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1.感染症対策の見直しについて

(1)背 景

 伝染病予防法制定以来100年を経過し、国民生活や公衆衛生水準の向上、国民の健康・衛生意識の向上、医学・医療の進歩、高齢者等の増加による易感染者の増加、人権の尊重及び行政の公正透明化への要請等、旧来の感染症対策の体系構築の前提となった諸環境は大きく変化している。

ア 新興・再興感染症への対応
 エボラ出血熱等の新興感染症や、これまで制圧したと考えられていたマラリア等の再興感染症について、国際交流の活発化・迅速化により流行の危険性が高まっている。

イ 感染症対策における人権の保障
 医学・医療の進歩により、過去において社会防衛上重大な脅威になっていた多くの感染症が軽症にとどまり、隔離といった対策を一律に講ずる必要がなくなる一方で、感染症患者の人権保障への社会的要請が高まっている。

 こうした課題に応えるためには、現行法体系の下での対応には限界があり、感染症対策の全般的な見直しが必要である。

(2)これまでの検討経緯

 公衆衛生審議会は、平成8年7月に開催された伝染病予防部会において、感染症対策の見直しについて検討することを目的として基本問題検討小委員会(委員長:国立国際医療センター研究所長 竹田美文)の設置を定め、以降、小委員会の検討に委ねつつ、小委員会からの中間報告についての審議、伝染病予防部会と小委員会の合同開催等を行ってきたが、公衆衛生審議会伝染病予防部会は、平成9年12月10日に小委員会からの「新しい時代の感染症対策について」の報告を受けて審議を行い、同月24日に公衆衛生審議会として、基本問題検討小委員会の報告書にいくつかの追加意見を付したものを公衆衛生審議会の「新しい時代の感染症対策について(意見)」として厚生大臣に提出されたものである。
 現在、厚生省では同審議会の意見に基づいて感染症予防法(仮称)の法案要綱を作成しているところであり、同審議会に対して法案要綱の諮問等を経て、今通常国会に関連法案を含めた法律案の提出をするべく準備を進めているところである。

(3)見直しの方向性

ア 感染症の発生及び拡大に事前に対応できる体制の構築
○ 国が感染症予防に関する基本指針を、都道府県が感染症予防に関する計画を策定することにより、感染症の集団発生や原因不明の感染症が発生した場合に関係機関が連携をとった迅速かつ総合的な対応が図れるようにする。

○ 国及び都道府県が感染症の種別に応じて、感染症の発生動向を的確に把握できるための体制を整備する。

イ 感染症類型の整理
○ 感染力と病態の重篤性等に応じ、入院等の行動制限の対象となる感染症を4類
型に分類する。
・国民への情報提供による拡大防止 : インフルエンザ、肝炎等
・状況に応じて就業制限等の行動制限: 腸管出血性大腸菌感染症
・状況に応じて入院等の行動制限 : コレラ、細菌性赤痢等
・原則として入院等の行動制限 : ペスト、エボラ出血熱等

○ 未知の感染症(病態が重篤で強い感染力が疑われる極めて危険性の高い疾病)について、時限的に入院や消毒等の対応が図れるようにする。

ウ 感染拡大防止措置の整備
○ 感染症の原因究明、感染拡大防止のために必要な対人措置(健康診断、就業制限、 入院等)及び対物措置(消毒、鼠族昆虫の駆除、物件に対する措置等)を設ける。

○ 入院措置等を行うに当たっては、入院勧告制度や感染症診査協議会(仮称)の設 置等を通じた人権尊重に配慮した手続とする。

エ 良質かつ適切な医療の提供
○ 感染症類型に応じた病床を国及び都道府県知事の指定により確保することによって、各類型の感染症の患者が発生した場合に良質かつ適切な医療を提供し、患者の療養からの早期復帰を支援する。

オ 動物由来感染症対策の整備
○ ウイルス性出血熱等の重篤な感染症を媒介することが疑われている動物(例:サ ル等の霊長類)について、輸入検疫等の措置を定める。

カ 検疫感染症(伝染病)の見直し
○ 国内の感染症対策との整合・連携を図ることを目的として、検疫法を改正することにより検疫感染症(伝染病)の見直しを行う。

キ 関連法の整理
○ 今回の伝染病予防法の廃止と新法の制定に伴い、性病予防法及び後天性免疫不全症候群の予防に関する法律は、関係者の合意形成に努めつつ、新法への統合の方向で検討する。

(4)今後の予定

 3月に感染症予防法案(仮称)の国会提出を予定しており、成立した場合には、平成11年4月を施行期日として施行準備を進める予定である。



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