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施設整備業務等の再点検のための調査委員会報告書

厚 生 省

平成9年3月31日

前 書 これまでの検討状況と報告書の基本的性格

 ア  施設整備業務等の再点検のための調査委員会(以下「調査委員会」という。)は今回の施設整備補助金等の仕組みを悪用した事件について、事実関係の解明とともに、施設整備補助金の選定手続の見直し、社会福祉法人の認可や運営に関する業務の適正化等を進めるために、厚生大臣の命により、平成8年12月5日に設置されたものである。
 今回の事件は、厚生省関係職員の関与の下で発生したものであり、国民の社会福祉事業に対する信頼を損なうとともに、社会福祉事業に従事する関係者を冒とくしとにつき、厚生省として深く反省しなければならない。
 イ  設置以来、まず、埼玉県、山形県とともに、今回の事件に係る特別養護老人ホーム等をめぐる実態解明を進めるととともに、取り急ぎ実態調査等の点検を行い、その果を踏まえて、特別養護老人ホーム等の施設整備に係る問題点とこれに対応する改善措置をとりまとめ、平成9年1月31日に第1次報告書として公表し、可能なものは平成9年度からの施設整備にも反映できるよう、平成9年3月末までに所要の通知の改正等を行ったところである。
 また、調査委員会においては、今回の事件で問題となった特別養護老人ホーム等のみならず、厚生省関係のその他の施設整備業務全般についても、同様に施設整備補助金に係る業務の適正化を図る観点から、施設整備補助金の選定手続、建設工事入札手続等を再点検するとともに、補助金執行に係る監査・考査体制についても再点検を行った。
 ウ  この場合、第1次報告書でも述べたように、調査委員会は、今回の事件に関し、犯罪要素の解明は、検察、警察の捜査及び公判に委ねることとし、再発防止の観点から、施設整備補助金制度等を悪用された点についての事実解明と改善策を検討した。
 また、埼玉、山形両県の事件の関連施設の事後処理については、これまでの取組みの状況及び今後の方向をとりまとめ、今後は別途、個別具体的な問題の処理として引き続き対応することとしている。
 エ  さらに今回の事件が、厚生省関係職員の関与の下に生じた点を深く反省し、昨年末に厚生省職員倫理規程を制定し、その厳正な運用に努めているところであるが、今般、地方自治体に対する出向人事についても見直しを行った。

この報告書は、第1次報告書に示した事項も含め、以上のような調査委員会のこれ までの検討結果を総括的にとりまとめたものである。
(以下第1部における下線部は第1次報告書から内容に変更のあった点)
第1部 特別養護老人ホームをはじめとする社会福祉施設の整備等の再点検と改善措置

1 今回の事件の実態解明

(1)事件の経緯

今後、公判等の過程で新たな情報が明らかになることも予想されるが、埼玉県、山形県における調査等に基づき、これまでに判明した事実を整理した。(経緯の詳細については、本年1月末に公表した第1次報告書を参照。)
(1) 今回の事件は、篤志家の善意の寄付に基づき事業が行われることを前提に、施設の建設費から運営費までを国や都道府県市の高率の補助金や政策融資など公費で賄われることとなっている社会福祉事業の仕組みを悪用して、厚生省から出向していた県の担当課長の関与の下に特別養護老人ホーム等の認可を次々と受け、その建設に伴って総額約27億円にものぼる多額の差益を発生させた(「利ざや稼ぎ」を行った)ものである。
(2) 事件の舞台となった彩福祉グループ(特別養護老人ホーム等を経営する7法人及び施設を経営しない「彩福祉基金」の計8法人)の関係施設は、
埼玉県の6施設
北本特別養護老人ホーム(北本市所在、平成6年2月認可、
「桃泉園」経営)
吹上苑」(吹上町所在、7年2月認可、「彩吹会」経営)
あけぼの」(上尾市所在、8年10月認可、「彩光会」経営)
上福岡苑」(上福岡市所在、建設中、「桃泉園」経営)
川里苑」(川里村所在、建設中、「彩川会」経営)
鷲宮苑」(鷲宮町所在、建設中、「彩鷲会」経営)
山形県の2施設
成安苑」(旧称)(山形市所在、建設中、「彩山会」(旧称)
経営)
大江苑」(旧称)(大江町所在、建設中、「彩江会」(旧称)
経営)
である。
(3) これらの施設建設工事は、「北本特別養護老人ホーム」を除き、いずれもJWM(株) に発注され、JWM(株)はこれを他の建設会社に一括下請負している。
なお、各法人とJWM(株)との契約については、小山と少数の理事により、理事会に諮ることなく専断的に進めたものであることが明らかになっている。
(4) 件発覚時におけるこれら8施設の総事業費は160億5千5百万円となっており、これらに対する補助(平成8年度については当初内示額)及び融資については、国庫補助額が50億9百万円、県補助額が25億5百万円、県単独補助(埼玉県の県単融資(10年償還で元利償還分を補助)を含む。)が13億6千7百万円、日本船舶振興会からの補助が5億円(うち2億5千万円は未執行)、社会福祉・医療事業団からの融資額が31億2千2百万円となっている。
また、施設建設に際してのJWM(株)との元請契約額(「北本特別養護老人ホーム」については法人からの補助申請に際して報告のあった額)は144億8千9百間円、下請業者から聴取した下請契約額(「北本特別養護老人ホーム」については業者からの聞き取り額)は118億2千9百万円となっており、その差額は26億6千万円となっている。さらに、設計監理費について各法人と建築設計事務所の間の契約書の金額と建築設計事務所が領収した金額に差があるものがあること、介護リフトの発注について小山の関連企業である(株)トウセンを通じて行っていることが明らかになっている。
また、共同募金会を通じて(有)医療福祉研究所とJWM(株)から土地購入費や事業団への借入金返済等に充てるために4億2百万円の指定寄付が行われている。
(5) この「利ざや稼ぎ」の過程において、小山は自らの連帯保証の下に、彩福祉グ ループの各法人に対し多額の借入れを行わせた。その額は年々増加しており、北本特別養護老人ホームを創設した平成5年度においては、事業団からの借入額は2億7千7百万円であったが、その後の相次ぐ施設整備と施設の大型化により、平成8年度においては、彩福祉グループの借入額の総額は、(4)で述べたように、31億2千2百万円に膨れ上がっている。これらに対する償還金は、元金のみでも合計毎年1億5千万円余りとなり、仮にこれを新たな施設整備による「利ざや稼ぎ」で賄おうとすれば、ますます借入額が膨らみ、いずれは破綻が避けられないものとなる構造であったと考えられる。その破綻の兆候は、既に山形県の2施設に対する事業団の融資が小山の保証能力の不足等の理由から未実施となったことに現れており、仮にこの事件の発覚がなくとも早晩問題は露呈していたものと考えられる。

(2)事件の原因

このようなことを可能とした原因として、第一に、社会福祉法人の理事長により、
(1) 理事会の運営が形骸化され、
(2) 事実上運営する企業に施設建設が恣意的に発注され、
(3) 「丸投げ」により膨大な差益を発生させた(「利ざや稼ぎ」を行った)
ことが挙げられ、これに加え、厚生省から出向していた県の担当課長の関与の下に、
(1) 同一理事長の下に同時期に並行して複数の施設、法人が認可され、
(2) 補助金等を受けやすくし、「利ざや稼ぎ」を容易にさせたのではないか
と推察される。

(3)現行制度の問題点

このような観点に立って今回の事件をみた場合、
(1) 県における補助対象施設の選定手続について、国は明確な基準を示していな
いこともあって透明性を欠いていたり、施設・法人の認可手続に不明確な点
があり、県の担当課長の独断による認可を許したのではないか
(2) 建設工事契約、工事監督、検査等の指導が公共工事等に比べて緩やかすぎたの
ではないか
(3) 社会福祉法人の運営体制が理事長等の恣意的運営を可能とするものとなってい
たのではないか
等現行制度についての問題点が見受けられる。
今回の事件は、このような点に乗じられたとの見方もでき、厚生省として、これらの点に関して仕組みが不備であったり、指導が不十分であったことについて、反省し、見直しを行うことが必要である。

2 社会福祉施設に係る総点検の結果

(1)社会福祉施設に係る総点検の必要性

今回の事件発生以来、このような事例は特定の地域で生じた極めて例外的な事件であり、特別養護老人ホーム全般、あるいは社会福祉事業全般に当てはまるものではないという意見も多数寄せられた。しかしながら、既に整理したように今回の事件の原因をたどっていけば、現行制度について共通した問題点も見受けられる。
このため、今回の事件の核心と思われる事項について、第1次報告書で示した特別養護老人ホームの他に社会福祉法人全般にわたり、全国的に業務の執行についての総点検を実施することとし、その一環として国庫補助事業に係る特別養護老人ホームの施設、法人について実地に調査を行うこととした。

(2)社会福祉施設に係る総点検の方法

総点検に当たっては、
(1)社会福祉施設の設置に係る社会福祉法人の認可審査
(2) 社会福祉施設の設置に係る社会福祉法人の運営体制
(3) 社会福祉施設の建設工事の発注契約状況等について全都道府県市において、その指導状況を点検するとともに、上記(3)のうち国庫補助に係る特別養護老人ホームについては、厚生省(都道府県市担当者を含む。) と大蔵省が共同で、施設、法人に赴き、実態調査を行った。
また、国庫補助金の交付対象となった他の社会福祉施設(老人福祉施設及び特別養護人ホームと合築又は併設され、既に調査済みの施設を除く。)においても、厚生省(都道府県市担当者を含む。)で施設・法人に赴き、実地に調査を行った。
総点検の対象とした社会福祉施設は、特別養護老人ホーム、身体障害者療護施設、身体障害者通所授産施設、精神薄弱者更生施設(入所)、精神薄弱者授産施設(通所)、保護施設、婦人保護施設、地域福祉センター、乳児院、母子寮、保育所、養護施設、虚弱児施設、情緒障害児短期治療施設及び教護院である。
なお、平成9年度において社会福祉施設の建設補助単価の実態調査を行うことを予定している。

(3)社会福祉施設に係る総点検の内容

(1) 社会福祉施設の設置に係る社会福祉法人の認可審査
平成6年1月以降に設立認可された特別養護老人ホームを設置している465の社会福祉法人及び特別養護老人ホーム以外の施設を設置している210の社会福祉法人を対象として、調査対象施設の建設に当たっての資金計画の審査、事後の履行状況、寄付(贈与)者の所得能力・営業実績・資産状況等寄付の確実性、指導監督体制等法人の認可審査が十分であったかについて点検を行った。

(2) 社会福祉施設の設置に係る社会福祉法人の運営体制
特別養護老人ホームを設置している2,798の社会福祉法人及び特別養護老人ホーム以外の施設を設置している8,359の社会福祉法人を対象として、その平成6年度以降の法人の運営状況について、役員の法人運営への参画状況、整備・運営に当たって密接に関連する業務を行うものについての審査、地域代表理事の状況、特別利害関係を有する理事が議決に加わらないことの遵守状況、監事の監査状況の把握、「経理規程準則」に沿った経理規程の制定、契約状況等の監査実施状況等法人の運営体制が適切であったかについて点検を行った。

(3) 社会福祉施設の建設工事の発注契約状況
平成6年1月以降に工事発注契約を締結した新設法人に係る467の特別養護老人ホーム及びそれ以外の139の社会福祉施設を対象として、正常な契約締結の確認の状況及び方法、法人からの実績報告の実施状況、整備完了時点における当初計画との突合の状況等整備に当たって工事発注契約が適切に行われたかについて点検を行った。((1)から(3)までを以下「総点検」という。)

(4) 国庫補助に係る社会福祉施設の建設工事契約手続等実態調査
国庫補助金の交付対象となった「特別養護老人ホーム施設整備事業」で、平成6年1月以降に建設工事契約を締結した新設法人389か所のうち、彩グル−プの6か所及び離島等の4か所を除く379か所を対象として、建築の設計、施工(工事)業者の選定、工事価格の状況、入札等の公表、下請業者の状況、工事施工の監理監督につき実地調査を行った。
また、国庫補助金の交付対象となった他の社会福祉施設整備事業(老人福祉施設及び特別養護老人ホームと合築又は併設され、既に調査済みの施設を除く。)で平成7年度以降に建設工事契約を締結した新設法人116か所のうち、彩福祉グループの2か所を除く114か所を対象として、「特別養護老人ホーム施設整備事業」と同様の実地に調査を行った。(以下「実態調査」という。)

(5) その他
平成8年12月13日に開催した全国社会福祉施設関係主管課長会議に際して、特別養護老人ホームに関し、
社会福祉法人の認可のための審査会等の設置の有無、施設設置に当たって社会福祉審議会からの意見聴取の有無
都道府県市の指導として、工事契約の入札方法への条件の付与の状況、工事契約のチェックについて建設担当部局と連携等の実態
同一の理事長の下に同一都道府県内に複数の法人を作っているものの状況等について調査を行った。(以下「8年12月調査」という。)

(6) 結果
これらの点検結果については、以下の改善事項の記述の中において引用する。

3 社会福祉施設の整備等に係る改善事項

今回の事件は、厚生省関係職員の関与の下で発生したものであり、事件そのものは他に例をみない特異なものであるが、先に述べたとおり、特別養護老人ホームをはじめとする社会福祉施設及びこれを運営する社会福祉法人一般にも通ずる現行制度の問題点があることから、これらの問題点に対応した具体的な改善方策を講じることが必要である。

(1)補助金交付対象施設決定方法の明確化

(1) 現行の取扱いと改善の必要性

特別養護老人ホームをはじめとする社会福祉施設整備費の国庫負担(補助)金の交付対象施設の決定に当たっては、国は、毎年度施設整備の基本的考え方を関係局長通知で示すとともに、全国の都道府県関係部局長会議・課長会議において指示し、これに基づいて各都道府県市において選定したものにつき、個別にヒアリングを行った上で、国庫補助対象として採択することとしている。(国が部局長会議等で示している施設整備の考え方については、当該資料が公表されているものの、その位置づけは国と都道府県市間の事務連絡的な性格にとどまっている。)
都道府県市においては、国庫補助協議の前に施設設置を希望する者や市町村との調整を行い、国庫補助協議を行う施設を決定しているが、この手続や要件は必ずしも明確になっておらず、担当する部局内の単線的なラインで処理を行う都道府県市もみられ、特定の者による独断で補助対象施設の選定を許す余地が生じうるのではないかと考えられる。
なお、この点について現に行われている取組みとしては、毎年の施設整備計画について地方社会福祉審議会で意見聴取を行っている県が2県みられた。(8年12月調査)
また、施設を運営する主体である社会福祉法人については、設立認可権限をもつ都道府県において、現在でも施設整備の必要性とは別に法人としての適格性が独立して審査されることが原則となっている。しかし、都道府県によっては、施設整備の担当が法人の審査も合わせて行うものもあり、法人の設立認可も国庫補助の内示を受けて行われる形となっているため、施設整備の手続を優先する余り法人の審査が疎かになる傾向があるのではないかと考えられる。
この点について現に行われている取組みとしては、法人の設立認可について、都道府県庁内に法人審査会を設置し、施設整備担当課以外の課を加えた検討が行われている県が11県みられた。(8年12月調査)
なお、総点検においては、法人設立に際して寄付が行われた場合の贈与契約書や寄付者の行為能力を証明する関係書類は特別養護老人ホームについては99.5%、その他の調査対象施設については100%が整理されている状況にあることが確認された。さらに、融資に係る償還金の年次別履行状況については、都道府県市の指導監査を通じて、特別養護老人ホームに関しては100%、その他の調査対象施設については83.1%と確認されている。
社会福祉法人の認可に当たっては資金計画が重要な審査のポイントであり、補助事業の決定に当たっても資金計画の正確な把握と審査が必要となる。多くの場合、施設整備の自己負担分等について社会福祉・医療事業団の融資を充てることが多いが、この融資の申込み、審査は国庫補助の内示が行われた後に行われている。一方、行政の実態として国庫補助対象施設の決定や法人の認可は、事業団からの融資が受けられることを前提に行われている。このため、補助事業の決定等に当たって資金計画の妥当性を判断する上では、融資を行う観点からの審査が極めて有効であると考えられるが、現在のシステムではこれが活かされていない。
さらに、社会福祉・医療事業団の融資の返済に当たっては、寄付が償還財源の中心になっていることが通例であり、彩福祉グループの場合は、埼玉県による法人認可、事業団の審査において、書面上償還能力に問題はないと判断されたものの、今回このような事件が発生したことから、実質的なチェックが不十分だったのではないかとの指摘がある。法人が借入金の償還を確実に行うことが法人の安定的運営の基盤であることから、法人認可及び事業団融資における審査方法を見直す必要がある。
また、社会福祉法人が事業団から借入れする場合の連帯保証人については、資産及び負債の状況について自己申告に基づき審査を行っているが、その確認方法についてもより厳正を期す必要がある。
これら現行の取扱い上の問題点に即して、補助金の交付対象施設の決定方法を見直すことが必要である。

(2) 具体的な改善方策
(国における整備(協議)基準の明確化)
まず、国においては、現在関係局長通知や全国の都道府県関係部局長会議・課長会議において指示している施設整備の基本的な考え方や審査の重要事項をより明確化し「協議基準」として都道府県市に対する通知の形で明らかにした。

(都道府県市における補助金交付対象施設選定の適正化)
次に、都道府県市においては、補助対象施設の妥当性、国の協議基準との整合性について、単線的なラインで処理するのではなく、合議制による審査を経て決定することとし、国庫補助協議はこの手続が踏まれていることを条件とする。この場合、施設整備担当以外の部局の参加を求めることは当然であるが、その他にも地方社会福祉審議会の活用を図るなど学識経験者の参画を求めることも一つの方法として妥当である。なお、国庫補助協議を行う施設についての名称等の情報は、都道府県市において公表することを求め、その選定過程の透明化を図る。
国においても従来から特別養護老人ホーム等の補助対象施設の内示結果を公表してきたが、今後は都道府県別概況一覧を示したり、ホームページを活用する等により分かりやすい形で公表する。

(施設整備と独立した法人審査体制の確立)
また、施設整備と独立した判断により法人審査を行う体制を確立することが必要であり、このため、施設整備担当以外の部局を加えた都道府県市の庁内審査会を設置するなど、内部牽制機能を確保した合議制により法人審査を実施することを求める。都道府県市からの国庫補助協議はこの手続が踏まれていることを条件にすることとし、法人設立の条件が十分整っていない施設については補助採択を行わないこととする。なお、国においては、法人認可に当たって、同一人物が複数の法人を設立する場合の審査事項を通知の形で明らかにすることとする。
なお、特別養護老人ホームを設置・経営する社会福祉法人で、同一の理事長の下に同一都道府県内に複数の法人を運営しているもの(彩福祉グループ関係法人を除く。)は、19自治体で70法人、31理事長が把握された。そのような取扱いとなっている理由としては、広域団体と施設所在地自治体が共同で施設設置を行う場合に当該広域団体の長が理事長となっているもの、自治体の指導によるもの、複数種別の施設を設置する場合に、それぞれの分野の知識経験・熱意等のある者の参画を求めるため施設の種別ごとに法人を設立しているものなどであった。(8年12月調査)

(国庫補助協議と社会福祉・医療事業団融資との並行実施・連携)
さらに、事業団の融資を行う観点からの審査と連携をとってより的確に国庫補助対象施設の決定、法人の認可を行うことを可能とするため、社会福祉法人を新設して施設整備を行う国庫補助案件については、平成10年度の整備計画より、法人の設立認可の申請と事業団への融資申込みの手続を早め、国庫補助協議と並行して審査を行うこととする。具体的には、都道府県市の合議制による施設整備の審査、法人の審査を終了した案件については、国庫補助協議の申請と同時期に都道府県市の意見書を添えて事業団に対し借入れの申込みを行わせることにより、相互の連携を密にし、より的確な国庫補助施設の決定、法人の認可、融資決定に資することとする。
この並行審査に当たっては、補助金申請書類も含め、社会福祉法人の認可及び事業団融資の審査の際の提出書類について、記載事項の統一化を図る等事務の簡素化を図る。
また、事業団においては、平成9年度より、融資審査をより厳正に行っていくため、

  • 連帯保証人について、本人の保証意思の確認を個別に行う
  • 連帯保証人としての資産・負債状況を把握するため、保証人財産調書とともに、その裏付けとして所有不動産の登記簿謄本、預金残高証明書、納税証明書等を提出させ、総合的に確認する
  • 社会福祉法人と償還財源の寄附者の贈与契約書(写)に印鑑登録証明書を添付させるとともに、一定額以上の多額の贈与者については、必要に応じ文書等により贈与の意思確認を行うなどの手段を講じていくこととする。

(民間団体による施設整備補助の場合)
以上の手続については、民間団体による施設整備補助の場合も原則として同様のものとして取り扱われることが必要である。なお、同一の社会福祉施設整備について、国庫補助と民間団体による補助が重複して申請されることのないよう、国、都道府県市と民間団体との連絡を密にするなどその審査の強化を図る。

(2)公共工事に準じた建設工事契約の適正化

(1) 現行の取扱いと改善の必要性
社会福祉法人の契約に関しては、各法人は、社会福祉法人経理規程準則(昭和51年1月「社会福祉施設を経営する社会福祉法人の経理規程準則の制定について」社会局長・児童家庭局長通知)に準拠して経理規程を定めることとされ、施設建設を含むすべての契約においては当該規程によってその手続を行うこととなっている。
経理規程準則においては、社会福祉法人の契約は原則一般競争入札によることとされ、契約の性質又は目的により競争に加わるべき者が少数で一般競争に付する必要がない場合及び一般競争に付することが適当でない場合においては指名競争に、契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが適当でない場合においては随意契約によるものとする旨定められている。
これらの実施状況については、特別養護老人ホームに係る建設工事発注契約手続の実態は、

  • 業者選定は、指名競争によるものが73.4%、一般競争が0.5%であり、随意契約は26.1%となっているが、入札不調によるものを除き、全く競争入札によっていないものは11.6%である。
  • 指名競争入札によった場合の指名業者数は、「5社」が30.6%と最多であり、「2 〜4社」が17.3%、「8社」が12.2%である。
  • 契約方法の決定は、理事会で行われているものが39.6%、選定委員会を設置して決定しているものが16.9%である。
    また、入札の実施方法については、
  • 入札経過を公表しているものは65.4%、入札結果を公表しているものは86.8%であるが、公表の対象者は入札業者に限定されている場合が多い。また、指名参加業者を公表しているものは33.1%であった。
  • 入札への立会いは、80.0%の法人で行われている。

となっている。(実態調査)
発注した社会福祉法人のうち下請業者を把握しているものは75.2%あった。また、一括下請負を行ったものは2件存在することが確認された。(実態調査)
都道府県市の指導の状況については、特別養護老人ホームの建設工事契約に当たって、競争入札とするよう条件を付している(経理規程準則どおりとの回答を含む。)ものは71都道府県市のうち55自治体(77%)であり、そのうち入札業者数について条件を付しているものは35自治体(49%)であった。なお、条件としている入札業者数については、「5社」としているものが最多の16自治体であり、次いで「3社」が6自治体、「8社」が5自治体、「建設地の自治体の取扱いに準じる」とするのが4自治体等であった。(8年12月調査)
その他の社会福祉施設(老人福祉施設及び特別養護老人ホームを合築又は併設され、既に調査済みの施設を除く。)の整備に係る建設工事発注契約手続の実態については、
  • 業者選定は、指名競争によるものが76.3%、一般競争が0.9%であり、随意契約は22.8%となっているが、入札不調によるものを除き、全く競争入札によっていないものは7.9%である。
  • 指名競争入札によった場合の指名業者数は、「5社」が24.5%と最多であり、「2 〜4社」が23.5%、「6社」が14.3%である。
  • 契約方法の決定は、理事会で行われているものが68.4%、選定委員会を設置して決定しているものが19.3%である。
    また、入札の実施方法については、
  • 入札経過を公表しているものは68.7%、入札結果を公表しているものは76.8%であるが、公表の対象者は入札業者に限定されている場合が多い。また、指名参加業者を公表しているものは64.3%であった。
  • 入札への立会いは、93.9%の法人で行われている。
  • 建設工事を発注した社会福祉法人のうち下請業者を把握しているものは64.0%であった。なお、一括下請負を行ったものはなかった。
    との状況となっている。(実態調査)
また、施設建設契約に関しては、従来から正常な契約が締結され、当初計画に従った建設が進行しているか否かの実状の確認に努め、二重契約等の不正の生じないよう万全の注意を払うこと、実情把握のために契約時点・建設工事中間点・完了時点に法人関係者から詳細な実情報告をさせるなどの措置をとるよう都道府県を指導している(昭和55年10月「社会福祉法人及び社会福祉施設に対する指導監督の強化について」社会局長・児童家庭局長通知)。
これらの実施状況についての点検結果をみると、特別養護老人ホームについては、契約時点の報告がなされているもの29.2%、工事中間点の報告がなされているもの35.0%、完了時点の報告がなされているもの93.0%となっており、必ずしも十分な把握が行われている状況にはなかった。その他の調査対象施設においても、契約時点の報告がなされているもの33.8%、工事中間点の報告がなされているもの26.9%、完了時点の報告がなされているもの79.2%となっており、ほぼ同様の状況にある。また、工事完了時における当初計画との突合状況については、特別養護老人ホームの85.0%、特別養護老人ホーム以外の調査対象施設の89.2%が突合を行っている。(総点検)
なお、建設工事契約のチェックについて建設担当部局との連携を行っているものは、70都道府県のうち15自治体(21%)であり、入札結果を聴取しているものは35自治体(50%)であった。(8年12月調査)
今回の事件において小山が不当な利益を得た直接の原因は、この建設工事契約の手続(見せかけの入札実施など)及び内容(一括下請負(「丸投げ」)契約)にある。一方、建設工事契約等の実際の運用の状況は以上に述べたとおりであり、この部分について、高率の国庫補助等多額の公費が投入されているという事業の性格にかんがみて、公共工事の例を参考に厳密な取扱いが行われるよう改善を図る必要がある。
なお、国(建設省)の行う公共工事の手続においては、競争入札の前段階で参加業者の資格審査を行っており、参加業者に対して経営規模や経営状況、技術職員数、営業年数等に応じて等級の格付けが行われる。また、工事規模(金額)に応じて入札方法(一般競争か指名競争か)及び入札資格が定められている。入札は、予定価格の制限内で最低価格の者が落札することと定められ、入札結果は公表される。契約書の標準として公共工事標準請負契約約款が定められ、建設事務次官通知によりこの約款を用いた契約を行うこととされている。なお、一括下請負契約については、この約款では建設業法の規定どおり発注者が文書をもって承諾した場合を除いて禁止するとされているが、通常はこの承諾は行われない。(これらの手続は概ね各省共通である。)
これら現行の取扱い上の問題点に即して、国庫補助を受けて社会福祉法人が行う社会福祉施設の整備については、公共工事に準じて建設工事契約等の適正化を図ることが必要である。

(2) 具体的な改善方策

(県の公共工事に準じた契約手続)
常時建設工事を発注することのない社会福祉法人においては、公共工事並みに建設業者の資格審査を行うことは不可能であり、また、地方によって経済事情が異なるため契約手続について一律の基準を設けることも適当でないと考えられる。このため、契約手続については、都道府県市が行う公共工事の扱いに準じて適切に行うこととするとともに、あらかじめ入札参加業者を社会福祉法人から都道府県市に届け出ることを求めることとする。これにより、当該参加業者の工事実績等から、届出のあった業者について不適切な点があれば法人に適切な助言を行うことが可能となる。

(入札の実効を確保するための指導項目の明示)
また、入札を行う場合には、法人は、監事や一定数以上の理事及び評議員を立ち会わせることとする。この場合、地元市町村職員が立ち会うことも一つの方法である。入札後は、入札が適正に行われた旨の立会人全員の署名とともに入札結果を都道府県市に届け出させることとし、さらに、都道府県市において届出を受けた入札結果を公開することとするが、また、併せて法人においても入札結果を外部に開示することとする。これらの手続により、入札そのものが不適正に行われることを防止することが容易になる。

(一括下請負の禁止)
一括下請負の扱いについては、建設業法における規定では、発注者が文書をもって承諾した場合を除き禁止する旨の定めとなっており、公共工事標準請負約款においても同様に規定されているが、公共工事においては通常この承諾は行われず、社会福祉施設建設に当たって一括下請負を認めなければならない特段の事情も想定できないため、この点については例外なく禁止とする。

(都道府県市による現地調査の実施)
公共工事においては、契約、設計図面に適合した工事が行われているか否かについて、完成検査、既済部分検査を行う検査職員を任命して検査を行うこととなっているが、民間建設工事においては、検査を工事監理者が行うことが約款(例えば 「四会連合協定工事請負契約約款」第20条)に定められている。社会福祉施設については、補助を行う立場の都道府県市が当該補助事業が的確に行われているか否かを把握することが必要であり、都道府県市においては、実情把握のために、法人からの報告徴収にとどまらず、自ら工事監理者、請負業者立会いのもとで現地調査を行うこととする。なお、この際は可能な限り公共事業担当部局との連携を図ることが必要である。
また、併せて、工事の一部を下請業者が行う場合は、法人は、その商号又は名称その他必要な事項を確認することとし、都道府県においても、現地調査においてこれらを確認することとする。

(契約手続や一括下請負の禁止の補助要綱での明確化)
現在の国の社会福祉施設の整備費補助の仕組みは、都道府県市を通じた間接補助となっており、その要綱(平成3年11月「社会福祉施設等施設整備費及び社会福祉施設等設備整備費の国庫負担(補助)について」厚生事務次官通知)では、適正な契約方式の確保が補助条件とはなっていない。今後、これを改め、適正な契約手続を確保し、加えて一括下請負を禁止することを補助要綱上条件として明記し、内示後に不適切な形で契約が行われた施設整備費については交付決定を行わず、また、交付決定後に補助要綱に従っていない事例が判明した場合には返還を求めるなどの措置を講じることができるようにする。

(民間団体による施設整備補助に係る同様の指導)
以上の手続は、民間団体による施設整備補助の場合には適用されないが、各都道府県市においては契約の適正化等について同様の趣旨で法人における取扱いが行われるよう適切な指導を行うよう通知する。

(3)幅広い関係者の参画による公正な社会福祉法人の運営の確保

(1) 現行の取扱いと改善の必要性
 ア社会福祉法人の理事は、
  • 6名以上とすること、
  • 各理事と親族等特別の関係にあるものの数は制限されること、
  • 理事の4分の1以上は社会福祉事業について知識経験を有するものであること、
  • 地域代表を加えること
とし、法人の業務に係る決定を理事の合議である理事会にかからしめ、適切な法人運営が行われるような体制を確保することとしている。
この点について、総点検において実施された社会福祉法人の理事構成の点検結果によると、特別養護老人ホームについては地域代表がいない法人が4.7%確認されたほか、理事会に1度も出席していない理事がいる法人が8%程度確認された。また、特別養護老人ホーム以外の調査対象施設については、障害福祉施設がそれぞれ9.2%、10.9%、児童福祉施設がそれぞれ9.5%、4.6%、その他の施設がそれぞれ19.0%、11.7%と確認された。
施設の整備、運営に関連する業務を行う者が理事の過半数を占めていないかどうかの確認、利害関係のある理事が理事会の議決へ加わっていないことについての確認状況については、都道府県市の監査において特別養護老人ホームはそれぞれ95.0%、94.6%、障害福祉施設はそれぞれ98.6%、97.6%、児童福祉施設はそれぞれ99.8%、99.3%、その他の施設はそれぞれ100%、97.1%が確認されている。

社会福祉法人の議決機関としては、理事会のほか、評議員会を置くことができることとされている。評議員会は、理事定数の2倍以上の評議員をもって構成することとされ、社会福祉事業に関心を持ち又は学識経験のある者で、法人の趣旨に賛成して協力する者の中から理事会の同意を経て理事長が委嘱することとされている。評議員会が置かれた場合には、予算や事業計画等の法人運営の重要な事項を審議、議決するほか、理事、監事の選任を行うなど、評議員会には法人内部の相互牽制機能が期待されている。ただし、現行の指導では、特別養護老人ホーム等措置施設のみを設置・経営する社会福祉法人については、評議員会を設置しなくともよいこととされている。

法人の運営をチェックする機関として、社会福祉法人には監事がおかれている。監事は2名以上(1名は財務諸表等を監査しうる者、1名は社会福祉事業について知識経験を有する者)とされ、理事の業務執行の状況や社会福祉法人の財産の状況について監査し、理事に意見を述べることを職責としている。
なお、この監事監査の実施状況については、都道府県市の監査において特別養護老人ホームは96.4%、障害福祉施設は98.7%、児童福祉施設は99.5%、その他の施設は100%と確認されている。

今回の彩福祉グループの法人はいずれもこれらの条件を形式上満たしていたが、結果 的に理事長の恣意による運営を防ぐことができなかったことから、社会福祉法人の運営 等につき今回の事件の反省を踏まえた改善を図ることが必要である。

(2) 具体的な改善方策

(幅広い人材の理事会への積極的参画)
特定の者の恣意による社会福祉法人の運営を防ぎ、地域福祉の向上の視点に立った法人の運営がなされるためには、法人の理事長と緊密な関係にある者のみで法人の運営が行われることを防ぐとともに、地域との円滑な連携が図られるよう、その地域で様々な立場で福祉事業に関係している者等を実質的に法人の運営に参画させる体制を構築することが必要である。特に、特別養護老人ホーム等の入所施設の運営に当たっては、入所者が24時間施設の中で生活しており、外部との接触が比較的薄くなることを考えると、入所者の立場に立って施設や法人の運営に意見するものの存在が不可欠と考えられる。
このため、老人福祉及び障害福祉に係る入所施設を経営する法人については、理 事の半数以上を社会福祉事業について知識経験を有する者及び地域の福祉関係者の 中から幅広い人材の参画を求めるものとする。

(評議員会の活用等による幅広い人材の法人運営への参画)
また、幅広い人材の法人運営への参画を図るために、老人福祉及び障害福祉に係る入所施設を経営する法人については、理事数の定員を10名以上(現行6名以上)
とするか、又は入所者の家族等が加わった評議員会の設置を指導することとする。

(監事監査の充実による法人内部牽制機能の確保)
また、監事の監査については、これを毎年定期的に行うこととし、その結果を所轄庁に報告させることなどにより、監事による法人内部の牽制機能の充実を図ることとする。その際、外部の専門家による外部監査の活用等も含め、監事機能の充実を図る。

(役員の公開)
現在、社会福祉法人については、取引の安全を確保する観点から代表権を有する理事のみが登記されているが、代表権がなくとも理事や監事が施設や地域に責任を持って法人運営に携わっていくことを求める観点から、所轄庁において、法人役員の氏名を公開することとする。

(財務諸表等の自主的な開示)
さらに、社会福祉法人に対しては、適切な運営が行われていることについて利用者の家族や地域の関係者の理解が得られるよう、施設の広報等を通じた事業報告書や財務諸表等の自主的な開示を求めていくものとする。

(4)上記(1)から(3)についての改善措置の実施

これらの改善措置については、既に必要な通知の発出を行い、可能な限り平成9年度の整備事業から適用することとしている。
関係する通知とその主な内容は以下のとおりである。

(1)「平成9年度社会福祉施設等施設整備費及び社会福祉施設等設備整備費の国庫負担(補助)にかかる協議等について」(平成9年3月6日 大臣官房障害保健福祉部長、社会・援護局長、老人保健福祉局長、児童家庭局長連名通知)
(内容)
社会福祉施設を通じた基本的整備方針として、広く地域に開かれた在宅福祉の推進拠点としての機能を果たすもの、土地の有効活用等を図るもの等を優先的に整備すること等を規定するとともに、補助対象施設の選定の基準として、

(2)「平成9年度老人福祉施設整備にかかる協議基準等について」(平成9年3月6日老人保健福祉局老人福祉計画課長通知)
(内容)
特別養護老人ホーム等老人福祉施設の協議基準として、

(3)「社会福祉法人の認可について」(昭和39年1月10日 社会局長、児童局長連名通知、平成9年3月28日改正)
(4)「社会福祉法人の認可について」(昭和62年2月4日 社会局庶務課長、児童家庭局企画課長連名通知、平成9年3月28日改正)
(内容)
次の項目を「社会福祉法人審査基準」等に追加。

(5)「社会福祉法人の認可等の適正化並びに社会福祉法人及び社会福祉施設に対する指導監督の徹底について」(平成9年3月28日 大臣官房障害保健福祉部長、社会・援護局長、老人保健福祉局長、児童家庭局長連名通知)
(内容)
以下の改善措置の実施を都道府県市に指示。

なお、都道府県市の公共工事に準じた契約手続と一括下請負の禁止については、これを国庫補助の条件として補助要綱(「社会福祉施設等施設整備費及び社会福祉施設等設備整備費の国庫負担(補助)について」平成3年11月 厚生事務次官通知)に明示することとしているが、これは平成9年度予算の成立を受けて速やかに改正を行う予定である。

(5)監査・考査の現状と改善事項

(1) 社会福祉施設及び社会福祉法人に対する監査・考査の現状
現在、社会福祉施設に対する監査は、都道府県市において、原則として全施設について年1回実施されている。監査の中心は措置費の使用状況に係るものとなっている。また、社会福祉法人に対する監査については、この施設監査と並行して実施するよう指導している。

国は「社会福祉法人監査指導要綱」(昭和54年5月 社会局長、児童家庭局長連名通知)や「社会福祉法人・施設等に対する指導監査の主眼事項及び着眼点」(毎年度社会・援護局長、老人保健福祉局長及び児童家庭局長より通知)等により、都道府県市が監査を行う際の指針を示している。また、国においては、都道府県市が実施している指導監査を実地検証する形で、毎年度全都道府県市について、障害福祉施設、老人福祉施設、児童福祉施設等について、それぞれ1〜2施設を実地に指導監査を実施しており、この結果を毎年度とりまとめ、全国都道府県関係課長会議等を通じて注意喚起を図るとともに、次年度以降の指導監査を行う際の指針の策定の参考としている。

社会福祉施設整備については、その適切な実施を図るため、契約時点や建設工事中間点・完了点に法人関係者から詳細な実情報告をさせるなど実情把握に努める旨指導しているが、その実情把握の実施状況は前述の調査結果どおり不十分なものとなっている。また、施設整備中の法人に対する監査は実施されていない。

(2) 改善事項

(法人・施設監査の指針の見直し)
社会福祉施設や既に施設運用を開始している社会福祉法人に対しては、今後とも現行の体制で監査を実施していくこととするが、今回の改善事項の実施に伴う社会福祉法人審査基準等の改正を受けて、平成9年度において監査の指針の必要な見直しを行い、的確な監査の実施を確保することとする。今後とも指導監査の実態を踏まえ、毎年度必要な見直しを行う。

(施設開設前の法人に対する都道府県市の監査の実施等)
社会福祉施設整備については、前述のとおり補助を行う立場の都道府県市が当該補助事業が的確に行われているか否かを把握することが必要であるとの観点から、自ら工事監理者、請負業者立会いの下で現地調査を実施することとした。さらに、施設開設前の法人についても都道府県市の監査対象とし、施設整備や建設工事契約の締結に関して改善措置に基づき法人運営が適切に行われているか否かを検査することとする。

(物品購入等についての指導監査の徹底)
社会福祉施設における物品購入等については、競争入札や複数業者からの見積合わせ、市場価格調査等により適正に行われているか等の指導監査を行うよう都道府県を指導しているところであり、今後ともこの指導の徹底を図る。

(国における施設整備の指導監査の実施、都道府県市の法人指導担当職員の研修の実施)
国においては、都道府県市の行う施設監査及び法人監査の適切な実施に関する指導、監査実施に当たっての指針を毎年度法人・施設の運営状況を踏まえて見直しを行い、提示する。また、現在、措置費の使用状況を中心に行われている国の指導監査について、平成9年度から施設整備についても対象とする。さらに、各都道府県市における法人指導の充実を図るため、平成9年度から都道府県市の法人指導担当職員に対する研修を実施することとする。

(国の補助金執行の内部指導監査体制の見直し)
今回の事件を踏まえて、施設整備に関する補助金の執行については、各部局による補助対象施設の選定や事業の実施状況の確認等、大臣官房による各部局の補助金執行に対する認証等の補助金の執行手続の一貫した適正化を図る。
このため、補助金の執行に関する指導の充実、大臣官房における各部局に対する会計監査の充実等厚生省の内部の指導監査体制の見直しを検討する。

(6)共同募金会の指定寄付金制度の運用の適正化

(1) 社会福祉法人の施設整備等に係る共同募金会を通じた指定寄付金制度は、社会福祉関係者の長年の要望が実現し、昭和45年度に設けられた制度であり、これまで社会福祉の増進に大きく寄与してきたものである。
この制度の運用に当たっては、法人税法における指定寄付金制度の本旨にかんがみ、共同募金会において、配分対象事業の内容、緊急度に加えて、税の不当な軽減をきたす結果となるかどうかを審査してきているところである。

(2) 今回の彩福祉グループのケースでは、入札の恣意性、丸投げ等が確認され、これにより多額の公的資金が導入されている施設建設から不当な差益(「利ざや」)を生んだことは明らかであり、その防止策として、社会福祉法人と建設請負業者との建設工事契約について、公共工事に準じた契約の適正化を図ることとした。
また、建設請負業者以外の業者についても、今回のケースとは異なるが、社会福祉施設の措置費に関する物品の購入等の契約の適正化について今後とも都道府県を通じた指導の徹底を図ることとする。

(3) 以上の措置を踏まえ、指定寄付金制度の運用の一層の適正化を図るために、共同募金会における指定寄付金の審査について、以下の改善措置を講ずることとする。
現在の共同募金会における指定寄付金の取扱基準(昭和45年5月22日 社会局長通知)においては、寄付者(法人である場合にはその役員)又はその親族(以下「寄付者等」という。)が受配者(共同募金会から寄付金の配分を受ける者)の役員又は職員として給与を受けている場合には、寄付者等と受配者は「特別の関係」にあるとされ、この場合の寄付は公募性の高いものその他共同募金会が特に認めた場合に限り、当該指定寄付が認められることとされている。
今回、この「特別の関係」とされる範囲を拡大することとする。まず、寄付者等が受配者から給与を受けているかどうかに関わらず受配者の役員又は職員であれば「特別の関係」にあるとする。また、寄付者が受配者の建設請負業者又は物品納入業者等である場合についても、両者は「特別の関係」にあるとする。これら「特別の関係」にある者間の寄付については、共同募金会は当該寄付者等の報酬の受給状況や施設の利用状況、当該建設工事請負等の契約手続、受配者である社会福祉法人の当該寄付金に関する理事会の決定状況等が適正であるかどうかについて、十分審査した上で当該指定寄付を認めることとする。
なお、上記の審査を行うに当たって、共同募金会は社会福祉法人を指導監督している各都道府県と十分な連携を図ることとする。

また、平成9年度から共同募金会において、一定金額を超える指定寄付金について、寄付者及び受配者の名称及び金額の公表を前提に受け入れることとする。

さらに、指定寄付金の配分の対象となる事業及び経費の範囲等を取扱基準に具体的に明記することとする。

4 埼玉県、山形県の今回の事件の関連施設の事後処理策

(1)今回の事件の関連施設に係る事後処理策の動向

(1) 事件発生以後、厚生省及び埼玉、山形の両県においては、それぞれの施設において円滑に特別養護老人ホーム等の事業が実施できる条件の整備を最優先に事件の事後処理に当たってきた。この結果、事業実施の中核となる法人については、両県の指導の下に社会福祉事業法の規定に沿って、新たな理事を選任し、小山の影響を払しょくして出直しを図ることとし、平成8年12月末までに新体制を発足させた。この過程で、山形県の2法人については、「彩山会」を「輝きの会」と、「彩江会」を「碧水会」とそれぞれ名称変更された。

(2) 事後処理を進めていく上で、補助対象施設に対しての建築物と設計図面との突合等の調査が不可欠であるが、山形県においては、行政、設計会社、施工業者等関係者立会いの下に平成8年12月下旬に調査が行われ、埼玉県においても9年1月下旬に同様の調査が行われたところである。これらの調査によれば、埼玉県、山形県の各施設については、通常行われる範囲内の若干の設計変更があるものの、手抜き工事等の事実はなかったことが明らかになっている。

(3) 補助金や融資等施設整備にかかる資金の流れについては、各法人は既に交付された補助金や融資をJWM(株)等に支払っている一方、元請額と下請額の差額部分がJWM(株)に留保され、JWM(株)から下請各社への支払は一部しか行われていないことが明らかになっている。

(4) また、埼玉県の各法人設立の際の資金計画において借入金の償還財源として予定されていた贈与契約については、ほぼすべての者が、贈与契約書の存在を知らないなど贈与契約の履行が全く見込めないことが確認されている。

(5) 山形県の2施設については、地元関係者で再生された法人を支援していく枠組みについて関係自治体間で協議が進められ、施設整備内容について一部見直しが行われるとともに、社会福祉・医療事業団からの借入金に係る債務負担行為の設定等の公的支援の枠組みが整えられた。

(2)今後の対応方向

(1) 今後、国と県が一体となって、新体制の法人の下に事件の関連施設の円滑な再建と事業の実施が図られるよう適切な指導や必要な補助金、融資の確保等に努めることとする。

(2) 現在工事中の5施設の扱い

平成8年度分の補助金については、
  • 埼玉県、山形県の8施設7法人については、役員を一新するとともに、施設の完成を控えて地元の県、市町村が事業の円滑な開始を強く要望していることなど事業遂行の環境が整ってきたこと
  • これまで両県における専門家を交えた設計図面等との突合調査の結果、手抜き工事等はなく、施設を補助目的どおり使用できることが明らかになったこと
  • 今後支払われる補助金については、関係者間の協議を踏まえて特別養護老人ホームの建設用途に充てられることが確実になっていることを踏まえ、一部施設内容について見直しを行った上で、国庫補助基準に照らして交付決定を行った。

「丸投げ」により生じた元請額と下請額の差額の扱いについては、下請け企業との通常の契約の過程で発生した部分のほかに、小山が当初から元請契約金額を不当に引き上げたために発生した部分があるのではないかとの疑いもある。
このため、補助目的どおりに使用されたとは考えられない部分がないかどうかを精査の上最終的な所要額を確定し、その結果に応じて必要な措置を講じることとする。

一方で、小山等事件の原因者に対する保証債務の追及や当初予定された寄付の履行等厳正な対処を求めていくことも必要である。

(3) 既に事業を開始している3施設についても、利ざや部分について同様の調査を進める一方、事業団融資等について今後の資金計画を早急に確立することが必要である。
また、日本船舶振興会からの補助との関係についても早急に整理することが必要である。

5 さらに対応の必要な課題

(1) 特別養護老人ホームの設置運営等の社会福祉事業は、本来決して収益を生むような性格のものではなく、その本来の構造が確保されるようこれまで述べた一連の措置を講ずるものである。

(2) ゴールドプラン策定後、特別養護老人ホームの整備需要が急速に増加する中で、特別養護老人ホームの設置運営があたかも収益を生むものであるかのごとき考え方を持つ者が生じているとの指摘がある一方、多額の寄付で施設整備費の自己負担を賄うという現行社会福祉法人の仕組みのままで必要な整備量を確保できるのかという懸念も生じてきている。

(3) したがって、第1次報告書でも示したとおり、本格的な高齢社会の到来を目前に控えて、特別養護老人ホームの整備を円滑に推進するためにも、今回の改善措置の効果を客観的に評価しつつ、さらに特別養護老人ホームの整備運営の実態を解明し、社会福祉法人の在り方や社会福祉事業に対する補助制度の在り方という課題に中長期的な観点から取り組む必要があると考える。

(4) この取組みを進めるため、厚生省内にこれらの課題についての検討の場として、平成9年度に特別養護老人ホームを中心として社会福祉法人や社会福祉施設の整備・運営の在り方についての検討会を発足させることとする。

(5) 上記検討会においては、
まず、以下の実態調査・分析や関係者の意見の把握等に取り組むこととする。
  • 特別養護老人ホーム等社会福祉施設整備に関する地方自治体の単独補助の実態、用地確保の実態等施設整備に関する実態把握・分析
  • 特別養護老人ホーム等社会福祉施設運営に関する地方自治体の単独補助、施設の年次経過に伴う経理状況等施設経営に関する実態把握・分析
  • 第1次報告書に盛り込まれた改善措置についての評価、今後の施設の整備及び運営に当たっての関係者の意見の把握
その後、これらの実態調査結果や関係者の意見を踏まえ、今後の検討の視点を整理した上で、特別養護老人ホームを中心として社会福祉法人の在り方や社会福祉施設整備、措置費等の在り方について検討を進めていくこととしたい。
第2部 その他の分野の施設整備等の再点検と改善措置
1 医療関係施設等

(1)医療関係施設

医療関係施設については、開設者は医療法人や個人が大部分であり、へき地、救急 医療体制の整備や患者の療養環境の改善等、一定の政策目的に沿った事業を実施している施設に限定して国庫補助が行われている。また、これらの補助は新設の施設に対してではなく、主として既存施設の改築等について行われている。
このように、医療関係施設への国庫補助は、補助対象となる施設が限定されていること、大部分が公費で賄われる特別養護老人ホームと比較して補助の仕組みが異なること、既存施設の改築等が大部分であること、また、補助対象主体の事業が特別養護老人ホームのような市町村からの委託事業ではないこと等から、特別養護老人ホームの国庫補助と同列に論じることはできない。
しかしながら、広く施設整備補助金に係る業務のより一層の適正化を図る観点から、事業の性格も踏まえ、特別養護老人ホームの例も参考にしつつ、必要な改善方策を講じることとした。

(1)再点検結果
  医療関係施設については、平成7年度中に建設工事契約を行った事業のうち、地方 自治体立のものを除き国庫補助額が1億円以上の80施設を対象として再点検を行っ た。具体的には、看護婦等養成所、理学療法士等養成所、医療施設近代化、救命救急 センター、看護婦宿舎、精神病院及びエイズ治療個室等の施設整備事業である。
対象施設の設置者を見ると、公的4団体(日赤、済生会、厚生連、北社協)12施設(15.0%)、医療法人35施設(43.8%)、その他の法人29施設(36.2%)、個人4施設(5.0%)となっている。
建設工事の契約方法については、指名競争入札を行っているものが24施設(30.0%)、随意契約を行っているものが56施設(70.0%)となっている。
指名競争入札を行っている例を点検すると、指名業者の選定について理事会で決定しているものが11施設(45.8%)、選定委員会を設置して決定しているものが10施設(41.7%)、その他3施設(12.5%)となっている。また、入札参加業者数は、5社未満が2施設(8.3%)、5社以上が22施設(91.7%)となっている。
次に、随意契約を行っている例を点検すると、請負業者の見積りのみであったの 30施設(53.6%)、複数業者の見積りをとっていたものが26施設(46. %)であった。
入札結果については、公表しているものが14施設(58.3%)、指名参加業者 名について公表しているものが12施設(50.0%)であった。

(2)改善事項
 国における整備(協議)基準の明確化
  医療関係施設については、従来、一部の事業については国庫補助における整備基準を明確にしていなかったところであるが、施設整備の基本的な考え方、審査の重要事項等について、「協議基準」として平成9年4月を目途に都道府県に対する通知で明らかにする。
 都道府県における補助金交付対象施設選定の適正化
  医療関係施設の整備の国庫補助協議に当たっては、都道府県は、平成10年度の整備計画から合議制の審査を経て決定することとする。
また、施設整備の国庫補助協議を行う施設についての名称等の情報は、都道府県において公表することにより、その選定過程の透明化を図ることを平成9年度に通知で明らかにする。
国は、補助対象施設の内示結果について、平成9年度から都道府県別概況一覧を示したり、ホームページを活用する等により分かりやすい形で公表する。
 国庫補助協議と社会福祉・医療事業団融資との連携
  医療関係施設の整備において、1億円以上の国庫補助申請を予定しており、かつ、事業団からの借入れを予定しているものについては、平成10年度の整備計画から、国庫補助協議前に事業団に対して事前相談をするものとし、相互の連携を図る。
 建設工事契約の適正化
  特別養護老人ホームについては、公共工事に準じた契約の適正化を図ることとしている。しかし、医療関係施設については前述のように、
  ・補助対象がへき地、救急医療等の一定の政策目的に沿った事業を実施している施設に限定されていること
  ・大部分が公費でまかなわれる特別養護老人ホームと比較して補助の仕組みが異なること
  ・主として新設の施設に対する補助ではなく、既存施設の改築等に対する補助であること
  ・特別養護老人ホームのように市町村からの委託事業ではないこと等から、現在、建設工事契約について特段の規制はないが、施設整備補助金に係る業務等のより一層の適正化を図る観点から、次のとおり取り扱うこととする。
 国庫補助額が1億円以上の施設整備を行う場合には、原則として5社以上の競争入札を行うこととする。やむを得ない場合は、随意契約を行うことができることとする。
 一括下請負については、平成9年度から補助金交付要綱の改正により禁止することとする。
 入札結果等の公開
  事業者は、入札結果を都道府県に報告することとし、都道府県はこれを公開することとする。また、随意契約を行った場合は、契約結果を都道府県に報告することとし、都道府県はこれを公開する。
 医療法人の適正な運営の確保
  医療法人制度は、個人による医療機関の経営に継続性をもたせ、併せて資金の集積性を高めることを目的として設けられた特別の法人制度であるが、市町村の委託事業を行う社会福祉法人ほどの高い公益性を持つものではない。また、社会福祉法人と異なり、医療法人が解散する際の残余財産の帰属先に制限がないこと、昭和60年の医療法改正により、理事数の要件等を緩和したいわゆる一人医師医療法人が認められ、現在ではこの一人医師医療法人が多数を占めていることなどから、社会福祉法人と同一の取扱いをすることは適当ではない。
なお、医療法人の設立に当たっては、医療法人の適正かつ安定的な運営を確保する観点から、都道府県が審査を行うとともに、医療法において医療関係者や有識者からなる医療審議会の意見を聴かなければならないことが規定されており、非営利性、資産要件等についての審議が行われている。
(3)監査・考査の現状と改善事項
  監査・考査の現状
 現在、国、都道府県等において、原則として全病院について年1回の医療監視が実施されており、その内容は、医療機関における清潔保持の状況、構造設備、帳簿書類に関する検査である。また、医療法人については、必要に応じて業務、会計に関して報告徴収、立入検査が実施されている。
 国は、「医療監視要綱」(昭和60年9月健康政策局長通知)、「医療監視・経営管理及び衛生検査所の指導の実施について」(各年度ごとに健康政策局長名で通知)、「医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について」(平成5年2月健康政策局総務課長・指導課長通知)等により、医療監視、医療法人への立入検査を行う際の指針を示している。また、国において毎年開催される医療監視等講習会、厚生大臣所管医療法人指導研修会、全国都道府県関係課長会議等の場において、医療機関、医療法人に対する指導・監査について周知徹底を図っている。
 改善事項
  医療機関及び医療法人に対する監査・考査については、医療関係施設の施設整備時における監査等について、次のとおり平成10年度から必要な見直しを行っていくこととする。
 医療関係施設の施設整備については、補助を行う立場の都道府県が当該補助事業が的確に行われているか否かを把握することが必要であるとの観点から、1億円以上の国庫補助金の交付を受けた施設について、建設工事中間点及び完了点において、都道府県が現地調査を実施することとし、このことを平成9年度に通知で明らかにする。
 医療法人の設立の認可については、医療法人の適正な運営を確保するため、同一人物が複数法人を設立する際の審査事項を明示することとし、このことを平成9年度に通知で明らかにする。

(2)老人保健施設

老人保健施設については、開設者は医療法人が大部分であること、大部分が公費で賄われる特別養護老人ホームと比較して補助の仕組みが異なること、また、補助対象主体の事業が特別養護老人ホームのような市町村からの委託事業ではないこと等から、 特別養護老人ホームと同列に論じることはできない。しかしながら、地域の中で特別養護老人ホームと並び施設整備が急速に進められている新設の施設整備であることを踏まえ、国庫補助を受けて行う老人保健施設の整備については、特別養護老人ホームの例も参考として、必要な改善方策を講じることとした。
(1)再点検結果
  老人保健施設の再点検については、平成7年度中に建設工事契約を行った事業のうち、地方公共団体立のものを除く291施設を対象として行った。
対象施設の開設者を見ると、医療法人232施設(79.7%)、社会福祉法人41施設(14.1%)、その他18施設(6.2%)となっている。
建設工事の契約方法については、一般競争入札を行っているものが5施設(1.7%)、指名競争入札を行っているものが141施設(48.5%)、随意契約を行っているものが145施設(49.8%)となっている。
指名競争入札を行っている例を点検すると、指名業者の選定について、理事会で決定しているものが94施設(66.7%)、選定委員会を設置して決定しているものが31施設(22.0%)、その他16施設(11.3%)となっている。また、入札参加業者数は、5社未満が60施設(41.1%)、5社以上が86施設(58.9%)となっている。
次に、随意契約を行っている例を点検すると、請負業者の見積りのみであったものが68施設(46.9%)、複数の見積りであったものが77施設(53.1%)であった。
入札結果については、公表しているものが81施設(55.5%)、指名参加業者について公表しているものが51施設(36.2%)であった。
(2)改善事項
 国における整備(協議)基準の明確化老人保健施設については、毎年度、施設整備に係る協議要領(局長通知)により国庫補助の採択方針を示しているところである。また、従来、全国都道府県関係部局長会議、全国都道府県関係課長会議等においても、国庫補助協議対象施設の選定に当たっての都道府県における審査事項についても指示しているところであるが、これについても通知により平成9年4月を目途に明確化することとする。
 都道府県における補助金交付対象施設選定の適正化
都道府県における選定は、平成10年度の整備計画から、合議制による審査を経て決定することとする。
また、施設整備の国庫補助協議を行う施設についての名称等の情報は、平成9年度に通知により、都道府県において公表することを求め、その選定過程の透明化を図る。
国は、補助対象施設の内示結果について、平成9年度から都道府県別概況一覧を示したり、ホームページを活用する等により分かりやすい形で公表する。
 国庫補助協議と社会福祉・医療事業団融資との連携
施設整備において、法人を新設して社会福祉・医療事業団からの借入れを予定しているものについては、平成10年度の整備計画から、国庫補助協議前に事業団に対して事前相談をするものとし、相互の連携を図る。
 建設工事契約の適正化
特別養護老人ホームについては、公共事業に準じた契約の適正化を図ることとしている。しかし、老人保健施設については、前述のように、
  ・開設者の多くが医療法人であること
  ・大部分が公費でまかなわれる特別養護老人ホームと比較して補助の仕組みが異なること
  ・特別養護老人ホームのような市町村からの委託事業ではないこと等から、現在、建設工事契約について特段の規制はないが、施設整備補助金に係る業務等のより一層の適正化を図る観点から、次のとおり取り扱うこととする。
 平成9年度に通知により、原則として5社以上の競争入札を行うこととする。やむを得ない場合は、随意契約を行うことができることとする。
 一括下請負については、平成9年度に補助金交付要綱の改正により禁止することとする。
 入札結果等の公開
平成9年度に通知により、事業者は、入札結果を都道府県に報告することとし、都道府県は、これを公開することとする。また、随意契約を行った場合は、事業者は契約結果を都道府県に報告することとし、都道府県はこれを公開することとする。
(3)監査・考査の現状と改善事項
 監査・考査の現状
 国、都道府県等において、原則としてすべての老人保健施設について年1回の実地指導が実施されており、その内容は、老人保健施設における設備及び帳簿書類に関するものである。
 国は「老人保健法による老人保健施設の指導について」(昭和63年6月保健医療局老人保健部長通知)により、実地指導を行う際の指針を示している。また、毎年開催される老人保健福祉関係指導監査担当ブロック研修会、全国都道府県関係課長会議等の場において、老人保健施設に対する指導について周知徹底を図っている。
 改善事項
老人保健施設に対する指導体制については、今後とも現行の体制で適正な実施を進める。なお、老人保健施設の施設整備時における監査については、平成9年度から国庫補助金の交付を受けた施設について、建設工事中間点で都道府県に対する書面等による報告を求めるとともに、建設工事完了点における都道府県の開設許可に当たっての現地検査の実施は、可能な限り公共事業担当部局との連携を図ることとする。

2 水道・廃棄物処理施設

水道・廃棄物処理施設の整備は、国民の生活基盤を支えるものとして、地方自治体(市町村・一部事務組合等)が実施する公共事業であり、地方自治法等に基づき工事契約の適正化、競争入札の実施、補助対象事業の情報の公表、施設の現地調査等の手続が厳正に実施されている。

(1)国庫補助に係る施設整備業務及び監査・考査の現状

(1) 施設整備業務の現状

水道施設
 水道施設の整備については、過疎地等水道の普及が遅れている地域における整備、地震や渇水に強い水道づくりのための耐震化や水源開発、水道広域化施設の整備、水源の汚濁の進行による健康被害を防止する高度浄水施設の整備など、重要性、緊急性が高いものを国庫補助対象としている。
廃棄物処理施設
 廃棄物処理施設(合併処理浄化槽を除く。)の整備については、ごみ処理施設やし尿処理施設等の老朽化に伴う更新、埋立処分場の逼迫や容器包装リサイクル法に対応するためのリサイクル関連施設等を国庫補助対象としている。
合併処理浄化槽
 合併処理浄化槽の整備については、し尿と生活雑排水を併せて処理することにより、生活環境の保全に寄与することを目的とし、個人が設置する合併処理浄化槽に対し補助事業を行っている市町村、又は合併処理浄化槽の面的整備を自らが設置主体となって行う市町村に対し、国庫補助を行っている。

(2) 監査・考査の現状

 水道・廃棄物処理施設(市町村が自ら行う合併処理浄化槽の面的整備を含む。)の監査・考査については、補助金の交付先が地方自治体であることから、工事契約を締結した場合には、地方自治法第234条の2に基づき、地方自治体職員が契約の相手方の履行が適正になされているか監督、検査を実施しており、都道府県において市町村への現地調査等の指導監督も実施され、不正防止等が図られている。
 個人が設置する合併処理浄化槽に対する補助については、市町村が、施工の現場において設置工事の状況を確認するよう指導するとともに、補助申請者に対し、浄化槽工事業者が撮影した基礎工事、据え付け工事の状況等の写真を提出させ、その内容を市町村が審査するよう指導している。

(2)改善事項

水道・廃棄物処理施設の整備は、地方自治体が実施する事業であり、諸法令に基づき厳正に実施されているが、施設整備補助金に係る業務の一層の適正化を図る観点から、さらに以下の事項について改善を図ることとした。

(1) 工事契約等の適正化

 地方自治体が工事契約を締結する場合には、地方自治法第96条に基づき議会の承認を経なければならず、また、競争入札の前段階で参加業者の資格審査を行っており、参加業者に対して経営規模や経営状況、技術職員数、営業年数等に応じて等級の格付けが行われている。さらに、指名競争及び随意契約については、地方自治法第234条、地方自治法施行令第167条等によりその実施条件が定められ、適正化が図られているところであるが、今後とも工事契約の適正化を徹底するよう指導する。
 一括下請負については、現在、建設業法第22条により発注者の書面による承諾を得た場合を除き禁止されており、公共事業においては通常この承諾は行われていないところであるが、念のため平成9年度において国庫補助金交付要綱等に禁止を明記する。
 また、急速な技術進歩に対応するため、技術選定委員会の設置等市町村における技術選定の在り方について平成9年度に検討する。
 さらに、個人が設置する合併処理浄化槽に対する補助については、市町村が行う現場確認、工事状況の写真審査の実施を徹底するとともに、補助金交付事務と出納事務を分離し、相互チェックを徹底するよう平成9年度から指導する。

(2) 国庫補助採択結果及び入札結果等の公表

 国庫補助事業の採択結果については、国において補助内示後速やかに都道府県別に公表しているところであり、公共事業に係る入札結果等については、地方自治体において、指名業者名、全入札業者名、入札金額等を公表するよう指導している。
 平成9年度から、国においては、採択結果の都道府県別一覧をホームページに掲載する。また、地方自治体において、公共事業に係る入札結果等について公表を徹底するよう指導するとともに、都道府県においては、各市町村の契約状況等をとりまとめて公表するよう要請する。
(3) 新技術に係る国庫補助金の採択基準等の明確化

ア 水道施設
 水道施設の国庫補助金の採択基準は、国庫補助金交付要綱等により詳細に規定されており、対象施設に係る標準的な施設の構造も設計指針等で明確に規定されているが、今後開発される新技術が円滑に導入されるよう、平成9年度に検討会を設ける等により、迅速に設計指針等の見直しを行うとともに、新技術の評価・導入の在り方について検討を行う。

イ 廃棄物処理施設
 廃棄物処理施設の国庫補助金の採択基準は、国庫補助金交付要綱等により詳細に規定されており、対象となる施設の基準についても構造指針で明確に規定されているが、構造指針に定めている技術以外の新技術を採用した施設の採択に当たっては、その都度、指針外協議として技術的な審査を行い、新しい技術が構造指針に定める技術と同等以上の能力を有するかどうかを確認し、廃棄物の適正処理の確保を図っているところである。他方、構造指針を示した当時の技術水準に比べ現在の技術水準が大幅に向上していることから、平成9年度に積極的に新技術が導入されるよう検討会を設ける等により、構造指針の改定及び指針外協議の在り方について検討を行う。

ウ 合併処理浄化槽
 合併処理浄化槽の国庫補助金の採択基準は、国庫補助金交付要綱等により詳細に規定されており、対象となる合併処理浄化槽の基準も明確に規定されている。
 従来、全国都道府県関係課長会議等において説明していた重点配分の考え方(合併処理浄化槽の新設率が高い、単独処理浄化槽廃止対策に積極的に取り組んでいる等)について、本年3月13日付けで都道府県に対して通知し、その明確化を図った。
 実際に補助を行う市町村は、配分のルールをより一層明確化する等、その配分が一層公正に行われるよう平成9年度において都道府県に通知し、指導する。

3 国立病院、社会保険関係施設

 国立病院(療養所を含む。以下同じ。)・社会保険関係施設の整備については、いずれも厚生省が直接実施しており、国の直轄事業として公共事業並びで、入札参加希望業者の資格審査及び経営規模等に応じた格付け、競争入札等の実施、落札業者との契約、工事着工、竣工検査を実施しているところである。
 また、平成6年1月18日の閣議了解として、「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」が策定され、透明・客観的かつ競争的な調達方式・調達手続、外国企業の適正な評価、苦情処理手続の整備及び入札談合等不正行為に対する防止措置等が定められており、これに従った入札、契約手続を実施している。

(1)施設整備業務及び監査・考査の現状

 国立病院関係施設の整備は、国立医療機関としてふさわしい役割を果たしていく観点から、現在推進している再編成による病院の整備のほか、政策医療、臨床研究、教育研修等の実施に必要な整備等を進めているところである。
 また、社会保険関係施設の整備は、厚生年金保険の福祉施設、政府管掌健康保険の福祉事業等として、被保険者等の福祉の増進等を図る観点から、病院、会館、保養施設等必要な施設の整備等を行っているところである。
国立病院関係施設の整備に係る設計・工事監理、検査については、本省及び各地方医務局における建築等専門職員が実施しており、工事監理、中間検査、竣工検査にあっては重点事項を中心とした巡回監理・検査により行っている。社会保険関係施設については、設計・工事監理はすべて設計業者にこれを業務委託しており、検査については事務職員が実施している。
 施設整備の手続等については、これらの事業は国の直轄事業であり、諸法令等に基づき適正に実施されているが、施設整備に係る業務の一層の適正化を図る観点から、さらに以下の事項について改善を図ることとした。
なお、一括下請負については、「請負契約書」に禁止を明記するとともに、工事施工業者から「監理技術者の経歴等の報告書」を提出させ、工事監督担当者を発注者として把握し、毎月実施している工事進捗状況報告会の際に、当該監理技者が担当していることを確認する等、十分な防止策を講じているところである。

(2)改善事項

(1) 入札業者の資格審査の充実

 平成6年1月18日の閣議了解により、一定の基準額(現在は、6億5千万円)以上の場合は一般競争入札を、これ未満の場合は競争入札を行うとともに、競争に参加する者に係る同種工事の施工実績、担当予定技術者の資格・施工実績の審査等を行うこととなった。
 このため発注者は、参加者からこれらに係る資料の提出を求め、審査等を実施することになるが、現在、官公庁が契約において民間企業に求める資料は、極力簡易なものとし、その内容を限定して提出させることとなっているため、当該企業の実績等を詳細に把握することが困難となっている。設計事務所を含む建設コンサルタント等についても、同様である。
 これらを踏まえ、審査等に要する関係情報の収集の合理化を図るため、平成9年度において建設省所管の財団法人の提供する工事実績情報サービス及び企業情報データベースの活用を検討する。

(2) 監理、検査体制の強化

 近年、医療施設は、医療機器の高度化、情報化、医療技術の革新等が急速に進展していること並びに計画施設の周辺環境への影響及び工事施工中の地域住民への影響等についてもきめ細かな配慮が求められるようになっていることから、設計、工期が複雑化、長期化している。
 これを踏まえ、国立病院関係施設については、効率的かつ適正な工事監理を図るため、平成9年度において工事着工時期の調整等による工事監理業務量の平準化等を検討する。
また、社会保険関係施設の地方発注分に係る工事検査については、設計・監理を委託した設計業者の協力を得ながら、事務職員が仕様書と設計図により確認を行っているが、専門的視点による検査の充実が必要であることから、平成9年度から省内各部局及び各出先機関における建築等専門職員との連携の強化を図る。

(3) 入札結果等の公表

 入札結果等については、公共工事に係る手続の透明性、客観性を高める一環として、各国立病院等において書面による閲覧に供することにより行われているが、必ずしも容易に当該結果に接し難い状況にあることから、入札参加業者名、落札業者名及び落札価額について、各国立病院等における書面による閲覧に加えて、ホームページの活用等を平成9年度より試行・実施していくこととする。

(4) 契約手続の適正化

 平成4年度において国立国際医療センターは医療廃棄物に係る契約をJWM(株)と締結したが、同社が落札した時点では同社は東京都知事の廃棄物処理に係る許可を得ていなかった。これは、当時の同センターの担当者が、資格審査に当たって、同社が既に他県の知事から許可を得ていたこと、東京都が許可申請を受理していたこと等により、入札に参加させても問題がないものと判断したことによるものである。
 これについては、競争入札の実施に当たり、一般(指名)競争参加資格者名簿に登載されている者から指名を行う手続が十分には徹底していなかったことにより生じたことから、今般、一般の物品購入、役務関係の契約全般の見直しと併せ、平成9年2月に関係通知(平成9年2月27日付け保健医療局国立病院部長通知「契約事務の適正化について」及び同日付け同部経営指導課長通知「契約事務における留意事項等について」)を発出し、以下の事項について周知徹底を図ったところである。また、これらの事項については、平成9年度の本省及び地方医務局の監査指導等の重点項目としても徹底した指導を行い改善を図ることとしている。
 ・ 資格審査事務及び名簿登録の徹底
 ・ 一般競争契約の推進
 ・ 指名業者の選定方法の確認
 ・ 随意契約の根拠法令の確認
 ・ 入札参加業者の業者許可書の確認
 ・ 予定価格の積算の明確化

第3部 出向人事等の在り方

 今回の事件は、社会福祉施設整備費や社会福祉法人等の仕組みを悪用したもので あるが、厚生省関係職員の関与の下で生じたものであることから、綱紀の保持や地 方自治体への出向人事等の在り方についても見直しを行った。
 その基本となる考え方は、次の2点である。

(1) 厚生省職員1人1人が、国民全体の奉仕者であることを自覚し、綱紀の一層厳 格な保持に努める。
(2) 出向人事の目的は厚生省と地方自治体との人事交流にあるという基本認識の下 に、出向者が独断専行に陥ったり、出向者と厚生省職員との関係が不透明なもの となることのないよう、その在り方を見直していく。
1 綱紀の保持

 従来、厚生省においては、会食・贈答の機会が増加する年末等の機会をとらえ て、繰り返し全職員に対して綱紀の保持の徹底を図ってきた。
 しかしながら、職務上必要な情報交換に伴って行う「会食」と「接待」をどう区分するのかなどの具体的な基準が明らかでなく、綱紀の保持についてどのように周知徹底し、管理監督するかの仕組が明確でなかった。
このような中で生じた今回の重大な事件の反省に立ち、厚生行政に対する国民の信頼を一日も早く回復すべく、徹底した厚生省職員の綱紀の粛正を図るため、平成8年11月29日、以下を内容とする厚生省独自の対応策を打ち出した。

・ 職務上利害関係のある者等との会食・ゴルフ・旅行等の全面禁止
・ 職務上利害関係のある者等との中元、歳暮等の接受の禁止
・ 特定の職務上利害関係のある者が私的に主催する研究会等への加入の禁止
・ 勤務時間内における公務以外の講演の禁止
これらの結果、厚生省職員と職務上利害関係のある者との関係を根本から正し いくこととなった。

 このような中で、政府の中でも実効ある綱紀粛正策の検討が行われてきたが、12月19日の事務次官等会議において「行政及び公務員の信頼を回復するための新たな取組について」が申し合わされた。この申合せは、具体的な規定振りまで示した上で、各省庁が「公務員倫理規程」を制定・公表するとともに、その周知徹底のための措置をとるよう求めている。 厚生省では、12月26日、この申合せを踏まえるとともに、独自の綱紀粛正策を盛り込んだ「厚生省職員倫理規程」を制定した。
この厚生省職員倫理規程においては、

(1) 各省庁共通の12項目の禁止事項に加え、勤務時間内の講演の禁止・私
的研究会への加入の禁止を盛り込む。
(2) 官房長を総括服務管理官・各局庶務課長等を服務管理官として位置付
け、倫理規程の周知徹底と管理・監督を行う。
(3) 関係業者等との接触を一切の例外なく禁止するのでなく、職務上必要な
場合は予め服務管理官に届け出て、その了承を得た上で一定の活動を行
うことを認め、一方で、この手続に反した場合は人事管理上必要な処分
を行う ことを明示する。
など、現実に即した上で規程遵守の実効が担保されるよう具体的な方策を定め、平成9年1月1日から施行している。今後ともこの規程に則り、徹底した綱紀の保持を図っていくこととする。

2 出向人事の在り方

 平成9年1月1日現在、厚生省から都道府県・政令指定都市に課長級以上として出向している者の総数は78名である。
 この中には、数次にわたり厚生省からの出向者が同じポストを占めている場合も含まれている。
 厚生行政は国民生活に密着した行政であり、厚生省と福祉・保健・医療行政の「現場」である地方自治体との間で人事交流を行い、相互の仕事を理解する意義は、今後とも大きい。
一方で、地方自治体の特定ポストを長期間厚生省からの出向者のみが占めると、そこに情報や実質的な権限が過度に集中し、独断専行に陥るおそれが生じたり、当該自治体にその職務に関わる経験が蓄積されないなどの弊害が生ずるおそれがある。

 以上のような問題点を踏まえ、今後、次のような考え方に立って、地方自治体 への出向人事を見直していくこととする。

(1) 地方自治体への出向に関しては、今後とも地方自治体の意向を最大限尊重
する。
(2) 出向する自治体・職務内容・職種・時期等については、できる限り多様化
を図るという観点に立って、関係自治体と協議する。
特に、厚生省からの出向者が長期間同一のポストを占めることは出来るだ
け避けることとし、仕事の内容が専門特化している技官などの場合を除
き、原則として前任者と同じポストとならないよう、関係自治体と協議し
ていく。また、原則として、同一人が2年を超えて同じポストに就くこと
のないように関係自治体と協議していく。
(3) 出向者に対して厚生省職員倫理規程は直接適用されないが、その趣旨を踏
まえた規律の保持を求めていく。
このため、平成9年3月、出向に先だって、地方行政に携わる場合の留意
事項や綱紀の保持等に関し事前研修を行ったところであるが、今後とも研
修内容の充実を図る。

終わりに

 本報告書は今回の施設整備業務補助金等の仕組みを悪用された事件の反省に立ち、その再発防止を図る観点から広く施設整備補助金等の業務全般について再点検を行ったものである。本報告書で示した一連の改善措置で未実施のものは、できる限り速やかに実行に移していくものとする。

 厚生省職員は、今回の事件の反省を肝に命じ、国民全体に奉仕する国家公務員であることを改めて自覚し、公平公正を旨とし、その職務に誠心誠意取り組んでいくことはもちろん、今回改善措置を講ずる施設整備等の業務のみならず、その業務全般について、各人が常日頃から一層の適正化、透明化に取り組んでいく決意である。

 今回の事件は、厚生省内で決して風化されてはならず、今後とも調査委員会において、広く厚生行政の在り方に関する幅広い意見を受け止めながら、二度とこのような事件が発生しないよう不断の業務点検を行い、国民の信頼回復を図っていきたい。

問い合わせ先 厚生省大臣官房政策課
   担 当 田野(内2254)
   電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
       (直)03−3595−2160

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