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医薬品による健康被害の防止策

 厚生省におきましては、医薬品の有効性・安全性の確保のための各般にわたる施策を推進し、医薬品による健康被害の防止に万全を期しているところです。
このような中で平成11年8月24日には、HIV訴訟の和解に基づく鎮魂・慰霊の措置として、HIV感染のような医薬品による悲惨な被害を再び発生させることのないよう医薬品の有効性・安全性の確保に最善の努力を重ねる決意を銘記した「誓いの碑」を厚生省前庭に建立したところです。
本ホームページでは、このような厚生省における医薬品による健康被害の防止策について紹介します。


(照会先)
厚生省医薬安全局企画課
医薬品副作用被害対策室
 三 森(内線2717)


医薬品の有効性、安全性の確保のための取組

〜医薬品による健康被害の防止策〜

1. 医薬品の承認審査体制の充実等

○ 医薬品医療機器審査センターの設置
 医薬品等の承認審査については、平成9年7月に承認審査事務を専門的に行う「医薬品医療機器審査センター」を設置し、従来の薬学、医学に加え、獣医学、統計学等を専門とする審査官を加えた「チーム審査」の実施や、審査報告書の作成を通じて、審査の質の向上や責任の明確化を図るなど事務局の審査体制の強化を図った。

○ 審査官等の倍増
 平成9年度から3年間で厚生本省、医薬品医療機器審査センター、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構の審査官等の倍増や体制の整備を進めてきたところであり、今後とも科学技術の進歩等の状況の変化に応じて、必要な体制の整備等に取り組む。

○ 治験の充実
 平成8年の薬事法改正により、平成10年4月より「医薬品の臨床試験の実施の基準」(GCP)の遵守を医薬品製造業者、治験実施医療機関等に義務付けるとともに、平成9年4月より医薬品機構による申請資料の基準適合性調査を実施している。

○ 中央薬事審議会の見直し
 平成11年11月に、中央薬事審議会について、より効率的かつ十分な審査を行う観点から、新薬等の承認審査に係る部会の開催回数の増加等を図るとともに、医薬品医療機器審査センターのチーム審査に専門委員が参画する専門協議方式を導入した。

2.医薬品安全性情報の収集・評価体制の強化

○ 医薬品製造業者等からの情報収集
 平成8年の薬事法改正により、厚生大臣への副作用・感染症報告を医薬品製造業者等の義務として規定するとともに、医療用医薬品については、製造業者等における情報収集・提供の体制、社内教育等を規定する「医薬品の市販後調査の基準」(GPMSP)を法制化した。

※ 医薬品製造業者等からの報告件数;平成10年度 18,466件、平成11年度 20,031件

○ 医療機関・薬局からの情報収集
 平成9年7月から、医薬品等安全性情報報告制度を発足させ、全ての医療機関及び薬局から、厚生省が直接医薬品の副作用等の報告を受ける制度を整備した。
※ 医療機関等からの報告件数;平成10年度 4,882件、平成11年度 5,502件

○ 海外情報の収集
 WHO国際医薬品モニタリング制度、製造業者等からの安全性定期報告(PSUR)に加えて、FDA等の諸外国当局からの情報収集ルートの整備等により、海外情報を迅速、的確に入手している。

3.医薬品に関する情報提供体制の整備

○ 中央薬事審議会の議事録公開
 中央薬事審議会の議事録については、平成9年5月より、個人の秘密・企業の知的財産権等に係る部分を除き、承認後公開している。

○ 医薬品情報提供システムの構築
 医療関係者等に対して医薬品の安全性に関する情報を提供するため、医薬品機構を拠点に、インターネットを活用した「医薬品情報提供システム」事業を平成11年5月より開始した。
また、平成12年4月より、薬事法に基づくすべての医薬品、医療用具等の回収情報についても掲載している。

○ 新薬情報承認集の作成
 新薬に関する情報については、平成8年10月から、全ての新薬について、品目ごとに承認審査の経過、評価結果及びその根拠などをまとめた審査報告書を公表してきているところであるが、平成11年11月より、これに臨床試験データを含む申請資料をとりまとめた「新薬承認情報集」を作成し、承認後に公表している。
なお、「医薬品情報提供システム」においても、その内容をインターネットにより情報提供している。

○ 「医薬情報室」の新設
 情報公開法の制定を踏まえ、円滑な情報公開の実施を図る観点から、本年4月、医薬安全局企画課に「医薬情報室」を設置した。

4.危機管理体制の構築

○ 「医薬品等健康危機管理実施要領」の策定
 厚生省における危機管理体制については、平成9年1月に「厚生省健康危機管理基本指針」を策定するとともに、平成9年4月に「医薬品等健康危機管理実施要領」を定め、安全対策の実施に至るまでの手順や基準及び各段階における責任の所在を明確化し、医薬品等による健康危機に迅速かつ適切に対応している。

5.誓いの碑の建立

 平成11年8月に、医薬品の安全性及び有効性の確保に最善の努力を重ねていくことを銘記する「誓いの碑」を建立した。

6.血液事業の見直し

○ 血液事業法(仮称)の制定
 平成9年12月に「血液行政の在り方に関する懇談会の報告書」が取りまとめられ、平成10年3月より、「中央薬事審議会企画・制度改正特別部会」において審議が進められている。

○ 血液製剤の安全性の確保
 平成11年10月に、従来の血漿分画製剤に加えて輸血用血液製剤に対しても、世界に先駆けて、HBV、HCV、HIVに係るNAT(核酸増幅法)検査の導入が図られた。

○ 血液製剤の適正使用の推進
 血液製剤の適正使用の推進を図るため、平成11年6月に、従来の使用基準等を見直し、新たに「血液製剤の使用指針」及び「輸血療法の実施に関する指針」を策定した。

※ 1人当たりの製剤の使用状況;アルブミン製剤 平成5年度 98g→平成10年度 54g


「誓いの碑」について

誓いの碑

命の尊さを心に刻みサリドマイド、スモン、HIV感染のような医薬品による悲惨な被害を再び発生させることのないよう医薬品の安全性・有効性の確保に最善の努力を重ねていくことをここに銘記する

千数百名もの感染者を出した「薬害エイズ」事件
このような事件の発生を反省しこの碑を建立した

平成11年8月 厚生省


「誓いの碑」の設置場所 「誓いの碑」の写真


○ GCP:Good Clinical Practice(医薬品の臨床試験の実施の基準)

  医薬品の開発の最終段階においては、ヒトを対象とした臨床試験(治験)による薬物の臨床的な評価が必要不可欠であり、ここで収集された資料等に基づき医薬品の製造又は輸入のための承認申請が行われる。この治験の実施に当たっては、被験者の人権と安全について十分な配慮がなされることを前提として、治験の科学的な質と成績の信頼性が確保されていることが必須となる。
 このような観点から策定された基準が「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)」であり、我が国においては、平成元年に薬務局長通知による行政指導として最初のGCPが定められた。
  その後、治験のより一層の適正な実施、更には欧米との間でGCPの国際的調和を図る観点から、GCPの内容を改定するとともに、平成8年6月の薬事法改正によりGCPの根拠規定を整備し、治験を依頼する治験依頼者(製薬企業)のみならず、治験を実施する医療機関及び治験を担当する者に対して、その遵守を義務付けることとなった。
 基準の内容については、平成9年3月に「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年3月厚生省令第28号)」により定められ、平成10年4月から全面施行されている。

○ GCPの内容

 平成10年4月から全面施行されたGCPは、以前のGCPに比べ次の特徴を有する。

(1)被験者となるべき者に対する治験に関する文書による説明と同意の取得

(2)治験総括医師制度の廃止

(3)治験依頼者の責任範囲の拡大と強化

ア.業務手順書、治験実施計画書、治験薬概要書等の作成義務
イ.モニタリング・監査等の治験管理の実施
ウ.治験総括報告書の作成
(4)治験審査委員会の機能の充実
ア.外部委員、非専門家委員の参加の義務付け
イ.審査機能、責務の明確化
(5)治験責任医師の責任と業務の明確化

(6)医療機関における治験事務局の強化


【医薬品等安全性情報報告制度】

  国が直接、医師、歯科医師、薬剤師等の医療関係者から医薬品、医療用具等の副作用症例の報告を収集する制度。医師等の自発的な報告を収集するもので、いわゆる自発報告制度である。
 報告件数の増加を図るため、平成9年7月より従来行ってきた各種モニター制度(医薬品副作用モニター制度、医療用具モニター制度、薬局モニター制度)を統合・拡大して、すべての医療機関及び薬局を対象施設に、医師、歯科医師、薬剤師を報告者とする「医薬品等安全性情報報告制度」を発足させた。
 この制度では、一般薬を含む医薬品、医療用具の使用の結果みとめられた副作用、感染症、不具合に関する情報(医薬品等との因果関係が明確でないものを含める)を収集することとしている。

年 度 モニター報告・
医薬品等安全性情報報告数
平成6年度 1,615件
平成7年度 1,859件
平成8年度 1,914件
平成9年度 3,730件
平成10年度 4,882件


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