7億2,000万円以内
(エ)興行場営業 4億3,000万円以内 → 5億3,000万円以内
(オ)一般公衆浴場業(別枠) 1億2,000万円以内 → 1億5,000万円以内

イ 理容師養成施設又は美容師養成施設

(ア)環境衛生同業組合
  2億8,000万円以内(4億円以内)
特例措置の2年延長
(イ)事業協同組合、
  1億8,000万円以内(3億円以内)

(注)( )の貸付限度額は、平成9年4月1日から平成11年3月31日までの特例措置


2) 償還期限の延長
 理容師養成施設又は美容師養成施設(新設の場合) 18年以内 → 20年以内


3) 振興事業設備資金貸付の改善
ア 特利3)適用対象施設設備の追加
 (ア)全自動手指洗浄消毒器(全業種)
 (イ)省電力機器(全業種)
イ 特利3)適用対象施設設備である「店舗等」の範囲の拡大
  増・改築等についての面積制限の撤廃
   従前の延床面積の2倍までは特利3)、2倍を超える部分は基準利率
→ 全て特利3)             
4) 振興運転資金貸付の改善
 貸付限度額の引上げ 4,800万円以内 → 5,700万円以内

 ※ 5) 特別貸付関係

小企業等設備改善資金特別貸付の改善
・貸付限度の特例(基本限度額550万円+別枠450万円)の取扱期間の延長
   平成11年3月31日まで 平成12年3月31日まで
・貸付対象の特例
(開業設備資金)
取扱期間の延長
平成11年3月31日まで
 → 平成12年3月31日まで
・償還期限の特例
(6年以内→7年以内)
金融環境変化対応特別貸付 取扱期間の延長
平成11年3月31日まで
 → 平成12年3月31日まで
事業展開支援特別貸付
運転資金円滑化特別貸付

※ 経済対策で平成10年10月1日より実施。


<生活化学安全対策室>

1 家庭用品の安全対策について

(1)家庭用品規制法と家庭用品健康被害防止対策の推進

 「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」に基づき、家庭用品に含有される化学物質について、その毒性を評価するための試験等を実施し、保健衛生上の観点から規制基準を設定している。現在までに17種類の有害物質に関する規制基準を設定しており、毒性評価の結果必要があるものについては、順次、規制基準を設定することとしている。
 家庭用品等による健康被害については、皮膚障害や小児の誤飲事故の危害情報を、モニター病院を中心として収集するとともに、財団法人日本中毒情報センターに問い合わせがあった事例のうち吸入事故等の情報についても収集するなど、情報の充実を図っている。
 また、製造物責任制度(PL)の導入に伴い、事業者自らによる製品の安全確保レベルの一層の向上が求められていることから、これを支援するため、「安全確保マニュアル作成の手引き」の策定を行っているところである。

(2)平成9年度家庭用品に係る健康被害病院モニター報告

 平成9年度の報告において、皮膚障害については、洗剤、装飾品、ゴム、ビニール手袋等に関する事例が上位を占め、そのうち女性が全体の約70%で、特に20代の女性の割合が多かった。
 小児の誤飲事故では、重症例はなかったもののタバコによる事故事例が約半数を占め、医薬品・医薬部外品、玩具がそれに続く結果となった。昨年増加していたボタン電池の誤飲事故は、今回も多数の報告があった。
 吸入事故等では、殺虫剤(医薬部外品を含む)に関する事例が昨年度より増加しており、10歳未満の子供の事故事例に関する報告が全体の45%を占めていた。

(3)室内空気環境汚染化学物質対策の推進について

 近年、家庭用品、建材等から室内空気中に発散する化学物質による健康への影響が注目されていることから、平成9年6月、ホルムアルデヒドについて室内濃度指針値を策定したところである。
 しかしながら、ホルムアルデヒドだけではなく他の揮発性有機化合物等に関しても的確な対策を講ずる必要があることから、国立医薬品食品衛生研究所及び一部自治体の衛生研究所の協力を得、平成9年度から室内空気汚染実態調査等を実施している。今後、それらから得られた知見を踏まえ、健康リスク評価、室内濃度指針値策定等を行うことにより安全対策を推進することとしている。

2 化学物質の安全対策について

(1)化学物質の国内規制状況

 化学物質の安全対策については、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(以下「化審法」という。)により、難分解性、高蓄積性であって、長期毒性を有する化学物質を第一種特定化学物質に指定し、原則製造等の禁止、難分解性、低蓄積性であって長期毒性を有する疑いのあるものは指定化学物質に指定し、そのうち特に必要のあるものは第二種特定化学物質に指定し数量報告、構造設備基準の遵守等必要な規制が行われている。現在、第一種特定化学物質として9物質、第二種特定化学物質として23物質、指定化学物質として292物質がそれぞれ指定されている。

(2)OECD高生産量既存化学物質点検

 我が国は、地球環境保全の一環としてOECDが推進している高生産量既存化学物質の安全性点検(世界中で大量に使用されているにもかかわらず安全性情報がほとんどない化学物質の毒性試験等の実施)事業に積極的に参加している。これは加盟各国が分担して必要な試験等を実施するプロジェクトであり、我が国は、平成3年度より第一次点検対象物質として33物質を分担し、さらに、平成6年度からは第二次点検として115物質を分担している。
 この安全性点検結果については、毎年度分をまとめて各都道府県・政令市あて送付しているので、業務の参考として活用されたい。

(3)アジェンダ21への対応

 平成4年6月の国連環境開発会議において採択された「アジェンダ21」(21世紀に向けての具体的な行動計画)では、有害化学物質の安全対策を国際的に促進するため、特に一つの章を設け、安全性点検、調査研究、ハーモナイゼーションの促進等を進めることとされている。
 この作業は各国政府のみならず、複数の国際機関が関係することから、これを効率的に進めるため、平成6年4月にストックホルム(スウェーデン)において、「化学物質の安全性に関する国際会議」において「化学物質の安全性に関する政府間フォーラム(IFCS)」の設立が決議された。これは3年毎に開催されることとされ、その間隙に31ヶ国の政府代表から構成される「会期間部会(ISG)」 が開催されて、アジェンダ21内の「化学物質の適正な管理」について、行動計画の進捗状況を組織的に点検することとなっている。厚生省は、化学物質による健康被害を防止する観点から、化学物質の有害性の評価、安全性情報の交換等の安全確保対策分野における国際貢献に努めることを目的に参加している。
 平成10年12月には、IFCSの第3回会期間部会(ISG3)を日本政府(厚生省)の主催により、横浜で開催し、約50カ国の政府、約25の国際機関等から150名以上の出席があった。ISG3では、国際的な化学物質のリスク評価、使用されなくなった化学物質や農薬の保管管理等、平成12年(2000年)に向けて、化学物質の安全対策に係る各国の協力のもとに取り組むべき目標が確認された。

(4)地球規模化学物質情報ネットワーク

 「アジェンダ21」に盛り込まれている「化学物質の情報交換体制の整備」に関し、現在、IPCS(国際化学物質安全性計画)において、地球規模化学物質情報ネットワーク(GINC)のシステム作りが国際規模で進行中である。これは、各国際機関及び各国が有する化学物質の安全性に関する情報を、インターネットを利用することにより、地球規模で効率的に検索、入手を可能とする技術基盤を構築するものである。
 このプロジェクトにおいては、我が国の情報を積極的に提供していく必要があり、現在、「化学物質総合データベース」の構築に取り組んでいるところである。平成10年度も引き続き、化学物質毒性情報の充実を図っている。
 将来的には、GINCにより、容易に化学物質に関する情報を検索・入手することが可能となるため、都道府県・政令市における化学物質の安全対策に資するものと期待される。
 現在、GINCは、国立医薬品食品衛生研究所のホームページ(http://www.nihs.go.jp)及び厚生省のホームページ(http://www.mhw.go.jp)から使用可能となっている。

(5)化学物質安全性データシート(MSDS)

 化学物質の安全性に関する自主的管理の一環として、「化学物質の安全性に係る情報提供に関する指針」が定められ、化学物質安全性データシート(MSDS:Material Safety Data Sheet)の実施につき関係事業者等への周知徹底方お願いしているところである。
 本制度は、厚生省、通商産業省、労働省が共同で化学物質の取扱事業者に対し、危険有害化学物質の譲渡、提供の際に化学物質安全性データシートを交付すること等を指導し、これにより「化審法」による指定化学物質、第二種特定化学物質や「毒物及び劇物取締法」による毒物、劇物その他関係法令により規制されて危険有害化学物質について、安全な取り扱いを促進できるものとなる。
 今後とも貴管下の関係者に対する本制度の周知徹底方引き続きよろしくお願いいたしたい。

(6)化審法における申請手続きの電子化事業

 申請手続きの電子化については、政府全体で審査に係る事業者負担の低減を図ることを目的に、積極的に進めるよう平成6年12月に閣議決定(行政情報化推進計画)がなされたところである。この閣議決定の中で、化審法に基づく新規化学物質の届け出及び少量新規化学物質の申し出についても、届出事務の簡素化・迅速化が求められているところであるが、化審法の共管官庁である通商産業省と連携をとり、平成12年度から電子媒体を用いた届出システムの本格的稼働を目指すこととしている。
 具体的には、化審法の効率的な運用と申請者の利便性向上を目的に、電子媒体を用いた届出及び効率的な審査を可能とするシステムを構築していくこととしている。平成10年度は、当該システムの概念設計、基本設計及び詳細設計を行っているところである。また、平成11年度には、本設計に基づいたプログラムの開発及びパイロットスタディの実施を計画している。


<指導課>

1 平成11年度税制改正について

 平成11年度における環境衛生関係営業関係の税制改正は、次の方針によって行われることとされ、所要の法律改正を経て実施される予定である。

○国税関係

(1)中小企業等の事業基盤強化設備に係る特別償却制度等の適用期限の延長(所得税・法人税)

 環境衛生関係営業者等が、一定の規模以上の機械装置及び器具備品で製作後使用されたことのないものを取得し、事業の用に供したときは、その取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が認められているが、その適用期限を2年間延長する(平成11年3月31日→平成13年3月31日)。ただし、税額控除の対象は、個人及び資本金3,000万円以下の法人とし、また、リース税額控除のリース費用総額要件は、機械装置370万円以上、器具設備160万円以上とする。

(2)中小企業者の機械等に係る特別償却制度の適用期限の延長(所得税・法人税)

 中小企業者が、一定の規模以上の機械等で製作後使用されたことがないものを取得し、事業の用に供したときは、11%の特別償却が認められているが、その適用期限を2年間延長する(平成11年3月31日→平成13年3月31日)。ただし、平成12年5月31日までは中小企業投資促進税制(30%の特別償却又は7%の税額控除)で措置する。

(3)環境衛生同業組合等が設置する共同利用施設に係る特別償却制度の適用期限の延長(法人税)

 出資組合である環境衛生同業組合等が振興計画に基づき共同利用施設を設置した場合、取得事業年度において取得価額の8%の特別償却が認められているが、その適用期限を2年間延長する(平成11年3月31日→平成13年3月31日)。

(4)環境衛生同業組合等に係る留保所得の特別控除制度の適用期限の延長(法人税)

 出資組合である環境衛生同業組合等は、一定の要件のもとに控除対象留保金額の32%相当額を所得計算上損金に算入できるが、その適用期限を2年間延長する(平成11年3月31日→平成13年3月31日)。ただし、出資総額1億円超の組合に係る累積留保金額に応じた控除率は、20%、14%及び10%とする。

(5)公害防止用設備に係る特別償却制度の適用期限の延長(所得税・法人税)

 公害防止用の特定設備等(ドライクリーニング装置、活性炭吸着式回収装置)を取得した場合、特別償却が認められているが、その適用期限を2年間延長する(平成11年3月31日→平成13年3月31日)。ただし、特別償却率は16%、大企業の基準取得価額は75%とする。

(6)公衆浴場の事業用土地に係る相続税の軽減措置の適用対象面積の拡充(相続税)

 小規模事業用宅地等の評価の特例(80%評価減)の対象面積( 現行200平方メートル)を330平方メートルまで拡充する。

2 管理理容師及び管理美容師資格認定講習会の受講機会の拡大について

 管理理容師及び管理美容師は、理容師法第11条の4及び美容師法第12条の3の規定に基づき、常時2名以上の理容師又は美容師がいる理容所又は美容所に置くこととなっており、理容所又は美容所及びおける理容又は美容の業務の衛生管理の確保を図ることを目的としている。また、免許を受けた後3年以上業務に従事し、かつ、都道府県知事が指定する講習会の課程を修了した者でなければならないとされているところである。
 同資格認定講習会が受講希望者が少ない場合、毎年度開催されていないケースが見受けられるため、先般、総務庁行政監察局長より、必置資格の取得に係る利便向上の観点から、管理理容師又は管理美容師の資格取得を希望する者に対し、毎年度、資格認定講習会の受講機会が与えられるよう所要の措置を講ずる必要があるとの「あっせん」がなされたところである。
 この「あっせん」を受けて、「管理理容師資格認定講習会及び管理美容師資格認定講習会の指定について」(昭和44年6月25日環衛第9082号厚生省環境衛生局長通知)の講習会実施要領に講習会の開催方法等に関する留意事項として、

(1)近隣都道府県との合同開催

(2)管理理容師資格認定講習会及び管理美容師資格認定講習会の同一講習科目の合同開催

(3)他の都道府県の受講希望者の受け入れ

(4)近隣都道府県開催の講習会への受講希望者の斡旋

等を追記することとしているので、各都道府県におかれては、受講機会拡大の趣旨をご理解のうえ、関係都道府県及び関係機関等との十分な協力連携により適切な対応を図るようお願いしたい。

3 標準営業約款の推進について

 標準営業約款は、消費者保護の観点から、提供するサービスの内容や施設、設備の表示の適正化等を図ることにより、利用者又は消費者の選択の利便を図るため、営業方法又は取り引き条件について、1)サービスの標準化を行い、提供するサービスの内容を表示、2)管理基準に基づく、営業施設の維持・管理による衛生的サービス、3)損害賠償基準に基づいた損害賠償保険等の加入を定めたものである。
 現在、標準営業約款は、理容・美容・クリーニングの3業種について定められているが、消費者への周知は不十分な状況であるため、全国環境衛生営業指導センターにおいて、平成元年度より毎年11月を「標準営業約款普及登録促進月間」と定め、特にこの期間におけるキャンペーンを実施しているところである。
 厚生省としても本制度の普及促進のため、広報誌への掲載等を利用した広報等を行っているところであるが、各地方自治体においても、地域広報誌への掲載、関係団体への 協力依頼等を積極的に推進されるよう特段のご配慮をお願いする。
 特に消費者に最も身近な市町村レベルでの広報の活用等は、本制度の普及促進に大変効果的であるので市町村等への指導方配慮願いたい。
 また、全国環境衛生営業指導センターにおいては、消費者、営業者の意見を収集し、制度の発展的見直しを行う等制度の充実と登録の促進を図ることとしており、各都道府県においても、関係業界あるいは一般消費者等の意見を聞きながら、約款の普及と各都道府県環境衛生営業指導センターへの登録について、さらに一層の促進をお願いする。
 なお、都道府県における標準営業約款推進協議会の設置については平成元年1月27日生活衛生局指導課長通知により、お願いしたところであるが、未だ設置されていない都道府県におかれては早急に設置することとされたい。

4 クリーニング師の研修受講等の促進について

 クリーニング師の研修及び業務従事者の講習は、近年のクリーニング技術の高度化等に対応し、クリーニング所の業務に従事するクリーニング師等の資質の向上、知識の習得及び技能の向上を図るために実施しているところであるが、受講率の低い都道府県においては、受講の促進方についてより一層の配慮をお願いする。


<食品保健課>

1 自主的な衛生管理体制・情報提供の推進について

(1)食品衛生責任者の設置、食品衛生指導員の活動等を通じた営業者自らによる衛生上の管理、指導体制の確立を推進するため、厚生省としても引き続き(社)日本食品衛生協会に対し食品衛生指導員の巡回指導や業種別自主管理指導等の食品衛生指導員活動事業及び国際食品規格(コーデックス規格)に関する情報を民間レベルで収集し、情報提供を行う「コーデックス推進事業」について助成することとしている。
 自主的衛生管理の推進については、昭和59年1月21日環食第17号により、食品衛生指導員活動事業等に対するご協力をお願いしているところであるが、今後ともご配慮願いたい。

(2)食品の安全性についての国民の関心の高まりに対応し、消費者に対して、食品衛生に関する情報提供や窓口での相談を行う「食品安全情報等事業」についても、平成7年度から同協会への委託事業として行っているところであるが、事業の実施に当たりご協力をお願いいたしたい。
 また、食品保健に関する情報提供を推進することは重要であり、厚生省としては、同協会の協力を得て、平成7年度より同事業の一環として「食品安全情報相談室」を開設するとともに、担当課長等による「食品衛生行政説明会」を開催しているところである。

(3)輸入食品関係営業者の自主的衛生管理の推進を図るため、(社)日本輸入食品安全推進協会が平成4年度より輸入食品衛生管理者養成事業を実施しており、10年度は、東京、大阪において講習会を開催したところである。
 ついては、同協会が行う本事業について、関係営業者への周知に特段のご配慮をお願いするとともに、事業の実施に当たりご協力をお願いしたい。
 また、同協会への委託事業として、急増する輸入食品の安全性確保のために、引き続き、関係営業者に対する相談等を行う「輸入食品安全対策指導強化事業」を行うこととしている。

(4)地域における食品衛生の向上を目的に、食品衛生推進員制度が平成8年5月から施行されているところであるが、関係団体と十分調整のうえ円滑な実施についてよろしくお願いする。

2 食材中の食中毒菌汚染実態調査について

 食中毒予防のためには、調理施設等における衛生管理の徹底に加え、流通段階における汚染食品の発見及び改善措置が必要である。そこで、本年度は全国20自治体において生食用牛レバー、ミンチ肉及び有機又は水耕栽培と称して売られている生食用野菜を対象として7月から12月にかけて腸管出血性大腸菌O157及びサルモネラの汚染実態を調査している。
 当該事業については、次年度以降も同様の規模で実施する予定であるので、今回調査をお願いした自治体には引き続きご協力をお願いしたい。

3 社会福祉施設等給食の一斉点検について

 乳幼児や老人など食中毒に関するリスクの高い人々が生活する社会福祉施設等(社会福祉施設及び老人保健施設)における給食施設の衛生管理向上を目的として、昨年4月から7月にわたり一斉点検を実施し、その結果を公表するとともに、不備事項の改善指導について都道府県市区に対し通知した。当該点検については、次年度以降も引き続き実施することとしており、改善がみられない施設に対しては改善勧告も行う予定であるので、ご了知ありたい。

4 調理施設におけるHACCP試行事業について

 調理施設におけるHACCPの考え方に基づく衛生管理手法の検討を行うため、平成9年10月に学校、病院及び保育所の給食施設、病院の院外調理施設、弁当製造施設、レストラン並びにホテルで16施設のHACCP試行施設を設置し、現在、HACCP試行案の作成がほぼ終了したところである。
 次年度以降はこれらの成果を用いて、全国の調理施設にHACCPの考え方に基づく衛生管理手法の普及を図ることとしているのでご了知ありたい。

5 製菓衛生師法について

 近年の科学技術の進歩、消費者ニーズの高度化、多様化及び安全性の確保に応える等、製菓衛生師の業務に役立つ実践的な養成にふさわしいものとするとともに、ゆとりある教育と学校の独自性を活かせる教育の実施にも配慮するものとする「製菓衛生師養成のあり方検討会」の報告書が、昨年6月に取りまとめられた。
 これを踏まえ、製菓衛生師法施行規則(昭和41年厚生省令第45号)を一部改正し、製菓衛生師養成施設における必修科目の授業時間数及び1学級の生徒の定員についての見直しを行った。
 今後も引き続き、社会生活環境の変化に対応して、適宜、見直すこととしているので ご了知ありたい。

6 「指定法人等の指導監督に関する行政監察に基づく勧告」への対応について

 平成9年9月に 総務庁より標記勧告がなされ、食品衛生法については、第14条(食品等の検査)、第15条第1項及び第2項(食品等の検査命令)について、その検査実績がないこと等から指定検査機関における指定事業の廃止を求められているところである。
 厚生省としては、今回の勧告の趣旨を十分尊重しつつ、本制度が地方公共団体の事務量の軽減及び食品関係営業者の責任の明確化を趣旨としていること等から、以下の通り措置を講じることとしたので、ご協力をお願いする。

(1)第14条(食品等の検査)について

 現在指定されている法人については、事業実施の見込みが当面無いため、法人に指定の廃止を届け出させ、その指定を廃止する。

(2)第15条(食品等の検査命令)について

 今後とも検査実績の見込めない法人に対して指定の廃止を届け出るよう平成10年度中に指導するとともに、指定制度の活用を図るべく運用の改善を進める。


<新開発食品保健対策室>

 特別用途食品制度について
 近年における食品の製造・加工技術の進展、国民の健康志向の高揚等に伴い、また、昨今の日本人の食生活の欧米化による生活習慣病の増加を踏まえ、特別用途食品に対する社会的なニーズが高まっている。これに対応する形で特別用途食品の申請が増えているところである。中でも、食品や食品成分と健康とのかかわりに関する知見からみて、ある種の保健の効果が期待され、その旨の表示が許可された特定保健用食品は、急速に食品業界に注目されてきており、商品開発戦略の一部に位置付けられるようになっている。
 特定保健用食品として表示許可されている商品は、既に各都道府県、政令市、特別区に通知しているところであるが、平成10年12月末現在までに、乳酸菌を関与する成分とし、腸内の環境を良好に保つ飲料や、オリゴ糖を関与する成分とし、ビフィズス菌を増やして腸内の環境を良好に保つ食品など126商品について許可をしているところである。今後急速に申請件数が増加する傾向にあるため、各都道府県、政令市、特別区においては、引き続き本制度の円滑な実施について協力方よろしくお願いする。
 なお、申請に必要な資料について、申請を希望する者に理解しやすいよう、オリゴ糖を関与する成分とし、「お腹の調子を整える」等の旨を表示する特定保健用食品、及び、代替甘味料を関与する成分とし、「むし歯にならない」等の旨を表示する特定保健用食品の申請・評価に関する指針(「特定保健用食品の申請・評価に関する指針について」平成10年4月16日、衛新第21号)を作成したので、申請を希望する者から照会があった際には活用されたい。また、特別用途食品評価検討会の議事概要を厚生省ホームページに掲載しているので、申請を希望する者には、参考とするようお知らせ願いたい。


<検疫所業務管理室>

 検疫法の一部改正について
 近年、海外においてはエボラ出血熱等これまで知られなかった感染症が出現する一方、 国際間の人や物の移動の活発化や、航空機による輸送の迅速化に伴い、海外から感染症 が持ち込まれる危険性が著しく増大しており、国内への感染症の侵入防止のための施策 の充実及び国内における感染症対策と連携した対応が求められるようになってきた。
 こうした状況を踏まえ、総合的な感染症の予防対策の推進の一環として、国民の健康に重大な影響を及ぼす感染症の国内への侵入及びまん延を防止するために検疫法の一部を改正し、検疫業務の見直しを行ったところである。
 今般の検疫法の一部改正では、検疫の対象となる感染症の見直しが行われ、現在の検疫伝染病であるコレラ、ペスト、黄熱に加え、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、感染症新法という。)における1類感染症の内、エボラ出血熱等のウイルス性出血熱を検疫感染症として追加するとともに、新感染症について、厚生大臣の指示に従い、検疫所長が感染症新法の規定に準じて検疫を実施することとなった。さらに、隔離・停留措置の見直しが行われ、隔離・停留を行う場所は検疫所の隔離・停留施設等から感染症新法で規定する感染症指定医療機関へ入院を委託して行うこととされ、隔離・停留の対象となる患者等の取扱も感染症の類型に応じて行い、併せて、隔離・停留に係る解除請求等の手続きも整備したところである。
 その他、検疫所長が行う業務としては、出入国者の求めに応じて、検疫所において、検疫感染症以外の政令で定める感染症についても診察、検査及び予防接種の実施や国内防疫との連携を確保し、国内での迅速な対応に寄与するため、都道府県知事と検疫所の連携の強化及び海外で感染症に罹患することを未然に防止するために海外の感染症情報の収集・分析等を行い、必要な情報を海外渡航者へ提供することとなった。
 なお、この改正の施行日は、感染症新法と同様、本年4月1日から施行されることから、その運用にあたっては、一層の都道府県のご協力をお願いする。


<乳肉衛生課>

1 狂犬病予防対策について

 犬の登録は生涯一回であるが、狂犬病予防注射については、毎年一回受ける必要があるため、平成11年の狂犬病予防注射においても、注射頭数が減少することのないよう、関係団体との連携を十分に図り、犬の所有者等に対し周知するとともに、予防注射の実施方特段のご配慮をお願いする。
 狂犬病予防対策事業費は、平成7年度から地方交付税化されたところであるが、狂犬病予防業務に支障をきたさないよう、財政当局と十分に協議の上、狂犬病予防対策事業費の確保に努めるようお願いする。
 また、平成10年10月2日付け狂犬病予防法の一部を改正する法律により狂犬病発生時の措置及び輸出入検疫の対象動物として、犬に加えて猫、あらいぐま、きつね、スカンクが適用され、平成11年4月1日(ただし輸出入検疫は平成12年1月1日)から施行されることとなったので、関係者等への周知徹底をお願いする。
 なお、地方分権推進計画に基づき、犬の登録等の事務が都道府県から市町村へ委譲されることから、円滑に事務の委譲を図るとともに、委譲後も狂犬病予防対策事業に支障のないよう犬の登録等が都道府県でも把握できる仕組みを平成11年中に構築されたい。

2 食鳥検査体制の充実について

 「食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律」に基づく食鳥処理場の施設設備及び衛生管理基準の遵守について、食鳥処理業者等に対する厳正な監視指導等に一層のご努力をお願いする。
 特に、認定小規模食鳥処理場は、食鳥検査員が常駐していないこともあり、監視指導が行き届かないとの指摘もあることから、処理羽数、食鳥処理衛生管理者の配置状況、確認の状況等監視指導の厳正な執行をお願いする。
 また、食鳥検査員の教育訓練については、厚生省としても食鳥処理衛生技術研修会を開催し、食鳥検査員の資質向上に努めることとしているが、各都道府県等におかれても研修会等を通じ、一層の検査技術の向上に努められたい。
 なお、厚生大臣の指定した検査機関に食鳥検査の全部又は一部を委任している府県市にあっては、その業務の適正な実施について、当該検査機関に対する監督指導方よろしくお願いする。

3 残留動物用医薬品対策について

 畜水産食品中の残留抗菌性物質等の動物用医薬品については、CODEXでの最大残留基準値の考え方を導入し、国際基準値が設定される等安全性評価のために必要な資料が整備されたものについて、順次、食品衛生調査会の審議を経て、残留基準値の設定を進めているところである。
 この方針に沿って、オキシテトラサイクリン等6物質について、平成7年12月に残留基準値を設定し、平成8年7月より施行している。また、スルファジミジン等5物質について、平成9年3月に残留基準値を設定し、平成9年10月より施行している。さらに、現在、スピラマイシン等4物質について、食品衛生調査会において、審議しているところであり、平成10年12月11日に食品衛生調査会乳肉水産食品部会・毒性部会合同部会報告がとりまとめられたところである。また、今後、残留基準値の設定を検討する品目について、平成10年12月にプライオリティーリストを改訂し、公表したところである。 なお、新たに食品中の動物用医薬品の残留基準が設定されたことに伴い、これらの残留基準に係る食品の検査体制の整備を図るとともに、家畜生産担当部局との連絡を密にし、残留基準に適合しない食品が流通することのないよう監視指導をお願いする。

4 対米輸出水産食品の衛生対策について

 米国食品医薬品局(FDA)は、平成7年12月17日付で米国内で製造加工されるすべての水産食品へのHACCP等の施行を義務付ける規則を公布し、平成9年12月18日から製造加工されるものについて施行されたところである。
 この規則は米国内で製造加工される水産食品のみならず、諸外国から米国へ輸入される水産食品も対象とされている。
 厚生省としては、FDAとの間で包括的な水産食品の検査制度の同等性について合意し、合意後は、厚生省の保証する施設のリストをFDAに提出することにより当該施設からの輸出を可能とすべく協議してきたが、同等性の判断基準制定に係るFDAの事務的手続きの遅れにより、いまだかかる合意ができていない。
 このため、平成9年12月1日付乳肉衛生課長通知「対米輸出水産食品の取扱いについて」(最終改正 平成10年12月1日付衛乳第290号)により、加工施設が米国連邦規則の要件を満たしていることを認定する制度を運用しているところであり、今後とも特段のご協力をお願いする。
 なお、本規則の対象者は、最終製品を加工する者以外にも原料を保管する施設、一次加工施設、最終製品を冷凍保管する施設も対象となるため、これら関連施設が他の都道府県等にある場合、認定のための調査等を依頼されることもあることから、関係都道府県等は、お互いに連携を取ってこれらについて対応されるようお願いする。


<食品化学課>

1 食品添加物の指定及び規格基準の改正について

 平成10年9月、グルコン酸カリウム及びグルコン酸ナトリウムについて新たに添加物として指定した。これにより、厚生大臣が定めている添加物は現在351品目となった。また、平成10年6月にはスクラロースについて食品衛生調査会に諮問し、その指定の可否について審議が行われている。

2 第7版食品添加物公定書について

 平成10年5月に、食品添加物公定書の改正について、食品衛生調査会に諮問し、部会での審議を経て、WTO通報等を行い、今春にも改正できるよう作業を進めているところである。今回の改正では、既存添加物名簿に収載されている60品目・3製剤について規格を新たに設定するとともに、分析技術の向上に伴い新たな試験法を採用している。これらの規格は、国際的整合化を推進させるものとなっており、添加物の品質向上がさらに推進されるものと考えている。

3 食品添加物の一日摂取量の調査について

 食品添加物の安全性確保対策の一環として、市販食品の分析による食品添加物摂取量調査(国民栄養調査を基礎とするマーケットバスケット調査方式)を実施してきたところである。平成11年度においても、本調査を実施することとしているので、各地方公共団体の御協力をお願いする。

4 未指定添加物使用食品について

 従来より、未指定の添加物の使用については、監視指導等適切な運用をお願いしているところであるが、これらの添加物が使用された食品の流通等を防止し、未指定添加物の使用等につき適切な対応を図るため、未指定添加物の食品中の添加物分析法を確立することとしている。

5 農薬の一日摂取量の調査について

 厚生省では、国民が日常の食事を介してどの程度の農薬を摂取しているかを把握するために、平成3年度より残留農薬の一日摂取量調査(国民栄養調査を基礎とするマーケットバスケット調査方式)を実施している。この調査は、実際の食生活における農薬の摂取量を把握するものであり、食品の安全性を確保する上で重要な調査と考えており、平成11年度においても調査を行うこととしている。実施に当たっては、各地方公共団体の御協力をお願いする。

6 残留農薬基準設定における暴露評価の精密化について

 従来、残留農薬基準設定に当たっては、理論最大一日摂取量方式を採用し、国民の平均摂食量のみを用いて暴露量を試算してきたところであるが、今後は平成10年8月に食品衛生調査会から意見具申された「残留農薬基準設定における暴露評価の精密化」により残留農薬基準を設定していくこととしている。
 具体的には、平成7年から食品摂取量の調査方式が変更されたことにより、幼小児、妊婦、高齢者のそれぞれの集団のの摂食パターンを考慮した暴露量試算も可能となったことから、国民平均に加えて、各特定集団の暴露評価を実施する。さらに、作物残留試験成績、非可食部の残留農薬に関する試験成績、加工調理の残留農薬に関する試験成績等に基づく科学的な暴露量試算方式(日本型推定一日摂取量方式)を採用することにより、より精密に暴露量を試算し、これに基づいて残留農薬基準を設定することとしている。

7 残留基準の見直し等について

 平成10年12月18日、2,4−Dの農産物中に残留する許容基準を設定すること及び42農薬の農産物中に残留する許容基準を見直すことについて、厚生大臣より食品衛生調査会に諮問した。
 今回の諮問は、平成10年8月7日の食品衛生調査会から厚生大臣あての「残留農薬基準設定における暴露評価の精密化に関する意見具申」において提言されていること等により、43農薬毎に必要な農産物について残留基準値の設定又は見直しをしようとするものである。

8 食品中の残留農薬検査結果について

 地方公共団体において実施されている残留農薬検査結果について、検疫所の検査結果等と併せて、平成10年11月に取りまとめて公表したところである。今後とも検査結果データの提供につき、より一層の御協力をお願いする。



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