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厚生統計の今後の在り方についてNO4
厚生統計の今後の在り方に関わる厚生統計協議会報告について
平成9年3月19日
統計情報部
厚生統計協議会(厚生大臣の諮問機関:会長 和田 攻、埼玉医科大学教授:委員2
7名)は、21世紀に向けての厚生統計の在り方について平成7年6月より検討を行っ
てきた。今回の報告は、平成8年5月31日に中間報告を提出した後も様々な課題につ
いて審議を重ねた結果を「厚生統計の今後の在り方について」としてとりまとめたもの
であり、報告の指摘事項は以下の通りである。
厚生統計協議会においては、この報告の後も、今回報告できなかった事項を含め厚生
統計をめぐる様々な課題について調査審議を行う予定である。
報告の概要
I 厚生統計の発展に向けての基本的考え方
1 厚生統計の意義と役割
(1)保健、医療、福祉などの諸分野における国民のニーズと各種サービスの現状を
的確に把握、分析し、厚生行政の進むべき方向を明らかにするための基盤
となる情報を提供すること。
(2)国民に対して厚生行政の現状や施策の基盤に関する情報を的確に提供すること。
2 厚生統計を取り巻く環境の変化
今後の厚生統計の在り方を検討するに当たって考慮すべき主な環境の変化は、次
のとおりである。
(1)少子・高齢化の進展 (2)家族・世帯の機能の変化 (3)行政改革の動き
(4)地方公共団体の役割の増大 (5)国際化の進展
3 厚生統計の発展に向けての方向
上記の変化に対応して、厚生統計の役割をより的確に果たしていくために、
今後の発展に向けての方向は、次のとおりである。
(1)政策立案に資する統計の作成
○時代の要請に敏感に反応し、今後の厚生行政の推進に必要となると思われる情
報を予測し、速やかにその情報の収集に着手すること
○「サービスの需要と供給の関係」や「サービスの質」等の観点から、施策の実
態を把握し、社会の実状にあっているかを検証できるようにすること
○分野横断的な分析に活用できる情報、地域間の比較を可能とする情報、指標化
等の加工により政策目標の達成状況の把握に活用できる解析結果を提供するこ
と
○統計データの収集・提供の迅速化を図るため、情報通信技術を積極的に活用す
ること
(2)統計利用の利便性の向上
○どのような統計情報がどこにあるかという所在源情報は、データベース化を図
る等検索し易い形で提供すること
○提供内容は、指標化などの加工により分かり易くするとともに、国際比較を可
能とすること
○オンライン化、データベース化、CD一ROM化など提供方法の多様化を図る
こと
○調査結果の公表の早期化を図るため、速報等の段階的公表について検討するこ
と
(3)信頼性の確保と効率化
○調査結果の信頼性を確保するため、調査方法等にさらに工夫をこらすこと
○地方公共団体の統計担当職員や調査員の資質の維持、向上を図ること
○効率的な統計調査の実現のため、標本調査の活用や調査周期の見直し等に努め
ること
○必要性の低下した統計調査の整理縮小など、効率化のために不断の見直しを行
うこと
II 統計分野ごとの課題の解決に向けて
1 人口動態調査について
(1)出生、婚姻、離婚等に関する指標として、既婚・未婚別人口を用いて新たな指
標に基づく分析を行っていく必要がある。
(2)日本における外国人について人口動態が把握できるよう、統計の拡充をしてい
く必要がある。
(3)世帯に関する調査の中に移動理由を把握する項目を含めること等により、世帯
及び世帯構成員の移動状況を明らかにする必要がある。
(4)改訂された疾病死因分類(ICD−10)の適用に伴う死因統計の変化につい
て、今後も検証した結果を国内外に公表する必要がある。
(5)死亡診断書に記載されている全ての死因、いわゆる複合死因について、慢性疾
患等の対策を検討するための基礎資料として、データの整備、蓄積、利用を図
る必要がある。
(6)死因統計と疾病統計を関連付けて分析できるようにする上で必要な、死亡診断
書の記載法の周知や追跡調査、疾病登録情報からの統計作成等の検討事項を整
理する必要がある。
2 施設面統計調査について
(1)医療の需要と供給の動態をより的確に捉えるため医療統計の改善、充実を積極
的に行っていく必要を中間報告において指摘し、平成8年度「受療行動調査」
が実施されたが、今後もさらに情報の収集と有効活用を目指す必要がある。
(2)保健・医療・福祉施設従事者について、情報把握の充実を図る必要を中間報告
において指摘し、「平成9年社会福祉施設等調査」に従事者票が導入されるこ
ととなったが、他の施設等についても同様に検討する必要がある。
(3)保育関連等地域の自主的な活動についての情報把握の充実を図る必要を中間報
告において指摘し、平成9年度に「児童福祉事業等調査(仮称)」が計画され
ているが、この調査結果の動向については継続的に把握する必要がある。
(4)「健康・福祉関連サービス産業統計調査」について、サービスの質にかかわる
情報を調査するとともに、当面の政策の視野に入っていない事業を調査対象か
ら除外するなど、位置付けの明確化を図る必要を中間報告において指摘したが、
平成8年調査において改善された。今後も、当調査の充実、発展の継続的な検
討が望まれる。
3 業務統計について
(1)保健・福祉サービスの需要・供給について、業務統計以外の調査統計及び各種
情報等との関連分析を行うなどによりそれらの関連を明確にし、事業の客観的
評価が可能となるような情報の収集活用を行う必要がある。
(2)市町村等が実施するサービス提供を支援するため、可能な限り市町村ごとの情
報把握を図るとともに、事業主体が事業の効果を評価することが可能となるよ
うな指標の策定を進める等の必要がある。
(3)報告内容の類似性、情報把握の必要性の点から見直す等、情報に優先度をつけ
るとともに、報告周期を整理する必要がある。
4 世帯面統計調査について
(1)高齢者世帯の定義は、諸々の調査において様々となっており、厚生省において
は現在、男65歳以上、女60歳以上で構成する世帯としているが、平均寿命
の伸長等を勘案すれば男女とも65歳以上に統一することが、今後の在り方で
はないかと考えられる。ただし、この定義の改定については、関係各省庁間で
の協議を踏まえた上で実施するのが適当である。
(2)二世代同居の実状、痴呆性老人の実態、サービス需要の把握方法について検討
する必要がある。
5 統計調査の総合解析等について
(1)健康に関する新たな指標として、日常生活動作の自立度に着目した指標の策定
を検討する必要がある。
(2)保健、医療、福祉の観点からみた地域の特性を総合的に把握するための新しい
指標の開発を目指して検討し、地域比較のために適用すべき手法について整理
したが、更に検討の必要がある。
6 情報通信基盤の活用
(1)統計情報を電子化して、オンラインで収集する等により統計作成の迅速化、効
率化を図る必要がある。
(2)統計情報の提供に、インターネット、CDーROM等の電子媒体を活用するこ
とにより、国民に使い易い媒体での情報提供に改善する必要がある。
III 今後の検討課題
高齢者介護に関わる統計整備については、介護保険法の創設を踏まえてさらに
検討する必要があるほか、提言事項の実現のため、統計情報部門の機能強化が求
められる。
照会先
厚生省大臣官房統計情報部管理企画課
課長補佐 廣瀬滋樹
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