厚 生 省
平成9年3月31日
前 書 これまでの検討状況と報告書の基本的性格 |
ア | 施設整備業務等の再点検のための調査委員会(以下「調査委員会」という。)は今回の施設整備補助金等の仕組みを悪用した事件について、事実関係の解明とともに、施設整備補助金の選定手続の見直し、社会福祉法人の認可や運営に関する業務の適正化等を進めるために、厚生大臣の命により、平成8年12月5日に設置されたものである。 今回の事件は、厚生省関係職員の関与の下で発生したものであり、国民の社会福祉事業に対する信頼を損なうとともに、社会福祉事業に従事する関係者を冒とくしとにつき、厚生省として深く反省しなければならない。 |
イ | 設置以来、まず、埼玉県、山形県とともに、今回の事件に係る特別養護老人ホーム等をめぐる実態解明を進めるととともに、取り急ぎ実態調査等の点検を行い、その果を踏まえて、特別養護老人ホーム等の施設整備に係る問題点とこれに対応する改善措置をとりまとめ、平成9年1月31日に第1次報告書として公表し、可能なものは平成9年度からの施設整備にも反映できるよう、平成9年3月末までに所要の通知の改正等を行ったところである。 また、調査委員会においては、今回の事件で問題となった特別養護老人ホーム等のみならず、厚生省関係のその他の施設整備業務全般についても、同様に施設整備補助金に係る業務の適正化を図る観点から、施設整備補助金の選定手続、建設工事入札手続等を再点検するとともに、補助金執行に係る監査・考査体制についても再点検を行った。 |
ウ | この場合、第1次報告書でも述べたように、調査委員会は、今回の事件に関し、犯罪要素の解明は、検察、警察の捜査及び公判に委ねることとし、再発防止の観点から、施設整備補助金制度等を悪用された点についての事実解明と改善策を検討した。 また、埼玉、山形両県の事件の関連施設の事後処理については、これまでの取組みの状況及び今後の方向をとりまとめ、今後は別途、個別具体的な問題の処理として引き続き対応することとしている。 |
エ | さらに今回の事件が、厚生省関係職員の関与の下に生じた点を深く反省し、昨年末に厚生省職員倫理規程を制定し、その厳正な運用に努めているところであるが、今般、地方自治体に対する出向人事についても見直しを行った。 |
第1部 特別養護老人ホームをはじめとする社会福祉施設の整備等の再点検と改善措置 |
1 今回の事件の実態解明 |
(1)事件の経緯
(1) | 今回の事件は、篤志家の善意の寄付に基づき事業が行われることを前提に、施設の建設費から運営費までを国や都道府県市の高率の補助金や政策融資など公費で賄われることとなっている社会福祉事業の仕組みを悪用して、厚生省から出向していた県の担当課長の関与の下に特別養護老人ホーム等の認可を次々と受け、その建設に伴って総額約27億円にものぼる多額の差益を発生させた(「利ざや稼ぎ」を行った)ものである。 | ||
(2) | 事件の舞台となった彩福祉グループ(特別養護老人ホーム等を経営する7法人及び施設を経営しない「彩福祉基金」の計8法人)の関係施設は、 | ||
ア | 埼玉県の6施設 | ||
・ | 北本特別養護老人ホーム(北本市所在、平成6年2月認可、 「桃泉園」経営) |
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・ | 吹上苑」(吹上町所在、7年2月認可、「彩吹会」経営) | ||
・ | あけぼの」(上尾市所在、8年10月認可、「彩光会」経営) | ||
・ | 上福岡苑」(上福岡市所在、建設中、「桃泉園」経営) | ||
・ | 川里苑」(川里村所在、建設中、「彩川会」経営) | ||
・ | 鷲宮苑」(鷲宮町所在、建設中、「彩鷲会」経営) | ||
イ | 山形県の2施設 | ||
・ | 成安苑」(旧称)(山形市所在、建設中、「彩山会」(旧称) 経営) |
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・ | 大江苑」(旧称)(大江町所在、建設中、「彩江会」(旧称) 経営) |
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である。 | |||
(3) | これらの施設建設工事は、「北本特別養護老人ホーム」を除き、いずれもJWM(株) に発注され、JWM(株)はこれを他の建設会社に一括下請負している。 なお、各法人とJWM(株)との契約については、小山と少数の理事により、理事会に諮ることなく専断的に進めたものであることが明らかになっている。 |
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(4) | 件発覚時におけるこれら8施設の総事業費は160億5千5百万円となっており、これらに対する補助(平成8年度については当初内示額)及び融資については、国庫補助額が50億9百万円、県補助額が25億5百万円、県単独補助(埼玉県の県単融資(10年償還で元利償還分を補助)を含む。)が13億6千7百万円、日本船舶振興会からの補助が5億円(うち2億5千万円は未執行)、社会福祉・医療事業団からの融資額が31億2千2百万円となっている。 また、施設建設に際してのJWM(株)との元請契約額(「北本特別養護老人ホーム」については法人からの補助申請に際して報告のあった額)は144億8千9百間円、下請業者から聴取した下請契約額(「北本特別養護老人ホーム」については業者からの聞き取り額)は118億2千9百万円となっており、その差額は26億6千万円となっている。さらに、設計監理費について各法人と建築設計事務所の間の契約書の金額と建築設計事務所が領収した金額に差があるものがあること、介護リフトの発注について小山の関連企業である(株)トウセンを通じて行っていることが明らかになっている。 また、共同募金会を通じて(有)医療福祉研究所とJWM(株)から土地購入費や事業団への借入金返済等に充てるために4億2百万円の指定寄付が行われている。 |
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(5) | この「利ざや稼ぎ」の過程において、小山は自らの連帯保証の下に、彩福祉グ ループの各法人に対し多額の借入れを行わせた。その額は年々増加しており、北本特別養護老人ホームを創設した平成5年度においては、事業団からの借入額は2億7千7百万円であったが、その後の相次ぐ施設整備と施設の大型化により、平成8年度においては、彩福祉グループの借入額の総額は、(4)で述べたように、31億2千2百万円に膨れ上がっている。これらに対する償還金は、元金のみでも合計毎年1億5千万円余りとなり、仮にこれを新たな施設整備による「利ざや稼ぎ」で賄おうとすれば、ますます借入額が膨らみ、いずれは破綻が避けられないものとなる構造であったと考えられる。その破綻の兆候は、既に山形県の2施設に対する事業団の融資が小山の保証能力の不足等の理由から未実施となったことに現れており、仮にこの事件の発覚がなくとも早晩問題は露呈していたものと考えられる。 |
(2)事件の原因
(1) | 理事会の運営が形骸化され、 |
(2) | 事実上運営する企業に施設建設が恣意的に発注され、 |
(3) | 「丸投げ」により膨大な差益を発生させた(「利ざや稼ぎ」を行った) |
ことが挙げられ、これに加え、厚生省から出向していた県の担当課長の関与の下に、 | |
(1) | 同一理事長の下に同時期に並行して複数の施設、法人が認可され、 |
(2) | 補助金等を受けやすくし、「利ざや稼ぎ」を容易にさせたのではないか |
と推察される。 |
(3)現行制度の問題点
(1) | 県における補助対象施設の選定手続について、国は明確な基準を示していな いこともあって透明性を欠いていたり、施設・法人の認可手続に不明確な点 があり、県の担当課長の独断による認可を許したのではないか |
(2) | 建設工事契約、工事監督、検査等の指導が公共工事等に比べて緩やかすぎたの ではないか |
(3) | 社会福祉法人の運営体制が理事長等の恣意的運営を可能とするものとなってい たのではないか |
2 社会福祉施設に係る総点検の結果 |
(1)社会福祉施設に係る総点検の必要性
(2)社会福祉施設に係る総点検の方法
(1) | 社会福祉施設の設置に係る社会福祉法人の認可審査 |
(2) | 社会福祉施設の設置に係る社会福祉法人の運営体制 |
(3) | 社会福祉施設の建設工事の発注契約状況等について全都道府県市において、その指導状況を点検するとともに、上記(3)のうち国庫補助に係る特別養護老人ホームについては、厚生省(都道府県市担当者を含む。) と大蔵省が共同で、施設、法人に赴き、実態調査を行った。 |
(3)社会福祉施設に係る総点検の内容
ア | 社会福祉法人の認可のための審査会等の設置の有無、施設設置に当たって社会福祉審議会からの意見聴取の有無 |
イ | 都道府県市の指導として、工事契約の入札方法への条件の付与の状況、工事契約のチェックについて建設担当部局と連携等の実態 |
ウ | 同一の理事長の下に同一都道府県内に複数の法人を作っているものの状況等について調査を行った。(以下「8年12月調査」という。) |
3 社会福祉施設の整備等に係る改善事項 |
(1)補助金交付対象施設決定方法の明確化
ア | 特別養護老人ホームをはじめとする社会福祉施設整備費の国庫負担(補助)金の交付対象施設の決定に当たっては、国は、毎年度施設整備の基本的考え方を関係局長通知で示すとともに、全国の都道府県関係部局長会議・課長会議において指示し、これに基づいて各都道府県市において選定したものにつき、個別にヒアリングを行った上で、国庫補助対象として採択することとしている。(国が部局長会議等で示している施設整備の考え方については、当該資料が公表されているものの、その位置づけは国と都道府県市間の事務連絡的な性格にとどまっている。) |
イ | 都道府県市においては、国庫補助協議の前に施設設置を希望する者や市町村との調整を行い、国庫補助協議を行う施設を決定しているが、この手続や要件は必ずしも明確になっておらず、担当する部局内の単線的なラインで処理を行う都道府県市もみられ、特定の者による独断で補助対象施設の選定を許す余地が生じうるのではないかと考えられる。
なお、この点について現に行われている取組みとしては、毎年の施設整備計画について地方社会福祉審議会で意見聴取を行っている県が2県みられた。(8年12月調査) |
ウ | また、施設を運営する主体である社会福祉法人については、設立認可権限をもつ都道府県において、現在でも施設整備の必要性とは別に法人としての適格性が独立して審査されることが原則となっている。しかし、都道府県によっては、施設整備の担当が法人の審査も合わせて行うものもあり、法人の設立認可も国庫補助の内示を受けて行われる形となっているため、施設整備の手続を優先する余り法人の審査が疎かになる傾向があるのではないかと考えられる。 この点について現に行われている取組みとしては、法人の設立認可について、都道府県庁内に法人審査会を設置し、施設整備担当課以外の課を加えた検討が行われている県が11県みられた。(8年12月調査) なお、総点検においては、法人設立に際して寄付が行われた場合の贈与契約書や寄付者の行為能力を証明する関係書類は特別養護老人ホームについては99.5%、その他の調査対象施設については100%が整理されている状況にあることが確認された。さらに、融資に係る償還金の年次別履行状況については、都道府県市の指導監査を通じて、特別養護老人ホームに関しては100%、その他の調査対象施設については83.1%と確認されている。 |
エ | 社会福祉法人の認可に当たっては資金計画が重要な審査のポイントであり、補助事業の決定に当たっても資金計画の正確な把握と審査が必要となる。多くの場合、施設整備の自己負担分等について社会福祉・医療事業団の融資を充てることが多いが、この融資の申込み、審査は国庫補助の内示が行われた後に行われている。一方、行政の実態として国庫補助対象施設の決定や法人の認可は、事業団からの融資が受けられることを前提に行われている。このため、補助事業の決定等に当たって資金計画の妥当性を判断する上では、融資を行う観点からの審査が極めて有効であると考えられるが、現在のシステムではこれが活かされていない。 |
オ | さらに、社会福祉・医療事業団の融資の返済に当たっては、寄付が償還財源の中心になっていることが通例であり、彩福祉グループの場合は、埼玉県による法人認可、事業団の審査において、書面上償還能力に問題はないと判断されたものの、今回このような事件が発生したことから、実質的なチェックが不十分だったのではないかとの指摘がある。法人が借入金の償還を確実に行うことが法人の安定的運営の基盤であることから、法人認可及び事業団融資における審査方法を見直す必要がある。 また、社会福祉法人が事業団から借入れする場合の連帯保証人については、資産及び負債の状況について自己申告に基づき審査を行っているが、その確認方法についてもより厳正を期す必要がある。 これら現行の取扱い上の問題点に即して、補助金の交付対象施設の決定方法を見直すことが必要である。 |
ア | まず、国においては、現在関係局長通知や全国の都道府県関係部局長会議・課長会議において指示している施設整備の基本的な考え方や審査の重要事項をより明確化し「協議基準」として都道府県市に対する通知の形で明らかにした。 |
イ | 次に、都道府県市においては、補助対象施設の妥当性、国の協議基準との整合性について、単線的なラインで処理するのではなく、合議制による審査を経て決定することとし、国庫補助協議はこの手続が踏まれていることを条件とする。この場合、施設整備担当以外の部局の参加を求めることは当然であるが、その他にも地方社会福祉審議会の活用を図るなど学識経験者の参画を求めることも一つの方法として妥当である。なお、国庫補助協議を行う施設についての名称等の情報は、都道府県市において公表することを求め、その選定過程の透明化を図る。 国においても従来から特別養護老人ホーム等の補助対象施設の内示結果を公表してきたが、今後は都道府県別概況一覧を示したり、ホームページを活用する等により分かりやすい形で公表する。 |
ウ | また、施設整備と独立した判断により法人審査を行う体制を確立することが必要であり、このため、施設整備担当以外の部局を加えた都道府県市の庁内審査会を設置するなど、内部牽制機能を確保した合議制により法人審査を実施することを求める。都道府県市からの国庫補助協議はこの手続が踏まれていることを条件にすることとし、法人設立の条件が十分整っていない施設については補助採択を行わないこととする。なお、国においては、法人認可に当たって、同一人物が複数の法人を設立する場合の審査事項を通知の形で明らかにすることとする。 なお、特別養護老人ホームを設置・経営する社会福祉法人で、同一の理事長の下に同一都道府県内に複数の法人を運営しているもの(彩福祉グループ関係法人を除く。)は、19自治体で70法人、31理事長が把握された。そのような取扱いとなっている理由としては、広域団体と施設所在地自治体が共同で施設設置を行う場合に当該広域団体の長が理事長となっているもの、自治体の指導によるもの、複数種別の施設を設置する場合に、それぞれの分野の知識経験・熱意等のある者の参画を求めるため施設の種別ごとに法人を設立しているものなどであった。(8年12月調査) |
エ | さらに、事業団の融資を行う観点からの審査と連携をとってより的確に国庫補助対象施設の決定、法人の認可を行うことを可能とするため、社会福祉法人を新設して施設整備を行う国庫補助案件については、平成10年度の整備計画より、法人の設立認可の申請と事業団への融資申込みの手続を早め、国庫補助協議と並行して審査を行うこととする。具体的には、都道府県市の合議制による施設整備の審査、法人の審査を終了した案件については、国庫補助協議の申請と同時期に都道府県市の意見書を添えて事業団に対し借入れの申込みを行わせることにより、相互の連携を密にし、より的確な国庫補助施設の決定、法人の認可、融資決定に資することとする。 この並行審査に当たっては、補助金申請書類も含め、社会福祉法人の認可及び事業団融資の審査の際の提出書類について、記載事項の統一化を図る等事務の簡素化を図る。 また、事業団においては、平成9年度より、融資審査をより厳正に行っていくため、
|
オ | 以上の手続については、民間団体による施設整備補助の場合も原則として同様のものとして取り扱われることが必要である。なお、同一の社会福祉施設整備について、国庫補助と民間団体による補助が重複して申請されることのないよう、国、都道府県市と民間団体との連絡を密にするなどその審査の強化を図る。 |
(2)公共工事に準じた建設工事契約の適正化
ア | 社会福祉法人の契約に関しては、各法人は、社会福祉法人経理規程準則(昭和51年1月「社会福祉施設を経営する社会福祉法人の経理規程準則の制定について」社会局長・児童家庭局長通知)に準拠して経理規程を定めることとされ、施設建設を含むすべての契約においては当該規程によってその手続を行うこととなっている。 経理規程準則においては、社会福祉法人の契約は原則一般競争入札によることとされ、契約の性質又は目的により競争に加わるべき者が少数で一般競争に付する必要がない場合及び一般競争に付することが適当でない場合においては指名競争に、契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが適当でない場合においては随意契約によるものとする旨定められている。 これらの実施状況については、特別養護老人ホームに係る建設工事発注契約手続の実態は、
となっている。(実態調査) 発注した社会福祉法人のうち下請業者を把握しているものは75.2%あった。また、一括下請負を行ったものは2件存在することが確認された。(実態調査) 都道府県市の指導の状況については、特別養護老人ホームの建設工事契約に当たって、競争入札とするよう条件を付している(経理規程準則どおりとの回答を含む。)ものは71都道府県市のうち55自治体(77%)であり、そのうち入札業者数について条件を付しているものは35自治体(49%)であった。なお、条件としている入札業者数については、「5社」としているものが最多の16自治体であり、次いで「3社」が6自治体、「8社」が5自治体、「建設地の自治体の取扱いに準じる」とするのが4自治体等であった。(8年12月調査) その他の社会福祉施設(老人福祉施設及び特別養護老人ホームを合築又は併設され、既に調査済みの施設を除く。)の整備に係る建設工事発注契約手続の実態については、
また、入札の実施方法については、 との状況となっている。(実態調査) |
イ | また、施設建設契約に関しては、従来から正常な契約が締結され、当初計画に従った建設が進行しているか否かの実状の確認に努め、二重契約等の不正の生じないよう万全の注意を払うこと、実情把握のために契約時点・建設工事中間点・完了時点に法人関係者から詳細な実情報告をさせるなどの措置をとるよう都道府県を指導している(昭和55年10月「社会福祉法人及び社会福祉施設に対する指導監督の強化について」社会局長・児童家庭局長通知)。 これらの実施状況についての点検結果をみると、特別養護老人ホームについては、契約時点の報告がなされているもの29.2%、工事中間点の報告がなされているもの35.0%、完了時点の報告がなされているもの93.0%となっており、必ずしも十分な把握が行われている状況にはなかった。その他の調査対象施設においても、契約時点の報告がなされているもの33.8%、工事中間点の報告がなされているもの26.9%、完了時点の報告がなされているもの79.2%となっており、ほぼ同様の状況にある。また、工事完了時における当初計画との突合状況については、特別養護老人ホームの85.0%、特別養護老人ホーム以外の調査対象施設の89.2%が突合を行っている。(総点検) なお、建設工事契約のチェックについて建設担当部局との連携を行っているものは、70都道府県のうち15自治体(21%)であり、入札結果を聴取しているものは35自治体(50%)であった。(8年12月調査) |
ウ | 今回の事件において小山が不当な利益を得た直接の原因は、この建設工事契約の手続(見せかけの入札実施など)及び内容(一括下請負(「丸投げ」)契約)にある。一方、建設工事契約等の実際の運用の状況は以上に述べたとおりであり、この部分について、高率の国庫補助等多額の公費が投入されているという事業の性格にかんがみて、公共工事の例を参考に厳密な取扱いが行われるよう改善を図る必要がある。 |
エ | なお、国(建設省)の行う公共工事の手続においては、競争入札の前段階で参加業者の資格審査を行っており、参加業者に対して経営規模や経営状況、技術職員数、営業年数等に応じて等級の格付けが行われる。また、工事規模(金額)に応じて入札方法(一般競争か指名競争か)及び入札資格が定められている。入札は、予定価格の制限内で最低価格の者が落札することと定められ、入札結果は公表される。契約書の標準として公共工事標準請負契約約款が定められ、建設事務次官通知によりこの約款を用いた契約を行うこととされている。なお、一括下請負契約については、この約款では建設業法の規定どおり発注者が文書をもって承諾した場合を除いて禁止するとされているが、通常はこの承諾は行われない。(これらの手続は概ね各省共通である。)
これら現行の取扱い上の問題点に即して、国庫補助を受けて社会福祉法人が行う社会福祉施設の整備については、公共工事に準じて建設工事契約等の適正化を図ることが必要である。 |
ア | 常時建設工事を発注することのない社会福祉法人においては、公共工事並みに建設業者の資格審査を行うことは不可能であり、また、地方によって経済事情が異なるため契約手続について一律の基準を設けることも適当でないと考えられる。このため、契約手続については、都道府県市が行う公共工事の扱いに準じて適切に行うこととするとともに、あらかじめ入札参加業者を社会福祉法人から都道府県市に届け出ることを求めることとする。これにより、当該参加業者の工事実績等から、届出のあった業者について不適切な点があれば法人に適切な助言を行うことが可能となる。 |
イ | また、入札を行う場合には、法人は、監事や一定数以上の理事及び評議員を立ち会わせることとする。この場合、地元市町村職員が立ち会うことも一つの方法である。入札後は、入札が適正に行われた旨の立会人全員の署名とともに入札結果を都道府県市に届け出させることとし、さらに、都道府県市において届出を受けた入札結果を公開することとするが、また、併せて法人においても入札結果を外部に開示することとする。これらの手続により、入札そのものが不適正に行われることを防止することが容易になる。 |
ウ | 一括下請負の扱いについては、建設業法における規定では、発注者が文書をもって承諾した場合を除き禁止する旨の定めとなっており、公共工事標準請負約款においても同様に規定されているが、公共工事においては通常この承諾は行われず、社会福祉施設建設に当たって一括下請負を認めなければならない特段の事情も想定できないため、この点については例外なく禁止とする。 |
エ | 公共工事においては、契約、設計図面に適合した工事が行われているか否かについて、完成検査、既済部分検査を行う検査職員を任命して検査を行うこととなっているが、民間建設工事においては、検査を工事監理者が行うことが約款(例えば 「四会連合協定工事請負契約約款」第20条)に定められている。社会福祉施設については、補助を行う立場の都道府県市が当該補助事業が的確に行われているか否かを把握することが必要であり、都道府県市においては、実情把握のために、法人からの報告徴収にとどまらず、自ら工事監理者、請負業者立会いのもとで現地調査を行うこととする。なお、この際は可能な限り公共事業担当部局との連携を図ることが必要である。 また、併せて、工事の一部を下請業者が行う場合は、法人は、その商号又は名称その他必要な事項を確認することとし、都道府県においても、現地調査においてこれらを確認することとする。 |
オ | 現在の国の社会福祉施設の整備費補助の仕組みは、都道府県市を通じた間接補助となっており、その要綱(平成3年11月「社会福祉施設等施設整備費及び社会福祉施設等設備整備費の国庫負担(補助)について」厚生事務次官通知)では、適正な契約方式の確保が補助条件とはなっていない。今後、これを改め、適正な契約手続を確保し、加えて一括下請負を禁止することを補助要綱上条件として明記し、内示後に不適切な形で契約が行われた施設整備費については交付決定を行わず、また、交付決定後に補助要綱に従っていない事例が判明した場合には返還を求めるなどの措置を講じることができるようにする。 |
カ | 以上の手続は、民間団体による施設整備補助の場合には適用されないが、各都道府県市においては契約の適正化等について同様の趣旨で法人における取扱いが行われるよう適切な指導を行うよう通知する。 |
(3)幅広い関係者の参画による公正な社会福祉法人の運営の確保
ア | 社会福祉法人の理事は、
この点について、総点検において実施された社会福祉法人の理事構成の点検結果によると、特別養護老人ホームについては地域代表がいない法人が4.7%確認されたほか、理事会に1度も出席していない理事がいる法人が8%程度確認された。また、特別養護老人ホーム以外の調査対象施設については、障害福祉施設がそれぞれ9.2%、10.9%、児童福祉施設がそれぞれ9.5%、4.6%、その他の施設がそれぞれ19.0%、11.7%と確認された。 施設の整備、運営に関連する業務を行う者が理事の過半数を占めていないかどうかの確認、利害関係のある理事が理事会の議決へ加わっていないことについての確認状況については、都道府県市の監査において特別養護老人ホームはそれぞれ95.0%、94.6%、障害福祉施設はそれぞれ98.6%、97.6%、児童福祉施設はそれぞれ99.8%、99.3%、その他の施設はそれぞれ100%、97.1%が確認されている。 |
イ | 社会福祉法人の議決機関としては、理事会のほか、評議員会を置くことができることとされている。評議員会は、理事定数の2倍以上の評議員をもって構成することとされ、社会福祉事業に関心を持ち又は学識経験のある者で、法人の趣旨に賛成して協力する者の中から理事会の同意を経て理事長が委嘱することとされている。評議員会が置かれた場合には、予算や事業計画等の法人運営の重要な事項を審議、議決するほか、理事、監事の選任を行うなど、評議員会には法人内部の相互牽制機能が期待されている。ただし、現行の指導では、特別養護老人ホーム等措置施設のみを設置・経営する社会福祉法人については、評議員会を設置しなくともよいこととされている。 |
ウ | 法人の運営をチェックする機関として、社会福祉法人には監事がおかれている。監事は2名以上(1名は財務諸表等を監査しうる者、1名は社会福祉事業について知識経験を有する者)とされ、理事の業務執行の状況や社会福祉法人の財産の状況について監査し、理事に意見を述べることを職責としている。 なお、この監事監査の実施状況については、都道府県市の監査において特別養護老人ホームは96.4%、障害福祉施設は98.7%、児童福祉施設は99.5%、その他の施設は100%と確認されている。 |
ア | 特定の者の恣意による社会福祉法人の運営を防ぎ、地域福祉の向上の視点に立った法人の運営がなされるためには、法人の理事長と緊密な関係にある者のみで法人の運営が行われることを防ぐとともに、地域との円滑な連携が図られるよう、その地域で様々な立場で福祉事業に関係している者等を実質的に法人の運営に参画させる体制を構築することが必要である。特に、特別養護老人ホーム等の入所施設の運営に当たっては、入所者が24時間施設の中で生活しており、外部との接触が比較的薄くなることを考えると、入所者の立場に立って施設や法人の運営に意見するものの存在が不可欠と考えられる。 このため、老人福祉及び障害福祉に係る入所施設を経営する法人については、理 事の半数以上を社会福祉事業について知識経験を有する者及び地域の福祉関係者の 中から幅広い人材の参画を求めるものとする。 |
イ | また、幅広い人材の法人運営への参画を図るために、老人福祉及び障害福祉に係る入所施設を経営する法人については、理事数の定員を10名以上(現行6名以上) とするか、又は入所者の家族等が加わった評議員会の設置を指導することとする。 |
ウ | また、監事の監査については、これを毎年定期的に行うこととし、その結果を所轄庁に報告させることなどにより、監事による法人内部の牽制機能の充実を図ることとする。その際、外部の専門家による外部監査の活用等も含め、監事機能の充実を図る。 |
エ | 現在、社会福祉法人については、取引の安全を確保する観点から代表権を有する理事のみが登記されているが、代表権がなくとも理事や監事が施設や地域に責任を持って法人運営に携わっていくことを求める観点から、所轄庁において、法人役員の氏名を公開することとする。 |
オ | さらに、社会福祉法人に対しては、適切な運営が行われていることについて利用者の家族や地域の関係者の理解が得られるよう、施設の広報等を通じた事業報告書や財務諸表等の自主的な開示を求めていくものとする。 |
(4)上記(1)から(3)についての改善措置の実施
(5)監査・考査の現状と改善事項
ア | 現在、社会福祉施設に対する監査は、都道府県市において、原則として全施設について年1回実施されている。監査の中心は措置費の使用状況に係るものとなっている。また、社会福祉法人に対する監査については、この施設監査と並行して実施するよう指導している。 |
イ | 国は「社会福祉法人監査指導要綱」(昭和54年5月 社会局長、児童家庭局長連名通知)や「社会福祉法人・施設等に対する指導監査の主眼事項及び着眼点」(毎年度社会・援護局長、老人保健福祉局長及び児童家庭局長より通知)等により、都道府県市が監査を行う際の指針を示している。また、国においては、都道府県市が実施している指導監査を実地検証する形で、毎年度全都道府県市について、障害福祉施設、老人福祉施設、児童福祉施設等について、それぞれ1〜2施設を実地に指導監査を実施しており、この結果を毎年度とりまとめ、全国都道府県関係課長会議等を通じて注意喚起を図るとともに、次年度以降の指導監査を行う際の指針の策定の参考としている。 |
ウ | 社会福祉施設整備については、その適切な実施を図るため、契約時点や建設工事中間点・完了点に法人関係者から詳細な実情報告をさせるなど実情把握に努める旨指導しているが、その実情把握の実施状況は前述の調査結果どおり不十分なものとなっている。また、施設整備中の法人に対する監査は実施されていない。 |
ア | 社会福祉施設や既に施設運用を開始している社会福祉法人に対しては、今後とも現行の体制で監査を実施していくこととするが、今回の改善事項の実施に伴う社会福祉法人審査基準等の改正を受けて、平成9年度において監査の指針の必要な見直しを行い、的確な監査の実施を確保することとする。今後とも指導監査の実態を踏まえ、毎年度必要な見直しを行う。 |
イ | 社会福祉施設整備については、前述のとおり補助を行う立場の都道府県市が当該補助事業が的確に行われているか否かを把握することが必要であるとの観点から、自ら工事監理者、請負業者立会いの下で現地調査を実施することとした。さらに、施設開設前の法人についても都道府県市の監査対象とし、施設整備や建設工事契約の締結に関して改善措置に基づき法人運営が適切に行われているか否かを検査することとする。 |
ウ | 社会福祉施設における物品購入等については、競争入札や複数業者からの見積合わせ、市場価格調査等により適正に行われているか等の指導監査を行うよう都道府県を指導しているところであり、今後ともこの指導の徹底を図る。 |
エ | 国においては、都道府県市の行う施設監査及び法人監査の適切な実施に関する指導、監査実施に当たっての指針を毎年度法人・施設の運営状況を踏まえて見直しを行い、提示する。また、現在、措置費の使用状況を中心に行われている国の指導監査について、平成9年度から施設整備についても対象とする。さらに、各都道府県市における法人指導の充実を図るため、平成9年度から都道府県市の法人指導担当職員に対する研修を実施することとする。 |
オ | 今回の事件を踏まえて、施設整備に関する補助金の執行については、各部局による補助対象施設の選定や事業の実施状況の確認等、大臣官房による各部局の補助金執行に対する認証等の補助金の執行手続の一貫した適正化を図る。
このため、補助金の執行に関する指導の充実、大臣官房における各部局に対する会計監査の充実等厚生省の内部の指導監査体制の見直しを検討する。 |
(6)共同募金会の指定寄付金制度の運用の適正化
ア | 現在の共同募金会における指定寄付金の取扱基準(昭和45年5月22日 社会局長通知)においては、寄付者(法人である場合にはその役員)又はその親族(以下「寄付者等」という。)が受配者(共同募金会から寄付金の配分を受ける者)の役員又は職員として給与を受けている場合には、寄付者等と受配者は「特別の関係」にあるとされ、この場合の寄付は公募性の高いものその他共同募金会が特に認めた場合に限り、当該指定寄付が認められることとされている。 今回、この「特別の関係」とされる範囲を拡大することとする。まず、寄付者等が受配者から給与を受けているかどうかに関わらず受配者の役員又は職員であれば「特別の関係」にあるとする。また、寄付者が受配者の建設請負業者又は物品納入業者等である場合についても、両者は「特別の関係」にあるとする。これら「特別の関係」にある者間の寄付については、共同募金会は当該寄付者等の報酬の受給状況や施設の利用状況、当該建設工事請負等の契約手続、受配者である社会福祉法人の当該寄付金に関する理事会の決定状況等が適正であるかどうかについて、十分審査した上で当該指定寄付を認めることとする。 なお、上記の審査を行うに当たって、共同募金会は社会福祉法人を指導監督している各都道府県と十分な連携を図ることとする。 |
イ | また、平成9年度から共同募金会において、一定金額を超える指定寄付金について、寄付者及び受配者の名称及び金額の公表を前提に受け入れることとする。 |
ウ | さらに、指定寄付金の配分の対象となる事業及び経費の範囲等を取扱基準に具体的に明記することとする。 |
4 埼玉県、山形県の今回の事件の関連施設の事後処理策 |
(1)今回の事件の関連施設に係る事後処理策の動向
(2)今後の対応方向
ア | 平成8年度分の補助金については、
|
イ |
「丸投げ」により生じた元請額と下請額の差額の扱いについては、下請け企業との通常の契約の過程で発生した部分のほかに、小山が当初から元請契約金額を不当に引き上げたために発生した部分があるのではないかとの疑いもある。 このため、補助目的どおりに使用されたとは考えられない部分がないかどうかを精査の上最終的な所要額を確定し、その結果に応じて必要な措置を講じることとする。 |
ウ | 一方で、小山等事件の原因者に対する保証債務の追及や当初予定された寄付の履行等厳正な対処を求めていくことも必要である。 |
5 さらに対応の必要な課題 |
ア | まず、以下の実態調査・分析や関係者の意見の把握等に取り組むこととする。
|
イ | その後、これらの実態調査結果や関係者の意見を踏まえ、今後の検討の視点を整理した上で、特別養護老人ホームを中心として社会福祉法人の在り方や社会福祉施設整備、措置費等の在り方について検討を進めていくこととしたい。 |
第2部 その他の分野の施設整備等の再点検と改善措置 |
1 医療関係施設等 |
(1)医療関係施設
(1) | 再点検結果 | ||
医療関係施設については、平成7年度中に建設工事契約を行った事業のうち、地方 自治体立のものを除き国庫補助額が1億円以上の80施設を対象として再点検を行っ た。具体的には、看護婦等養成所、理学療法士等養成所、医療施設近代化、救命救急 センター、看護婦宿舎、精神病院及びエイズ治療個室等の施設整備事業である。 対象施設の設置者を見ると、公的4団体(日赤、済生会、厚生連、北社協)12施設(15.0%)、医療法人35施設(43.8%)、その他の法人29施設(36.2%)、個人4施設(5.0%)となっている。 建設工事の契約方法については、指名競争入札を行っているものが24施設(30.0%)、随意契約を行っているものが56施設(70.0%)となっている。 指名競争入札を行っている例を点検すると、指名業者の選定について理事会で決定しているものが11施設(45.8%)、選定委員会を設置して決定しているものが10施設(41.7%)、その他3施設(12.5%)となっている。また、入札参加業者数は、5社未満が2施設(8.3%)、5社以上が22施設(91.7%)となっている。 次に、随意契約を行っている例を点検すると、請負業者の見積りのみであったの 30施設(53.6%)、複数業者の見積りをとっていたものが26施設(46. %)であった。 入札結果については、公表しているものが14施設(58.3%)、指名参加業者 名について公表しているものが12施設(50.0%)であった。 | |||
(2) | 改善事項 | ||
ア | 国における整備(協議)基準の明確化 | ||
医療関係施設については、従来、一部の事業については国庫補助における整備基準を明確にしていなかったところであるが、施設整備の基本的な考え方、審査の重要事項等について、「協議基準」として平成9年4月を目途に都道府県に対する通知で明らかにする。 | |||
イ | 都道府県における補助金交付対象施設選定の適正化 | ||
医療関係施設の整備の国庫補助協議に当たっては、都道府県は、平成10年度の整備計画から合議制の審査を経て決定することとする。
また、施設整備の国庫補助協議を行う施設についての名称等の情報は、都道府県において公表することにより、その選定過程の透明化を図ることを平成9年度に通知で明らかにする。 国は、補助対象施設の内示結果について、平成9年度から都道府県別概況一覧を示したり、ホームページを活用する等により分かりやすい形で公表する。 | |||
ウ | 国庫補助協議と社会福祉・医療事業団融資との連携 | ||
医療関係施設の整備において、1億円以上の国庫補助申請を予定しており、かつ、事業団からの借入れを予定しているものについては、平成10年度の整備計画から、国庫補助協議前に事業団に対して事前相談をするものとし、相互の連携を図る。 | |||
エ | 建設工事契約の適正化 | ||
特別養護老人ホームについては、公共工事に準じた契約の適正化を図ることとしている。しかし、医療関係施設については前述のように、 | |||
・補助対象がへき地、救急医療等の一定の政策目的に沿った事業を実施している施設に限定されていること | |||
・大部分が公費でまかなわれる特別養護老人ホームと比較して補助の仕組みが異なること | |||
・主として新設の施設に対する補助ではなく、既存施設の改築等に対する補助であること | |||
・特別養護老人ホームのように市町村からの委託事業ではないこと等から、現在、建設工事契約について特段の規制はないが、施設整備補助金に係る業務等のより一層の適正化を図る観点から、次のとおり取り扱うこととする。 | |||
a | 国庫補助額が1億円以上の施設整備を行う場合には、原則として5社以上の競争入札を行うこととする。やむを得ない場合は、随意契約を行うことができることとする。 | ||
b | 一括下請負については、平成9年度から補助金交付要綱の改正により禁止することとする。 | ||
オ | 入札結果等の公開 | ||
事業者は、入札結果を都道府県に報告することとし、都道府県はこれを公開することとする。また、随意契約を行った場合は、契約結果を都道府県に報告することとし、都道府県はこれを公開する。 | |||
カ | 医療法人の適正な運営の確保 | ||
医療法人制度は、個人による医療機関の経営に継続性をもたせ、併せて資金の集積性を高めることを目的として設けられた特別の法人制度であるが、市町村の委託事業を行う社会福祉法人ほどの高い公益性を持つものではない。また、社会福祉法人と異なり、医療法人が解散する際の残余財産の帰属先に制限がないこと、昭和60年の医療法改正により、理事数の要件等を緩和したいわゆる一人医師医療法人が認められ、現在ではこの一人医師医療法人が多数を占めていることなどから、社会福祉法人と同一の取扱いをすることは適当ではない。 なお、医療法人の設立に当たっては、医療法人の適正かつ安定的な運営を確保する観点から、都道府県が審査を行うとともに、医療法において医療関係者や有識者からなる医療審議会の意見を聴かなければならないことが規定されており、非営利性、資産要件等についての審議が行われている。 | |||
(3) | 監査・考査の現状と改善事項 | ||
ア | 監査・考査の現状 | ||
a | 現在、国、都道府県等において、原則として全病院について年1回の医療監視が実施されており、その内容は、医療機関における清潔保持の状況、構造設備、帳簿書類に関する検査である。また、医療法人については、必要に応じて業務、会計に関して報告徴収、立入検査が実施されている。 | ||
b | 国は、「医療監視要綱」(昭和60年9月健康政策局長通知)、「医療監視・経営管理及び衛生検査所の指導の実施について」(各年度ごとに健康政策局長名で通知)、「医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について」(平成5年2月健康政策局総務課長・指導課長通知)等により、医療監視、医療法人への立入検査を行う際の指針を示している。また、国において毎年開催される医療監視等講習会、厚生大臣所管医療法人指導研修会、全国都道府県関係課長会議等の場において、医療機関、医療法人に対する指導・監査について周知徹底を図っている。 | ||
イ | 改善事項 | ||
医療機関及び医療法人に対する監査・考査については、医療関係施設の施設整備時における監査等について、次のとおり平成10年度から必要な見直しを行っていくこととする。 | |||
a | 医療関係施設の施設整備については、補助を行う立場の都道府県が当該補助事業が的確に行われているか否かを把握することが必要であるとの観点から、1億円以上の国庫補助金の交付を受けた施設について、建設工事中間点及び完了点において、都道府県が現地調査を実施することとし、このことを平成9年度に通知で明らかにする。 | ||
b | 医療法人の設立の認可については、医療法人の適正な運営を確保するため、同一人物が複数法人を設立する際の審査事項を明示することとし、このことを平成9年度に通知で明らかにする。 |
(2)老人保健施設
(1) | 再点検結果 | |
老人保健施設の再点検については、平成7年度中に建設工事契約を行った事業のうち、地方公共団体立のものを除く291施設を対象として行った。 対象施設の開設者を見ると、医療法人232施設(79.7%)、社会福祉法人41施設(14.1%)、その他18施設(6.2%)となっている。 建設工事の契約方法については、一般競争入札を行っているものが5施設(1.7%)、指名競争入札を行っているものが141施設(48.5%)、随意契約を行っているものが145施設(49.8%)となっている。 指名競争入札を行っている例を点検すると、指名業者の選定について、理事会で決定しているものが94施設(66.7%)、選定委員会を設置して決定しているものが31施設(22.0%)、その他16施設(11.3%)となっている。また、入札参加業者数は、5社未満が60施設(41.1%)、5社以上が86施設(58.9%)となっている。 次に、随意契約を行っている例を点検すると、請負業者の見積りのみであったものが68施設(46.9%)、複数の見積りであったものが77施設(53.1%)であった。 入札結果については、公表しているものが81施設(55.5%)、指名参加業者について公表しているものが51施設(36.2%)であった。 | ||
(2) | 改善事項 | |
ア | 国における整備(協議)基準の明確化老人保健施設については、毎年度、施設整備に係る協議要領(局長通知)により国庫補助の採択方針を示しているところである。また、従来、全国都道府県関係部局長会議、全国都道府県関係課長会議等においても、国庫補助協議対象施設の選定に当たっての都道府県における審査事項についても指示しているところであるが、これについても通知により平成9年4月を目途に明確化することとする。 | |
イ | 都道府県における補助金交付対象施設選定の適正化 都道府県における選定は、平成10年度の整備計画から、合議制による審査を経て決定することとする。 また、施設整備の国庫補助協議を行う施設についての名称等の情報は、平成9年度に通知により、都道府県において公表することを求め、その選定過程の透明化を図る。 国は、補助対象施設の内示結果について、平成9年度から都道府県別概況一覧を示したり、ホームページを活用する等により分かりやすい形で公表する。 | |
ウ | 国庫補助協議と社会福祉・医療事業団融資との連携 施設整備において、法人を新設して社会福祉・医療事業団からの借入れを予定しているものについては、平成10年度の整備計画から、国庫補助協議前に事業団に対して事前相談をするものとし、相互の連携を図る。 | |
エ | 建設工事契約の適正化 特別養護老人ホームについては、公共事業に準じた契約の適正化を図ることとしている。しかし、老人保健施設については、前述のように、 | |
・開設者の多くが医療法人であること | ||
・大部分が公費でまかなわれる特別養護老人ホームと比較して補助の仕組みが異なること | ||
・特別養護老人ホームのような市町村からの委託事業ではないこと等から、現在、建設工事契約について特段の規制はないが、施設整備補助金に係る業務等のより一層の適正化を図る観点から、次のとおり取り扱うこととする。 | ||
a | 平成9年度に通知により、原則として5社以上の競争入札を行うこととする。やむを得ない場合は、随意契約を行うことができることとする。 | |
b | 一括下請負については、平成9年度に補助金交付要綱の改正により禁止することとする。 | |
オ | 入札結果等の公開 平成9年度に通知により、事業者は、入札結果を都道府県に報告することとし、都道府県は、これを公開することとする。また、随意契約を行った場合は、事業者は契約結果を都道府県に報告することとし、都道府県はこれを公開することとする。 | |
(3) | 監査・考査の現状と改善事項 | |
ア | 監査・考査の現状 | |
a | 国、都道府県等において、原則としてすべての老人保健施設について年1回の実地指導が実施されており、その内容は、老人保健施設における設備及び帳簿書類に関するものである。 | |
b | 国は「老人保健法による老人保健施設の指導について」(昭和63年6月保健医療局老人保健部長通知)により、実地指導を行う際の指針を示している。また、毎年開催される老人保健福祉関係指導監査担当ブロック研修会、全国都道府県関係課長会議等の場において、老人保健施設に対する指導について周知徹底を図っている。 | |
イ | 改善事項 老人保健施設に対する指導体制については、今後とも現行の体制で適正な実施を進める。なお、老人保健施設の施設整備時における監査については、平成9年度から国庫補助金の交付を受けた施設について、建設工事中間点で都道府県に対する書面等による報告を求めるとともに、建設工事完了点における都道府県の開設許可に当たっての現地検査の実施は、可能な限り公共事業担当部局との連携を図ることとする。 |
2 水道・廃棄物処理施設 |
(1)国庫補助に係る施設整備業務及び監査・考査の現状
(1) 施設整備業務の現状
ア | 水道施設 水道施設の整備については、過疎地等水道の普及が遅れている地域における整備、地震や渇水に強い水道づくりのための耐震化や水源開発、水道広域化施設の整備、水源の汚濁の進行による健康被害を防止する高度浄水施設の整備など、重要性、緊急性が高いものを国庫補助対象としている。 |
イ | 廃棄物処理施設 廃棄物処理施設(合併処理浄化槽を除く。)の整備については、ごみ処理施設やし尿処理施設等の老朽化に伴う更新、埋立処分場の逼迫や容器包装リサイクル法に対応するためのリサイクル関連施設等を国庫補助対象としている。 |
ウ | 合併処理浄化槽 合併処理浄化槽の整備については、し尿と生活雑排水を併せて処理することにより、生活環境の保全に寄与することを目的とし、個人が設置する合併処理浄化槽に対し補助事業を行っている市町村、又は合併処理浄化槽の面的整備を自らが設置主体となって行う市町村に対し、国庫補助を行っている。 |
(2) 監査・考査の現状
(2)改善事項
水道・廃棄物処理施設の整備は、地方自治体が実施する事業であり、諸法令に基づき厳正に実施されているが、施設整備補助金に係る業務の一層の適正化を図る観点から、さらに以下の事項について改善を図ることとした。
(1) 工事契約等の適正化
(2) 国庫補助採択結果及び入札結果等の公表
3 国立病院、社会保険関係施設 |
国立病院(療養所を含む。以下同じ。)・社会保険関係施設の整備については、いずれも厚生省が直接実施しており、国の直轄事業として公共事業並びで、入札参加希望業者の資格審査及び経営規模等に応じた格付け、競争入札等の実施、落札業者との契約、工事着工、竣工検査を実施しているところである。
また、平成6年1月18日の閣議了解として、「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」が策定され、透明・客観的かつ競争的な調達方式・調達手続、外国企業の適正な評価、苦情処理手続の整備及び入札談合等不正行為に対する防止措置等が定められており、これに従った入札、契約手続を実施している。
(1)施設整備業務及び監査・考査の現状
(2)改善事項
(1) 入札業者の資格審査の充実
(2) 監理、検査体制の強化
(3) 入札結果等の公表
(4) 契約手続の適正化
第3部 出向人事等の在り方 |
今回の事件は、社会福祉施設整備費や社会福祉法人等の仕組みを悪用したもので あるが、厚生省関係職員の関与の下で生じたものであることから、綱紀の保持や地 方自治体への出向人事等の在り方についても見直しを行った。
その基本となる考え方は、次の2点である。
1 綱紀の保持 |
従来、厚生省においては、会食・贈答の機会が増加する年末等の機会をとらえ て、繰り返し全職員に対して綱紀の保持の徹底を図ってきた。
しかしながら、職務上必要な情報交換に伴って行う「会食」と「接待」をどう区分するのかなどの具体的な基準が明らかでなく、綱紀の保持についてどのように周知徹底し、管理監督するかの仕組が明確でなかった。
このような中で生じた今回の重大な事件の反省に立ち、厚生行政に対する国民の信頼を一日も早く回復すべく、徹底した厚生省職員の綱紀の粛正を図るため、平成8年11月29日、以下を内容とする厚生省独自の対応策を打ち出した。
このような中で、政府の中でも実効ある綱紀粛正策の検討が行われてきたが、12月19日の事務次官等会議において「行政及び公務員の信頼を回復するための新たな取組について」が申し合わされた。この申合せは、具体的な規定振りまで示した上で、各省庁が「公務員倫理規程」を制定・公表するとともに、その周知徹底のための措置をとるよう求めている。 厚生省では、12月26日、この申合せを踏まえるとともに、独自の綱紀粛正策を盛り込んだ「厚生省職員倫理規程」を制定した。
この厚生省職員倫理規程においては、
(1) | 各省庁共通の12項目の禁止事項に加え、勤務時間内の講演の禁止・私 的研究会への加入の禁止を盛り込む。 |
(2) | 官房長を総括服務管理官・各局庶務課長等を服務管理官として位置付 け、倫理規程の周知徹底と管理・監督を行う。 |
(3) | 関係業者等との接触を一切の例外なく禁止するのでなく、職務上必要な 場合は予め服務管理官に届け出て、その了承を得た上で一定の活動を行 うことを認め、一方で、この手続に反した場合は人事管理上必要な処分 を行う ことを明示する。 |
2 出向人事の在り方 |
平成9年1月1日現在、厚生省から都道府県・政令指定都市に課長級以上として出向している者の総数は78名である。
この中には、数次にわたり厚生省からの出向者が同じポストを占めている場合も含まれている。
厚生行政は国民生活に密着した行政であり、厚生省と福祉・保健・医療行政の「現場」である地方自治体との間で人事交流を行い、相互の仕事を理解する意義は、今後とも大きい。
一方で、地方自治体の特定ポストを長期間厚生省からの出向者のみが占めると、そこに情報や実質的な権限が過度に集中し、独断専行に陥るおそれが生じたり、当該自治体にその職務に関わる経験が蓄積されないなどの弊害が生ずるおそれがある。
以上のような問題点を踏まえ、今後、次のような考え方に立って、地方自治体 への出向人事を見直していくこととする。
(1) | 地方自治体への出向に関しては、今後とも地方自治体の意向を最大限尊重 する。 |
(2) | 出向する自治体・職務内容・職種・時期等については、できる限り多様化 を図るという観点に立って、関係自治体と協議する。 特に、厚生省からの出向者が長期間同一のポストを占めることは出来るだ け避けることとし、仕事の内容が専門特化している技官などの場合を除 き、原則として前任者と同じポストとならないよう、関係自治体と協議し ていく。また、原則として、同一人が2年を超えて同じポストに就くこと のないように関係自治体と協議していく。 |
(3) | 出向者に対して厚生省職員倫理規程は直接適用されないが、その趣旨を踏 まえた規律の保持を求めていく。 このため、平成9年3月、出向に先だって、地方行政に携わる場合の留意 事項や綱紀の保持等に関し事前研修を行ったところであるが、今後とも研 修内容の充実を図る。 |
終わりに |
本報告書は今回の施設整備業務補助金等の仕組みを悪用された事件の反省に立ち、その再発防止を図る観点から広く施設整備補助金等の業務全般について再点検を行ったものである。本報告書で示した一連の改善措置で未実施のものは、できる限り速やかに実行に移していくものとする。
厚生省職員は、今回の事件の反省を肝に命じ、国民全体に奉仕する国家公務員であることを改めて自覚し、公平公正を旨とし、その職務に誠心誠意取り組んでいくことはもちろん、今回改善措置を講ずる施設整備等の業務のみならず、その業務全般について、各人が常日頃から一層の適正化、透明化に取り組んでいく決意である。
今回の事件は、厚生省内で決して風化されてはならず、今後とも調査委員会において、広く厚生行政の在り方に関する幅広い意見を受け止めながら、二度とこのような事件が発生しないよう不断の業務点検を行い、国民の信頼回復を図っていきたい。
問い合わせ先 厚生省大臣官房政策課 担 当 田野(内2254) 電 話 (代)[現在ご利用いただけません] (直)03−3595−2160