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平成11年12月

遺伝子解析による疾病対策・創薬推進事業の概要


 平成11年12月19日内閣総理大臣決定において、新しいミレニアム(千年紀)の始まりを目前に控え、人類が直面している課題に応え、新しい産業を生み出す大胆な技術革新に取り組むこととし、これを新しい千年記のプロジェクト、すなわち「ミレニアム・プロジェクト」とすることとされている。
 ミレニアム・プロジェクトは、今後の我が国の経済社会に重要な情報化、高齢化、環境対応の三分野について、技術革新を中心とした産学官共同の事業として実施される。
 厚生省としては、高齢化に対応したミレニアム・プロジェクトの一つとして、痴呆、がん、糖尿病、高血圧などの病気に関連する遺伝子を解明し、病気の予防、治療法などの確立、画期的な新薬の開発などの推進を目指して、「遺伝子解析による疾病対策・創薬推進事業」を実施することとした。
 なお、本事業の実施に当たっては、生体試料の提供を通じて研究に参加される者の人権の保護に十分な配慮を行うこととしている。

1.プロジェクトの目標

(1)目的

 2004年度を目標に、痴呆、がん、糖尿病、高血圧等の高齢者の主要な疾患の遺伝子の解明に基づくオーダーメイド医療を実現し、画期的な新薬の開発に着手する。

(2)実現目標

 2004年度までに、痴呆、がん、糖尿病、高血圧等の疾患を対象にした疾患対策・創薬の推進を図る。具体的な目標とその成果は次のとおりとする。

(1) 痴呆(アルツハイマー病等)等神経疾患
ア.疾患関連遺伝子・薬剤反応性関連遺伝子を合わせて20以上発見。
イ.患者個人に対する最適な投薬等による治療成績の向上。
ウ.重症化を遅延させて、痴呆の推計入院患者数を20%削減する等の画期的な新薬の開発に着手。

(2) がん(悪性新生物)
ア.疾患関連遺伝子・薬剤反応性関連遺伝子を合わせて50以上発見。
イ.患者個人に対する最適な投薬等により、嘔吐、頭痛等抗がん剤による副作用の発生を50%削減。
ウ.患者個人に対する最適な投薬等による治療成績の向上。
エ.5年生存率を20%改善する等の画期的な新薬の開発に着手。

(3) 糖尿病・高脂血症等代謝性疾患
ア.疾患関連遺伝子・薬剤反応性関連遺伝子を合わせて30以上発見。
イ.患者個人に対する最適な投薬等による治療成績の向上。
ウ.糖尿病の推計入院患者数を20%削減し、糖尿病合併症である失明、下肢切断及び人工透析治療患者数を50%削減する等の画期的新薬の開発に着手。

(4) 高血圧等循環器疾患
ア.疾患関連遺伝子・薬剤反応性関連遺伝子を合わせて30以上発見。
イ.患者個人に対する最適な投薬等による治療成績の向上。
ウ.循環器病の推計入院患者数を20%削減し、脳卒中の受療率を20%削る等の画期的新薬の開発に着手。

(5) 気管支喘息等免疫・アレルギー性疾患
ア.疾患関連遺伝子・薬剤反応性関連遺伝子を合わせて20以上発見。
イ.患者個人に対する最適な投薬等による治療成績の向上。
ウ.喘息の死亡者数を20%削減する等の画期的新薬の開発に着手。
(平成11年12月19日内閣総理大臣決定)

2.実施する事業の概要と推進体制

(1)プロジェクトの全体像

(1) 痴呆、がん、糖尿病等の疾患関連遺伝子及び薬剤反応性関連遺伝子を、国立がんセンター等において、ヒト一塩基多型解析(SNPs解析)手法等を用いて解明する。
 また、これらを支える研究として、細胞バンク・DNAバンクの拡充、家族性の疾患の遺伝子等を同定していく解析研究、遺伝子情報を利用した治療法の一つとして遺伝子治療を確立するための研究を実施する。

対象疾患等 中心となる機関 これらの研究
を支える研究
痴呆(アルツハイマー病)等
神経疾患
国立精神・神経センター






































がん 国立がんセンター
高血圧等
循環器疾患
国立循環器病センター
糖尿病等
代謝性疾患
国立国際医療センター
喘息等
免疫・アレルギー疾患
国立小児病院
薬剤反応性 国立医薬品食品衛生研究所
平成12年度予算案 61.0億円(0億円)
(医薬品機構への出資)
26.6億円
(26.2億円)
(厚生科学研究費
補助金)
注:括弧内は、11年度予算額


(2) 具体的には、
ア.疾患関連・薬剤反応性関連のSNPs等の解析
イ.疾患・薬剤反応性関連の遺伝子探索
ウ.診断・利用法への応用
からなる。上記アの成果をイへ、イの成果をウへ順次応用し、プロジェクトの成果を国民に提供する。
 また、疾患・薬剤反応性関連遺伝子の解析の過程において必要なシークエンスの解析(塩基配列の解析)を効率的に、集約して実施するため、国立がんセンターに設置される疾病ゲノムセンター(仮称)の中に、関係機関共用のシークエンス解析部門を整備する予定である。
 さらに、各機関で解析した遺伝子情報については、倫理的な問題や個人情報保護に留意した上、、国立がんセンターに設置される疾病ゲノムセンター(仮称)の中に整備する中央データベースに集約し、関係機関間での共同利用を図るほか、インターネットを通じた一般への情報提供を行うこととしている。

(3) これら疾病・薬剤反応性関連遺伝子の解析研究を進めるに当たっては、倫理的な問題やプライバシーの保護等、生体試料提供者等の人権の保護を図るため、研究者等が遵守すべき条件を平成11年度末を目途に策定することとし、現在、検討を進めているところである。

(2)民間部門の参画方法について

 国の研究機関は、主な疾患別のSNPs解析、発現・機能情報の解析・安全性確保のための研究など、民間による研究が期待できない、又は妥当でない課題を中心に研究を実施し、さらにその知見を適正に活用することにより、民間による画期的な新薬や診断・治療装置の開発を促す。
 具体的には、研究の各段階により、学術的な研究に近いものについては、その研究成果が特定の企業のみを排他的に利することにならないよう、医薬品機構及び複数の民間企業が設立した研究開発法人(ジェノックス)と国の研究機関等との共同研究とし、実用化を前提とした研究については、国の研究機関等と民間企業とが個別に共同研究契約を締結して行う。

3.研究を推進するための施設、機器の整備

 平成11年度第2次補正予算において、次のとおり必要な施設・機器の整備に係る予算が計上された。

  施 設 整 備 機器整備
国立がんセンター 20.4億円:疾病ゲノムセンター(仮称)の新築
(2000平方メートル、地上4階・地下1階)
11.9億円
(注)
国立循環器病センター 2.7億円:既存棟の改修 4.0億円
国立精神・神経センター 2.4億円:既存棟の改修 4.0億円
国立国際医療センター 3.0億円
国立小児病院 2.0億円
国立医薬品食品衛生研究所 4.1億円:既存棟の改修 4.0億円
合 計 29.6億円
(国立病院特別会計等)
28.9億円
(医薬品機構
への出資)
(注)各機関共用のシークエンス解析部門、データベース部門の機器整備に要する費用を含む。



疾患遺伝子分野の具体的な目標

高齢化分野(バイオ・ミレニアムプロジェクト)推進・評価の体制

厚生省のミレニアムプロジェクトのイメージ

遺伝子解析研究と患者情報の適切な管理

ガイドラインのポイント

厚生省ミレニアムプロジェクト(疾患遺伝子関係)


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