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平成9年2月12日

健康保養地検討会報告書について

厚生省では、豊かで活力ある高齢社会を実現するため栄養、運動、休養のバランスの取れた健康的な生活習慣の確立を図る第2次国民健康づくり対策を推進している。
平成4年度「健康休暇検討会報告書」において、成人病の予防、働きすぎの解消、あるいは豊かな生活の追求といった国民の願いに応えるため、健康のため国民が平日を含めて連続して取得する「健康休暇」の普及を推進し、国民の間に定着させるべきこと、また、「健康休暇」の受け皿として、豊かな自然環境の中で積極的な健康づくりが実施できる「健康保養地」づくりを進めることが提言された。その後、引き続き健康保養地のあり方等についての研究を行うとともに、既存の保養地等における実験的事業を実施してきたところである。
これらの成果を踏まえ、平成8年7月からは、保養医学、健康保養地づくりに取り組んでいる自治体、観光関連産業、健康保険組合、労働組合、経営者団体、報道機関等の関係各界の有識者からなる検討会を開催し、より幅広い見地から健康保養地の創設に向けた検討を重ね、この度、報告書をとりまとめた。その経緯と概略は以下のとおり。

I.検討会の経緯

保健医療局長の私的検討会として、平成8年7月から12月まで計6回開催。

II.報告書の概要

1.健康保養地普及の意義

  1. 健康保養地の社会的意義
    健康保養地とは、豊かな自然環境の中で、中長期の滞在による健康づくりを行うとともに、日常生活の中で失われた健康を取り戻し、健康であることの喜びを実感(健康快感の体験)することにより、働き盛りの中高年の勤労者等が、自らの健康の大切さに気づき(健康への気づき)、日常生活における健康的な生活習慣の形成に資する学習や動機づけを行う場である。
    健康休暇の具体的な受け皿が準備されることにより、大義名分がないため休暇を取得しにくい現状から、健康休暇を取得しやすい職場状況に変わっていくことが期待される。
  2. 健康保養地の健康・生きがいづくりにおける意義
    健康保養地は科学的・医学的な根拠に基づいた保養活動を行うことにより、安全かつ効果的な健康づくりができる場であり、利用後の日常の生活習慣の改善に結びつくことで一人一人の国民の健康の保持増進が図られる。
    健康保養地における経験は人生に新たな意義付けを与え、長寿社会における豊かな人生の創造に資するものである。
  3. 健康保養地の波及効果
    国民の健康増進や疾病予防により、医療費の低減にも資することや、既存の保養地の平日利用の促進等により地域の活性化及び国内観光地の需要の創出、および地元産業の振興といった効果も期待できる。
    健康休暇が普及することは、より充実した社会生活の実現や人生に対する価値観の変更といった日本文化の変容につながる。

2.健康保養地の備えるべき機能

(1)豊かな自然環境に恵まれた保養に適した気候の中で、利用者がその自然を快適に活用し健康増進を図ることができること
(2)利用者の要望や健康状態を踏まえた適切な保養プログラムを安全に提供するために、必要な医学的検査等が実施でき、併せて保養効果を測定・評価できること
また、日常生活を含む健康相談に適切に応じられるとともに、応急時の対応が可能なこと
(3)日常の健康的な生活習慣の定着につながる体験や学習が可能であり、また地域の文化・伝統とのふれあいや趣味の形成、文化・教養を高めるような活動ができ、そのような活動を通じ、利用者相互及び利用者と地元住民の交流が図れること
(4)利用者が中長期間快適に滞在でき、幅広い国民が利用できるよう宿泊等の基本的なサービスが適正な負担で提供できること
(5)利用に関する情報提供・相談窓口などを備えることにより、利用者がこれらのサービスを適切に利用できること

3.健康保養プログラムについて

  1. 健康保養プログラムの役割
    健康保養プログラムは、健康保養地において、利用者の中長期の滞在を通して心身の休養や回復に資するとともにこのような過程の中で、健康への気づきを体感させ、あわせて日常生活における栄養、運動、休養のバランスのとれた健康的な生活習慣の形成につなげる役割が期待される。
  2. 健康保養プログラムの構成及び実施上の留意点
    保養プログラムの構成要素としては、自然を活用したもの、屋内で行うもの、また、栄養、運動、休養の健康づくりのそれぞれの要素に重点をおいたもの、文化や教養を深めることにより自己実現を図るものなど多様なものがある。
    健康保養プログラムの特徴は、医学的・科学的な根拠に基づき作成され、利用者の年齢や健康状態等を踏まえ、安全かつ効果的に利用者に提供されることであり、利用者が自主的にプログラムを組めるよう支援する仕組みが確立されていることが重要である。
    実施上の留意点は以下のとおり。
    (1)利用者の多様な要望にできるだけ幅広く応えることが望ましい。
    (2)必要に応じ健康診断を行う等、安全性の確保に留意することと併せて、利用者の保養効果を測定・評価し健康的な生活習慣への動機づけを行うことが必要である。
    (3)生活習慣に起因する疾病に対する基礎的な知識や、日常生活における健康づくりに関する様々な知識や技術を学べることも必要である。
    (4)自然環境等を利用したプログラムの構成要素については、健康増進効果が科学的に検証されているものを中心に、特に安全性に留意して併用実施する。
    (5)健康休暇の普及を促進する等の観点から、当面1〜2週間程度の期間設定によるプログラムが適当である。また、健康への気づきを促すという観点から、より短期間のプログラムを策定することも意義がある。

4.健康保養地が備えるべき要件

  1. 自然環境
    (1)豊かな自然環境に恵まれ、遊歩道やハイキングコースなどが整備されており、また、必要に応じ、リフトの整備等、自然環境への交通手段について配慮されていること
    (2)自然環境の安全性に関する継続的な調査に基づいた注意すべき情報、及び適切な気候に関する情報が提供される仕組みがあること
    (3)大気汚染などの人体に有害な環境や好ましくない環境がないこと
  2. 施設
    健康保養地において必要とされる施設として、以下のようなものがあるが、健康診査等の医学的検査や診断を行う医療施設については保養地地域外施設との連携によることも可能である。その他、健康保養プログラムの内容に応じ必要な施設については、別途整備されなければならない。また、整備にあたっては障害者等の利用に対する配慮に加え、周辺環境との調和が必要。
    (1)ホテルや旅館、及び低廉で長期間滞在できる快適な宿泊施設
    (2)利用者相互間及び利用者と地元住民との交流を行う施設や野外の空間
    (3)屋内において運動等を通じた健康増進が実施でき、生活指導・保健相談等も受けられる施設
    (4)健康保養プログラムの内容の説明や健康保養地利用についての各種の情報提供、及び案内・指導の機能を備えた施設
    (5)屋外における運動や散策・休息等が行える社寺、公園や田園、森林等の場
    (6)事故等の緊急時における応急処置等の対応ができる施設
  3. 人材
    健康保養地としての特性により以下のような人材が必要であり、主にそれぞれの分野における専門家を配置することが望ましい。また、伝統文化等のプログラムを実施する場合等は、地域の高齢者等のボランティアも積極的に活用すべきである。
    (1)健康保養地利用について全般的な相談への対応、適切な助言及び総合的な調整を行う人材
    (2)栄養、運動、休養その他の個別の保養プログラムが適切に実践されるよう指導する人材
    (3)日常生活を含む健康相談や生活指導を行える人材
    (4)事故等に対して、適切な応急措置を行える人材
  4. 運営
    健康保養地にふさわしい運営がなされるためには、民間事業者と地元関係者が、健康保養地の意義を十分に理解したうえで、整備計画の策定や、運営体制の確立について協力しあう必要がある。その際、総合調整役として自治体の積極的かつ主体的な関わりが必要になる。これらを踏まえ、以下のことが実現されていることが必要
    (1)自治体や地域住民、関係民間事業者、保健医療関係者等により構成される運営協議会が設置されていること
    (2)健康保養地域内に医療機関がない場合は、近隣の医療機関との適切な提携関係を有すること

5.健康保養地の普及方策
健康保養地の整備の推進については、民間事業者だけでなく、地元自治体が整備や運営について一定の役割を果たしていく必要があるとともに、国が以下の整備・普及方策に取り組むことが必要である。

  1. 整備の促進
    地元自治体に対し、整備計画策定にあたっての援助や、健康保養地としての指定を行う等の具体的な施策を講じるとともに、関係省庁との連携のもと既存施策を効率的に活用し、整備を推進する。
    健康保養プログラムの開発・普及や、その基礎となる健康保養医学の研究について積極的に取り組むとともに、医療経済の観点からの費用対効果の評価も併せて行う。
    人材養成や資質の向上のための研修や運営上の手法に関する技術の開発・普及について積極的に取り組む。
  2. 利用の促進
    健康休暇を取りやすい環境の整備や福利厚生事業等における取り組みを進めるため、経済団体や労働組合さらに雇用主や健康保険の保険者等に対し、積極的な普及啓発を行う。また、幅広い国民の利用を促進するため、関係省庁との連携のもと観光業界に対する啓発活動を進める。

 問い合わせ先 厚生省保健医療局健康増進栄養課
        健康増進関連ビジネス指導室
    担 当 村田(内2341)、 松村(内2339)

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