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第4回人口問題と社会サービスに関する特別委員会NO4
(引き続き外務省)
4.我が国の貢献
(1) 94年2月、「地球規模問題イニシアティヴ(GII)」を発表し、94年度
から2000年度までの7年間に人口・エイズ分野でODAで総額30億ドルを途上国
に支援するというプログラムを開始しています。これにつきましてはお手元にパ
ンフレットを配らせていただきましたので、ご参照いただければと思います。
(2) 国連・国際機関への協力
・国際家族計画連盟(IPPF)というものが52年にロンドンで設立され、人
口・家族計画分野において世界最大のNGOですが、我が国は69年より拠出
を開始し、85年度以降、最大の拠出国となっています。
・国連人口基金(UNFPA)は66年の国連総会決議に基づき、57年に信託基
金として設立されましたが、我が国は71年度から拠出を開始し、86年より最
大拠出国になっています。
(3) 二国間協力も種々行っています。
・研修生の受け入れ、専門家の派遣、機材供与の組み合わせによる技術協力を
フィリピン、タイ、メキシコ、ケニア等8カ国に行っています。
・インドネシア等においては保健所の強化計画支援、バングラデシュにおいて
は女性の経済的自立促進支援等々の二国間協力を行っています。
9ページに国連人口基金について書いています。最後4のところをごらんいた
だきますと、現在はパキスタンのサディク事務局長をヘッドとして、安藤博文氏
が事務次長に起用されています。邦人の国際機関での活躍という観点からも我が
国としては国連人口基金は重視しております。
具体的にどういう活動を行っているかということについては10ページに記載し
ておりますので、ご参照いただければと思います。家族計画、広報・教育、基礎
データ収集、人口動態、人口政策の作成と実施、特別プログラム等々の分野にお
いて広範な活動を行っております。
国際家族連盟についての資料も添付しております。具体的な活動計画について
は12ページに記載しております。
冒頭に申し上げましたように外務省としても人口問題は非常に重要だという認
識のもと、資金的に最大拠出国であるということを述べましたが、お金だけ出せ
ばいいという問題ではありません。外務省は人口問題の専門家ではないわけです
ので、関係省庁あるいは委員の皆様のご指導、ご助言をいただいて今後とも人口
問題に取り組んでまいりたいと考えております。以上です。
委員長 どうありがとうございました。それではご質問、ご意見をお願いいたします。
清家 基本的には世界の人口爆発ということがあると思いますから、人口の抑制ある
いは家族計画について国際的なコンセンサスはあるだろうと思うんですが、一方
で各国固有の人口政策がある。人口増加は成長の足かせにもなりますが、一方で
は国力という考え方もあるでしょう。宗教等によって人口政策についてはそれぞ
れの考え方があると思うんですが、世界全体でみた場合の人口についてのコンセ
ンサスと、それぞれの国の人口政策との整合性をどのようにとったらいいのか。
それぞれの国の主権があるわけですから強制したりできないわけですが。
もう一つは、途上国を中心に人口抑制が求められている一方で、すでにヨーロ
ッパ諸国ではやってるところもあるわけですが、出生率の低下等に対して人口を
増やそうという政策的な対応をしている国も少なくない。日本はどういう形にな
るのかわかりませんが。これは一つの南北問題なのかもしれませんが、先進国は
途上国に対して人口抑制ということを言いながら、一方で生活水準が高くてエネ
ルギーもたくさん消費している先進国の人口を増やそうとしているのは整合性に
欠けるのではないかという言い方もあると思います。第1点との関連で、この点
についてどうお考えでしょうか。
外務省 まさしくいまご指摘になったような点が本当に難しいところです。まず最初の
国際的なコンセンサスづくりが今後の一番難しく、かつ重要な課題でありまして
、宗教上あるいはいろいろな国の体制の違いに基づく差が極めて顕著な形でカイ
ロ会議の中で表れていました。先ほどそれなりの成果を上げたという認識をもっ
ていると申し上げましたが、逆の言い方をすれば、コンセンサスづくりにそれな
りの貢献はしたものの、完全なコンセンサスづくりへの道のりはまだまだ長い。
ご指摘のように基本的に国家の主権のもとにおける問題であり、そもそも国際問
題として扱う必要はないという極論も出てくるわけです。そうは言いつつもカイ
ロ会議あたりを節目として、国際的にそれなりのコンセンサスづくりをしていか
なければこの問題は我々の子孫のため、地球そのものの問題にとって極めて重要
な問題であるという、そのへんのコンセンサスは得られたのではないか。ただ、
186 カ国も参加しておりますので、これらの国のすべてのコンセンサスを得ると
いうのは極めて至難な作業であると思いますが、やらなければならないという気
がしております。
2点目につきましては、途上国と先進国では意見も違うし国情も違うというこ
とで、国際的な取り組みについてはまだまだこれから先が長いのかなという気が
いたします。ただ、日本はお金を出すことも重要ですが、我が国がアジアの国と
有している友好関係を利用しつつ、意見交換等を通じて、いい方向に向けること
ができるでしょうし、ぜひそうしたいと考えております。
清家 2点目に関して具体的に一つ伺いたいんですが、日本を含めて先進国全体とし
て地球の人口を抑制しなくてはいけないといってる時に、出生率の回復とか、人
口を増加させるような政策をとることについて、途上国も含めて何か意見がある
のか、あるいはそれは全然問題ないことなのか、その点はいかがですか。
外務省 カイロ会議でもいろんな形で議論がなされたと承知しておりますが、いまご指
摘のような件について率直な意見交換はあまりなされていないのかなという気が
します。そもそもそういう話題を取り上げることについてネガティブな国等もあ
ると思いますので、そのへんのところも我々の課題というふうに受けとめたいと
思っています。
阿藤 私もカイロ会議に参加した立場で、清家先生のご質問について私なりの感想を
申し上げたいと思います。日本では清家先生がおっしゃるような議論がすぐ出て
くるんですが、カイロ会議のような場面で、あるいは国連の舞台なんかでも途上
国側からそういった形での反論というか、そういうのは私は聞いたことがありま
せん。先進国が人口増加策をとってるということもはっきりしない話で、出生率
が下がりすぎてるのをいくぶんか支えようというのはインプリシットはあります
が、人口増加を図るということを公然といってる国はないわけです。ですから、
そういう議論はそういう場面では出てこないというのが一つです。
各国で宗教とかいろいろな事情がある中では、人口活動支援へのアプローチが
難しいのではないかというご議論があったんですが、私はもう少しポジティブな
側面についてお尋ねしたいと思います。カイロ会議に出ていて感じたのは、日本
はお金は出すけど口は出さない、アメリカはお金も口も出す、技術も出す、人材
も出す、そういう点が際立って違うと思うんです。日本もこういう立場になって
くると、お金だけじゃなくて技術、人材などを出せるような国でありたいと強く
思いました。その点では日本は非常に不足してる。日本は世界の人口問題に限ら
ず途上国一般の開発援助という観点から大変なお金を出しているけれども、プロ
グラムマネジャーとか、幅広いNGOの活動とか、そういうものが非常に不足し
てると思います。日本国内で国際的な視野で活動できる人材の養成、育成がもっ
ともっと行われないと、この分野で貢献してるとは言いづらいという印象をもち
ます。これは外務省だけの話ではないんですが、外務省としてはどうお考えでし
ょうか。
外務省 全く同感でございます。資金援助が重要であることは間違いないんですが、そ
れだけではだめであって、知恵や人を出さなければならないということで、私ど
もの部が国連関係のいろいろな機関を扱っておりますので、人材の育成というの
は外務省の中でも一つの大きな課題であります。一つ問題なのは、人材育成は長
期的な戦略に基づいて長い目で見なくてはなりませんので、そのへんのところが
外務省の中でも最近かなり活発に議論されております。もちろん外務省だけでは
できない問題であり、いろいろな専門家の方にこれからご活躍いただくことが極
めて重要と考えておりますので、関係省庁の方々、その他いろんな機関の方等々
にご協力いただいて、金だけ出すということではなくて知恵も出すし人も出す、
かつ、国際会議できちっと発言する。今まではどちらかというと参加すればそれ
で一つの大きな目標を達したかのような国際会議への出方があったのではないか
ということを外務省の一人として反省しております。出るからにはそれなりの発
言をきちっとして、自分の国の主張を積極的にいうことが今後の日本のあり方あ
るいは日本外交にとって極めて重要なことではないかと認識しております。
井上 資料を拝見しますと、UNFPAに対する拠出が世界で第1位だという実績が
ずっとありますが、詳しく見ていきますと、日本の占める割合が最近ずっと下が
っておりますね。1991年の水準よりもっと下がってるんですが、これはどういう
事情なのかという質問が一つです。
もう一つは、人口関係に対する支出の中にUNFPAとかIPPFに対する拠
出もあるんですが、そういうところだけですと日本の顔が見えてこないんですね
。アメリカとかフランスとかデンマークは国際機関にも出しますが二国間援助を
盛んにやっているので、発展途上国の中で存在感が強いような気がするんです。
その意味で日本の二国間援助が最近どういうふうに伸びているのか、あるいは伸
びていないのか、そのへんをお伺いしたいと思います。
外務省 国連人口基金において日本の拠出の割合が次第に下がっているのはなぜかとい
うご質問ですが、担当の者として代わってお答えいたします。ご説明したように
日本としては拠出金は毎年増やしてはいるんですが、UNFPA側も資金繰りに
苦しんでおりまして、ドナー国をどんどん募集しているところでありまして、全
体の予算は次第に増えております。その中で我が国としては拠出金は増やしては
いるんですが、その割合は次第に下がっているというのが実情です。UNFPA
への拠出金は去年は5,180 万ドル、今年はそれより数百万ドル増やして、日本と
しては今後も第1位の拠出国としての地位は維持していきたいと思いますし、全
体に占める割合も引き続き20%前後は維持していきたいと考えております。
2番目のご質問の二国間関係については担当が違いますので、代わってご説明
申し上げます。
外務省 経済協力局の江原と申します。二国間の経済協力を担当しております。先ほど
お配りしましたパンフレットですが、日本の二国間協力につきましては、現在は
人口問題の協力はすべて地球規模問題イニシアティブ(Japan,s Global Issues
Initiative on Population and AIDS )のもとで総括されて協力が進められてお
ります。二国間のほうにおきましては、ご指摘の通り国民の理解を得るためにも
顔の見える援助ということが非常に重要であるということで、その方向で、特に
人口分野につきましては技術協力を中心として専門家を派遣するとか、協力隊員
を派遣するとか、最近はNGOとの協調ということで、草の根無償資金協力、N
GO事業補助金等を通して人口分野における日本のNGOの支援も強化しようと
しているところです。
我が国の人口問題のイニシアティブにつきましては、94年度から2000年度まで
の7年間で総額30億ドルという巨額のODA資金を途上国支援のために使おうと
しております。そのように顔の見える形の援助にしようということでかなり頑張
ってはおりますが、やはり人材がネックになっております。この点につきまして
は皆様のご理解を得まして、国際高等教育機関において人口分野のハイレベルの
プロジェクトマネジャー以上の人たちのコースを先年度から開始しました。JI
CAにおきましても基礎保健、初等教育、女性のエンパワーメントなど人口に関
連する分野について、カイロ会議で打ち出されましたリプロダクティブ・ヘルス
・ハイツという概念に沿った形で人材育成に努めていこうという方針でやってお
ります。
河野 地球規模イニシアティブ(GII)で30億ドル計上されてるというんですが、
新しく30億ドル計上されたというのではなくて、すでにあるところを寄せ集めて
やってる。官庁はゼロシーリングですから、ここをやればよそが減るということ
で、ほかのODAが減るということじゃないんですが。
外務省 大蔵省と折衝した時に、ODAの既存のものを駆使してやってくれという話で
はありました。今まで日本は人口分野については国際的なマルチの場でも私ども
の二国間のところでも粛粛とやってきたわけですが、この問題は地球規模の問題
であるという認識のもとにカイロ会議を中心に世界的なコンセンサスのもとにみ
んなで取り組んでいこうということになりまして、日本政府としてもそれに合わ
せてイニシアティブを発表したわけです。
その時にどういうことをやろうかということになったかと申しますと、今まで
日本が粛粛とやってきた人口分野と、基礎保健医療、初等教育、女性のエンパワ
ーメントなど人口関連の間接分野も含ままなければならない。それらをリコンセ
プチャライズして、今までやってきたものを仕切り直して、新しいコンセプトと
概念のもとに人口問題のイニシアティブをやらなければならないということで、
いろいろなプログラムを組み直しました。概念的には新しい哲学のもとに走った
んですが、ODAの二国間の話ですと、そこは今までやってきたものの中からオ
ントップということではなくて、それを組みかえて工夫して、かつ今までは技術
協力か無償資金協力か有償資金協力かということで各スキームがばらばらにそれ
ぞれの年間プログラムでやったきたんですが、イニシアティブを出すことによっ
て外務省の中でも一つの担当の課がクロスカッティングに、すべての持ってるリ
ソーシズを動員して人口問題のために貢献していこうということでやっておりま
す。
委員長 ほかにございませんか。予定時間をだいぶ超過いたしましたが、これをもちま
して本日の議題は終了いたしました。
次の日程ですが、6月11日に開催いたしまして、経済企画庁、大蔵省、自治省
からヒアリングを行いたいと思っております。事務局から何かございますか。
事務局 お手元に平成8年版の厚生白書をお配りしてあります。これは本日の閣議に報
告されたものでございまして、絵のついた表紙のものは市販用のものですが、当
審議会が始まる10分前に到着したばかりのできたてのものです。中身は少子化の
問題等もかなり書いてございますので、ぜひご参照いただければと思います。
委員長 それでは、これをもちまして本日の特別委員会を終了させていただきます。ど
うもありがとうございました。
問い合わせ先 厚生省大臣官房政策課
担 当 真鍋(内2250)、大内(内2931)
電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
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