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8.年金積立金の自主運用

(1)新しい自主運用の確立
○年金積立金は、年金制度運営全般について権限と責任を有する保険者(厚生大臣)が、保険料拠出者全体の利益のため、年金積立金に最もふさわしい方法で運用(自主運用)する。そのために資金運用部への預託をやめ、市場を通じた運用を基本とした仕組みを構築する必要がある。なお、新たな仕組みへの移行に当たっては、還元融資事業を含む財政投融資制度に対する役割と影響に配慮する。

○自主運用を確立するとともに、その責任体制を明確化するため、年金積立金運用の新たな仕組みは以下のようなものとする。
(1)年金積立金の運用の基本方針の策定
厚生大臣は、年金審議会の運用のための専門委員会の意見に基づき、運用の目標や運用資産の構成割合等に関する「運用の基本方針」を策定し、その下で安全・確実な運用を基本として効率的な運用を行う。



(2)保険料拠出者の代表等からなる運用専門委員会の設置
運用のための専門委員会は保険料拠出者(労使)の代表や金融経済、年金の専門家が参加し、年金積立金の運用全般について諮問に応じるとともに、意見具申・建議を行い、また年金積立金の運用状況を監視する。



(3)民間運用機関による市場運用の実施
年金積立金の実際の運用は、基本的に運用の専門家である民間運用機関に委託して実施する。



(4)年金資金運用機構による民間運用機関の管理
多くの民間運用機関に運用を委託することから、運用全体のリスク管理や資金管理を責任をもって行う「年金資金運用機構」(仮称)を設立する。同機構は以下のような性格、機能を有することから、当面特殊法人とし、この設立に合わせて年金福祉事業団を廃止する。



・ 公的資金を扱う受託者としての責任の明確化
・ 民間活力の発揮
・ 年金福祉事業団の資金や業務を円滑に承継



(5)保険者等の忠実義務及び注意義務
責任体制を明確にする観点から、運用関係者(厚生省、年金資金運用機構等)に対し受託者責任(忠実義務、注意義務)を法令により明確化する。



(6)情報開示の徹底
厚生大臣や年金資金運用機構は、運用の方針、運用状況等について詳細に情報開示を行い、運用の透明性を確保する。



(7)市場等への影響に対する配慮
・有価証券市場への影響や還元融資事業を含む財政投融資制度の役割や影響に配慮することとし、運用の規模については徐々に増加させていく等、自主運用体制に円滑に移行する。

・株式運用に当たっては、国が民間企業の経営に影響を与えることがないよう、個別銘柄の選択や株主議決権の行使について、国(年金資金運用機構を含む。)が直接これを行わないこととする。



(2) 還元融資事業
積立金の活用をめぐりさまざまな意見があり、それを踏まえる必要があるが、年金福祉事業団については、平成9年6月6日の閣議決定に基づき廃止し、その際、受給者等に影響が及ぶことがないよう十分留意するとともに、大規模年金保養基地業務、被保険者向け融資業務からの撤退については、以下のような方針で対処する。 なお、撤退を円滑に進めるための経過措置等については、別途新たな組織を作ることなく、年金資金運用機構での付帯業務として一定期間実施する等の措置を講じる。

○ 住宅融資事業
大きなニーズがある本事業については、被保険者に悪影響が出ないよう、また、現下の厳しい景気の動向や事業に従事している者の雇用に配慮しながら、適切な経過措置を講じた上で撤退する。

○ 大規模年金保養基地事業
・各施設の置かれた状況を踏まえ、雇用や地域の状況に十分配慮しつつ撤退する。

・円滑な撤退のためには地元自治体等の協力が必要であり、自治体等への移譲を促進するため、減額譲渡のために必要な措置等を講じる。


[現在]年金積立金の預託義務と年金福祉事業団による運用

[現在]年金積立金の預託義務と年金福祉事業団による運用図


[見直し後]年金保険者(厚生大臣)による自主運用の実施

財政投融資制度の
抜本的改革

[見直し後]年金保険者(厚生大臣)による自主運用の実施図


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