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15.老人保健福祉関係の指導監査について


(1)老人医療費適正化対策の推進

 老人保健制度の安定的な運営を将来にわたって確保していくためには、老人医療費の無駄を省き、適正なものとすることが重要な課題である。このため、従来から老人医療費の適正化対策の推進に努めてきたところであるが、高齢化の進行等に伴い、年々老人医療費が増加し続けている状況である。
 一方、昨年成立した財政構造改革法の下、医療費国庫負担については厳しく縮減が求められており、平成10年度予算編成に当たっても、老人医療費を始めとする医療費の適正化に徹底して取り組むことが求められている。
 こうした中で、各市町村においては、診療報酬明細書(レセプト)点検の充実強化、重複受診者・多受診者に対する訪問指導の充実強化、交通事故等第三者行為による被害等の把握と求償事務の促進といった医療費適正化対策を強力に推進する必要があるが、平成10年度においては、特に、次の諸点に取り組むこととしており、老人医療費適正化対策の一層の推進が図られるよう管下市町村を指導願いたい。

〇国保連によるレセプト共同電算処理への市町村の加入強化
〇全市町村でレセプト縦覧点検を強化
〇縦覧点検結果の保健指導への活用
  重複・頻回受診者などハイリスク者の把握等
〇重複・頻回受診者に対する保健婦による訪問活動の実施
  在宅保健婦や看護婦の活用、先進的な健保組合の経験の活用
〇第三者求償事務の徹底

 国としても、老人医療費適正化を推進するための予算については大幅に増額するとともに、指導監査体制についても平成10年度より、「老人保健指導官」と「老人保健施設指導官」を「老人保健指導官」として統合し、老人保健施設等における施設療養費の請求内容の点検及び指定医療機関のレセプト点検とを一体的かつ一元的に行い指導監査の充実強化を図ることとしているところである。
 各都道府県においても、このような状況を踏まえ、平成10年度の老人医療事務指導監査の実施に当たり、指導監査体制の充実に努めることはもとより、特に、老人医療費の増加要因の分析をはじめ、「老人保健法による老人医療事務の指導監査の実施方針について」(平成5年3月22日付老企第72号老人保健福祉局長通知)にしたがい、指導監査を実施し、老人医療費の適正化対策の一層の推進が図られるよう管下市町村を指導願いたい。
 なお、医療受給者健康指導事業(医療費通知)については、地方分権推進委員会第2次勧告(平成9年7月8日)を踏まえ、地方自治体の事業として同化・定着した事業として一般会計での補助金は廃止し、地方交付税で措置(一般財源化)することとしているので、管下市町村に対し所要の予算措置が図られるようご指導願いたい。

(2)老人保健施設の実地指導

 老人保健施設に対する実地指導については、老人保健施設が寝たきり等の状態にある老人に看護、介護、機能訓練等を行い、その家庭への復帰等を支援するものであることから、目的に沿った適正な施設運営が行われるよう、適切かつ効果的な指導を行っていく必要があるとともに、在宅介護支援を推進する観点から、デイケア及び短期入所の適切な実施並びに市町村保健福祉サービス等との連携についても併せて配慮する必要がある。
 このため、法令・通達等の基本的事項が遵守されていない施設については、是正改善の指示を行った後、速やかにその改善状況を確認するなど、強力に指導するとともに、特に利用対象者については「老人保健施設の入所者の範囲」により定められている基準に基づく、適切な入退所(通所を含む。)判定が行われるよう重点的に指導願いたい。
 また、老人保健施設が急増している都道府県においては、本庁の実地指導体制の充実強化に努め、実地指導事務を保健所等に委任している都道府県においては、研修及び連絡会議等を実施して、統一的な実地指導ができるよう体制の整備を図るとともに、新たに実地指導を行うこととなる中核市等(特別区を含む。)を有する都道府県にあっては、当該中核市等における実地指導事務が円滑に行われるよう、特段のご配慮を願いたい。 以上のことを基本に、各都道府県は保健所政令市等と連携を図り、平成10年度の実地指導に当たっては、次の事項に重点をおいて実施されたい。
ア 適切な施設療養の提供
・適切な入退所(通所を含む。)判定の実施と記録の整備
・家庭復帰を目標とした計画的な施設療養の実施と記録の整備

イ 適切な職員配置の確保等
・職員配置基準の遵守
・職員に対する辞令等の交付

ウ 適正な施設運営の確保
・デイ・ケアの適正な実施と記録の整備
・適切な利用料の設定と徴収
・非常災害対策の計画的な実施

エ 適正な施設療養費の額の算定等
・適正な施設療養費の額の算定
・入所者の通院に係る文書の交付と通院先保険医療機関との連携

オ 第二種社会福祉事業(無料又は低額老人保健施設利用事業)の適正な実施

(3)老人福祉施設等の指導監査

ア 老人福祉施設等に対する指導監査
 高齢者の需要の多様化とともに「生活の質」の向上が求められている今日、老人福祉施設がその設置目的に沿って、施設利用者の意向・希望を尊重し、適切な入所者処遇を行うとともに、老人短期入所生活介護(ショートステイ)や日帰り介護(デイサービス)等施設機能を活用した在宅福祉の推進に積極的な役割を果たしていくためには、社会福祉に熱意・理解のある役職員の下で法人・施設が健全で安定した運営を確保していくことが不可欠であり、そのためには、都道府県等の指導監査の果たす役割は極めて重要であることから、次の事項に留意の上、実施されたい。
(ア)指導監査体制の充実強化等
 法人・施設の運営状況をみると、施設運営費の不正流用など極めて憂慮すべき不祥事が依然として発生しており誠に遺憾である。
 今後、新ゴールドプランの推進等に伴う老人福祉施設の増加傾向を踏まえ、監査専管組織の設置等指導監査体制の充実強化を図るほか、法人・施設の幹部役職員の認識の欠如が不祥事の発生要因の一つとなっているので、研修等を通じ法人・施設の公共性に対する認識の高揚に努めていく必要がある。
 特に、新設法人については、認可時における役員構成及び資金計画等についての厳正な審査は当然のことであるが、法人認可後における施設建設工事に係る契約事務手続、法人運営体制の整備、事業開始の準備等について、継続的な指導をお願いする。
 また、「社会福祉法人の指導監督に関する行政監察結果に基づく再勧告」及び会計検査院の会計検査結果において、法人役員の体制、評議員会の設置、会計管理、施設整備に係る補助事業の適正化及び施設整備に係る過大交付について指摘されているところであるので、社会福祉法人に対する指導の徹底を図られたい。
 さらに、問題を有する法人・施設に対しては、重点的かつ継続的に指導監査を実施し、指導監査結果の問題点について、当該法人・施設の幹部役職員に十分認識させるとともに、期限を付して改善を図るよう指導を行い、その改善状況については必ず、確認を行われたい。
 なお、是正改善が図られない法人・施設については、市区町村に対して新規入所措置の停止等の措置をとるよう協力を求めるほか、社会福祉事業法に基づく改善命令をはじめ、業務の停止、役員の解職勧告といった処分を行うなど厳正に対処するとともに、施設運営費等の不正流用などの不祥事案については、必要に応じ、法的措置をとるよう法人・施設に対し、指導願いたい。

(イ)入所者処遇に重点をおいた指導監査の実施
 施設運営の基本は、地域との緊密な連携の下に、適切な入所者処遇を確保することにあるので、指導監査に当たっては、入所者の立場に立った施設運営が図られるよう、食事・入浴・排泄介護等の入所者処遇にも重点をおいて実施されたい。

(ウ)指導監査の主眼事項等
 平成10年度の指導監査に当たっては、次の事項に重点をおいて実施されたい。
1)法人及び施設の適正な運営管理体制の確立
・法人の組織運営
・資産管理及び会計経理
・施設の運営管理
・防災対策の確立
・施設整備工事
2)新設法人の運営管理体制の確立
・法人の組織運営
・施設整備工事
・諸規程の整備
3)不祥事防止対策の確立
・法人の組織運営
・施設の運営管理
・会計経理
・入所者預り金の取扱い
・寄付金の取扱い
4)適切な入所者処遇の確保
・入所者の意向・希望を尊重した処遇
・生活環境の確保
・ゆとりある入所生活の確保
・個別処遇方針の樹立
・食事、入浴、排泄介護の充実
・褥瘡予防対策の推進
・寝たきり防止等離床対策の推進等
5)適切な職員処遇の確保
・適正な給与水準等の確保
・適正な労働条件の確保
・職員研修等資質向上対策の推進
・福利厚生等士気高揚策の充実
6)在宅対策への積極的な取組み
・施設機能を活用した老人短期入所生活介護(ショートステイ)や日帰り
介護(デイサービス)等在宅対策への積極的な取組み

イ 実施機関に対する指導監査
 実施機関に対する指導監査は、次の事項に重点をおいて実施されたい。
 なお、費用徴収事務については、依然として徴収誤りが見受けられるので、その適正を期すよう指導願いたい。
(ア)実施体制の確保
(イ)適正な入所措置の確保
(ウ)適正な費用徴収事務の確保
(エ)適正な遺留金品の処理
(オ)在宅対策(老人保健福祉計画の進捗状況)への積極的な取組み



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