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2.高齢者保健医療制度の改革等について

(1)高齢者保健医療制度の改革の動向について

 高齢者医療制度の見直しについては、昨年5月以来、医療保険福祉審議会制度企画部会において審議が行われ、同年11月9日に意見書が取りまとめられたが、これまでの主な経緯と今後の取組方針は、以下の通りである。

平成8年12月2日  老人保健福祉審議会意見書「今後の老人保健制度改革と平成9年改正について」

・老人保健制度の見直しの方向として、以下の4つの方向を提示。
1)全高齢者を対象とした独立の保険制度を創設
2)高齢退職者等が被用者保険制度、国民健康保険制度それぞれに継続加入するとともに、高齢者の加入率等の違いに着目した制度間の財政調整を実施
3)医療保険制度を全国民を対象とするものへと統合し、その中に高齢者を位置付け
4)現行老人保健制度の基本的枠組みは維持しつつ、必要な見直しを実施

平成9年8月7日  医療保険制度の抜本改革に関する厚生省案

・高齢者も含めて地域医療保険制度に一本化する案と、若年者とは別建ての高齢者医療制度とする案(独立保険制度案又は共同事業案)とを提示。
 
・患者一部負担の定率化、すべての高齢者について保険料を徴収して全額を老人医療費に充てること等を提案。

平成9年8月29日  与党医療保険制度改革協議会の改革案

・高齢者を対象とした独立の保険制度の創設、患者一部負担の定率化等を提案。

平成10年11月9日 医療保険福祉審議会制度企画部会意見書「高齢者に関する保健医療制度のあり方について」

・高齢者に関する新たな保健医療制度の基本的枠組みとして、
1)高齢者全体の医療を他の医療から区分し独立した仕組みとすべきとする考え方
2)被用者保険・国保グループごとに高齢者の医療費を負担すべきとする考え方が示されている。
 今後、医療保険福祉審議会に対し、この意見書の考え方に沿った試算や実務面での問題等を示し、改めて審議していただいた上で、その結果を踏まえて具体的な成案の取りまとめに取り組む予定である。

(2)高齢者の薬剤一部負担に関する臨時特例措置について

 現下の経済状況にかんがみ、抜本改革までの間の応急的な措置として、平成11年度において、国の財源により、高齢者の薬剤一部負担を軽減する臨時特例措置が平成11年度予算案に盛り込まれた(1,270億円)
 今回の臨時特例措置は、老人保健制度の対象者である老人が医療機関(調剤薬局を含む。)に支払うこととされている薬剤一部負担金を、本人に代わり国が臨時特例的に支払うという仕組み(委任払い方式)であり、7月1日から実施する予定としている。
 なお、この臨時特例措置が保険者財政に与える影響については、保険料負担の増を招くことのないよう、確実に所要の措置を講ずることとしている。
 支払事務については、審査支払を国が診療報酬支払基金及び国民健康保険団体連合会に委託し、地方公共団体に事務負担がかからないよう配慮した。
 具体的な仕組み等については、今後検討を進めることとしているが、高齢者、医療機関等関係者への周知等に関しては、協力方お願いする予定である。

(3)老人の外来一部負担金の改定について

 平成9年の老人保健法改正において、定率制をとる若年制度との均衡を図り、実効負担率を維持するため、一部負担の医療費スライド制を導入した。
 外来一部負担金については平成11年度から、入院一部負担金については平成13年度からそれぞれ医療費スライドが行われることとなるが、平成11年度の外来一部負担金は現行の500円から530円に改定する予定である。
 外来一部負担金の改定額については、現在告示の準備中である。告示を行い次第、高齢者、医療機関等関係者への周知等に関し協力方お願いする予定である。
 
〔参考〕老人の入院一部負担金については、平成9年の改正法により、平成11年度から1日1,200円(平成10年度は1,100円)とすることがすでに法定されている。

(4)平成11年度における老人保健拠出金の算定について

 調整対象外医療費、特別調整基準額、事業費拠出金の算定に係る諸率については、今後、審議会における諮問答申を経て、所要の政令を制定する予定である。その後、医療費拠出金算定に係る諸率についてもすみやかに告示する予定である。
 
〔参考〕平成10年度における老人保健制度の改正(老人医療費拠出金に関する事項(平成10年6月施行))
 老人医療費拠出金の負担のあり方について、医療保険制度等の抜本的な改革が行わ れるまでの間においても、現行制度の下における公平化を図るもの。

《改正内容》

◎退職者の老人医療費拠出金負担の見直し(2分の1を退職者医療制度で負担)
◎老人加入率上限に関する特例の見直し(25%→30%)

(5)特別保健福祉事業について

 被用者保険の拠出金負担増の緩和を図るとともに、老人保健制度の基盤の安定化を図るための措置として、厚生保険特別会計の特別保健福祉事業資金(1.5兆円)の運用益を、被用者保険における老人保健制度の基盤安定化等のために充てることとしており、平成2年度以来特別保健福祉事業として実施してきているが、平成11年度は、320億円を助成することとし、引き続き被用者保険の保険者の拠出金負担の軽減等を図ることとしている。(なお、助成事業のうち、医療法人等が行う老人保健施設の整備については、平成10年度と同額の80億円を助成する予定である。)

3.老人医療費適正化対策等の推進について

(1)老人医療費適正化対策の推進

 老人保健制度の安定的な運営を将来にわたって確保していくためには、老人医療費の無駄を省き、適正なものとすることが重要である。このため、従来から老人医療費の適正化対策の推進に努めてきたところであるが、高齢化の進行等に伴い、年々老人医療費が増加し続けている状況である。
 こうした中で、各市町村においては、診療報酬明細書(レセプト)点検の充実強化、重複・頻回受診者に対する訪問指導の充実強化、交通事故等第三者行為による被害等の把握と求償事務の促進等医療費適正化対策を強力に推進する必要があるが、平成11年度においては、特に、次の諸点に取り組むこととしており、老人医療費適正化対策の一層の推進が図られるよう管下市町村を指導願いたい。
 
〇高額医療地域における適正化対策の強化
 
〇レセプト縦覧点検の強化
 
〇レセプト縦覧点検結果の保健指導への活用
重複・頻回受診者などハイリスク者の把握等
 
〇重複・頻回受診者に対する保健婦等による訪問指導活動の推進
在宅保健婦や看護婦等の活用、先進的な市町村及び健康保険組合の経験の活用
 
〇第三者行為求償事務の徹底
 
 国としても、老人医療費適正化を推進するための予算については、重複・頻回受診者に対する訪問指導事業費を増額するとともに、新たに、1人当たり医療費の高い地域(市部)において適正化対策を推進するための「高額医療費地域に対する適正化特別対策事業費」を確保し、適正化対策の一層の充実強化を図ることとしている。
 各都道府県においても、このような状況を踏まえ、平成11年度の老人医療事務指導監査の実施に当たり、指導監査体制の充実に努めることはもとより、特に、老人医療費の増加要因の分析をはじめ、「老人保健法による老人医療事務の指導監査の実施方針について」(平成5年3月22日付老企第72号老人保健福祉局長通知)に従い、指導監査を実施し、老人医療費適正化対策の一層の推進が図られるよう管下市町村を指導願いたい。

(2)老人保健福祉施設等の指導監査について

介護保険制度の導入への対応
 平成12年度の介護保険制度導入を踏まえ、老人保健施設及び特別養護老人ホームに対する実地指導、指導監査に当たっては、介護保険制度の円滑な移行が図られるよう、介護保険担当部門との連携を図りつつ十分な指導の徹底をお願いしたい。
具体的な指導の内容については適宜お示しする。
 
老人保健施設の実地指導
 老人保健施設に対する実地指導については、老人保健施設が寝たきり等の状態にある老人の家庭への復帰等を支援するものであることから、目的に沿った適正な施設運営が行われるよう、適切かつ効果的な指導を行っていく必要があるとともに、在宅介護を推進する観点から、デイケア及び短期入所の適切な実施並びに市町村保健福祉サービス等との連携についても併せて配慮する必要がある。
 このため、法令・通達等の基本的事項が遵守されていない施設については、是正改善の指示を行った後、速やかにその改善状況を確認するなど、強力に指導するとともに、他の施設においても、新たに基本的事項に問題が生じることのないよう適切な指導を行うこと。特に利用対象者については、昨年度に引き続き、「老人保健施設の入所者の範囲」により定められている基準に基づく、適切な入退所(通所を含む。)判定が行われるよう重点的に指導願いたい。
 また、老人保健施設が急増している都道府県においては、開設許可担当部門と連携を図りながら、実地指導時等の問題点を踏まえ、開設許可前から制度の趣旨等について十分指導・助言を行われたい。また、本庁の実地指導体制の充実強化に努め、実地指導事務を保健所等に委任している都道府県にあっては、研修会及び連絡会議等を実施して、統一的な実地指導ができるよう体制の整備を図るとともに、新たに実地指導を行うこととなる中核市等(特別区を含む。)を有する都道府県にあっては、当該中核市等における実地指導事務が円滑に行われるよう、特段のご配慮を願いたい。
 以上のことを基本に、各都道府県は保健所政令市等と連携を図り、平成11年度の実地指導に当たっては、次の事項に重点をおいて実施されたい。
(ア)適切な施設療養の提供
・適切な入退所(通所を含む。)判定の実施と記録の整備
・家庭復帰を目標とした計画的な施設療養の実施と記録の整備
 
(イ)適切な職員配置の確保等
・職員配置基準の遵守
・職員に対する辞令等の交付
 
(ウ) 適正な施設運営の確保
・デイ・ケアの適正な実施と記録の整備
・適切な利用料の設定と徴収
・非常災害対策の計画的な実施
 
(エ) 適正な施設療養費の額の算定等
・適正な施設療養費の額の算定
・入所者の通院に係る文書の交付と通院先保険医療機関からの情報提供
 
(オ) 第二種社会福祉事業(無料又は低額老人保健施設利用事業)の適正な実施
 
老人福祉施設等に対する指導監査
 老人福祉施設については、その設置目的に沿って、利用者の意向・希望を尊重し、適切な入所者処遇を行うとともに、老人短期入所生活介護(ショートステイ)や日帰り介護(デイサービス)等施設機能を活用した在宅福祉の推進に積極的な役割を果たしていくことが求められている。そのためにも、法人・施設が健全で安定した運営を確保していくことが不可欠であり、都道府県等の指導監査の果たす役割は極めて重要であることを旨として、次の事項に留意の上、適切な指導監査を実施されたい。
 
(ア)指導監査の充実強化等
 法人・施設の運営状況をみると、施設運営費の不正流用など極めて憂慮すべき不祥事が依然として後をたたないことは誠に遺憾である。特に、法人・施設の幹部職員の老人の福祉等に対する認識の欠如が不祥事の発生要因の一つとなっているので、研修等を通じ老人の福祉の重要性及び法人の公共性に対する認識の高揚に努めていく必要がある。
また、新設法人の認可等については、平成9年3月以降、都道府県等において新しい審査体制等で行われているところであるが、認可時における役員構成及び資金計画等についての厳正な審査は当然のこととして、法人認可後における施設建設工事に係る契約事務手続、法人運営体制の整備、事業開始の準備等についても、継続的な指導を十分お願いしたい。
 さらに、問題を有する法人・施設に対しては、重点的かつ継続的に指導監査を実施するとともに、問題点について、当該法人・施設の幹部役職員に十分認識させ、期限を付して改善を図るよう指導されたい。
 なお、是正改善が図られない法人・施設については、市町村に対して新規入所措置の停止等の措置をとるよう協力を求めるほか、社会福祉事業法に基づく改善命令、業務の停止、役員の解職勧告といった処分を行うなど厳正に対処するとともに、施設運営費等の不正流用などの不祥事案については、必要に応じ、法的措置をとるよう、指導願いたい。
 
(イ)入所者処遇に重点をおいた指導監査の実施
 施設運営の基本は、地域との緊密な連携の下に、適切な入所者処遇を確保することにあるので、指導監査に当たっては、入所者の立場に立った施設運営が図られるよう、食事・入浴・排泄介護等の入所者処遇に重点をおいて実施されたい。
 
(ウ)指導監査の主眼事項等
 次の事項に重点をおいて実施されたい。
 1) 法人及び施設の適正な運営管理体制の確立
・法人の組織運営
・資産管理及び会計経理
・施設の運営管理
・防災対策の確立
・施設整備工事
 
 2) 新設法人の運営管理体制の確立
・法人の組織運営
・施設整備工事
・諸規程の整備
 
 3) 不祥事防止対策の確立
・法人の組織運営
・施設の運営管理
・会計経理
・入所者預り金の取扱い
・寄付金の取扱い
 
 4) 適切な入所者処遇の確保
・入所者の意向・希望を尊重した処遇
・生活環境の確保
・ゆとりある入所生活の確保
・個別処遇方針の樹立
・食事、入浴、排泄介護の充実
・褥瘡予防対策の推進
・寝たきり防止等離床対策の推進等
 
 5) 適切な職員処遇の確保
・適正な給与水準等の確保
・適正な労働条件の確保
・職員研修等資質向上対策の推進
・福利厚生等士気高揚策の充実
 
 6) 在宅対策への積極的な取組み
・施設機能を活用した老人短期入所生活介護(ショートステイ)や日帰り介護(デイサービス)等在宅対策への積極的な取組み
 
実施機関に対する指導監査
 実施機関に対する指導監査は、次の事項に重点をおいて実施されたい。
 なお、費用徴収事務については、依然として徴収誤りが見受けられるので、その適正を期すよう指導願いたい。
(ア)実施体制の確保
(イ)適正な入所措置の確保
(ウ)適正な費用徴収事務の確保
(エ)適正な遺留金品の処理
(オ)在宅対策(老人保健福祉計画の推進)への積極的な取組み

(3)老人保健健康増進等事業

 本事業は、老人の保健及び健康増進等を図るため、先駆的な老人保健、老人福祉、健康増進事業等に対する助成を行い、老人保健福祉サービスの基盤の安定化に資することを目的とし、平成11年度においては、42.5億円を確保することとしている。
 本補助金については、本事業の趣旨に沿った先駆的、試行的な老人保健福祉事業に対して交付することとしているので、老人保健担当部門と老人福祉担当部門が十分連携を図り、積極的な取り組みをお願いしたい。

4.介護サービスの基盤整備について
(1)基本的な考え方について

 平成10年度、11年度の介護サービス基盤整備
 平成12年4月からの介護保険制度の円滑な施行を図るためには、地域の介護需要に対応できるだけの介護サービス基盤を整備することが重要である。
平成11年度政府予算(案)において、訪問介護員(ホームヘルパー)178,500人(新・高齢者保健福祉推進十か年戦略(新ゴールドプラン)の目標値は170,000人)、特別養護老人ホーム300,000人分(新ゴールドプランの目標値は290,000人分)をはじめとして、新ゴールドプランの目標値を達成し、あるいはそれを上回る整備量を確保していることから、各市町村において、介護保険制度の施行に伴い必要となる施設等の整備が前倒しして行われるよう、適切な指導をお願いしたい。(参考資料4参照。)
また、1月中旬以降各都道府県・市からのヒアリングを予定している今年度3次補正予算に係る施設整備については、都道府県・市のいわゆる裏負担に対し特別交付税措置が講じられることとされていることから、財政担当部局ともよく協議の上、今年度事業への前倒しも積極的に検討されたい。
 
 今後の介護サービス基盤整備の方向
 平成11年度第1四半期には、全国の地方自治体において、各市町村が今年度に実施した要介護高齢者等の実態調査の結果を踏まえて、平成12年度から16年度までの介護サービス基盤の必要量を見込む作業を行う予定となっている。特に都道府県においては、老人保健福祉圏域ごとの介護保険施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型病床群等)の必要量について、2月を目途に国が示す予定の参酌標準を参考にした上で算出いただくこととなるが、その際には、介護保険施設の整備量が関係市町村の第1号被保険者の介護保険料に反映されることにかんがみ、市町村の意向をよく聞いた上で十分に調整を図られたい。
 また、介護保険制度下での施設整備に関しては、特に次の3点に留意されたい。
 
(ア)特別養護老人ホームについては、地域における今後の状況等を踏まえつつ、より良質で効果的な介護サービスを安定的、効率的に提供できるような運営基盤の確保が求められている。このため、
 
1) 多機能化・機能転換(痴呆性老人グループホーム、デイサービス、ショートステイ、ホームヘルパーステーション、ケアハウス、高齢者生活福祉センター等の機能を併せ持つこと)、
 
2) 適正な規模の確保(需要がある地域では基本的には70人程度以上の定員規模を確保すること)、
 
3) グループリビングユニット型(少人数単位で共用の空間を設け孤立化を防ぐよう工夫された形態)等の個室化
などといった将来に向けての取組みが重要になると考えられる。したがって、こうした内容を含む老朽改築整備や増改築・新築整備を積極的に推進していただきたい。
 
(イ)需要に見合う介護保険施設の整備とあわせ、要介護状態の改善等により介護保険施設からの退所が適当な高齢者や常時の介護は必要としないが在宅での一人暮らしが困難な高齢者が入居して生活する施設(養護老人ホーム、ケアハウス、高齢者生活福祉センター等)の整備が求められる。
これらの生活支援機能を有する施設のあり方については、今後体系的な見直しを行うこととしている。
 
(ウ)今後の高齢者保健福祉の大きな課題の一つは、痴呆性高齢者に係る介護の問題である。その重要な対策として、近年、痴呆性老人グループホームの必要性が高まっていることから、今年度3次補正予算において施設整備費の補助が創設されたところである。痴呆性老人グループホームは、痴呆性老人に対し、その特性に応じた生活環境(ハード)を提供するとともに、家庭的な雰囲気で老人が自立した生活を送れるように支援する(ソフト)ものである。したがって、従来の高齢者福祉施設や在宅サービスの延長線で捉えることなく、21世紀に向けた痴呆介護体制の拡充ヘの重要な段階として、その積極的な普及をお願いしたい。
 
新たな課題への対応
 介護保険制度の円滑な施行も極めて重要な課題であるが、もとより介護保険制度のみによって全ての高齢者保健福祉問題が解決するものではない。要介護状態にできる限りならないようするための予防対策や、一人暮らし高齢者に対する生活支援といった、介護保険では給付されない社会サービス等を地域において総合的に展開できる体制を構築していくことは、今後の高齢者福祉行政の大きな課題となる。
 具体的には、平成11年度中に全国の地方自治体において行われる老人保健福祉計画の見直しの中でそれぞれの実情を踏まえた作業を行っていただくことになるが、1月27日の介護保険担当者全国会議においてその指針を示すこととしている。このように老人保健福祉計画が有する重要性を十分認識の上、市町村に対し適切な助言や指導をお願いしたい。

(2)在宅福祉サービスの整備について

 介護保険制度の導入を目前に控え、要介護状態等となった場合においても、可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、特に在宅福祉サービスの拡充が重要であることから、各都道府県におかれては、管下の地方自治体に対する指導強化を図られたい。併せて、介護保険制度の対象とならない保健福祉サービスについても、積極的に取り組まれるよう管下の地方自治体に指導されたい。
 
 老人訪問介護(ホームヘルプサービス)事業
 訪問介護(ホームヘルプサービス)事業については、平成9年度より段階的に事業費補助方式への移行を進めてきたところであるが、介護保険制度の導入を控え、サービスを効率的に提供する体制を整備するとともに、質・量ともにサービスのさらなる拡充に努められたい。
 平成11年度においては、ホームヘルパーの身体介護中心単価の大幅な改善を図ることとしている。
これは、介護保険制度の導入を踏まえ、身体介護の需要がさらに急増することが予想されることから、特に身体介護に重点をおいてサービスの実施体制を整備する必要から改善を図ったものである。

(参考)ホームヘルパー単価
  平成10年度予算   平成11年度予算(案)
身体介護 2,890円 3,730円
家事援助 1,790円 1,460円

 老人日帰り介護(デイサービス)運営事業
 日帰り介護(デイサービス)事業についても、介護保険制度の導入への円滑な移行を図るために、平成10年度より、利用者の要介護度及び利用実績に応じた補助を行う事業費補助方式を導入したところであり、その趣旨を踏まえ平成11年度においても引き続き、本方式への移行を進めるよう指導をお願いするとともに、サービスのさらなる拡充に努められたい。
 また、老人日帰り介護(デイサービス)運営事業の実費徴収等の取扱いについて、会計検査院より、利用者が負担すべき原材料費等が適切に徴収されていなかった事例などがあるとして、是正改善処置要求がなされたところである。これを踏まえて、既に、平成10年11月6日付の老人福祉計画課長補佐内かんによりその具体的取扱いについて示したところであるので、これに沿って遺憾なきよう取り計られたい。
 
 在宅介護支援センター運営事業
 在宅介護支援センターの体制については、介護保険制度の導入を視野に入れた整備を図ることが必要であり、次のような考え方に沿って、その拡充を図られたい。
 
(ア)在宅介護支援センターの今後の役割
 在宅介護支援センターは、現在、在宅で高齢者の介護を行う者等に対し、在宅介護に関する相談やサービス実施機関との連絡調整などを行っている。介護保険制度下においては居宅介護支援事業への取組みを強める一方で、総合相談や介護保険では給付しきれないサービスの調整、地域における情報体制の整備など地域ケアを支える機能は、今後とも実施していく必要があると考えられる。
 したがって、平成12年度以降の取扱いについては、在宅介護支援センターが、居宅介護支援事業者の指定を受けることを想定しつつ、地域ケアを支える機能のあり方を含め検討していくことしている。
 また、在宅介護支援センターについては、情報の連携が円滑に行われるよう、市町村内の全ての支援センターを包摂する連絡支援体制を整備するとともに、他の支援センターを統括支援する「基幹型支援センター」を市町村に1か所定めることとするなど、その機能強化をお願いしているところである。
 
(イ)基幹型支援センターの体制
 基幹型支援センターは、地域ケアの中核を担うことが期待されるものであるが、これについては次のような理由により、市町村の直轄若しくはそれに準じた機関において運営することが望ましいと考えられる。
・市町村全域にわたる在宅保健福祉サービスを対象としていること。
・個別のサービス提供機関から独立した中立的な立場で市町村における在宅保健福祉サービスを全体調整する任務を担うこと。
・市町村全域にわたる高齢者のプライバシーに関わる情報を扱うこと。
ただし、直轄で実施する場合であっても、在宅介護支援センター業務の専門性、継続性を勘案し、短期間で人事異動が行われるような体制は適切ではないと考えている。したがって、老人保健福祉の専門家を積極的に活用するなどの配慮が必要である。
なお、連絡支援体制を構築するために基幹型支援センターを整備する場合など、地域の実情に応じて必要と認められる場合には、地方老人保健福祉計画の見直し前であっても、計画を超えて支援センターを設置して差し支えない。

(3)福祉施設サービスの整備について

 老人福祉施設の整備
(ア)平成11年度老人福祉施設関係予算(案)について
 平成11年度予算(案)において、新ゴールドプラン関係施設整備については、約1,278億円を計上したところである。
 また、平成10年度第3次補正予算において、新ゴールドプラン関係施設整備分として、約569億円を計上している。
 これにより、新ゴールドプランに基づく目標量達成に向けた残事業に必要な経費とともに、これを上回る整備や新ゴールドプランに目標量の設定のなかった痴呆性老人グループホーム等の整備について、必要となる経費の確保が行えたものと考えている。
 
(参考)新ゴールドプラン関係施設の事業量

  平成10年度第3次補正 平成11年度
○特別養護老人ホーム 10,000人分 10,845人分
○ケアハウス 10,000人分
○ショートステイ 3,000人分 6,198人分
○老人デイサービスセンター 150か所 1,717か所
○在宅介護支援センター 1,436か所
○高齢者生活福祉センター 200か所 30か所
○痴呆性老人グループホーム 200か所 200か所

(イ)平成11年度における整備方針について
1) 基本的整備方針
 特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター、ケアハウスなどの新ゴールドプラン関係施設については、新ゴールドプラン策定の基礎となった地方老人保健福祉計画に示された目標整備量に基づき、計画的な整備を図るとともに、介護保険制度の施行による平成12年度以降の介護サービス供給体制の整備を前倒しして行うものも併せて推進することとしている。
また、特別養護老人ホーム及び養護老人ホームにおいて、大部屋として整備されているものや老朽化が激しいものについては、サービスの質の向上を図る観点から平成11年度においても優先的に整備を行う方針である。
 
2) 平成11年度国庫補助協議について
老人福祉施設をはじめとする社会福祉施設については、平成10年度末から平成11年度にかけて、切れ目のない予算執行を行う方針である。
このため、平成11年1月中旬から平成10年度第3次補正予算に係る整備と併せて平成11年度に係る整備も協議を受けることとしているので、準備方よろしくお願いしたい。
なお、国庫補助協議にあたっては事業内容等の徹底した審査を求めているところであるが、平成10年度では国庫補助協議後の事業内容変更等の事例が散見された。
今後は、執行段階での予期せぬ事由による計画変更を除き、このような事態が生じないよう、協議対象施設の審査にあたっては、一層厳密な審査をお願いしたい。
 
3) 平成11年度国庫補助基準単価について
平成11年度では、「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針(平成9年4月公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議決定)」及び3省合同調査後の状況等を総合的に勘案し、△3.4%の改定を行うこととしており、過日、平成11年度社会福祉施設等施設整備費国庫負担(補助)基準単価(案)を通知したところである。
平成11年度における老人福祉施設整備の協議においては、上記の新基準単価を使用することとなることから、設置主体への周知方を徹底されるようお願いする。

(ウ)施設整備業務の適正化について

本年度、会計検査院の実地検査において、業者に対し支払いの必要のない設備代金であるにもかかわらず、契約書を作成して売買契約が行われていた事例等が指摘されている。 また、近年、社会福祉法人と建設請負業者等との間で当初の請負契約を締結した後、工事請負代金を減額して変更契約を締結し直しているにもかかわらず、都道府県・市へ当初契約額で実績報告を行っていた事例など、施設・設備整備費に係る不正受給事件が発覚している。 これらの事件の殆どが、平成9年度以降の施設整備業務改善方策を示す以前の整備ではあるが、今後、同様の事件の再発防止を図るために、管下市区町村及び社会福祉法人等に対し、各種改善通知の趣旨に沿った指導の徹底をお願いしたい。 各都道府県・市におかれては、先の改善方策に基づく体制づくりを進めるとともに、補助金の交付申請及び実績報告の審査の徹底に努められたい。 なお、各種全国会議等で再三申し上げてきたことではあるが、不正受給の事実が発覚した場合には、補助金を返還させることはもとより、不正に関与していた者についての告発を行うなど、厳正な対処をお願いする。

 

 老人福祉施設の運営

(ア)施設の役割と適正な運営管理の推進
 老人福祉施設は、新ゴールドプランの着実な推進により平成8年10月1日現在、1万5千か所、在所者は、33万人(通所者を除く)となっており、その運営に要する経費は、利用者の自己負担を含め、総額約1兆1千300億円(通所・利用施設を除く。)となっている。また、特別養護老人ホームは介護保険制度への移行も目前に控えており、国民の期待と関心は益々大きくなっており、その期待に応えるためにも適正かつ効率的な運営に努めるよう十分指導願いたい。
 
(イ)適切な入所者処遇の実施
 入所者の処遇については、介護保険制度への移行も控え、サービスの質的向上が必要であることから、サービス評価基準等を活用するなどによりサービスの質的向上に努めるよう指導願うとともに、O157による食中毒及びインフルエンザ等の感染症の予防についても引き続き特段の注意を払うよう指導願いたい。 また、特別養護老人ホームの入所申請時の健康診断書の提出については、必要以上の検査を求めることにより申請者にとって過重な負担となっているとの指摘等があることから、入所申請時における健康診断書の提出依頼等は必要最小限となっているか、あらためて確認するよう市町村に対して指導願いたい。
 
(ウ)運営費の主な改善内容
 平成11年度予算(案)においては、入所者の一般生活費等について生活保護基準に準じた所要の改善、職員処遇の充実を図るため国家公務員に準じた給与改善等を行うこととしているほか、労働基準法の改正を踏まえ、常勤職員及び非常勤職員について、それぞれ年休代替要員費を1日分上乗せすることとしている。
 
(エ)老人保護費の適正な執行
 本年度の会計検査院の実地検査において、平成8年度の費用徴収について、被措置者の対象収入の算定及び扶養義務者の認定を誤るなどにより、32市町村で総額約3,980万円の国庫補助金の過大な精算がなされていた、との指摘がなされたところである。 費用徴収事務の適正の確保については、昨年も指摘されており、厳正な執行が求められるところであるので、管下の措置の実施機関等に対し、改めて適正な取扱いがなされるよう周知徹底を図るとともに、費用徴収額等の決定に当たって十分な審査を行い、適正を期すよう指導願いたい。
 また、昨今、特別養護老人ホーム等において不祥事の発生が散見されている。老人福祉施設は公費で運営されており、適正な運営が何よりも求められていることから、こうした事態に対しては、平成9年9月に実施した老人福祉関係担当課長会議においてお示しした「特別養護老人ホーム等における不祥事の発生防止及びその対応について」を十分踏まえ対応されるよう改めてお願いしたい。

5.高齢者の生きがい・健康づくり等の推進について
(1)高齢者の生きがいと健康づくりについて

 在宅高齢者保健福祉推進支援事業
平成10年度予算において、高齢者在宅生活支援事業(いわゆるメニュー事業)を創設したところであるが、平成11年度予算案においては、さらに、これを拡充強化し、生きがい・健康づくりや、保健予防の観点をも含めた総合的な保健福祉を推進していく観点から、「在宅高齢者保健福祉推進支援事業」を創設することとしたところである。
 本事業は、介護保険制度の導入を展望し、保険の対象とならないサービスや保険の適用対象とならない者に対するサービスについて、市町村が実情に応じて行う総合的なサービスを支援していくものであり、高齢者等の生活支援事業を必須事業とし、あわせて高齢者の生きがい対策、寝たきり予防のための普及啓発等を選択実施することとしている。
 補助対象経費や限度額の設定等の詳細については、予算成立後、極力早期にお示しすることとしたい。
 なお、平成11年度において、「高齢者の生きがいと健康づくり総合推進試行的市町村事業」及び「高齢者が安心し生きがいをもって暮らせるまちづくり事業基本計画策定事業」の継続分については、従来の事業として実施するので御留意願いたい。
 
 高齢者の生きがいと健康づくりの推進
(ア)高齢者の生きがい促進のための就業支援試行的事業
本事業は、労働省との連携事業として平成11年度において実施する予定である。
 事業内容は、参考資料6のとおりであるが、関係機関と連携の上、積極的な取り組みについて特段の御配慮を願いたい。
 
(イ)「都道府県明るい長寿社会づくり推進機構」
本事業には、高齢者の生きがいと健康づくりを単に福祉分野にとどめることなく、教育、経済等のあらゆる分野を視野におきながら広範な団体等と連携することによって、社会全体の運動に発展させる役割が期待されている。
 本年は、国連の定めた国際高齢者年(参考資料7参照)にあたることから、これまで以上に、市町村をはじめ各種関係団体との連携を強化するとともに、今後、特に重要となるサラリーマンOB対策等を中心に、創意工夫を凝らした効果的な事業を積極的に取り組むよう推進機構を指導願いたい。
 なお、推進機構に対する国庫補助については、平成9年度に人件費相当分を一般財源化したところであるが、事業費についても、新ゴールドプランの終了した平成12年度に、国と地方の経費負担の在り方を検討する中で見直しをする予定である。
 
(ウ)高齢者訪問支援活動推進員養成推進試行的事業
本事業は、高齢者の社会活動への積極的な参加と高齢者による高齢者援護の推進を図ることをねらいとして平成8年度から実施しているものである。具体的には都道府県・政令指定都市・中核市の老人クラブ連合会を中心に、一人暮らし高齢者等を訪問し、話し相手、外出介助、家事援護等の活動を行う指導的な実践者の養成を図るものであるが、未実施の都道府県等にあっては管下の老人クラブ連合会とも協議するなど取り組みの検討を願いたい。
 
(エ)老人クラブ活動
老人クラブ活動については、平成6年8月、全国老人クラブ連合会が中心となり策定した「老人クラブ21世紀プラン」に沿って、高齢者自身の生活を豊かにする活動と地域を豊かにする社会活動のバランスに配慮しながら推進しているところであるが、来るべき高齢社会にあって、老人クラブ活動はより重要な役割を担っていくものと考えており、厚生省としても、引き続きこれを支援していくこととしている。
 また、平成10年度第3次補正(景気対策臨時緊急特別枠)において、「高齢者の健康づくり・予防活動の強化推進事業」及び「高齢者の使いやすい商品の開発促進支援事業」の予算を確保したところである。各都道府県・指定都市においては、当該事業が効果的に実施できるよう、特段の御支援と御協力を願いたい。
 なお、老人クラブ助成費については、「老人クラブ運営要領」において会員数が、特別の事情を除いておおむね50人以上のクラブを助成対象としているところであるが、基準に満たない単位老人クラブについては、会員の少ない理由、活動実績を十分に把握し、活性化を指導するなど適正な執行について特段の御配慮を願いたい。
 
(オ)全国健康福祉祭(ねんりんピック)
1) 第12回全国健康福祉祭ふくい大会(ねんりんピック’99福井)
 本年は福井県において、下記の内容で開催することとしている。なお、国際高齢者を記念して国際シンポジウムも開催する予定である。
・テーマ ねんりんの パワーを生かす 新時代
・期 日 平成11年10月9日(土)〜10月12日(火)
・会 場 福井市はじめ20市町
 
2) 本大会に対する選手等の派遣
 本大会の趣旨である高齢者の社会参加及び地域間、世代間の交流を積極的に推進するため、推進機構とも連携しながら、各催事における参加者の裾野を広げるよう努めるとともに、十分な参加体制が確立されるよう配慮を願いたい。
 
3) 今後の開催予定
第13回(平成12年度) 大阪府・大阪市
第14回(平成13年度) 広島県・広島市
第15回(平成14年度) 福島県
第16回(平成15年度) 徳島県
第17回(平成16年度) 群馬県
 
4) 地域における高齢者のスポーツ・文化活動等の推進
 ねんりんピックの目的、理念を地域に浸透させ、健康増進、文化活動の推進を図る観点から、各地方自治体においても、地域の実情に応じて地方版ねんりんピックを開催するなど積極的な取組みについて配慮を願いたい。
 
 高齢者能力開発情報センター
 本事業については、平成10年度から3か年計画で補助対象箇所及び事業費を縮小して、平成13年度には補助金の廃止を行う考えである。関係都道府県におかれては、高齢者能力開発情報センターを設置している管下市町に対し、今後の対応について適切な指導を願いたい。

(2)高齢者向け民間サービスの健全育成等について

 介護保険制度の施行を目前に控え、介護サービス基盤の整備のためには、増大する介護需要に的確に対応し、機動的かつ弾力的なサービスの確保を図る観点から、多様な主体によるサービスの提供が重要であり、在宅介護サービス分野においては、株式会社、農協、生協、住民参加型非営利組織等の多様な民間事業者の積極的な参入を促進することが必要である。
 民間事業者による在宅介護サービス事業の育成
(ア)民間事業者への委託の拡大
 老人保健福祉計画の実効ある推進を図り、今後増大、多様化する介護需要に的確に対応していくために、民間事業者に業務委託を行うなどサービスの供給体制を多様化していくことについて積極的に取り組まれたい。
 
(イ)民間在宅介護サービス事業者に対する政策融資の拡大
 平成11年度からは、社会福祉・医療事業団の在宅サービス事業の融資対象に、民間事業者の行う日帰り介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)及び福祉用具販売事業を追加することとしているので、積極的な活用が図られるよう管下の関係機関に周知願いたい。
 
(ウ)過疎地域等在宅保健福祉サービス推進試行的事業の実施
 民間事業者等による24時間対応を含めた訪問介護、訪問入浴サービス等を試行的に実施し、民間企業、農協、生協、住民参加型非営利組織等の民間事業者を過疎地域等において活用する際の課題や問題点を把握する「過疎地域等在宅保健福祉サービス推進試行的事業」を平成9年度より実施しているところである。
 本事業については、平成11年度においても引き続き実施することとしているところであり、各都道府県等の積極的な活用をお願いする。
 
(エ)都市部等住民参加型在宅保健福祉サービス推進試行的事業の実施
 介護保険制度の円滑な導入に向け、都市部において、生協や住民参加型非営利組織等の積極的な参加による訪問介護(ホームヘルプサービス)を提供する事業を試行的に実施するとともに、これら団体の活用に当たっての課題や問題点を把握することを目的に、平成10年度より本事業を実施しているところである。
 本事業については、調査事業のみの実施は平成10年度限りとし、平成11年度においてはサービス提供事業について引き続き実施することとしているところであり、各都道府県等の積極的な活用をお願いする。
 
 有料老人ホームの健全育成等
 有料老人ホームは、自由契約による民間の事業として行われているが、国としては事前届出制、指導指針による行政指導、民間事業者による質の向上のための自主的な取り組みの促進、政策融資等の誘導措置により健全育成を図っているところである。
(ア)有料老人ホームに対する指導
 利用者の適切な選択を確保する上で必要な情報の開示をより一層推進すること等を目的として、平成9年12月に老人福祉法施行規則を改正するとともに、有料老人ホーム設置運営指導指針等を改正し、平成10年4月より施行されたところである。その主な内容は、届出事項として重要事項説明書を加えたほか、重要事項説明書の説明・交付をはじめとする情報開示の徹底を図ることとしたものであり、管下の有料老人ホームに対する指導の徹底を図られたい。
 同指針の改正とあわせ、有料老人ホームに対する定期的な立入調査の実施をお願いしたところであり、入居者の処遇状況、情報開示の状況等とともに経営状況についても調査されたい。
 また、有料老人ホームに該当しない類似施設についても、住宅・建築担当部局との連携の下、その把握及び指導等に努められたい。
 
(イ)有料老人ホームの介護費用調整
 有料老人ホームが特定施設入所者生活介護の指定事業者として保険給付の対象である介護サービスを行う場合の介護費用調整については、最終的には契約当事者である施設と入居者に委ねられるが、有料老人ホームの実態調査等の結果も踏まえ、調整方法に関する考え方を近々にお示しする予定である。
 また、社団法人全国有料老人ホーム協会において、法律・会計の専門家による相談窓口を設置し、会員・非会員を問わずホーム又は入居者からの介護費用の調整に関する相談事業を実施することとしている。詳細については後日お知らせすることとしているが、あらかじめ管下の有料老人ホームに対して周知を願いたい。
 
 民間老後施設整備促進事業
 「民間事業者による老後の保健及び福祉のための総合的施設の整備の促進に関する法律(いわゆるWAC法)」に基づき民間事業者が疾病予防運動センター、高齢者総合福祉センター、在宅介護支援センター及び有料老人ホームからなる特定民間施設の一体的整備を行う場合には、税制並びに資金上の優遇を行うなどの支援措置を講じているところである。法人税の特別償却制度及び特別土地保有税については、平成11年度税制改正において、平成12年度末までの2年間の延長が認められたところであるが、特別償却制度については、償却割合が100分の8(現行100分の12)に引き下げられたので留意されたい。
 
 福祉用具の研究開発・普及の促進について
 福祉用具については、介護保険制度の導入に伴い、市町村からの給付等による利用から、利用者と事業者の契約による利用に代わることとなる。このため、利用者の多様な需要に柔軟に対応する観点から、これまで以上に、福祉用具の研究開発支援や相談・情報提供・展示等の普及事業の推進が重要となるところであるので、下記の点に留意し、積極的な取組みを願いたい。
 
(ア)福祉用具の研究開発・普及の促進
 福祉用具の研究開発及び普及については、国、地方自治体、民間事業者が、それぞれの役割を担いつつ、その推進を図っているところである。
 特に、地方自治体については、1)市町村が在宅介護支援センターを活用して行う相談・情報提供・展示等の事業を一層推進するとともに、2)都道府県・指定都市においては介護実習・普及センターの整備を一層推進することにより、利用者に対してより専門的な展示・相談・情報提供等を行うことができるものである。
 したがって、各都道府県・指定都市においては、事業の推進を図るとともに、管下市町村への指導及び援助を願いたい。
 また、福祉用具の研究開発及び普及に当たっては、「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」に基づく国の指定法人である(財)テクノエイド協会がその中核として、地方公共団体からの情報収集や企業、福祉用具等に関する情報の提供等を行っているところであるので、積極的なご協力を願いたい。
 
(イ)介護実習・普及センター運営事業
 介護実習・普及センター事業は、平成4年度に創設されて以来、計画的に各都道府県・指定都市に設置を進めてきたところである。平成11年度予算案においても老人介護の実習等を通じて地域住民への介護知識、介護技術の普及を図るとともに、福祉用具の展示・相談体制を整備し、福祉用具の普及を図るため、新規に3か所の設置を行うこととしているので、積極的な取り組みを願いたい。
 なお、新設の場合の施設整備については、「高齢者保健福祉推進特別事業について」(平成3年6月3日自治政第56号・厚生省発政第17号自治・厚生事務次官連名通知)による起債(地域福祉推進特別対策事業)の活用を図られたい。

6.老人保健事業等の推進について
(1)保健事業に係る当面の基本方針等について

 保健事業に係る当面の基本方針
 保健事業については、保健事業第3次計画に基づき各般の施策を推進しているところであるが、平成11年度は同計画の最終年度に当たることから、同計画の目標達成に向けた所要の改善を図るとともに、必要な事業量を確保したところであるので、管下市町村に対し保健事業のより一層の推進が図られるよう指導方をお願いする。これに必要な都道府県、市町村における財政措置についても、特段の御配意をお願いする。
 さらに、現行の保健事業第3次計画は平成11年度で終了するが、平成12年度以降の保健事業の在り方については、昨年12月、医療保険福祉審議会老人保健福祉部会に「高齢者保健事業の在り方に関する専門委員会」を設置し、現行の事業の評価を踏まえ、現在、同審議会で検討されている高齢者医療制度の見直しや介護保険制度の実施との関係も視野に入れながら総合的に検討を進めているところである。現在、平成11年6月を目途に意見書の取りまとめを予定しており、これを受けて平成12年度以降の保健事業に関する実施方針を決定することとしているので御了知願いたい。
 
 保健事業第3次計画の推進
(ア)健康診査の充実
1) 健康診査については、第3次計画に基づき受診率の向上を図っているところであるが、平成11年度においては、平成10年度と比較して、基本健康診査について2.0%上乗せし、50.0%の目標受診率を設定することとしている。平成11年度が同計画の最終年度であることを踏まえ、市町村に対しては、地域の実情に即した実施体制の整備、効果的な広報活動、受診者の利便の確保等により、受診率の向上が図られるよう、特段の指導をお願いする。
 また、健康診査において「要指導」と判定された者等に対する事後指導は、疾病の発生を予防するという観点から特に重要であるが、必ずしも十分に行われているとは言い難い状況にあるため、健康教育、健康相談等の他の保健事業の活用等を含め、効果的な事後指導の実施について、特段の指導をお願いする。なお、生活習慣改善指導事業は、約半数の市町村が未実施の状況であるので、積極的な実施が図られるよう管下市町村に対し指導をお願いする。
 
2) 費用徴収基準額については、平成11年度においても改定を行うこととしているが、その額については健康診査基準単価等と併せて、後日お示しする。
 
3) がん検診については、平成10年度から老人保健法の保健事業という位置付けを見直し、それに要する経費については、地方交付税措置(一般財源化)を講じたところであるが、平成11年度においても、引き続き、地域の実情に合わせた効果的ながん検診の実施等各市町村において、自主性を活かした取組みがなされるよう期待しているので、本趣旨を御理解の上、管下市町村に対する指導方御配意願いたい。
 なお、がん検診に関する情報提供等については、今後とも積極的に取り組んでいくこととしているので、御了知の上、管下市町村に対しても周知方をお願いする。
 
(イ)機能訓練の拡充
 「新寝たきり老人ゼロ作戦」の展開においても重要な位置を占める機能訓練を一層充実させるため、平成11年度においては、実施数をA型(基本型)は212か所増の6,500か所(累計)、B型(地域参加型)は813か所増の3,255か所(累計)としたので、A型については、市町村保健センター、老人福祉センター等の活用や特別養護老人ホーム等への委託等により、また、B型については、集会場、公民館、公園等の身近な場所での実施や地域のボランティア等の活用により、実施か所数の拡大が図られるよう、市町村に対する指導をお願いする。
 なお、A型の未実施市町村の解消について特段の指導を引き続きお願いするとともに、B型についても積極的な事業実施が図られるよう特段の御配意をお願いする。
 
(ウ)老人保健強化推進特別事業の実施
 平成10年度から都道府県及び市町村において、壮年期からの健康対策、寝たきり予防対策及び医療対策等に重点をおいた先駆的、試行的な事業を行うことにより、老人保健対策の推進に資することを目的とする本事業を創設したところであるが、平成11年度も引き続き実施することとしているので、御了知願いたい。
 
 新寝たきり老人ゼロ作戦の展開
 「新寝たきり老人ゼロ作戦」は、新ゴールドプランにおける重要な柱の一つとして推進しているところであり、寝たきりを予防し高齢者の自立を積極的に支援する観点から、引き続き本作戦の展開についての取組み方御配意をお願いする。
(ア)地域リハビリテーション支援体制の整備
 リハビリテーションについては、疾患が急性期から慢性期へと移行する過程を 通じて継続的に適切なリハビリテーションの実施を確保するための、医療機関等 の相互連携などの体制整備が十分になされていない等の課題がある。
このため、平成10年度から都道府県において、地域住民が地域社会において寝たきりとなることを防止し、充実した生活を送れるよう支援することを目的とした地域におけるリハビリテーションの実施体制の整備を図ることとし、都道府県リハビリテーション協議会の設置、都道府県リハビリテーション支援センターの指定等の事業を推進しているところである。平成11年度においては、より地域住民に密着した事業展開を図るため、二次医療圏ごとに地域リハビリテーション支援センターを指定して、その実施体制の整備を一層推進していくこととしているので、事業の実施方御配意をお願いする。
 
(イ)新寝たきり老人ゼロ作戦普及啓発推進事業の展開
 「新寝たきり老人ゼロ作戦」をより効果的、効率的に展開するため、平成9年 度から市町村を事業主体とした住民に対しての寝たきりゼロへ向けた講演会の実 施、広報紙の作成等普及啓発活動及び寝たきり老人ゼロ推進委員会の設置・運営 など「新寝たきり老人ゼロ作戦普及啓発推進事業」を推進しているところであり、 引き続き本事業の積極的な取り組みと周知徹底をお願いする。
 なお、平成11年度より本事業については「在宅高齢者保健福祉推進支援事業」の中に位置付けることとしたので御了知願いたい。

(2)老人保健施設等の整備と運営について

 老人保健施設の計画的整備
 老人保健施設については、各都道府県において策定されている老人保健福祉計画に沿ってその整備が進められているところであるが、来年度は最終年度であることから、整備目標が達成されていない都道府県にあっては、その達成に特段の御配慮をお願いする。(なお、税制改正関係については、参考資料8参照)
 
 老人保健施設の施設整備に対する国庫補助等
 平成11年度の国庫補助金及び老人保健拠出金事業助成金による老人保健施設の施設整備に係る国への整備計画の協議の取扱いについては、昨年12月に通知したところであるが、事業計画者の整備計画を十分精査のうえ協議されるよう御配慮願いたい。
なお、各都道府県からのヒアリングは2月上旬からを予定している。
 
 老人保健施設の適切な運営
 老人保健施設の適切な運営について、引き続き御指導方お願いするとともに、介護保険法が施行される平成12年4月には介護老人保健施設として円滑に移行できるよう、既開設施設のみならず今後開設を予定している者に対する指導等に御配慮願いたい。
 
 老人訪問看護事業所の整備促進
(ア)老人訪問看護事業所(老人訪問看護ステーション)については、今後、増加する要介護老人等の在宅療養を支援するため、平成7年度から新ゴールドプランの在宅サービスの一つとして、平成11年度末までに、5,000か所整備することを目標としている。また、介護保険制度における「居宅介護サービス」の1つとしても位置づけられており、施行に備えて一層の整備促進が必要である。
 各都道府県においては、新ゴールドプランの最終年度でもあり、老人訪問看護制度の趣旨を踏まえ、要介護老人等の動向、地域特性を勘案するとともに、老人訪問看護ステーションの開設の促進について一層の配慮をお願いする。
特に、老人訪問看護ステーションの整備が進んでいない地域においては、市町村等との連携の下に整備が阻害されている要因の分析・検討を行うなどして、訪問看護サービスが効率的に実施できるよう整備の促進について配慮願いたい。過疎地等における整備対策として、昨年12月に設置要件の緩和を行ったところであり、従たる事務所の設置にあたっては、この制度の活用を図られて一層の拡充をお願いする。
 
(イ)老人訪問看護ステーションの開設の促進を図るため、老人訪問看護ステーションの整備等に対する社会福祉・医療事業団等による融資制度、老人保健拠出金による助成制度及び国庫補助制度が創設されているところであり、これらの事業の適切な運用とともに、円滑な事業の実施に努められたい。
 
 老人訪問看護ステーションの適切な運営
 老人訪問看護ステーションが、円滑な看護サービスを提供するためには、地域における各種の保健・医療・福祉サービスと十分な連携を図ることが極めて重要であることから、平成9年度から「在宅保健福祉サービス総合化モデル事業」を実施しており、管下の老人訪問看護ステーションと市町村や医療機関、在宅介護支援センター等福祉サービス提供機関との連携強化が一層促進されるよう配慮願いたい。
 なお、老人訪問看護事業全体の質の向上を図るため、各都道府県におかれても、老人訪問看護ステーションの適切な運営等について一層の指導をお願いする。




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