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厚生省発厚第1号

平成9年1月9日

各 内 部 部 局 の 長

社会保険庁総務部総務課長 殿

厚生事務次官

厚生省健康危機管理基本指針について(依命通知)

 表記について、別添の通り定めたので、平成9年1月9日以降の事務処理については、これにより遺憾なきを期されたく、命により通知する。
 なお、本指針については、厚生省健康危機管理調整会議及び健康危機管理担当部局における健康危機管理に対する取組みを踏まえ、適宜見直していくことを申し添える。


(別紙)

厚生省健康危機管理基本指針について

 この指針は、「医薬品による健康被害の再発防止対策について」(平成8年7月1日)及び「医薬品健康被害再発防止策及びエイズ治療研究等の推進状況」(平成8年9月17日)を踏まえ、厚生省の所管する生命、健康の安全に関する危機管理の適正を図ることを目的として、健康危機管理の基本的な枠組みについて定めるものである。

第1章 総則

第1節 定義

(1)この指針において「健康危機管理」とは、医薬品、食中毒、感染症、飲料水その 他何らかの原因により生じる国民の生命、健康の安全を脅かす事態に対して行われる健康被害の発生予防、拡大防止、治療等に関する業務であって、厚生省の所管に属するものをいう。

(2)この指針において「健康危険情報」とは、医薬品、食中毒、感染症、飲料水その他何らかの原因により生じる国民の生命、健康の安全に直接係わる危険情報をいう。

(3)この指針において「健康危機管理担当部局」とは、健康政策局、保健医療局、保健医療局国立病院部、生活衛生局、生活衛生局水道環境部及び医薬安全局をいう。


第2節 健康危機管理業務従事者の心得

(1)健康危機管理業務に従事するに当たっては、国民の生命、健康に関わるものであるとの危機意識を常に持ち、予断を持って判断することなく、健康被害が生じている等の事実を真摯に受け止め、科学的客観的な評価に努めるものとする。

(2)健康危機管理業務に従事するに当たっては、安易に統計数値のみに頼ることなく、健康被害が生じている現場の状況把握に極力努めるものとする。


第3節 厚生省防災業務計画との関係

 地震等の災害に起因する健康危機については、厚生省防災業務計画に沿った総合的かつ計画的な対策の推進に努めるものとする。


第2章 健康危機管理担当部局等における対応

第1節 健康危険情報の収集

(1)健康危機管理担当部局は、健康危険情報に関する情報収集窓口を設け、情報の広範な収集、分析に努めるものとする。

(2)原因が不明等の理由で、(1)によっては入手し難い健康危険情報の入手を確保するため、保健医療局において都道府県、医師会等の協力の下に「WISHネット」の活用等により保健所を通じた情報収集に努めるとともに、国立病院部においては国立病院等を通じた情報収集に努めるものとする。

(3)健康危険情報を入手した部局は、当該情報に伴う対応が想定される関係部局及び関係機関に対し、速やかに当該情報を伝達するものとする。

(4)原因が不明等の理由で当該情報についての情報収集窓口が明確でない健康危険情報を入手した部局は、厚生省健康危機管理調整会議の主査に連絡し、主査は当該情報に関する情報収集窓口について調整するものとする。

(5)健康危機管理担当部局は、その所掌する事務に関わる健康危険情報の危険の程度について、被害の重篤度、規模、治療方法の有無等を勘案して、可能な限り客観的に判断するための方策を講じるものとする。

(6)緊急な対応が必要な重要な健康危険情報を入手した部局は、その重要度に応じ、速やかに当該情報を厚生大臣まで伝達するものとする。この場合においては、当該情報を厚生省健康危機管理調整会議の主査にも伝達するものとする。

(7)健康危機管理担当部局は、情報の的確な把握及び対策の検討に資するため、連携して、国立試験研究機関、国外の関係機関(世界保健機関、米国食品医薬品庁、米国防疫センター等)、都道府県、研究者等を通じて広範かつ迅速な情報収集に努めるものとする。

(8)重大な健康被害が特定の地域に集中して発生した場合には、健康危機管理担当部局は必要に応じ、関係する地方公共団体との連携の下に、現地に職員を派遣し、情報の収集に努めるものとする。

(9)関係省庁の所掌する事務に関わる健康危険情報については、当該関係省庁に迅速に情報を提供するとともに、密接に情報交換を行うものとする。


第2節 対策決定過程

(1)健康危機管理担当部局においては、健康危険に関する対策の決定(対策を講じない旨の決定を含む。以下同じ。)を行う場合には、その重要度に応じ、厚生大臣まで伝達した上で決定するほか、必要に応じ、他の関係部局長と協議を行うものとする。この場合においては、当該事項を厚生省健康危機管理調整会議の主査にも伝達するものとする。

(2)健康危機管理担当部局においては、特に重要な健康危険情報及び対策の決定については、内閣総理大臣まで伝達するものとする。

(3)健康危機管理担当部局においては、健康危険に関する対策の決定を行った場合には、当該危険がなくなるまでの間は、事案に応じ、監視のための体制を整備し、情報知見の蓄積に努めるとともに、対策決定の諸前提条件の変化に応じて対策の見直しを行うものとする。

(4)健康危機管理担当部局においては、適時適切な対策の見直しを継続的に行うため、対策決定の諸前提、判断理由についての資料を適切に管理するものとする。

(5)健康危機管理担当部局においては、重要な健康危険に関する対策の決定を行った場合には、速やかに、その内容を公開するとともに、特に不確実な情報の下で当該決定を行った場合には、その前提となった知見情報の内容、考慮要因、制約条件等を併せて公表するものとする。

(6)健康危機管理担当部局においては、健康危険に関する対策の決定に基づき、行政機関、関係団体等に対して指導を行う際には、緊急やむを得ない場合を除き、文書によるものとする。緊急やむを得ず文書によらない場合にあっては、追って文書により指導の内容を明らかにするものとする。


第3節 対策本部の設置等

(1)重大な健康被害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、当該被害の程度、緊急度等を勘案し、厚生大臣の決裁を得て、対策本部を設置するものとする。

(2)重大な健康被害が特定の地域に集中し、現地における的確な対応のために必要がある場合には、当該被害発生地域の地方自治体との連携の下に、厚生大臣の決裁を得て、現地対策本部を設置するものとする。

(3)対策本部及び現地対策本部の本部員及び事務局の構成については、事案や状況に応じ柔軟に定めるものとする。この場合においては、事態の推移も想定し、広範囲の部局の職員(試験研究機関等の職員を含む。)により構成するものとする。

(4)対策本部及び現地対策本部の設置に際しては、対策の実施に関係する部局との役割分担のほか、情報集積、対策本部と現地対策本部との連絡、報道機関対応、一般国民の問合わせ対応等の各担当の体制について明確にするとともに、各機関相互の連携に努めるものとする。

(5)対策本部構成部局間の施策の連携を図る観点から、必要に応じ、対策本部の下に作業班を置くものとする。この場合において、作業班構成員の所属する部局は、作業班構成員が対策本部の業務に専念できるよう努めるものとする。


第4節 研究班及び審議会での検討

(1)健康危機管理担当部局は、健康危険情報について専門的、学問的観点からの知見の集積を行うため、必要に応じ、学識経験者から構成される研究班を機動的・弾力的に設置するものとする。

(2)研究班を設置する場合には、設置要綱等において、検討事項の範囲、責務等を明確にするとともに、対策決定に関わるような研究班については、審議会委員の研究班員への任命、研究班における検討状況の適時の審議会への報告を行う等、当該事項を所掌する審議会との連携強化を図るものとする。

(3)重大な健康への被害の発生が疑われる問題については、健康危機管理担当部局は適宜、関係審議会を機動的に開催し、必要な対策等について意見を聞くとともに、必要に応じ、厚生科学審議会において大局的見地からの審議、提言を受けるものとする。


第5節 健康危険情報の提供

(1)健康危機管理担当部局は、健康危険情報及び当該情報に関する対応についての情報提供窓口を設けるものとする。

(2)健康危機管理担当部局は、健康危険に関する国内外の情報について、適宜、報道機関、政府広報、高度情報通信網等を通じて広く国民に対して情報提供するとともに、医療関係団体等を通じて関係者への情報提供を図るものとする。

(3)健康危機管理担当部局は、都道府県、保健所、地方衛生研究所、国立病院等に対し、「WISHネット」を活用する等により、重要かつ緊急な健康危険に関する情報、講じた対策、治療方法等の情報について、迅速かつ直接に情報提供を行うとともに、必要に応じ、各都道府県担当課長会議等を開催するものとする。

(4)健康危機管理担当部局は、医療機関等向けに診断・治療方法に関する情報基盤を整備するとともに、重要かつ緊急な健康危険情報、治療方法等の情報について、「緊急ファックス」を活用する等により、医療機関に対し迅速かつ直接に情報提供を行うものとする。

(5)健康危機管理担当部局が行う市町村に対する情報提供については、原則として都道府県を経由するが、必要に応じ、市町村に対しても直接に行うものとする。なお、都道府県、市町村への情報提供については、必要に応じ、関連情報を共有すべき自治体内の部局、関係機関を明示するものとする。

(6)健康危機管理担当部局は、重要かつ緊急な健康危険に関する情報、講じた対策等については、適宜、海外の機関や海外の報道機関に対し、情報提供を行うものとする。


第3章 厚生省健康危機管理調整会議

第1節 目的

 健康危機管理担当部局における健康危機管理に関する取組についての情報交換を行うとともに、迅速かつ適切な健康危機管理を行うための円滑な調整を確保するため、厚生省健康危機管理調整会議(以下「会議」という。)を設置するものとする。


第2節 組織

(1)会議の組織は、厚生省健康危機管理調整会議設置規程に定めるところにより、厚生科学課長を主査とし、厚生科学課に事務局を置くものとする。

(2)人事異動等により、会議構成員が変更する場合には、前任者は後任者に役割等を十分引き継ぐとともに、主査に報告するものとする。


第3節 業務

(1)基本指針の作成、実施及び見直しに関し、健康危機管理担当部局間の連絡調整を行うこと。

(2)健康危機管理担当部局における健康危機管理に関し、定期的に情報交換を行い、必要な調整を行うこと。

ア 健康危機管理担当部局等から提出された健康危険情報及び当該情報に係る対応について、情報交換、評価分析を行うこと。
イ 会議における意見交換に基づき、健康危機管理面での対応(情報収集、研究の実施を含む。)が必要とされる場合には、関係部局の役割分担を含め、主査から健康危機管理担当部局長等に対し必要な要請を行うこと。

ウ 健康危機管理担当部局長は、主査から要請された事項について、対応の具体策及び実施状況を主査に報告すること。

(3)健康危機管理担当部局における分野別の実施要領の策定等について支援すること。

(4)健康危機管理業務に従事する職員を対象とした危機管理意識を高めるための研修等の実施を推進すること。

(5)現に健康被害が発生し若しくは発生の恐れがある場合であって、対応する部局が定まらない場合若しくは複数の部局による総合的な対応が必要であると主査が判断した場合又は健康危機管理担当部局長から要請があった場合、以下の対応を行うこと。

(1) 主査は、当該健康危機事例に関係する部局の幹事等を召集し、関係部局における 対応等について情報交換するとともに、関係部局での役割分担を含め、健康危機管 理担当部局長等に対し、必要な要請を行うこと。

(2) 特に重大な健康被害が発生し若しくは発生のおそれがある場合においては、主査 は直ちに会議を召集し、以下の事項についての検討結果を取りまとめ、対策本部の 設置の必要性等について官房長に判断を仰ぐとともに、その結果を事務次官及び厚 生大臣に報告すること。

  ア当該健康危機事例に関する情報の整理(被害の状況、過去の事例、病原菌等に 関する知見等)
  イ関係課の範囲と状況、応援体制の必要性
  ウ対策本部(現地対策本部を含む。)の設置の必要性、対策本部の構成、対策本部構成部局と対策本部との役割分担、各担当等の体制


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