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(研究開発振興課)

1.保健医療分野における基礎研究の推進について

 保健医療分野において、いわゆる生活習慣病の予防や治療技術の開発、老人性痴呆の研究は、高齢社会を迎えた我が国の重要な課題であり、また、エイズの研究及び治療技術の確立は喫緊の課題となっている。これら多くの課題に対して有効な対策を講じるためには、共通の基盤となる基礎研究の推進に力を注ぐ必要がある。この意味で、疾病構造の解明や遺伝子治療技術等に関する基礎研究は、付加価値の高い医薬品等の創製に結びつくものであるとともに、保健医療の向上に大きく寄与するものである。
 このため、平成8年度より医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構が国の出資を受けて、医薬品、医療機器等に関する基礎研究を国立研究機関、大学等と共同もしくは委託により行う「保健医療分野における基礎研究推進事業」を創設し、1課題当たり年間約1億円の研究費で、原則として3〜5年間行うこととした。
 平成8年度には、エイズ・感染症、がん、脳・神経又は免疫疾患関係及び治療機器の4分野について17件の研究課題を採択し、平成9年度には、感染症、がん、循環器疾患、免疫疾患、難治性希少性疾患、新医薬品開発技術及び医療機器の7分野について17件の研究課題を採択した。また、平成10年度には、構造生物学、細胞工学、ゲノム薬理学の3分野について4件の研究課題を採択した。平成11年度においても、これら採択課題に係る研究を継続するとともに、新規課題の採択を行うことにより、本事業の充実を図っていくこととしている。


2.希少疾病用医薬品等の研究開発の促進について

 医療上の必要性が高いにもかかわらず、患者数が極めて少ないことにより研究開発が進んでいない難病、エイズ等の医薬品等(いわゆるオーファンドラッグ等)の研究開発を民間企業の自主努力のみに期待することは極めて困難となっている。このため、企業の負担軽減と研究開発の促進を図り、これら医薬品等を一日でも早く医療の場に提供できるよう平成5年10月に研究開発促進制度が創設され、平成5年度以降、現在までに医薬品117品目、医療用具5品目がオーファンドラッグ等として指定されている。
 希少疾病用医薬品等の開発に係る経費の負担軽減については、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構を実施主体として開発研究費の助成を実施しており、平成11年度においても5億円の国庫補助金を助成金に充てることとし、有効な治療薬の早期供給を促進するため、今後とも事業内容の充実、研究開発の促進に努めていく。


3.民間の研究開発の振興(出融資制度)について

 現在めざましい進展を遂げているバイオテクノロジー等の先端技術は、保健医療の分野で画期的な医薬品や医療機器の開発等に大きな成果をもたらすものと期待されており、その研究開発に対して昭和62年度より医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構において公的資金による出融資事業を行っているが、今後の疾病構造の変化や国民保健医療ニーズの多様化に対応するためにも引き続き研究振興の円滑な運営の確保と事業の充実に努めていく。

(参考)出資事業により設立された会社

昭和62年度   (株)ディ・ディ・エス研究所
(株)バイオセンサー研究所
昭和63年度 (株)サイトシグナル研究所
(株)人工血管技術研究センター
平成元年度 (株)生体機能研究所
(株)アドバンストスキンリサーチ・ラボラトリー
平成2年度 (株)ベッセルリサーチ・ラボラトリー
平成3年度 (株)創薬技術研究所
(株)カージオペーシングリサーチ・ラボラトリー
平成4年度 (株)エイチ・エス・ピー研究所
平成5年度 (株)エイジーン研究所
平成6年度 (株)ディナベック研究所
平成7年度 (株)ジェノックス創薬研究所
平成8年度 (株)ビーエフ研究所
平成9年度 (株)アール・アール・エフ研究所


4.治験推進のための医療環境の整備について

 新薬の開発を進める上で、新GCPに基づく的確な治験の実施が必要不可欠であるところから、医療機関における治験管理施設の整備事業を平成10年度補正予算において、50カ所、約7億円を計上したところであり、平成11年度においても本事業の推進を図ることとしている。
 各都道府県においても、医療機関への指導等において、適切な治験の推進を図られるようお願いしたい。


5.医療における情報化の推進について

(1)診療録の電子媒体による保存に関する検討状況について

 医療の情報化を進めるうえで重要な診療録の電子化に関連して、平成10年3月に改めて閣議決定された「規制緩和推進計画」において、「診療録の電子媒体による保存の技術的基準を定め、電子媒体による保存を認める方向で検討し、結論を得る」ことが盛り込まれた。
 厚生省としては、従前より診療録の電子化の研究開発に取り組んできており、診療録の電子化の前提となる病名等の用語やコードの標準化の作業を進めてきている。
 進捗状況としては、病名の標準化を終え、その成果を実費にて頒布しており、病名以外の用語の標準化にも取り組んできており、今年度中に主要な各種用語の標準化を終える予定である。
 診療録の電子化に関する作業は広範多岐にわたるものであり、引き続き積極的に取り組んでいく予定である。
 診療録の電子媒体による保存に関する検討状況としては、これを実施するために必要となる技術基準を策定中であり、早急に完了させる予定である。
 当該基準を策定した後、速やかに医師法をはじめとする各法令上の取り扱いについて検討を行う予定である。

(2)遠隔医療の推進について

 地域における保健・医療・福祉分野の情報化を推進するため、「遠隔医療推進試行的事業」を平成9年度より実施している。
 当該事業は、診療所等の医療施設と在宅で療養している患者の家庭に、テレビ電話等の遠隔医療に必要な機器を設置し、診療所等の診療、看護・介護指導等の充実による機能強化を図るものである。
 なお、遠隔医療に係る医師法第20条等の解釈については、初診及び急性期の疾患を原則として除き、直接の対面診療に代替し得る程度の患者の心身の情報が得られる場合には、直ちに違反を構成するものではないとの解釈を示す通知を、平成9年12月に発出したところである。
 遠隔医療関連事業としては、平成10年度の補正予算(「へき地遠隔医療システム開発事業」)において、へき地における遠隔医療を推進するための具体的なシステム開発に着手しているところである。
 これは、へき地において、医療機関間で具体的な遠隔医療を実地に取り組んでいただき、へき地遠隔医療のシステムづくりに役立つ実証的な検証を行うものであり、へき地における遠隔医療の推進を図るものである。


6.医療技術評価の推進について

 限られた医療資源を効率的に活用し、医療の質と患者サービスの向上を図る手段として注目されている「医療技術評価」について、「医療技術評価の在り方に関する検討会」(座長:竹中浩治(財)ヒューマンサイエンス振興財団理事長(当時))を開催し、平成9年6月に報告書を取りまとめ、医療技術評価の推進を図る意義があることを確認した。
 当該報告書を踏まえ、現在、「医療技術評価推進検討会」(座長:高久史麿自治医科大学学長)を開催しており、医療技術評価及びEBM(科学的根拠に基づく医療)の具体的な推進方策の検討に着手しているところである。
 平成11年度予算案において、医療技術評価及びEBMの推進を図るために必要な検討会関係経費を計上しているところであり、検討会での検討を継続させるだけでなく、検討の成果を踏まえ、医療技術評価及びEBMの普及啓発にも取り組む予定である。


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