インフォームド・コンセントに係る一連の手続きにおいて説明を担当する者に対する説明用資料、ヒト由来試料等の提供を依頼する患者などに説明するための説明用文書、同意文書(別添参考資料)の事務局作成イメージ |
(注) 以下のイメージは、皆さんのご意見などを踏まえて更に修正することがあります。
厚生省におけるミレニアム・プロジェクトの一環として実施される「遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究」においては、個体の持つ遺伝学的な多様性と様々な疾病との関連を研究し、それを疾病の予防、早期発見、早期治療さらには薬剤の開発に応用し、人々の福祉に大きく貢献することが期待されている。一方、遺伝子解析により、被験者、その家族・血縁者さらには関連する疾病の罹患者が、様々な倫理的・法的・社会的問題に直面する可能性がある。この問題に対処するため、被験者およびその関係者の尊厳、人権および利益を保護することを目的とし、平成11年度の厚生科学特別研究事業において「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針」が作成された。
本文書は、この指針の中で「第一群ヒト由来試料等提供者」を対象としている。第一群ヒト由来試料等提供者とは、遺伝素因の関与が明らかな、遺伝性疾患や重篤な薬剤反応性異常等を有する者およびその可能性のある被験者である。これらの被験者を対象に、研究協力へのインフォームド・コンセントに係る説明にあたる者が、指針のうち、「(5−1)インフォームド・コンセントの手続きに関する原則」の記載を十分に理解する事を目的として作成されたものである。
「第一群ヒト由来試料等提供者」においては、遺伝子解析研究を通じて得られた原因遺伝子の変化に関する情報が、疾患等の予防・診断・治療の方針に大きく影響する可能性が高く、説明に当たっては、被験者がその特殊性を十分に理解した上で、研究協力の同意を与えることができるよう配慮する必要がある。また、患者や家族のプライバシーを最大限に保護し、被験者からの質問に対しては、必要に応じて主治医や遺伝カウンセリング担当者等の協力を得て対応せねばならない。
なお、以下の文章においては、具体的なインフォームド・コンセントの手続きの進め方に応じて担当者の成すべきことを説明し、指針で説明されている部分の項目番号を( )]にて示した。
《説明に当たる者の資格》
インフォームド・コンセントの手続きにおける説明にあたっては、研究遂行者の一員であり、倫理審査委員会で承認された研究計画書のなかで「インフォームド・コンセントに係る説明を行う者」として認められた者が成さねばならない(5−1−1)。
《代諾について》
被験者が、痴呆等の疾患のため、有効なインフォームド・コンセントを与えることができないと客観的に判断された場合には、その者に代わってインフォームド・コンセントを与える者として、代諾者に対し説明を行い、同意を得る必要がある(5ー1ー3ー1)。この場合の代諾者の選定に当たっては、研究遂行者は、家族または日常生活において深く被験者と関わっていた者等の中から、被験者の人権保護の観点から適当と考えられる者を選んでもらうように、家族等に依頼すること(5−1−3−3)。なお、代諾者が被験者と血縁関係を有し、自らの遺伝的問題について不安を持った場合には、代諾者自身に対する説明と遺伝カウンセリングについても十分配慮する必要がある(5−1−3−4)。
一方、被験者が未成年者であるときは、試料を得るためには、親権者等の代諾者がインフォームド・コンセントを与える必要がある。ただし、未成年者が16歳以上である場合には、親権者等の代諾者とともに、その未成年者本人の同意も必要である。また、未成年者が16歳未満の場合には、代諾者の同意によって試料を得ることが可能であるが、この場合においても、その未成年者本人に十分な説明を行い、できる限りその未成年者からも試料提供の同意が与えられるように努めなければならない(5−1−3−2)。
《具体的な手順》
インフォームド・コンセントの手続きにおける説明に当たっては、説明者は倫理審査委員会で内容を承認された説明文書を用い、以下に述べる事項のうち研究の実施上必要な事項について適切かつ十分な説明を行い、説明を受ける者が自由意思に基づいて、試料の提供への同意を表明できるようにすること。なお、身体障害などにより説明文書を読むことができない被験者に対しては、研究遂行者でない者を立ち会わせた上で、説明を行わねばならない。
その上で、説明者は署名した同意書の写しを被験者または代諾者に渡し、同意書を所定の場所に保管する。
《説明事項》
(1)研究協力の任意性と撤回の自由
被験者に対し、試料の提供は任意であっていつでも同意は撤回できることを伝える。さらに、被験者が試料提供に同意しない場合、あるいは同意を撤回した場合においても、疾病等の診療において不利益な扱いを受けないことを説明する。同意を撤回した場合、その撤回に関わる試料および研究結果は廃棄されるが、既に研究結果が公表されている場合、あるいは廃棄しないことにより被験者の個人識別情報を含む情報が明らかになるおそれが小さく、かつ廃棄作業が極めて過大である場合等やむを得ない場合には、研究結果の廃棄はできないことがあることを説明する(5−1−1−1)。
なお、連結不可能匿名化される場合など、個々の被験者についての遺伝子情報が明らかにならない研究の場合にあっては、求められても結果を知らせることができないことを説明する(5−1−1−2)。
(2)研究協力を要請する理由
被験者がいかなる理由で、遺伝素因の関与が明らかな、遺伝性疾患や重篤な薬剤反応性異常等を有する、あるいはその可能性があると判断されたかを述べ、当該疾患発症者で診断が確定している者、当該疾患の疑いがあるが診断が確定していない者、当該疾患患者の家族などに分け、被験者の試料や診療情報をどのような研究に用いるかを説明する(5−1−1−3)。
その上で、被験者の遺伝素因に関連すると推測される遺伝子について調べることを方法も含め説明する。さらに、将来、解析対象となる疾病や重篤な薬剤反応性異常に関連する遺伝子を探索するために試料が保存、利用される可能性がある場合または研究の目的や方法の変更が予想される場合にはその旨説明する(5−1−1−4)。
(3)研究責任者の氏名および職名
研究責任者の氏名および職名を告げる(5−1−1−5)。
(4)予測される研究結果と被験者の危険・不利益
遺伝子解析研究の成果が、被験者の診断の確定や適切な治療法の選択などに役立つ可能性がある場合には、それを伝える。また、被験者に直接利益を与えないが、将来、解析対象となる疾病や重篤な薬剤反応性異常の克服に寄与する可能性についてもそれを伝える。
一方、遺伝子解析を実施しても診断が確定できない可能性がある場合や、仮に遺伝子解析により診断が確定しても、予防法や治療法がないなど、今後の診療方針に大きな変更をもたらさない場合等は、大きな利益が得られないことを説明する。また、研究によって、被験者が遺伝的素因を有することが確定された場合などには、後に遺伝カウンセリングに関する部分で述べられているような不利益を被る可能性があることも告げる。逆に、保因者診断等で、遺伝的素因を有しないことが確定した場合においても、被験者あるいは家族の間で心理的な問題が起こりうることを説明する。さらに、試料採取において、身体的な危険が予想される場合には、それについても説明する(5−1−1−6)。
(5)研究計画書、方法の開示
希望により、そのヒト由来試料等を用いた遺伝子解析研究の研究計画書、遺伝子解析の詳しい方法等の資料を入手または閲覧することができることを告げる(5−1−1−7)。
(6)試料および診療情報の匿名化
匿名化(氏名、生年月日、住所などの個人を特定できる情報を記号に置き換えるなどして、試料や個人情報の由来する個人を特定できなくすること)の有無、匿名化される場合は連結可能匿名化(置き換えられた記号等を特定の者のみが元の個人名などに戻すことができる匿名化)・連結不可能匿名化(何人も二度と元の個人をたどることができない匿名化)の別、およびその具体的方法について説明する(5−1−1−8)。
(7)試料、診療情報、遺伝子情報の他の研究機関への提供
試料、診療情報、またはそれから得られた遺伝子情報を他の機関へ提供する場合は必ず匿名化されることを説明し、さらに、提供先機関名、提供先機関における利用目的が妥当であることについては倫理審査委員会で承認されていることを説明する。
(8)研究結果の開示
個々の被験者についての遺伝子情報が明らかにならない研究の場合は、当該被験者に係る遺伝子情報は、被験者本人または代諾者に開示できないことを説明する。
一方、個々の被験者の遺伝子情報が明らかとなる研究の場合には、被験者本人または代諾者の求めに応じて遺伝子情報を開示できることを説明する(5−1−1−10)。この場合、遺伝子情報は担当医等からそれぞれ被験者または代諾者のみに開示され、それ以外の者にはたとえ家族であっても、被験者または代諾者の承諾がない限り開示しないこと、さらに、結果の開示を望む場合は、遺伝子解析前後の予め定めた一定期間内に結果の開示を求めるべきこと、およびこの期間が過ぎた場合は結果の開示が不可能になる場合があることをも告げる。また、一旦結果の開示を望んだ場合でも、実際に開示を受ける前であれば、いつでもこの要求を撤回できることを告げる(5−1−1−11)。
また、被験者またはその家族等が、提供された試料を他の研究に使用することも承諾いただいた場合であって、その研究結果が被験者に医学上重大な影響を及ぼすと考えられる場合以外は、特に本人が希望しない限り被験者には結果を知らせないことを告げる。
なお、被験者が未成年者で、遺伝子解析結果が本人に説明されなかった場合で、成人後に被験者が説明を受けることを希望した場合は、予め定めた一定期間内であれば本人に説明する。
(9)知的財産権、研究成果の公表
将来、遺伝子解析研究の成果が知的財産権を生み出す可能性があり、その場合、当該知的財産権は被験者には帰属しないことを説明する(5−1−1−12)。また、試料から得られた遺伝子情報などの研究成果は、匿名化により試料等提供者を特定できなくした上で、学会発表やデータベースとして公表される場合があることを告げる(5−1−1−13)。
(10)試料、診療情報の保管と廃棄
被験者の生体試料や診療情報は、研究計画書に明記され、倫理審査委員会の承認を得たうえで、インフォームド・コンセントの範囲内で、将来の研究のための資源として保管されることがある。この場合、被験者に対し、その必要性、保管の方法、期間、場所、管理責任者名および匿名化の方法を告げる(5−1−1−14)。
廃棄に当たっては、その方法と匿名化の方法を説明する。
(11)細胞・遺伝子・組織バンクへの寄託
試料を細胞・遺伝子・組織バンクへ寄託し、一般的に研究用資源として分譲することがあり得る場合には、バンクの学術的意義、当該バンクが設置されている機関の名称、寄託されるヒト由来試料等の匿名化の方法を説明する(5−1−1−15)。
(12)試料提供の対価
資料提供に当たっての対価はないこと、また、、研究結果によって、診療が必要になった場合、被験者の医療費負担が生じうることを告げる(5−1−1−17)。
(13)遺伝カウンセリングの実施
遺伝性疾患などの患者やその家族の求めに応じ、遺伝性疾患や遺伝子解析研究についての疑問や不安を解消できるよう援助・支援するための遺伝カウンセリングの体制について説明する。遺伝カウンセリングの体制が整備されていない研究機関においては、遺伝カウンセリングの体制が整備された適切な施設を紹介する等の対応をする。
なお、遺伝カウンセリングは以下のような倫理規範に基づいて行われるものである。
《患者さん用説明文書:第一群用例文》(イメージ)
(注){ }内のことばは、説明する者が予め選択します。
遺伝子とは
「遺伝」という言葉は、「親の体質が子に伝わること」を言います。ここでいう「体質」の中には、顔かたち、体つきのほか、性格や病気に罹りやすいことなども含まれます。ある人の体の状態は、遺伝とともに、生まれ育った環境によって決まってしまいますが、遺伝は基本的な部分で人の体や性格の形成に重要な役割を果たしています。「遺伝」という言葉に「子」という字が付き「遺伝子」となりますと,「遺伝を決定する小単位」という科学的な言葉になります。人間の場合、10万個以上の遺伝子が働いていますが、その本体は「DNA」という物質です。「DNA」は,A,T,G,Cという四つの印の連続した鎖です。印は、一つの細胞の中で約30億個あり、その印がいくつかつながって遺伝子を司っています。このつながりが遺伝子です。一つの細胞の中には10万個以上の遺伝子が散らばって存在しています。この遺伝情報を総称して「ゲノム」という言葉で表現することもあります。人間の体は、60兆個の細胞から成り立っていますが、細胞の一つ一つにすべての遺伝子が含まれています。
遺伝子と病気
こうした非常に大事な役割を持つ遺伝子の違いはさまざまな病気の原因になります。完成された人体を形作る細胞で遺伝子の違いが起きると、違いのある細胞を中心にその人限りの病気が発生することがあります。これを体細胞変異といいがんがその代表的な病気です。一方、ある遺伝子に生れつき違いがある場合には,その違いが子,孫へと伝わってしまいます。この場合,遺伝する病気が出てくる可能性が生じます。
遺伝病における原因遺伝子解析研究の特徴
遺伝子には、「人体の設計図」、「種の保存」という二つの重要な役割があることをすでに述べました。ある病気の原因となる遺伝子に生まれつきの違いが生じている場合には、この二つの役割に応じた遺伝子解析研究の有用性が考えられます。まず、原因となる遺伝子の生まれつきの違いを持つ人では、将来かかる病気を予測することが可能となり、その情報をもとに、病気を予防したり、早期発見をすることができます。また、患者さんの血縁者の中から患者さんを見つけだし、予防につとめ、また早期発見、早期治療により病気を治すことが可能となります。
遺伝子解析研究への協力について
この研究は、遺伝子の作りや働き具合を調べ、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)が今かかっている病気や将来かかるかも知れない病気との関係を調べます。最近、○○○という遺伝子に変化があると、【○○○症候群】という病気にかかりやすいことがわかってきました。そこで、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)の○○○遺伝子を調べ、病気を引き起こす違いが見つかれば、診療に生かすことができます。しかし、診断方法は確実なものではなく、○○○遺伝子が原因となる遺伝子ではないことも考えられるので、この研究により違いが見つからない場合には、遺伝する病気にかかっているかもしれないし、そうではないかもしれないと言うどっちつかずの状況になる可能性もあります。ただ、この研究では、より診断技術を向上させ、新しく原因となる遺伝子を探し出すなどの努力を続けていきます。
同意の表明の前提
(1)研究協力の任意性と撤回の自由
この研究への協力の同意はあなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)の自由意志で決めてください。強制いたしません。また、同意しなくても、あなた(または、あなたおよびあなたが代わりをつとめる提供者本人)の不利益になるようなことはありません。
(2)研究計画
研究題目:○○○症候群における○○○遺伝子の突然変異の解析
研究機関名および研究責任者氏名:
研究目的:
研究方法:
研究計画書等の開示:
(3)試料提供者にもたらされる利益および不利益
あなた(またはあなたが代わりをつとめる提供者本人)が既に【○○○症候群】と確実に診断されている場合は、この遺伝子を調べる方法を用いても、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)自身の診療方針が大きく変わることはありません。ただ、あなた(またはあなたが代わりをつとめる提供者本人)の遺伝子に原因となる変異が見つかった場合は、血縁者が同じ遺伝体質をもっているかどうかを同様の検査によって確かめやすくなります。
(4)個人情報の保護
遺伝子の研究結果は、様々な問題を引き起こす可能性があるため、他の人に漏れないように、取り扱いを慎重に行う必要があります。あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)の血液などの試料や診療情報は、分析する前に診療録や試料の整理簿から、住所、氏名、生年月日などを削り、代わりに新しく符号をつけ、どこの誰の試料かが分からないようにした上で、○○○○(試料等採取機関名または部署)において厳重に保管します。このどこの誰の試料かが分からないようにしたことにより、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)の遺伝子の分析結果は、分析を行う研究者を含む誰にも、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)のものであると分からなくなります。ただし、遺伝子解析の結果、必要な場合には、○○○○(試料等採取機関名または部署)においてこの符号を元の氏名などに戻す操作を行い、結果をあなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)にお知らせすることが可能になります。
(5)遺伝子解析結果の開示
あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)の遺伝子を調べた結果についての説明は、あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)が説明を望む場合に、あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)に対してのみ行い、たとえあなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)の家族に対しても、また、あなたが試料提供者の代諾者である場合、提供者本人に対しても、あなたの承諾または依頼なしに結果を告げることはいたしません。ただし、試料を提供した未成年者が、遺伝子を調べた結果について説明されず、成人後にその説明を希望する場合は、血液等採取後○年以内であればあなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)の承諾なしに本人に結果を説明致します。
(6)研究成果の公表
あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人およびあなた)の協力によって得られた研究の成果は、提供者本人やその家族の氏名などが明らかにならないようにした上で、学会発表や学術雑誌およびデータベース上等で公に発表されることがあります。
(7)研究から生じる知的財産権の帰属
遺伝子解析研究の結果として特許権などが生じる可能性がありますが、その権利は国、研究機関、民間企業を含む共同研究機関および研究遂行者などに属し、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人およびあなた)は、この特許権などを持っていると言うことができません。また、その特許権などをもととして経済的利益が生じる可能性がありますが、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人およびあなた)はこれについても権利があるとは言えません。これは、遺伝子の働きを調べることそのものがとてもむずかしいことであるからです。
(8)遺伝子解析研究終了後の試料等の取扱の方針
あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)の血液などの試料は、原則として本研究のために用いさせていただきます。しかし、もし、あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)が同意してくだされば、将来の研究のための貴重な資源として、研究終了後も保管させていただきたいと思います。この場合は、符号によってどこの誰の試料かが分からないようにした上で、試料が使い切られるまで保管します。
(9)費用負担に関する事項
ここで行われる遺伝子解析研究に必要な費用は、厚生省の研究に対する助成金から出され、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人およびあなた)が負担することはありません。また、交通費などの支給は行いません。しかし、この研究によって病気のかかりやすさが明らかとなり、その診断あるいは治療が必要となることがあります。この一般診療に要する費用のうち自己負担分については、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)が負担せねばなりません。
(10)遺伝カウンセリングの体制
あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)が、病気のことや遺伝子解析研究に関して、不安に思うことがあったり、相談したいことがある場合に備えて、遺伝カウンセリング部門を設置しています。ここでは、遺伝カウンセリング担当者があなたの相談を受けることが可能です。主治医、インフォームド・コンセント担当者、あるいは医事課
研究責任者あるいは機関の長(試料等採取機関における研究責任者名) 殿
私は遺伝子解析研究(研究題目)について、(説明をした者の氏名)より説明文書を用いて説明を受け、その方法、危険性、分析結果のお知らせの方法等について十分理解しました。ついては、次の条件で研究協力に同意致します。
説明を受け理解した項目(□の中にご自分で レを付けて下さい。)
研究協力への同意(説明を受け理解した項目の全ての□に レを記入した方は、「はい」または「いいえ」に○を付け、署名して下さい。)
提供する生体試料等が、本遺伝子解析研究に使用されるとともに、長期間保存され、将来、新たに計画・実施される遺伝子の分析を含む医学研究に使用されることに同意します。 提供者の氏名や住所など提供者本人を特定できる情報を完全に削除した上で、試料や試料から取り出したDNAなどを研究機関が行うバンク事業に提供し、種々の研究に使用されることに同意します。
遺伝子には二つの重要な働きがあります。一つは,遺伝子が精密な「人体の設計図」であるという点です。受精した一つの細胞は,分裂を繰り返してふえ、一個一個の細胞が、「これは目の細胞」、「これは腸の細胞」と決まりながら、最終的には60兆個まで増えて人体を形作りますが、その設計図はすべて遺伝子に含まれています。第2の重要な役割は「種の保存」です。両親から子供が生まれるのもやはり遺伝子の働きです。人類の先祖ができてから現在まで「人間」という種が保存されてきたのは、遺伝子の働きによっています。
このように説明すると、遺伝子の変化が必ず病気を引き起こすと思われるかもしれません。事実は遺伝子の変化が病気を引き起こすことはむしろきわめてまれなことと考えられています。たとえば、一人一人の顔や指紋が違っているのと同じように人によって生まれつき遺伝子に違いが見られ、その大部分は病気との直接の関わりがないことがわかってきました。また、人体を形作る60兆個の細胞では頻繁に遺伝子の変化が起きていますがそのほとんどは病気との関わりがありません。遺伝子変異のごく一部の変化のみが病気を引き起こし、遺伝する病気として気が付かれるのだと思われます。
しかし、今は健康な人に対し,将来病気になることを告げること、あるいは一人の患者さんの診療によって,その家族の遺伝病を予測してしまうということは従来の医療には見られなかったことです。この結果、新たな倫理的、法的、社会的問題が生じてきますが、これには、将来の発病に対する不安、就職・結婚・生命保険加入などへの影響、家族の中での不安など、様々な問題が考えられます。
本遺伝子解析研究では、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)が強い遺伝的素因を有していると判断しており、上記の倫理的・法的・社会的問題が生じる可能性はきわめて低いと考えられますが、研究への協力の可否を決めるに当たっては、遺伝子解析研究の持つ利点と不利な点に配慮していただかねばなりません。
なお、ご心配の方には、研究施設に整備され、あるいは研究施設から紹介される遺伝カウンセリングの部門での相談も可能ですので利用してください。
あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)は、この病気に(かかっている・将来かかる)可能性が強いので、血液や手術によって取り出された体の一部を診療記録とともにこの研究に利用させていただきたいのです。血液の採取は大きな危険を伴いません。また、手術は病気を治すために行うものですが、取り出した病気によって異常を生じた体の一部、あるいは手術操作のために一緒に取り出さざるを得ない正常な体の一部で、診療のための分析には不要な部分を研究に利用します。
具体的には、まず、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)にこの研究への協力をお願いするため、研究の内容を含め、あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)が同意するための手続きについて説明を行います。あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)がこの説明をよく理解でき、あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなたあなた)が研究に協力して血液や体の一部を提供することに同意しても良いと考える場合には、「遺伝子解析研究への協力の同意書」に署名することにより同意の表明をお願いいたします。
一旦同意した場合でも、あなた(または、あなたおよびあなたが代わりをつとめる提供者本人)が不利益を受けることなく、いつでも同意を取り消すことができ、その場合は採取した血液や遺伝子を調べた結果は廃棄され、診療記録などもそれ以降は研究目的に用いられることはありません。ただし、同意を取り消した時すでに研究結果が論文などで公表されていた場合などのように、遺伝子を調べた結果などを廃棄することができない場合があります。
研究機関名
研究責任者名
職名
○○○センター
○○ ○○
○○○○
○○○病院
○○ ○○
○○○○
あなた(またはあなたが代わりをつとめる提供者本人)が【○○○症候群】の疑いがあるけれども、まだ確実に診断されていない場合は、この遺伝子を調べる方法によって、診断が確実になる場合があり、その場合はあなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)の血縁者の遺伝体質を調べることも容易になります。また、診断が確実になった場合は、○○○という予防的な治療法を選ぶことができます。ただし、遺伝子を調べてもあなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)がこの病気ではないということを確実には言えない場合もあります。
あなた(またはあなたが代わりをつとめる提供者本人)が【○○○症候群】の原因となる遺伝子の違いがつきとめられている人の血縁者であり、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)がまだ病気にかかっていない場合、この病気にかかる体質であるかどうかを発病する前に診断することができます。だたし、その体質があると診断された場合、就職・結婚・保険への加入などに関して現時点では予測できないような不利益をこうむる可能性があります。また、たとえその体質ではないと診断された場合でも、家族が不安を感じたり悩むことがあるかもしれません。そこで、本研究においては、研究施設の責任で、遺伝カウンセリングの部門を整備し、あるいは紹介する体制を整えています。
あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)の遺伝子解析の結果について説明を希望される場合は、血液採取後○年以内に申し出て下さい。それ以後はその結果を保管できない場合があります。
なお、将来、試料を研究に用いる場合は、改めてその研究計画書を倫理審査委員会において承認を受けた上で利用します。将来の研究において分かった遺伝子の新たな情報については、その情報があなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)に医学的に重大な影響を及ぼす場合に限り、倫理審査委員会における審査を経て、さらにあなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)の知りたいという希望を確認した上で、報告致します。
また、研究機関では、提供された細胞や血液などの体の一部やそこから取り出したDNAなどを、どこの誰の物であるかを分からないようにした上で保存し、広く研究用に提供する事業(バンク事業)を行っていることがあります。あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)からいただいた試料やそれから取り出したDNAなどもバンク事業に提供し、国民の共有財産として様々な研究に利用させていただくことも併せてお願いします。
職員にその旨申し出てください。
(同意文書:第一群生体試料等提供者用の例)(イメージ)
□
遺伝子の分析を行うこと。
□
研究協力の任意性と撤回の自由
□
研究目的
□
研究方法
□
研究計画書等の開示
□
試料提供者にもたらされる利益および不利益
□
個人情報の保護
□
遺伝子解析結果の開示
□
研究成果の公表
□
研究から生じる知的財産権の帰属
□
遺伝子解析研究終了後の試料等の取扱の方針
□
費用負担に関する事項
□
遺伝カウンセリングの体制
本研究が終了した時、速やかに試料を廃棄してください。
はい
いいえ
署名:
はい
いいえ
署名:
はい
いいえ
署名:
平成 年 月 日 | ||
氏名 | (試料等提供者本人または代諾者) | |
(代諾者の場合本人との関係) | ||
住所 | ||
電話 | ||
署名または記名・捺印 | ||
説明者の氏名及び職名 | ||
説明者の署名または記名・捺印 |
厚生省におけるミレニアム・プロジェクトの一環として実施される「遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究」においては、被験者、その家族・血縁者さらには関連する疾病にかかっている患者に様々な倫理的・法的・社会的問題が生ずる可能性がある。この問題に対処するため、被験者およびその関係者の尊厳、人権および利益を保護することを目的とし、平成11年度の厚生科学特別研究事業において「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針」が作成された。
本文書は、この指針の中で「第二群ヒト由来試料等提供者」を対象としている。第二群ヒト由来試料等提供者とは、一般の痴呆、がん、高血圧、糖尿病、アレルギー疾患、薬剤反応性異常など遺伝素因の関与の程度が明らかでない病態を有する者およびその可能性のある者である。これらの被験者が、研究協力のためのインフォームド・コンセントを与えるか否かを判断するための説明を受けるに当たって、その説明にあたる者が、指針のうち「(5−1)インフォームド・コンセントの手続きに関する原則」の記載を十分に理解する事を目的として作成されたものである。
「第二群ヒト由来試料等提供者」においては、遺伝子解析研究を通じて得られた情報が、疾患等の予防・診断・治療の方針に影響を与える可能性は低いと考えられるが、説明に当たっては、被験者が遺伝子解析研究の持つ特殊性を十分に理解した上で、研究協力への同意を与えることができるよう配慮する必要がある。また、患者や家族のプライバシーを最大限に保護し、被験者からの質問に対しては、必要に応じて主治医や遺伝カウンセリング担当者等の協力を得て対応せねばならない。
なお、以下の文章においては、具体的なインフォームド・コンセントの手続きの進め方に応じて担当者の成すべきことを説明し、指針で説明されている部分の項目番号を[ ]にて示した。
《説明に当たる者の資格》
インフォームド・コンセントの手続きにおける説明にあたっては、研究遂行者の一員であり、倫理審査委員会で承認された研究計画書のなかで「インフォームド・コンセントに係る説明を行う者」として認められた者が成さねばならない(5−1−1)。
《代諾について》
被験者が、痴呆等の疾患のため、有効なインフォームド・コンセントを与えることができないと客観的に判断された場合には、その者に代わってインフォームド・コンセントを与える者として、代諾者に対し説明を行い、同意を得る必要がある(5ー1ー3ー1)。この場合の代諾者の選定に当たっては、研究遂行者は、家族または日常生活において深く被験者と関わっていた者等の中から、被験者の人権保護の観点から適当と考えられる者を選んでもらうように、家族等に依頼すること(5−1−3−3)。
なお、代諾者が被験者と血縁関係を有し、自らの遺伝的問題について不安を持った場合には、代諾者自身に対する説明と遺伝カウンセリングについても十分配慮する必要がある(5−1−3−4)。
一方、被験者が未成年者であるときは、試料の提供を受けるためには、親権者等の代諾者がインフォームド・コンセントを与える必要がある。ただし、未成年者が16歳以上である場合には、親権者等の代諾者とともに、その未成年者本人の同意も必要である。また、未成年者が16歳未満の場合には、代諾者の同意によって試料の提供を受けることが可能であるが、この場合においても、その未成年者本人に十分な説明を行い、できる限りその未成年者からも試料提供の同意が与えられるように努めなければならない(5−1−3−2)。
《具体的な手順》
インフォームド・コンセントの手続きにおける説明に当たっては、説明者は倫理審査委員会で内容を承認された説明文書を用い、以下に述べる事項のうち研究の実施上必要な事項について適切かつ十分な説明を行い、説明を受ける者が自由意思に基づいて、試料の提供への同意を表明できるようにすること。
なお、身体障害などにより説明文書を読むことができない被験者に対しては、研究遂行者でない者を立ち会わせた上で、説明を行わねばならない。
その上で、説明者は署名した同意書の写しを被験者または代諾者に渡し、同意書を所定の場所に保管する。
《説明事項》
(1) 研究協力の任意性と撤回の自由
被験者に対し、試料の提供は任意であっていつでも同意は撤回できることを伝える。さらに、被験者が試料提供に同意しない場合、あるいは同意を撤回した場合においても、疾病等の診療において不利益な扱いを受けないことを説明する。同意を撤回した場合、その撤回に関わる試料および研究結果は廃棄されるが、既に研究結果が公表されている場合、あるいは廃棄しないことにより被験者の個人識別情報を含む情報が明らかになるおそれが小さく、かつ廃棄作業が極めて過大である場合等やむを得ない場合には、研究結果の廃棄はできないことがあることを説明する(5−1−1−1)。
なお、連結不可能匿名化される場合など、個々の被験者についての遺伝子情報が明らかにならない研究の場合にあっては、求められても結果を知らせることができないことを説明する(5−1−1−2)。
(2) 研究協力を要請する理由
被験者がいかなる理由で、遺伝素因の関与の程度が明らかでない疾患や薬剤反応性異常等を有する、あるいはその可能性があると判断されたかを述べ、当該疾患発症者で診断が確定している者とそうでない者などに分け、被験者の試料や診療情報をどのような研究に用いるかを説明する(5−1−1−3)。
その上で、被験者の遺伝素因に関連すると推測される遺伝子、あるいは具体的な遺伝子が特定できない場合には様々な遺伝子について調べることを方法も含め説明する。さらに、将来、解析対象となる疾病や重篤な薬剤反応性異常に関連する遺伝子を探索するために試料が保存、利用される可能性がある場合または研究の目的や方法の変更が予想される場合にはその旨説明する(5−1−1−4)。
(3) 研究責任者の氏名および職名
研究責任者の氏名および職名を告げる(5−1−1−5)。
(4) 予測される研究結果と被験者の危険・不利益
遺伝子解析研究の成果が、被験者に直接利益を与えないが、将来、解析対象となる疾病や重篤な薬剤反応性異常の克服に寄与する可能性について伝える。
また、研究によって、被験者が遺伝的素因を有することが確定されることがまれには存在すること、その場合、倫理的・法的・社会的問題が生じうることも告げる。さらに、試料採取において、身体的な危険が予想される場合には、それについても説明する(5−1−1−6)。
(5) 研究計画書、方法の開示
希望により、そのヒト由来試料等を用いた遺伝子解析研究の研究計画書、遺伝子解析の詳しい方法等の資料を入手または閲覧することができることを告げる(5−1−1−7)。
(6) 試料および診療情報の匿名化
匿名化(氏名、生年月日、住所などの個人を特定できる情報を記号に置き換えるなどして、試料や個人情報の由来する個人を特定できなくすること)の有無、匿名化される場合は連結可能匿名化(置き換えられた記号等を特定の者のみが元の個人名などに戻すことができる匿名化)・連結不可能匿名化(何人も二度と元の個人をたどることができない匿名化)の別、およびその具体的方法について説明する(5−1−1−8)。
(7) 試料、診療情報、遺伝子情報の他の研究機関への提供
試料、診療情報、またはそれから得られた遺伝子情報を他の機関へ提供する場合は必ず匿名化されることを説明し、さらに、提供先機関名、提供先機関における利用目的が妥当であることについては倫理審査委員会で承認されていることを説明する。
(8) 研究結果の開示
個々の被験者についての遺伝子情報が明らかにならない研究の場合は、当該被験者に係る遺伝子情報は、被験者本人または代諾者に開示できないことを説明する。
一方、診療に役立つと判断される研究の場合には、被験者本人または代諾者の求めに応じて遺伝子情報を開示できることを説明する(5−1−1−10)。この場合、遺伝子情報は担当医等からそれぞれ被験者または代諾者のみに開示され、それ以外の者にはたとえ家族であっても、被験者または代諾者の承諾がない限り開示しないこと、さらに、結果の説明を望む場合は、遺伝子解析前後の予め定めた一定期間内に結果の開示を求めるべきこと、およびこの期間が過ぎた場合は結果の開示が不可能になる場合があることをも告げる。また、一旦結果の開示を望んだ場合でも、実際に開示を受ける前であれば、いつでもこの要求を撤回できることを告げる(5−1−1−11)。
また、被験者またはその家族等が、提供された試料を他の研究に使用することも承諾いただいた場合であって、その研究結果が被験者に医学上重大な影響を及ぼすと考えられる場合以外は、特に本人が希望しない限り被験者には結果を知らせないことを告げる。
なお、被験者が未成年者で、遺伝子解析結果が本人に説明されなかった場合で、成人後に被験者が説明を受けることを希望した場合は、予め定めた一定期間内であれば本人に説明する。
(9)知的財産権、研究成果の公表
将来、遺伝子解析研究の成果が知的財産権を生み出す可能性があり、その場合、当該知的財産権は被験者には帰属しないことを説明する(5−1−1−12)。また、試料から得られた遺伝子情報などの研究成果は、匿名化により試料等提供者を特定できなくした上で、学会発表やデータベースとして公表される場合があることを告げる(5−1−1−13)。
(10)試料、診療情報の保管と廃棄
被験者の生体試料や診療情報は、研究計画書に明記され、倫理審査委員会の承認を得たうえで、インフォームド・コンセントの範囲内で、将来の研究のための資源として保管されることがある。この場合、被験者に対し、その必要性、保管の方法、期間、場所、管理責任者名および匿名化の方法を告げる(5−1−1−14)。
廃棄に当たっては、その方法と匿名化の方法を説明する。
(11)細胞・遺伝子・組織バンクへの寄託
試料を細胞・遺伝子・組織バンクへ寄託し、一般的に研究用資源として分譲することがあり得る場合には、バンクの学術的意義、当該バンクが設置されている機関の名称、寄託されるヒト由来試料等の匿名化の方法を説明する(5−1−1−15)。
(12)試料提供の対価
資料提供に当たっての対価はないこと、また、、研究結果によって、診療が必要になった場合、被験者の医療費負担が生じうることを告げる(5−1−1−17)。
(13)遺伝カウンセリングの実施
第二群生体試料等提供者について遺伝カウンセリングが必要となる状況は多くはないが、倫理審査委員会がその必要性を指摘した場合、あるいは被験者の希望がある場合には、それを援助・支援するための遺伝カウンセリングの体制が整備され、あるいは紹介できることを説明する。
(注){ }内のことばは、説明する者が予め選択します。
遺伝子とは
「遺伝」という言葉は、「親の体質が子に伝わること」を言います。ここでいう「体質」の中には、顔かたち、体つきのほか、性格や病気にかかりやすいことなども含まれます。ある人の体の状態は、遺伝とともに、生まれ育った環境によって決まってしまいますが、遺伝は基本的な部分で人の体や性格の形成に重要な役割を果たしています。「遺伝」という言葉に「子」という字が付き「遺伝子」となりますと,「遺伝を決定する小単位」という科学的な言葉になります。人間の場合、10万個以上の遺伝子が働いていますが、その本体は「DNA」という物質です。「DNA」は,A,T,G,Cという四つの印の連続した鎖です。印は、一つの細胞の中で約30億個あり、その印がいくつかつながって遺伝子を司っています。このつながりが遺伝子です。一つの細胞の中には10万個以上の遺伝子が散らばって存在しています。
この遺伝情報を総称して「ゲノム」という言葉で表現することもあります。人間の体は、60兆個の細胞から成り立っていますが、細胞の一つ一つにすべての遺伝子が含まれています。
遺伝子には二つの重要な働きがあります。一つは,遺伝子が精密な「人体の設計図」であるという点です。受精した一つの細胞は,分裂を繰り返してふえ、一個一個の細胞が、「これは目の細胞」、「これは腸の細胞」と決まりながら、最終的には60兆個まで増えて人体を形作りますが、その設計図はすべて遺伝子に含まれています。第2の重要な役割は「種の保存」です。両親から子供が生まれるのもやはり遺伝子の働きです。人類の先祖ができてから現在まで「人間」という種が保存されてきたのは、遺伝子の働きによっています。
遺伝子と病気
こうした非常に大事な役割を持つ遺伝子の違いはさまざまな病気の原因になります。完成された人体を形作る細胞で遺伝子の違いが起きると、違いのある細胞を中心にその人限りの病気が発生することがあります。これを体細胞変異といいがんがその代表的な病気です。一方、ある遺伝子に生れつき違いがある場合には,その違いが子,孫へと伝わってしまいます。この場合,遺伝する病気が出てくる可能性が生じます。
このように説明すると、遺伝子の変化が必ず病気を引き起こすと思われるかもしれません。事実は遺伝子の変化が病気を引き起こすことはむしろきわめてまれなことと考えられています。たとえば、一人一人の顔や指紋が違っているのと同じように人によって生まれつき遺伝子に違いが見られ、その大部分は病気との直接の関わりがないことがわかってきました。また、人体を形作る60兆個の細胞では頻繁に遺伝子の変化が起きていますがそのほとんどは病気との関わりがありません。遺伝子変異のごく一部の変化のみが病気を引き起こし、遺伝する病気として気が付かれるのだと思われます。
遺伝病における原因遺伝子解析研究の特徴
遺伝子には、「人体の設計図」、「種の保存」という二つの重要な役割があることをすでに述べました。ある病気の原因となる遺伝子に生まれつきの違いが生じている場合には、この二つの役割に応じた遺伝子解析研究の有用性が考えられます。まず、原因となる遺伝子の生まれつきの違いを持つ人では、将来かかる病気を予測することが可能となり、その情報をもとに、病気を予防したり、早期発見をすることができます。また、患者さんの血縁者の中から患者さんを見つけだし、予防につとめ、また早期発見、早期治療により病気を治すことが可能となります。
しかし、今は健康な人に対し,将来病気になることを告げること、あるいは一人の患者さんの診療によって,その家族の遺伝病を予測してしまうということは従来の医療には見られなかったことです。この結果、新たな倫理的、法的、社会的問題が生じてきますが、これには、将来の発病に対する不安、就職・結婚・生命保険加入などへの影響、家族の中での不安など、様々な問題が考えられます。
本遺伝子解析研究では、あなた(あるいは、あなたが代わりをつとめる提供者本人)が強い遺伝的素因を有してはいないと判断しており、上記の倫理的・法的・社会的問題が生じる可能性はきわめて低いと考えられますが、研究への協力の可否を決めるに当たっては、遺伝子解析研究の持つ利点と不利な点に配慮していただかねばなりません。
なお、ご心配の方には、研究施設に整備され、あるいは研究施設から紹介される遺伝カウンセリングの部門での相談も可能ですので利用してください。
遺伝子解析研究への協力について
この研究は、【○○○症候群】という病気や薬の効き目の違いと、病気や薬の効き目に関係があると考えられる遺伝子、あるいはそれ以外の多くの遺伝子について、その作りや働きを調べ、【○○○症候群】という病気や薬の効き目に遺伝子が関係しているかどうかを調べることを目的としています。
あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)は、この病気にかかってますが、血液や手術によって取り出された体の一部を診療記録とともに、この研究に利用させていただきたいのです。血液の採取は大きな危険を伴いません。また、手術は病気を治すために行うものですが、取り出した病気によって異常を生じた体の一部、あるいは手術操作のために一緒に取り出さざるを得ない正常な体の一部で、診療のための分析には不要な部分を研究に利用します。
具体的には、まず、あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)にこの研究への協力をお願いするため、研究の内容を含め、あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)が同意するための手続きについて説明を行います。あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)がこの説明をよく理解でき、あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)が研究に協力して血液や体の一部を提供することに同意しても良いと考える場合には、「遺伝子解析研究への協力の同意書」に署名することにより同意の表明をお願いいたします。
同意の表明の前提
(1) 研究協力の任意性と撤回の自由
この研究への協力の同意はあなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)の自由意志で決めてください。強制いたしません。また、同意しなくても、あなた(または、あなたおよびあなたが代わりをつとめる提供者本人)の不利益になるようなことはありません。
一旦同意した場合でも、あなた(または、あなたおよびあなたが代わりをつとめる提供者本人)が不利益を受けることなく、いつでも同意を取り消すことができ、その場合は採取した血液や遺伝子を調べた結果は廃棄され、診療記録などもそれ以降は研究目的に用いられることはありません。ただし、同意を取り消した時すでに研究結果が論文などで公表されていた場合などのように、遺伝子を調べた結果などを廃棄することができない場合があります。
(2) 研究計画
研究題目:
研究機関名 | 研究責任者名 | 職名 |
○○○センター | ○○ ○○ | ○○○○ |
○○○病院 | ○○ ○○ | ○○○○ |
(3) 試料提供者にもたらされる利益および不利益
本遺伝子解析研究の結果があなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)に有益な情報をもたらす可能性は非常に低いと考えられます。しかし、まれに、遺伝子の分析研究の結果、偶然に重大な病気との関係が見つかることがあります。
この時は、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)がその結果を知ることが有益であると判断された場合に限り、主治医よりにあなた知らされます。
なお、研究の成果は今後の医学の発展に寄与します。その結果、将来、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)の病気の診断や予防、治療などがより効果的に行われるようになるかもしれません。
(4) 個人情報の保護
遺伝子の研究結果は、様々な問題を引き起こす可能性があるため、他の関係する人にもれないように、取り扱いを慎重に行う必要があります。あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)の血液などの試料や診療記録は、分析する前に住所、氏名、生年月日などを削り、代わりに新しく符号をつけ、どこの誰の試料かが分からないようにした上で、○○○○(試料等採取機関名または部署)において厳重に保管します。このどこの誰の試料かが分からないようにしたことにより、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)の遺伝子の分析結果は、分析を行う研究者を含む誰にも、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)のものであると分からなくなります。ただし、遺伝子解析の結果、必要な場合には、○○○○(試料等採取機関名または部署)においてこの符号を元の氏名などに戻す操作を行い、結果をあなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)にお知らせすることが可能になります。
(5) 遺伝子解析結果の開示
本遺伝子解析研究においては、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)に有益な結果が出る可能性は極めて低く、あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)に解析結果を開示することは原則としてありません。ただし、偶然に重大な病気との関係が見つかり、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)がその結果を知ることが有益であると判断される場合に限って、主治医よりあなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)に知らされます。
この場合の説明は、あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)に対してのみ行い、たとえあなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)の家族に対しても、また、あなたが試料提供者の代諾者である場合、提供者本人に対しても、あなたの承諾または依頼なしに結果を告げることは致しません。ただし、未成年の試料提供者が本人の遺伝子を調べた結果について説明されず、成人後にその説明を希望する場合は、血液等採取後○年以内であればあなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)の承諾なしに本人に結果を説明致します。
あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)の遺伝子解析の結果について説明を希望される場合は、血液採取後○年以内に申し出て下さい。それ以後はその結果を保管できない場合があります。
(6) 研究成果の公表
あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人およびあなた)の協力によって得られた研究の成果は、提供者本人やその家族の氏名などが明らかにならないようにした上で、学会発表や学術雑誌およびデータベース上等で公に発表されることがあります。
(7) 研究から生じる知的財産権の帰属
遺伝子解析研究の結果として特許権などが生じる可能性がありますが、その権利は国、研究機関、民間企業を含む共同研究機関および研究遂行者などに属し、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人およびあなた)はこの特許権などを持っていると言うことができません。また、その特許権などをもととして経済的利益が生じる可能性がありますが、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人およびあなた)はこれについても権利があるとは言えません。これは、遺伝子の働きを調べることそのものがとてもむずかしいことであるからです。
(8) 遺伝子解析研究終了後の試料等の取扱の方針
あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)の血液などの試料は、原則として本研究のために用いさせていただきます。しかし、もし、あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)が同意してくだされば、将来の研究のための貴重な資源として、研究終了後も保管させていただきたいと思います。この場合は、符号によってどこの誰の試料かが分からないようにした上で、試料が使い切られるまで保管します。
なお、将来、試料を研究に用いる場合は、改めてその研究計画書を倫理審査委員会において承認を受けた上で利用します。将来の研究において分かった遺伝子の新たな情報については、その情報があなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)に医学的に重大な影響を及ぼす場合に限り、倫理審査委員会における審査を経て、さらにあなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)の知りたいという希望を確認した上で、報告致します。
また、研究機関では、提供された細胞や血液などの体の一部やそこから取り出したDNAなどをどこの誰の物であるかを分からないようにした上で保存し、広く研究用に提供する事業(バンク事業)を行っていることがあります。あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)からいただいた試料やそれから取り出したDNAなどもバンク事業に提供し、国民の共有財産として様々な研究に利用させていただくことも併せてお願いします。
(9) 費用負担に関する事項
ここで行われる遺伝子解析研究に必要な費用は、厚生省の研究に対する助成金から出され、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人およびあなた)が負担することはありません。また、交通費などの支給は行いません。しかし、この研究によって病気のかかりやすさが明らかとなり、その診断あるいは治療が必要となることがあります。この一般診療に要する費用のうち自己負担分については、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)が負担せねばなりません。
(10) 遺伝カウンセリングの体制
あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)が、病気のことや遺伝子解析研究に関して、不安に思うことがあったり、相談したいことがある場合に備えて、遺伝カウンセリング部門を設置しています。ここでは、遺伝カウンセリング担当者があなたの相談を受けることが可能です。主治医、インフォームド・コンセント担当者、あるいは医事課職員にその旨申し出てください。
研究責任者あるいは機関の長(試料等採取機関における研究責任者名) 殿
私は遺伝子解析研究(研究題目)について、(説明をした者の氏名)より説明文書を用いて説明を受け、その方法、危険性、分析結果のお知らせの方法等について十分理解しました。ついては、次の条件で研究協力に同意致します。
説明を受け理解した項目(□の中にご自分で レを付けて下さい。)
□ | 遺伝子の分析を行うこと。 |
□ | 研究協力の任意性と撤回の自由 |
□ | 研究目的 |
□ | 研究方法 |
□ | 研究計画書等の開示 |
□ | 試料提供者にもたらされる利益および不利益 |
□ | 個人情報の保護 |
□ | 遺伝子解析結果の開示 |
□ | 研究成果の公表 |
□ | 研究から生じる知的財産権の帰属 |
□ | 遺伝子解析研究終了後の試料等の取扱の方針 |
□ | 費用負担に関する事項 |
□ | 遺伝カウンセリングの体制 |
はい | いいえ | 署名: |
提供する生体試料等が、本遺伝子解析研究に使用されるとともに、長期間保存され、将来、新たに計画・実施される遺伝子の分析を含む医学研究に使用されることに同意します。
はい | いいえ | 署名: |
提供者の氏名や住所など提供者本人を特定できる情報を完全に削除した上で、試料や試料から取り出したDNAなどを研究機関が行うバンク事業に提供し、種々の研究に使用されることに同意します。
はい | いいえ | 署名: |
平成 年 月 日 | ||
氏名 | (試料等提供者本人または代諾者) | |
(代諾者の場合本人との関係) | ||
住所 | ||
電話 | ||
署名または記名・捺印 | ||
説明者の氏名及び職名 | ||
説明者の署名または記名・捺印 |
《説明に当たる者の資格》
インフォームド・コンセントの手続きにおける説明に当たっては、研究遂行者の一員であり、倫理審査委員会で承認された研究計画書のなかで「インフォームド・コンセントに係る説明を行う者」として認められた者がなさねばならない(5−1−1)。また、生体試料等提供者が質問を有する場合には、十分に説明せねばならない。
《代諾について》
被験者が、痴呆等の疾患のため有効なインフォームド・コンセントを与えることができないと客観的に判断され、かつその生体試料等が研究遂行に欠かすことができない場合には、その者に代わってインフォームド・コンセントを与える者としての代諾者に対し説明を行い、同意を得る必要がある(5ー1ー3ー1)。特に、未成年者である被験者から試料を得るためには、親権者等の代諾者がインフォームド・コンセントを与える必要がある。ただし、未成年者が16歳以上の場合には、親権者等の代諾者の同意とともに、未成年者本人の同意も必要である。また、未成年者が16歳未満の場合には、代諾者の同意により試料の提供を受けることが可能であるが、ここでも、未成年者本人に十分な説明を行い、可能な限り本人の同意を得るよう努めねばならない(5−1−3−2)。
《具体的な手順》
インフォームド・コンセントの手続きにおいては、説明者は倫理審査委員会で内容を承認された患者用説明文書を用い、以下に述べる事項のうち研究の実施上必要な事項について適切かつ十分な説明を行い、被験者が自由意思に基づいて、試料の提供への同意を表明できるようにすること。
その上で、説明者は署名された同意書を所定の場所に保管し、その写しを被験者に渡す。
《説明事項》
(1) 研究協力の任意性と撤回の自由
被験者に対しては、試料の提供は任意であり、いったん同意した場合でも、それを撤回できることを伝える。また、被験者が試料提供に同意しない場合、あるいは同意を撤回した場合に不利益な扱いを受けないことを説明する。
同意を撤回した場合、試料及び研究結果は廃棄されること、しかし、既に研究結果が公表されている場合、廃棄しないことにより被験者の個人識別情報を含む情報が明らかになるおそれが小さく、かつ廃棄作業が極めて過大である場合等やむを得ない場合には、研究結果の廃棄はできないことを説明する(5−1−1−1)。
なお、連結不可能匿名化される場合など、個々の被験者についての遺伝子情報を得ることができない研究では、求められても結果を知らせることができないことを説明する(5−1−1−2)。
(2) 研究協力を要請する理由
第三群ヒト由来試料等提供者は、遺伝子解析研究に自発的に協力する意思を持ち、居住地域、疾患の有無など一定の条件を満たす者、あるいはランダムに選ばれた者であることを説明する(5−1−1−3)。その上で、この研究の目的が、ある病気の発病過程における遺伝素因と環境要因の関与、さらには、その相互作用を調べ、個人の病気に対する遺伝的感受性(体質)を評価する方法論を開発することにあること、そして、このような情報が、病気の発症につながる喫煙や食生活などの生活習慣を本人の意思で改める際に重要な役割を果たすことを説明する。さらに将来、別の病気や薬剤に関する遺伝子を探索するため試料が保存、利用される可能性がある場合、あるいは、研究の目的や方法の変更が予想される場合には、その旨を説明する(5−1−1−4)。
(3) 研究責任者の氏名及び職名
研究責任者の氏名及び職名を告げる(5−1−1−5)。
(4) 予測される研究結果と被験者の危険・不利益
第三群生体試料等提供者は、健康の維持や疾患の罹患における病原体、生活習慣等の環境因子と遺伝素因との相互作用等の解明に重要な役割を果たす。
また、本研究においては、遺伝子解析研究の成果が集団で解析されるため、被験者にとっての直接的な利益は期待できないこと、また、被験者にとって不利益な事象としては、検査時の注射針を刺す痛みがあるが、これは一般の検査採血時の痛みと同じであること、さらに、遺伝子検査の結果が外部に漏れた場合、生命保険加入の際の障害になるなどの不利益を被る可能性が考えられることなどを告げる。
なお、研究成果を公表する際には、個人が特定される形では公表しないことなども説明する。
(5) 研究計画書、方法の開示
ヒト由来試料等提供者は、希望により、本研究計画書、遺伝子検査の詳しい方法等の資料を入手又は閲覧することができることを告げる(5−1−1−7)。
(6) 試料及び診療情報の匿名化
匿名化(氏名、生年月日、住所などの個人を特定できる情報を記号に置き換えるなどして、試料や個人情報の由来する個人を特定できなくすること)の有無、匿名化される場合は連結可能匿名化(置き換えられた記号等を特定の者のみが元の個人名などに戻すことができる匿名化)・連結不可能匿名化(何人も二度と元の個人をたどることができない匿名化)の別、及びその具体的方法について説明する(5−1−1−8)。
(7) 試料、診療情報、遺伝子情報の他の研究機関への提供
試料、診療情報、又はそれから得られた遺伝子情報を他の機関へ提供する場合は必ず匿名化されること、及び提供先や提供先における利用目的が妥当であることについては倫理審査委員会で審査されることを説明する。
(8)研究結果の開示
第三群生体試料等提供者を対象として得られた遺伝子解析結果は、疫学研究において集団として解析されるために、個々のヒト由来試料等提供者についての遺伝子情報は、ヒト由来試料等提供者又は代諾者を含め誰にも開示できないことを説明する。
ただし、研究の結果、ある遺伝子の検査が病気の予防や治療に役立つことが明らかになった場合には、その成果を公表することで、社会に還元することを告げる。
(9)知的財産権、研究成果の公表
将来、遺伝子解析研究の成果が知的財産権を生み出す可能性があり、その場合、当該知的財産権は被験者には帰属しないことを説明する(5−1−1−12)。また、ヒト由来生体試料等から得られた遺伝子情報は、集団として解析・評価され学会等に公表されうること、また、データベース化された上で、連結不可能匿名化された遺伝子情報として公表される場合があることを告げる(5−1−1−13)。
(10)試料、診療情報の保管と廃棄
被験者の生体試料や診療情報は、インフォームド・コンセントの範囲内で、この研究の実施施設または共同研究を行う他の施設に保管されることがある。このことは、研究計画書に明記され、倫理審査委員会の承認を得るものとする。このような場合、被験者に対しては、その必要性、保管の方法、期間、場所、管理責任者名及び匿名化の方法等を告げる(5−1−1−14)。
廃棄に当たっては、その方法と匿名化の方法を説明する。
(11)細胞・遺伝子・組織バンクへの寄託
生体試料等を細胞・遺伝子・組織バンクへ寄託し、研究用資源として分譲する場合には、バンクの学術的意義、当該バンクが設置されている機関の名称、寄託されるヒト由来試料等の匿名化の方法を説明する(5−1−1−15)。
(12)試料提供の対価
ヒト由来試料等の提供にあたっての対価はないこと、遺伝子解析にかかる費用をヒト由来試料等提供者が負担することはないことを告げる(5−1−1−17)。
(13)遺伝カウンセリングの実施
本研究においては、遺伝カウンセリングが必要となることはまれなことと考えられるが、倫理審査委員会がその必要性を認めた場合、あるいは研究実施上、その必要性が認められた場合は、遺伝カウンセリングの体制が整備された適切な施設を紹介する等の対応をすることを告げる。
○○○センターでは、○○○○(共同研究機関)と共同で、病気の原因をより正確に明らかにし、効果的な治療法や予防法を求めるため、遺伝子の解析研究を取り入れ、多くの方についてかかったことのある病気、遺伝子の状況、生活の状況との関連を調べる研究を行っています。本文書は、あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)に、この研究への協力をお願いしたく、病気と遺伝子との関係、研究内容などについて説明したものです。この文書をよく理解した上で、あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)が研究協力に同意していただける場合には、「遺伝子解析研究への同意文書」に署名することにより同意の表明をお願いいたします。もちろん、同意いただけないからといって、それを理由にあなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人およびあなた)が不利益を被ることはありません。
以下に、遺伝子解析に関する説明と研究協力への同意に関わるいくつかの重要な点を説明します。
《病気と遺伝子》
ほとんどすべての病気は、その人の生まれながらの体質(遺伝素因)と病原体、生活習慣などの影響(環境因子)の両者が組合わさって起こります。遺伝素因と環境因子のいずれか一方が病気の発症に強く影響しているものもあれば、がんや動脈硬化などのように両者が複雑に絡み合って生じるものもあります。遺伝素因は遺伝子の違いに基づくものですが、遺伝子の違いがあればいつも病気になるわけではなく、環境因子との組合せが重要であるのは先に述べたとおりです。
《遺伝子とは》
遺伝子とは人間の身体をつくる設計図に相当するものです。ヒトには10万個以上の遺伝子があると考えられています。人間の身体は、約60兆個の細胞と呼ばれる基本単位からなっていますが、この細胞の核と呼ばれる部分に遺伝子の実体となる物質であるDNAが存在しています。人間の身体は、この遺伝子の指令に基づいて維持されています。
《遺伝性の病気》
遺伝性疾患とは、遺伝子の違いによる病気をいいます。これには、親が遺伝子の違いを持っていて、その違いが子に伝わる(いわゆる遺伝する)場合と、親の遺伝子にはまったく違いがないにも関わらず、精子や卵子の遺伝子に突然変異が生じて病気になる場合とがあります。これに対して、身体を構成する細胞に遺伝子の違いが生じて、がんやその他の病気になることがありますが、この場合には病気が子孫に伝わることはなく、遺伝性疾患という言葉は使いません。遺伝子に違いがあっても必ずしも病気になるわけではありません。
人間には染色体が2本(1対)ずつあり、1本の染色体の遺伝子にが起きても違いが起きていないもう一方の遺伝子が機能を補って病気になるのを防いでいます。また、遺伝子の違いが身体機能の異常につながらないこともあります。一方、病気を引き起こす環境因子への反応の違いが遺伝子の性質によって決まることも多いので、一見遺伝しないように見える多くの病気が遺伝子の違いに起因することも分かってきました。
《遺伝子の解析とは》
あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)の病気が遺伝性疾患である可能性があるとき、その疾患の原因遺伝子が分かっている場合には、遺伝子を調べることでその病気であるかどうかをはっきりさせることができます。また、薬の効き目に影響する遺伝子が分かった場合には、薬を飲む前にその遺伝子を調べることで、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)に効く薬、副作用が少ない薬を医師が選ぶことができるようになります。このことは、その病気にあった適切な治療や対策を講じるために重要です。
同時に、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)自身だけでなく、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)のお子さんや兄弟、親戚などに同じ違いがあるかどうかを調べることも可能となります。病気の原因となる遺伝子や薬の効き目に影響する遺伝子がまだ分かっていない場合には、新しく原因を突きとめる研究を進めることによって、将来、より適切な病気の予防や治療が行えるようになります。
《本研究に関する説明》
【研究テーマ】
研究機関名 | 研究責任者名 | 職名 |
○○○センター | ○○ ○○ | ○○○○ |
○○○病院 | ○○ ○○ | ○○○○ |
【機密保持について】
平成 年 月 日(印刷)
研究実施機関名および責任者(印刷)
お問い合わせ先(印刷)
研究責任者あるいは機関の長(試料等採取機関における研究責任者名) 殿
私は遺伝子解析研究(研究題目)について、(説明をした者の氏名)より説明文書を用いて説明を受け、その方法、危険性、分析結果のお知らせの方法等について十分理解しました。ついては、次の条件で研究協力に同意致します。
説明を受け理解した項目(□の中にご自分で レを付けて下さい。)
□ | 遺伝子の分析を行うこと。 |
□ | 研究協力の任意性と撤回の自由 |
□ | 研究目的 |
□ | 研究方法 |
□ | 研究計画書等の開示 |
□ | 試料提供者にもたらされる利益および不利益 |
□ | 個人情報の保護 |
□ | 遺伝子解析結果の開示 |
□ | 研究成果の公表 |
□ | 研究から生じる知的財産権の帰属 |
□ | 遺伝子解析研究終了後の試料等の取扱の方針 |
□ | 費用負担に関する事項 |
研究協力への同意(説明を受け理解した項目の全ての□に レを記入した方は、「はい」または「いいえ」に○を付け、署名してください。)
はい | いいえ | 署名: |
提供する生体試料等が、本遺伝子解析研究に使用されるとともに、長期間保存され、将来、新たに計画・実施される遺伝子の分析を含む医学研究に使用されることに同意します。
はい | いいえ | 署名: |
提供者の氏名や住所など提供者本人を特定できる情報を完全に削除した上で、試料や試料から取り出したDNAなどを研究機関が行うバンク事業に提供し、種々の研究に使用されることに同意します。
はい | いいえ | 署名: |
平成 年 月 日 | ||
氏名 | (試料等提供者本人または代諾者) | |
(代諾者の場合本人との関係) | ||
住所 | ||
電話 | ||
署名または記名・捺印 | ||
説明者の氏名及び職名 | ||
説明者の署名または記名・捺印 |
厚生省におけるミレニアム・プロジェクトの一環として実施される「遺伝子解析による疾病対策・創薬等に関する研究」においては、遺伝子の変化と様々な疾病との関連を研究し、その成果を疾病の予防、早期発見、早期治療さらには薬剤の開発に応用し、人々の福祉に貢献することを目標としている。反面、遺伝子解析は、現在は健康な人が将来ある疾患にかかり、被験者の家族も遺伝によりその病気を発症することを予測するため、被験者、その家族さらには関連する疾病の罹患者が、様々な倫理的・法的・社会的問題に直面する危険が想定される。この問題に対処し、被験者及びその関係者の尊厳、人権及び利益を保護することを目的とし、平成11年度の厚生科学特別研究事業において「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針」が作成された。
本文書は、「第四群ヒト由来試料等提供者」を対象としている。第四群ヒト由来試料等提供者とは、ある疾病の健康対照群として、あるいは健康診断受診者として研究に自主的に協力する者で、ミレニアム・プロジェクトにおいては健康な集団を代表し、あるいは遺伝子解析を疾病の検診に役立たせるための技術開発など、重要な役割を担うことが想定される。
本文書は、「第四群ヒト由来試料等提供者」を対象にインフォームド・コンセントに係る説明を行う者が、指針のうち「(5−1)インフォームド・コンセントの手続きに関する原則」の記載を十分に理解する目的で作成された。
「第四群ヒト由来試料等提供者」に係る研究では、多数の遺伝子について生殖細胞系列遺伝子解析を行うことが予想されるが、その結果は、研究段階のものが多くその解釈が確定しておらず、また集団として解析されるため、個々の被験者の健康状態の評価や疾病の予防・診断・治療に影響する可能性は極めて低いものと予測される。しかし、このようにして得られた遺伝子情報が、被験者やその家族等に対し様々な不利益を被らせる可能性を否定することはできない。そこで、研究協力に関するインフォームド・コンセントのための説明に当たっては、被験者が遺伝子解析研究の持つ特殊性を十分に理解した上で、研究への協力または非協力を決定できるよう配慮する必要がある。また、被験者や家族のプライバシーを最大限に保護し、被験者からの質問に対しては、必要に応じて医師や遺伝カウンセリング担当者等の協力を得、対応することが望まれる。
以下に、インフォームド・コンセントを得るための具体的な手続きを記載するが、理解をより深めるために、指針で説明されている部分の項目番号を( )にて示した。
《説明に当たる者の資格》
インフォームド・コンセントの手続きにおける説明に当たっては、研究遂行者の一員であり、倫理審査委員会で承認された研究計画書のなかで「インフォームド・コンセントに係る説明を行う者」として認められた者がなさねばならない(5−1−1)。また、生体試料等提供者が質問を有する場合には、十分に説明せねばならない。
《代諾について》
被験者が、痴呆等の疾患のため有効なインフォームド・コンセントを与えることができないと客観的に判断され、かつその生体試料等が研究遂行に欠かすことができない場合には、その者に代わってインフォームド・コンセントを与える者としての代諾者に対し説明を行い、同意を得る必要がある(5ー1ー3ー1)。特に、未成年者である被験者から試料を得るためには、親権者等の代諾者がインフォームド・コンセントを与える必要がある。ただし、未成年者が16歳以上の場合には、親権者等の代諾者の同意とともに、未成年者本人の同意も必要である。また、未成年者が16歳未満の場合には、代諾者の同意により試料の提供を受けることが可能であるが、ここでも、未成年者本人に十分な説明を行い、可能な限り本人の同意を得るよう努めねばならない(5−1−3−2)。
《具体的な手順》
インフォームド・コンセントの手続きにおいては、説明者は倫理審査委員会で内容を承認された協力者用説明文書を用い、以下に述べる事項のうち研究の実施上必要な事項について適切かつ十分な説明を行い、被験者が自由意思に基づいて、試料の提供への同意を表明できるようにすること。
その上で、説明者は署名された同意書を所定の場所に保管し、その写しを被験者に渡す。
《説明事項》
(1) 研究協力の任意性と撤回の自由
被験者に対しては、試料の提供は任意であり、いったん同意した場合でも、それを撤回できることを伝える。また、被験者が試料提供に同意しない場合、あるいは同意を撤回した場合に不利益な扱いを受けないことを説明する。
同意を撤回した場合、試料及び研究結果は廃棄されること、しかし、既に研究結果が公表されている場合、廃棄しないことにより被験者の個人識別情報を含む情報が明らかになるおそれが小さく、かつ廃棄作業が極めて過大である場合等やむを得ない場合には、研究結果の廃棄はできないことを説明する(5−1−1−1)。
なお、連結不可能匿名化される場合など、個々の被験者についての遺伝子情報を得ることができない研究では、求められても結果を知らせることができないことを説明する(5−1−1−2)。
(2) 研究協力を要請する理由
第四群ヒト由来試料等提供者は、遺伝子解析研究に自発的に協力する意思を持ち、年齢、性、検診結果など一定の条件を満たす者、あるいはランダムに選ばれた者であることを説明する(5−1−1−3)。その上で、この研究の目的が、第四群ヒト由来試料等提供者を健康対照群として遺伝子解析を行い、ある病気の患者における分析結果を解釈するために重要な役割を果たすこと、さらに、遺伝子解析による疾病検診技術の開発を目指すものであることを説明する。また、将来、他の病気の原因遺伝子探索における対照群あるいは検診のための技術開発のため、試料が保存、利用される可能性がある場合、あるいは研究の目的や方法の変更が予想される場合にはその旨説明する(5−1−1−4)。
(3) 研究責任者の氏名及び職名
研究責任者の氏名及び職名を告げる(5−1−1−5)。
(4) 予測される研究結果と被験者の危険・不利益
第四群生体試料等提供者は、遺伝子解析を用いた疾病検診技術の開発に協力し、さらに、第一群から第三群までの生体試料等提供者を対象とした研究において患者の対照群として重要な役割を果たす。
また、本研究においては、遺伝子解析研究の成果が集団で解析されるため、被験者にとっての直接的な利益は期待できないこと、また、被験者にとって不利益な事象としては、検査時の注射針を刺す痛みがあるが、これは一般の検査採血時の痛みと同じであること、さらに、遺伝子検査の結果が外部に漏れた場合、生命保険加入の際の障害になるなどの不利益を被る可能性が考えられることなどを告げる。
なお、研究成果を公表する際には、個人が特定される形では公表しないことなども説明する。
(5) 研究計画書、方法の開示
ヒト由来試料等提供者は、希望により、そのヒト由来試料等を用いた研究計画書、遺伝子検査の詳しい方法等の資料を入手又は閲覧することができることを告げる(5−1−1−7)。
(6) 試料及び診療情報の匿名化
匿名化(氏名、生年月日、住所などの個人を特定できる情報を記号に置き換えるなどして、試料や個人情報の由来する個人を特定できなくすること)の有無、匿名化される場合は連結可能匿名化(置き換えられた記号等を特定の者のみが元の個人名などに戻すことができる匿名化)・連結不可能匿名化(何人も二度と元の個人をたどることができない匿名化)の別、及びその具体的方法について説明する(5−1−1−8)。
(7) 試料、診療情報、遺伝子情報の他の研究機関への提供
試料、診療情報、又はそれから得られた遺伝子情報を他の機関へ提供する場合は必ず匿名化されること、及び提供先や提供先における利用目的が妥当であることについては倫理審査委員会で審査されることを説明する。
(8) 研究結果の開示
第四群生体試料等提供者を対象として得られた遺伝子解析結果は、疾病検診技術の開発あるいは疾病群に対する対照群として、集団として解析されるために、個々のヒト由来試料等提供者についての遺伝子情報は、ヒト由来試料等提供者又は代諾者を含め誰にも開示できないことを説明する。ただし、研究の結果、ある遺伝子の検査が病気の予防や治療に役立つことが明らかになった場合には、その成果を公表することで、社会に還元することを告げる。
(9) 知的財産権、研究成果の公表
将来、遺伝子解析研究の成果が知的財産権を生み出す可能性があり、その場合、当該知的財産権は被験者には帰属しないことを説明する(5−1−1−12)。また、ヒト由来生体試料等から得られた遺伝子情報は、集団として解析・評価され学会等に公表されうること、また、データベース化された上で、連結不可能匿名化された遺伝子情報として公表される場合があることを告げる(5−1−1−13)。
(10)試料、診療情報の保管と廃棄
被験者の生体試料や診療情報は、インフォームド・コンセントの範囲内で、この研究の実施施設または共同研究を行う他の施設に保管されることがある。このことは、研究計画書に明記され、倫理審査委員会の承認を得るものとする。このような場合、被験者に対しては、その必要性、保管の方法、期間、場所、管理責任者名及び匿名化の方法等を告げる(5−1−1−14)。
廃棄に当たっては、その方法と匿名化の方法を説明する。
(11)細胞・遺伝子・組織バンクへの寄託
生体試料等を細胞・遺伝子・組織バンクへ寄託し、研究用資源として分譲する場合には、バンクの学術的意義、当該バンクが設置されている機関の名称、寄託されるヒト由来試料等の匿名化の方法を説明する(5−1−1−15)。
(12)試料提供の対価
ヒト由来試料等の提供にあたっての対価はないこと、遺伝子解析にかかる費用をヒト由来試料等提供者が負担することはないことを告げる(5−1−1−17)。
(13)遺伝カウンセリングの実施
本研究においては、遺伝カウンセリングが必要となることはまれなことと考えられるが、倫理審査委員会がその必要性を認めた場合、あるいは研究実施上、その必要性が認められた場合は、遺伝カウンセリングの体制が整備された適切な施設を紹介する等の対応をすることを告げる。
○○○センターでは、○○○○(共同研究機関)と共同で、病気の原因となる遺伝子を見つけ出したり、遺伝子解析技術を取り入れた病気の検診のための技術開発を行っています。本文書は、あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)に、この研究への協力をお願いしたく、病気と遺伝子との関係、研究内容などについて説明したものです。この文書をよく理解した上で、あなた(または、提供者本人の代わりをつとめるあなた)が研究協力に同意していただける場合には、「遺伝子解析研究への同意文書」に署名することにより同意の表明をお願いいたします。もちろん、同意いただけないからといって、それを理由にあなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人およびあなた)が不利益を被ることはありません。
以下に、遺伝子解析に関する説明と研究協力への同意に関わるいくつかの重要な点を説明します。
《病気と遺伝子》
ほとんどすべての病気は、その人の生まれながらの体質(遺伝素因)と病原体、生活習慣などの影響(環境因子)の両者が組合わさって起こります。遺伝素因と環境因子のいずれか一方が病気の発症に強く影響しているものもあれば、がんや動脈硬化などのように両者が複雑に絡み合って生じるものもあります。遺伝素因は遺伝子の違いに基づくものですが、遺伝子の違いがあればいつも病気になるわけではなく、環境因子との組合せが重要であるのは先に述べたとおりです。
《遺伝子とは》
遺伝子とは人間の身体をつくる設計図に相当するものです。ヒトには10万個以上の遺伝子があると考えられています。人間の身体は、約60兆個の細胞と呼ばれる基本単位からなっていますが、この細胞の核と呼ばれる部分に遺伝子の実体となる物質であるDNAが存在しています。人間の身体は、この遺伝子の指令に基づいて維持されています。
《遺伝性の病気》
遺伝性疾患とは、遺伝子の違いによる病気をいいます。これには、親が遺伝子の違いを持っていて、その違いが子に伝わる(いわゆる遺伝する)場合と、親の遺伝子にはまったく違いがないにも関わらず、精子や卵子の遺伝子に突然変異が生じて病気になる場合とがあります。これに対して、身体を構成する細胞に遺伝子の違いが生じて、がんやその他の病気になることがありますが、この場合には病気が子孫に伝わることはなく、遺伝性疾患という言葉は使いません。遺伝子に違いがあっても必ずしも病気になるわけではありません。
人間には染色体が2本(1対)ずつあり、1本の染色体の遺伝子に違いが起きても違いが起きていないもう一方の遺伝子が機能を補って病気になるのを防いでいます。また、遺伝子の違いが身体機能の異常につながらないこともあります。一方、病気を引き起こす環境因子への反応の違いが遺伝子の性質によって決まることも多いので、一見遺伝しないように見える多くの病気が遺伝子の違いに起因することも分かってきました。
《遺伝子の解析とは》
あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)の病気が遺伝性疾患である可能性があるとき、その疾患の原因遺伝子が分かっている場合には、遺伝子を調べることでその病気であるかどうかをはっきりさせることができます。また、薬の効き目に影響する遺伝子が分かった場合には、薬を飲む前にその遺伝子を調べることで、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)に効く薬、副作用が少ない薬を医師が選ぶことができるようになります。このことは、その病気にあった適切な治療や対策を講じるために重要です。
同時に、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)自身だけでなく、あなた(または、あなたが代わりをつとめる提供者本人)のお子さんや兄弟、親戚などに同じ違いがあるかどうかを調べることも可能となります。病気の原因となる遺伝子や薬の効き目に影響する遺伝子がまだ分かっていない場合には、新しく原因を突きとめる研究を進めることによって、将来、より適切な病気の予防や治療が行えるようになります。
《本研究に関する説明》
【研究テーマ】
研究機関名 | 研究責任者名 | 職名 |
○○○センター | ○○ ○○ | ○○○○ |
○○○病院 | ○○ ○○ | ○○○○ |
平成 年 月 日(印刷)
研究実施機関名および責任者(印刷)
お問い合わせ先(印刷)
研究責任者あるいは機関の長(試料等採取機関における研究責任者名) 殿
私は遺伝子解析研究(研究題目)について、(説明をした者の氏名)より説明文書を用いて説明を受け、その方法、危険性、分析結果のお知らせの方法等について十分理解しました。ついては、次の条件で研究協力に同意致します。
説明を受け理解した項目(□の中にご自分で レを付けて下さい。)
□ | 遺伝子の分析を行うこと。 |
□ | 研究協力の任意性と撤回の自由 |
□ | 研究目的 |
□ | 研究方法 |
□ | 研究計画書等の開示 |
□ | 試料提供者にもたらされる利益および不利益 |
□ | 個人情報の保護 |
□ | 遺伝子解析結果の開示 |
□ | 研究成果の公表 |
□ | 研究から生じる知的財産権の帰属 |
□ | 遺伝子解析研究終了後の試料等の取扱の方針 |
□ | 費用負担に関する事項 |
研究協力への同意(説明を受け理解した項目の全ての□に レを記入した方は、「はい」または「いいえ」に○を付け、署名してください。)
はい | いいえ | 署名: |
提供する生体試料等が、本遺伝子解析研究に使用されるとともに、長期間保存され、将来、新たに計画・実施される遺伝子の分析を含む医学研究に使用されることに同意します。
はい | いいえ | 署名: |
提供者の氏名や住所など提供者本人を特定できる情報を完全に削除した上で、試料や試料から取り出したDNAなどを研究機関が行うバンク事業に提供し、種々の研究に使用されることに同意します。
はい | いいえ | 署名: |
平成 年 月 日 | ||
氏名 | (試料等提供者本人または代諾者) | |
(代諾者の場合本人との関係) | ||
住所 | ||
電話 | ||
署名または記名・捺印 | ||
説明者の氏名及び職名 | ||
説明者の署名または記名・捺印 |