審議会等議事録 ホームページへ戻る 前ページ
                      厚生統計の今後の在り方についてNO3

用語の解説
ICD(国際疾病分類)
 国際疾病分類(International Classification of Diseases)は、世界保健機関(W
HO)憲章に基づいて規定された疾病の分類で、各国民の死亡原因、罹病状況を把握し
、その疾病の防止を目的としたものである。この分類は、1900年フランス政府の提唱に
よって開催された第1回国際死因分類修正会議において定められたもので、以後約10年
毎に改正されている。

WISH(厚生行政総合情報システム)
 厚生行政総合情報システム(Wide-area Information-exchange System for Health
and welfare administration)は、厚生省と地方公共団体等関係機関との間をオンライ
ンで結び、これらの間の情報交換を可能とする総合的な広域ネットワークシステムであ
る。

ADL(日常生活動作)
 日常生活動作(Activities of Daily Living)とは、ひとりの人間が独立して生活す
るために、共通に毎日繰り返して行う一連の基本的な身体的動作群をいう。
 この動作群は、起居・移動動作および身のまわり動作からなっており、起居・移動動
作には、寝返り、起き上がり、立ち上がり、車椅子での移動、杖や歩行器を使用しての
歩行、独立歩行等がある。また、身の回り動作には、食事、排泄、整容(身だしなみを
整える)、更衣(衣服の着脱)、入浴等の動作がある。

サリバンの方法
 観察対象の人口集団について、年齢階級別にADLなどの一定の基準に該当する者の
占める割合を統計データに基づいて求め、これと平均寿命の算出に用いられる生命表上
の定常人口により、「健康寿命(仮称)」を算出する手法である。


            厚生統計の今後の在り方について
            (厚生統計協議会中間報告要旨)
                            平成8年5月31日
                            厚生統計協議会
はじめに

 本協議会は、21世紀に向けての厚生統計の在り方に関する検討結果を中間的にとり
まとめた。本中間報告は、統計審議会の「統計行政の新中・長期構想(平成7年3月)
」を踏まえつつ、厚生統計について、さらに掘り下げた検討を行ったものである。

1.厚生統計の発展に向けての基本的考え方

(1)厚生統計の意義と役割

   厚生統計の意義・役割は、次の2点に集約することができる。

  ア.保健、医療、福祉などの諸分野における国民のニーズと各種サービスの現状を
   的確に把握し、厚生行政施策の進むべき方向を明らかにするために役立つ情報を
   収集し、提供する。
  イ.広く厚生行政の現状について理解を深めるための情報を提供する。

(2)厚生統計をとりまく環境の変化

   厚生統計の見直しの検討にあたって、踏まえるべき主な環境の変化は次のとおり
  である。

  ア.少子・高齢化の進展
  イ.核家族・単身世帯の増加や女性の社会進出に伴う家族の介護機能、保育機能の
   低下
  ウ.情報通信技術の進展と普及
  エ.地方分権化の流れ
  オ.国際化の進展

(3)厚生統計見直しの視点

   上記の変化に対応して、厚生統計がその本来の役割を果たしていくために、主と
  して次の視点から見直しの検討を行った。

  ア.サービスの需要と供給の関係を適切に把握できる統計体系としていく
  イ.サービスの質を把握できる統計体系としていく
  ウ.地域間の比較に活用できる統計情報を提供していく
  エ.利用者にとって使い易い形で統計情報を提供していく
  オ.信頼性の高い統計を効率的に作成する

(4)厚生統計の発展に向けての指針

   厚生統計の各分野に共通する、今後の発展に向けての指針を次のとおりとりまと
  めた。

  ア.政策立案に必要な統計情報の的確な把握

   ○厚生行政に対する国民のニーズとサービス供給の現状を量的な面のみならず質
   的な面も含め的確に把握し、厚生行政に役立たせること
   ○情報通信技術を活用して統計データの収集・提供を迅速化すること
   ○指標化などの加工により政策目標の達成状況の把握に活用できる統計指標の開
   発に努力すること
   ○分野横断的な分析に活用しやすい統一のとれた統計体系を構築すること
   ○地域特性を踏まえた厚生行政の推進に役立つ統計情報を取得・提供すること

  イ.統計利用の利便性の向上

   ○どのような統計がどこにあるかを容易に検索できるよう統計所在源情報のデー
   タベース化を図ること
   ○指標化などの加工により、わかりやすい形で統計情報を提供すること
   ○統計データのオンライン化、データベース化、CD−ROM化など提供方法の
   多様化を図ること
   ○統計調査結果の国際的な比較、活用を考慮した集計・提供方法について検討す
   ること

  ウ.信頼性の高い統計の効率的作成

   ○調査環境の変化を踏まえ、正確な結果が得られるよう調査方法等にさらに工夫
   をこらすこと
   ○地方における厚生統計調査の実施について、その充実のための方策を検討する
   こと
   ○標本調査の活用や調査周期の見直し等により、調査対象者の負担軽減に配慮す
   ること
   ○必要性の低下した統計の整理縮小など、効率化のために不断の見直しを行うこ
   と

2.統計分野ごとの課題の解決に向けて

(1)人口動態調査について

  ア.出生、婚姻、離婚等に関する指標としては、現行の人口全体を分母とする指標
   の他に、有配偶人口を分母とする出生率などその動向がより明らかとなるような
   新たな指標の作成を検討すべきである。

  イ.日本における外国人について人口動態が把握できるよう、統計の拡充をしてい
   く必要がある。

  ウ.改訂された疾病死因分類(ICD−10)の適用に伴う死因統計の変化につい
   て、検証した結果を利用者に周知する必要がある。

  エ.死亡診断書に原死因以外の疾患の記載がある、いわゆる複合死因について、慢
   性疾患等の対策を検討するための基礎資料として、データの整備、蓄積、利用を
   図る必要がある。

(2)施設面統計調査について

  ア.医療の需要と供給の動態をより的確に捉えるため医療統計の改善、充実を積極
   的に行っていく必要がある。(その第一歩として、患者自身から情報の把握を行
   う「受療行動調査(仮称)」が平成8年度に実施される予定)

  イ.保健・医療・福祉施設従事者について、雇用形態、処遇の状況、研修等資質向
   上の状況等を調査するなど情報把握の充実を図る必要がある。

  ウ.保育関連等地域の自主的な活動についての情報把握の充実を図る必要がある。

  エ.健康・福祉関連サービス産業統計調査について、サービスの質にかかわる情報
   など政策に直接結び付く内容を調査するとともに、当面の政策の視野に入ってい
   ない事業を調査対象から除外するなど、位置付けの明確化を図る必要がある。

(3)業務統計について

  ア.保健・福祉サービスの供給面について、業務統計以外の調査統計及び各種情報
   等との関連分析を行うなどにより需要との関連を明確にし、事業の客観的評価が
   可能となるような情報の収集活用を行う必要がある。

  イ.市町村等が実施するサービス提供を支援するため、可能な限り市町村ごとの情
   報把握を図るとともに、事業主体が事業の効果を評価することが可能となるよう
   な指標の策定を進める等の必要がある。

  ウ.地方公共団体からの報告を情報通信技術を活用して迅速に収集し、活用するこ
   となどにより、業務の効率化を図る必要がある。

(4)世帯面統計調査について

  ア.各種世帯面統計調査における、高齢者世帯や母子世帯などの世帯分類について
   は、調査ごとに定義が違うのが現状であり、その統一化等に向けて検討を進める
   必要がある。

  イ.同一家屋に二世帯が同居している場合の生活の共同性の状況、子供と高齢者の
   交流状況など少子・高齢社会への対応に向けて世帯面統計調査により把握するこ
   とが求められている情報について、その把握方策を検討する必要がある。

(5)統計調査の総合解析等について

  ア.「健康」でどのくらい生存できるかを示す指標である「健康寿命(仮称)」の
   開発について検討を進めてきたが、「健康」の基準についてはADLなどの客観
   的な指標に準拠して設定するとともに、指標の名称について誤解の生じないもの
   とするよう配慮して引き続き実用化に向けての検討を進め、結果がまとまり次第
   、提言する。

  イ.地域ごとの保健福祉の状況を客観的に把握するための「地域保健福祉指標(仮
   称)」の開発について検討を進めてきたが、小規模の地域におけるデータ収集の
   可能性などを念頭において引き続き実用化に向けて検討を進め、結果がまとまり
   次第、提言する。

  ウ.国民医療費の周辺部分の費用の推計について、医療費の水準の国際比較等に活
   用する見地から検討を進めてきたが、費目ごとの推計精度の向上や諸外国のデー
   タとの比較可能性について引き続き検討を進め、結果がまとまり次第、提言する
   。

3.今後の検討課題

    新しい介護システムの導入に向けての動きを踏まえつつ、厚生統計の所要の見
   直しについて検討を進めていく必要がある。

    問い合わせ先  厚生省大臣官房統計情報部管理企画課
     担 当 山崎(内221)
          電 話 (代)3260-3181


審議会等議事録 ホームページへ戻る 前ページ