報道発表資料 ホームページへ戻る 一覧に戻る 前ページ 次ページ

平成9年3月21日

生涯を通じた健康づくりのための身体活動のあり方検討会報告書について

 昭和63年から厚生省では、栄養、運動、休養のバランスのとれた健康的な生活習慣を確立するため、第2次国民健康づくり対策を「アクティブ80ヘルスプラン」と銘打ち、各種の施策を推進している。運動については、既に中高年の生活習慣病予防を目的に、日常生活の中に運動習慣を定着するため、平成元年には「健康づくりのための運動所要量」を、平成5年には「健康づくりのための運動指針」を策定している。
 しかしながら、近年の急速な高齢化による要介護者や骨粗鬆症患者の増加、並びに小児の肥満症等の生活習慣病の増加等の社会情勢の変化に伴い、中高年の生活習慣病予防のみならず、高齢者の生活の質(QOL)の向上の為の身体機能の維持・向上や女性の骨粗鬆症予防、さらには成長期における健康づくり等も視野に入れた、生活習慣の改善につながる、従来の運動という概念に止まらない、運動よりさらに幅広い概念である、健康づくりのための身体活動のあり方についての検討を行う必要性が高まってきた。
 このため、平成8年12月より医学・運動生理学関係の専門家、現場での運動指導者やサービス利用者、及び学識経験者よりなる検討会を開催し、幅広く検討を重ね、この度報告書をとりまとめた。その概要は以下のとおり。

I.検討会の経緯

 保健医療局長の私的検討会として、平成8年12月から平成9年3月まで、計4回開催。

II.報告書の概要

1.基本的な考え方

 本検討会報告書は、「身体活動」を「骨格筋の活動によって安静時よりも多くのエネルギ−消費を伴う活動」と考え、日常生活活動、趣味・レジャー活動、運動・スポーツに含まれる全ての身体活動を対象とした。このように、幅広い身体活動を含めることにより、いずれの性・年代においても容易に楽しく継続的に取り組むことができ、国民の健康づくりに広く寄与することを目的としている。
 また本報告書の「健康づくりのための年齢・対象別身体活動指針」では、「成長期」「青・壮年期」「高齢期」「女性」に4区分し、各々に望ましい身体活動のあり方を提示している。

2.健康づくりのための身体活動の有効性

 さまざまな研究により、健康づくりに対する身体活動の有効性が明らかになってきている。現在までに明らかとなっている、あるいは、推定される効果について以下の3つの観点より概説している。

(1)身体的効果

ア)身体活動能力に対する効果
イ)生活習慣病などに対する効果
(2)心理的効果
(3)社会・経済的効果

3.健康づくりのための身体活動のあり方

 本報告書では、主に生活習慣病の予防・改善を目的として、従来より勧められてきた有酸素運動に加え、近年高齢者を始めとして、各年齢層の人々がある程度以上の筋力を維持することが、QOLの向上に有用であることが認識されるようになってきたため、筋力増強等に寄与する安全な身体活動についても言及している。

(1)身体活動の種類

 健康づくりのための身体活動を、ア)日常生活活動、イ)趣味・レジャー活動、ウ)運動・スポーツに3分類し、主な身体活動を例示・解説している。
(2)有酸素性能力の維持・向上のための身体活動

 有酸素運動の有効性、基本的な身体活動の種類、年齢別の強度・時間を提示している。

(3)筋力の維持・増強のための身体活動

 筋力の維持・増強等に寄与する身体活動の有効性、基本的な身体活動の種類を提示している。

4.健康づくりのための年齢・対象別身体活動指針

 (別表参照)

5.健康づくりのための身体活動の推進方策

 本報告書において示された「年齢・対象別身体活動指針」が国民に広く普及し、その健康づくりに資するためには、厚生省では他省庁との連携のもと、以下の方策を推進する必要があるとされている。

(1)啓発普及
(2)機会の提供
(3)場の整備
(4)指導者の確保と活用
(5)研究・評価の推進


4.健康づくりのための年齢・対象別身体活動指針      
  身体活動の種類 身体活動の強度 身体活動の時間・回数 注意事項
日常生活活動 趣味・レジャー活動 運動・スポーツ
I.成長期
@)幼児期(健全な心身の発育)・買い物についていく、通園での歩行等・屋外で行う自転車・三輪車、ブランコ、ボ−ル遊び、鬼ごっこ等・スポ−ツクラブでの運動・スポーツや身体活動を伴う習い事・明示できないが、屋外での遊びとしての身体活動の平均時間は1日約60分と報告されている。@)身体のいろいろな部位を使う多様な身体活動を
A)傷害や突然死の予防
B)身体活動が嫌いにならないために
A)少年期(健全な心身の発育)・通学での歩行、自転車等・ハイキング、海水浴等・体操、ジョギング、水泳、スキー、各種球技、武道等・有酸素性能力の維持・向上のための身体活動の強度は、最大酸素摂取量の60%程度、あるいはそれ以上が好ましく、主観的には「やや楽である〜ややきつい」と感じる程度となる。
・筋力の維持・増強のための身体活動は、「やや重い」と感じる程度のレジスタンス運動が好ましい。
・身体活動の時間は、種目によって異なるが、1週間で約200分は必要と考えられる。
・いろいろな身体部位について、1日10回を週2〜3回の頻度で反復するのが望ましい。
 
II.青・壮年期
@)健康の保持・増進 ・通勤や買い物での歩行等 ・日曜大工、園芸、ハイキング等 ・ストレッチング・軽い体操、ウォーキング、ジョギング、水中運動、スキ−、サイクリング、各種球技等 ・有酸素性能力の維持・向上のための身体活動の強度は、最大酸素摂取量の50〜60%程度の有酸素運動が好ましく、主観的には「楽である〜やや楽である」と感じる程度となる。
・筋力の維持・増強のための身体活動は、「やや重い」と感じる程度のレジスタンス運動が好ましい。
・種目によって異なるが1日20分以上、その頻度は週2回 以上が望まれ、その合計時間は最大酸素摂取量の50%程度の有酸素運動の場合、1週間で年代によって合計140〜180分以上が必要である。
・主要な身体部位について、1日10回を週2〜3回の頻度で反復することが望まれる
@)医学的な有所見者の身体活動
A)疾病の予防・改善 (主に壮年期の医学的な有所見者)   ・ダンス、ハイキング等 ・ウォーキング、ジョギング、水中運動、サイクリング等 ・最大酸素摂取量の50%程度あるいは主観的には「楽である」と感じる程度と設定 ・1週間で年代によって140〜180分以上が望ましい。  
B)ストレス対策   ・園芸、ダンス、ハイキング、アウトドアライフ等 ・ジョギングやサイクリング等
・各種球技等
・水泳、スキ−、ゴルフ等
・基本的には健康の保持・増進のための身体活動とかわらない。ただし、その中で自分が楽しく、リラックスできる種類や状況を選択するとよい。  
III.高齢期
@)健康の保持・増進と疾病の予防・改善 (主に前期高齢者) ・散歩、買い物等 ・日曜大工、園芸、ハイキング等 ・ストレッチング・軽い体操、ウォーキング、ジョギング、水中運動、ゲートボール、ゴルフ等 ・最大酸素摂取量の50%程度の強度の有酸素運動が望まれ、主観的には「楽である」と感じる程度となる。 ・種目によって異なるが、1日20分以上、身体活動の頻度は、週2回以上が望まれ、1週間で合計約140分以上が望ましい。 @)筋力低下
A)運動中の内科的事故
B)日常生活での事故
A)自立の維持・向上 (主に後期高齢者) ・散歩、掃除、買い物、料理等 ・園芸等 ・ストレッチング・軽い体操、ウォーキング、水中運動等 ・有酸素性能力の維持・向上のための身体活動の強度は、最大酸素摂取量の40〜50%、あるいは主観的には「かなり楽である〜楽である」と感じる強度の有酸素運動が主体となる。
・筋力の維持のための身体活動は、息を止めないで、一つの動作が20回くりかえせる程度の強度が望ましい。
・個人の体力に合わせて行うべきであり、1週間で140分を目標にする程度でよいと考えられる。
・できるだけ毎日行うことが、効果をあげ、安全性を確保するためにも有効である。
・週2〜3回の頻度で行うことが好ましい。
 
B)生きがい・満足感・コミュニケ−ションの獲得   ・カラオケ、買い物、日曜大工、園芸、ダンス、ボランティア活動、釣り、ハイキング、登山等 ・体操、ゴルフ等      
IV.女性(母性を含む)
@)女性の健康の保持・増進 ・散歩や買い物等 ・園芸、ハイキング等 ・ストレッチング・軽い体操、ウォーキング、ジョギング、水中運動、各種球技等 ・成長期と青・壮年期における、健康の保持・増進のための身体活動と同様である。 @)生活習慣の改善
A)更年期症状の軽減   ・壮年期における健康の保持・増進のための身体活動や、疾病の予防のための身体活動の中から、女性が行いやすく、特に爽快感や楽しみを味わえる、運動・スポ−ツ、趣味・レジャ−活動等を選ぶとよい。 ・壮年期における健康の保持・増進のための身体活動や、疾病の予防のための身体活動と一致する。  
B)骨粗鬆症の予防     ・ジャンプや踏み込み動作を伴う各種の運動・スポーツ
・レジスタンス運動等の筋力をつける身体活動
・ウォーキング程度の運動・スポーツ
・基本的には成長期の健全な心身の発育のための身体活動、青・壮年期及び高齢期における健康の保持・増進のための身体活動とかわらない。  
問い合わせ先 厚生省保健医療局健康増進栄養課
       健康増進関連ビジネス指導室
   担 当 村田(内2341)、 松村(内2339)

報道発表資料 ホームページへ戻る 一覧に戻る 前ページ 次ページ