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10.麻薬・覚せい剤等の対策について


(1)規制対象物質の指定

 平成10年6月、4−ブロモ−2、5−ジメトキシフェネチルアミン(通称2C−B)を麻薬に指定した。
 また、平成10年7月、エリトロ−2−アミノ−1−フェニルプロパン−1−オール(通称PPA)を覚せい剤原料に指定した。(市販の風邪薬等に含有。但し、50%以下を含有するものは除外。)
各都道府県におかれては、関係方面への適切な指導をお願いする。

(2)薬物乱用対策推進本部

ア.平成10年5月、薬物乱用対策推進本部は「薬物乱用防止五か年戦略」を策定した。これは「第三次覚せい剤乱用期の到来に対し、その早期終息に向けて緊急に対策を講ずるとともに、世界的な薬物乱用問題の解決に我が国も積極的に貢献する。」ことを基本目標とし、以下に掲げる4つの具体的目標を達成するために、現状と問題点及び対策を示したものである。

 目標1:中・高校生を中心に薬物乱用の危険性を啓発し、青少年の薬物乱用傾向を阻止する。
 目標2:巧妙化する密売方法に的確に対処し、暴力団、一部不良外国人の密売組織の取締りを徹底する。
 目標3:密輸を水際でくい止め、薬物の密造地域における対策への支援などの国際協力を推進する。
 目標4:薬物依存・中毒者の治療と社会復帰を支援し、再乱用を防止する。
イ.薬物乱用防止五か年戦略は、各都道府県に設置されている薬物乱用対策推進地方本部に対しても、薬物乱用対策のより一層の強化を要請しているものであり、各都道府県におかれても、これに沿って、指導監督、啓発活動、中毒者対策等における効果的な取組をお願いする。

(3)麻薬・覚せい剤等の取締り

ア.我が国で乱用問題の最も大きな薬物は覚せい剤であり、近年の検挙者数は1万
5千人前後で推移していたが、平成7年から増加し、平成9年には19,937人と3年連続して増加した。
イ.最近の薬物犯罪の特徴としては、覚せい剤事犯における未成年者の検挙者、特
に中学生・高校生の検挙者の増加が挙げられる。
 覚せい剤事犯における未成年者の検挙者数は、昭和57年の2,769人をピークに平成2年まで逐年減少し、その後は1,000人前後で推移していたが、平成7年以降3年連続して増加し、平成9年には1,602人が検挙された。
 また、中学生・高校生の検挙者数は、未成年者の検挙者がピークであった昭和57年で210人(中学生67人、高校生143人)であったのが、平成8年には241人(中学生21人、高校生220人)と昭和57年の数字を上回り、平成9年においては更に前年を上回る262人(中学生43人、高校生219人)となっている。
 特に、中学生については平成8年の21人に比べほぼ倍増の43人が検挙されており、覚せい剤乱用の低年齢化が懸念される。
ウ.このため厚生省としては、薬物の供給側である密売人等のほか薬物の需要先である乱用者に対する取締りに一層努力していくこととしており、都道府県におかれても、麻薬取締官に対する捜査協力等に特段のご配慮をお願いしたい。

(4)啓発・相談指導の推進

ア.現在、全国に約2万人の覚せい剤乱用防止推進員が設置され、地域における啓発活動を展開しているところであるが、平成11年度からは、啓発・相談指導の 一層の推進を図るため、覚せい剤乱用防止推進員を「薬物乱用防止指導員」に改め、「薬物乱用防止指導員協議会」の運営費補助を全都道府県に対して行うこととしている。各都道府県におかれては、この制度を円滑に推進され、薬物乱用防止指導員を中心とした効果的な地域活動を推進していただきたい。
イ.平成11年度から、全国の精神保健福祉センターにおいて、薬物依存・中毒に関する薬物特定相談事業を開始することとしている。これは、同センターにおいて、医師・専門の相談員等により、薬物依存・中毒者やその家族からの相談に応じていくもので、各都道府県におかれては、体制の整備、相談スタッフの研修の実施等、本事業の円滑な推進に努められたい。
ウ.(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターが、厚生省からの委託事業として行っている「薬物乱用防止キャラバンカー」事業は、平成10年10月より4台に増設して、東京都、名古屋市、神戸市、久留米市に配置し、中学、高校等において啓発指導を行っており、今後も一層の活用をお願いしたい。
 また、中・高校生の保護者を対象とした薬物乱用防止読本及び新たな啓発資材(移動式テレビデオ付パネル、横断幕、懸垂幕、啓発用ぬいぐるみ)の作成・配布を予定しているので、各種イベント等における積極的な活用を図られたい。
エ.毎年、「不正大麻・けし撲滅運動」、「『ダメ。ゼッタイ。』普及運動」、「麻薬・覚せい剤禍撲滅運動」を実施しているところであり、平成11年度においても一層のご協力をお願いしたい。
 なお、「ダメ。ゼッタイ。」普及運動においては、(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターが国連支援募金を行うほか、街頭キャンペーン等に参加したヤングボランティアの中から「民間国連ヤング大使」を選んで国連に派遣しており、厚生省としても意義のあることと考えている。

(5)医療用モルヒネ製剤の適正使用の推進

 モルヒネの消費量はここ数年急増しており、平成9年の消費量は塩酸塩と硫酸塩合わせて930kg(前年852kg)で9.2%の増、10年前に比べ11.8倍の増加となっている。これは末期がん患者に対する疼痛緩和目的での使用が普及してきていることが原因となっていると推察される。
 また、通院、在宅がん患者へのモルヒネ製剤の使用の普及と共に麻薬小売業者の免許をもつ薬局の数も平成9年には11,485件(前年8,968件)となり、28.1%の増となっている。
 厚生省としては、医療関係者を中心にがん疼痛に対するモルヒネ等の適正な使用の普及を図るため、平成7年度より全国で開催されている「がん疼痛緩和と医療用麻薬の適正使用を推進するための講習会」を後援しており、平成10年度には札幌、東京、神戸、鹿児島、名古屋の5会場で実施されている。
 今後とも、モルヒネ製剤の使用量が増加することが見込まれるため、各都道府県におかれてはモルヒネを中心とした医療用麻薬の適正管理及び適正使用につき、医療関係者に対する指導をお願いいたしたい。

(6)麻薬取扱者等に対する指導監督

 医療用麻薬、向精神薬等及びこれらの原料物質の製造施設、卸売業者等流通段階、医療施設、研究施設など正規取扱者に対する立入検査等の監督は、乱用薬物の不正ルートへの横流れを防止する上で重要であり、各都道府県におかれても麻薬取締員等によりその実施に尽力いただいている。
 増加傾向にあった向精神薬の病院、診療所からの盗難件数は、平成9年には26件(盗難件数の全体31件)と平成8年の50件(盗難件数の全体58件)に比べ減少しているが、近時の向精神薬等を用いた犯罪の発生も踏まえ、今後とも管理の徹底が図られるよう、一層の指導監督方よろしくお願いしたい。

(7)国際協力の取組

ア.1998年6月8日〜10日にニューヨーク国連本部において、国連麻薬特別総会が各国首脳を集めて開催された。
 同会議では政治宣言とともに覚せい剤対策、原料規制、代替作物開発、マネー・ローンダリング対策、需要削減対策、司法共助の6分野について具体的なアクション・プランが採択され、21世紀に向けた国際的な薬物乱用対策がまとめられたところである。
イ.「海外麻薬行政官研修」((社)国際厚生事業団実施)及び「日米協力による開発途上国薬物乱用防止啓発活動研修」((財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター実施)が、関係都道府県の協力を得ながら毎年実施されている。平成10年度は、前者が平成10年6月〜7月に11カ国11名、後者が平成10年10月〜11月に11カ国11名のアジア等からの研修生の参加を得て実施されたが、平成11年度以降も関係都道府県のご協力をお願いしたい。



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