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今後の医療保険制度のあり方と平成9年改正についてNO2

 〔医療における情報の提供と患者の選択〕
III 平成9年改正について
 
 こうした視点を踏まえ、今後一連の改革に着手することとし、その第一段階として平成9年改正に取り組む。
 平成9年改正においては、IIで述べた医療保険制度全体の今後のあり方を踏まえ、抜本的な見直しに着手するとともに、その方向に沿って、緊急の課題である医療保険の財政収支の均衡を図るために必要な改革を実施する。

 
1.医療の質の向上と効率化
〔医療機関の機能分担と連携の強化〕
 地域医療支援病院の制度化とあわせて、かかりつけ医(かかりつけ歯科医)の機能を果たしている医療機関、専門病院、療養型病床群、特定機能病院等といった医療機関の機能を明確化し、体系化を図る。
 このような医療機関の機能を明確化する方向に沿った新たな診療報酬体系を構築するため、必要な調査研究、データの蓄積に取り組む。

 
 〔社会的入院の解消と長期入院の是正〕
 いわゆる社会的入院を解消するため、退院後の受け皿として、施設及び在宅の看護・介護サービス基盤の計画的な整備を一層進める。
 保険者は、市町村と連携をとりつつ、医療機関の協力を得て、社会的入院の状態にある患者が円滑に退院できるよう指導、相談等を充実する。また、医師が入院治療を行う必要性がないと認めた者が入院を継続する場合、医療保険制度上の取扱いを見直す。
 各種方策による社会的入院の解消にあわせて、医療計画上の必要病床数について早急に見直しを進める。また、病床過剰地域においては、過剰病床を解消するための方策を講ずる。

 
 〔在院日数の短縮等〕
 急性期医療の充実を図るため、人員配置基準の見直しを検討するなど医療機関の療養環境の改善に努める。また、患者にとって必要な治療を確保しつつ入院期間を短縮するための措置を講ずる。さらに、在宅医療の推進を図る。

 
〔医師・歯科医師の需給の見直し等〕
 医師数及び歯科医師数の需給の見直しのための総合的な取組みに着手する。
 この見直しと整合性を図りつつ、医療保険制度においても、医師数等の適正化を図る方策を検討する。
 医師の資質の向上を図るため、臨床研修の充実方策について検討する。

 
〔薬剤使用の適正化等〕
 薬価差問題の解消を図るため、薬価基準に代わる新たな方式への転換を含めた現行薬価制度の抜本的な見直しに早急に着手することとし、当面、薬価差の早期縮小を図る。
 個々の医薬品の薬価算定の透明化を図る。
 医薬品に関する患者への情報提供を一層充実する。
 患者や医療機関の薬剤使用に係るコスト意識を涵養する観点から、薬剤給付を見直すほか、適正な医薬分業の推進、診療報酬や審査支払における対策等薬剤使用の適正化のための総合的な対策を講ずる。
 検査について重複や過剰を是正するため、必要な措置を講ずる。
 第三者による病院機能評価を充実するとともに、積極的にその情報公開を進める。
 患者に対し、診療に関する情報の提供を進める。

 
 〔健康保持の促進〕
 国民1人1人の健康保持への努力を支援するため、かかりつけ医や保健婦 等による生活指導を含む総合的な相談、地域におけるリハビリテーション提供体制の整備、総合健康診査の効果的な実施等を推進する。

 
2.医療保険制度の運営の安定化
 〔人口の高齢化への適切な対応〕
 医療保険制度における高齢者の位置付けについては、当審議会としても、平成8年6月21日に取りまとめた第2次報告において、現行老人保健制度に代わる複数の案を含めて4案を提示し、検討を行ってきたところである。
 老人医療の費用負担の仕組みについては、介護保険制度の施行を目途に抜本的に見直すこととし、これに向けて、引き続き当審議会で早急に検討を進める。当面、現行老人保健制度の基本的枠組みの下で必要な見直しを行う。

 
 〔政管健保の財政運営方式について〕
 政府管掌健康保険においては、平成4年度から5年間の中期的財政運営を実施しているが、現下の厳しい財政状況にあっては、従来の財政運営方式をそのまま維持することは困難であり、平成9年の改正においては、例えば3年程度の間収支が均衡するような財政計画とする。

 
〔医療保険財政の健全化〕
 医療保険財政を建て直すためには、前提として徹底した医療費の効率化が必要であり、そのための諸施策に速やかに取り組む必要がある。
 このため、平成9年改正においては、医療提供体制の見直しなど医療費の 効率化を図るための各般の施策に取り組むとともに、コスト意識を喚起し医療費の増大を抑制する効果を有する患者負担の見直しにも取り組む必要がある。また、医療保険財政は基本的には保険料で賄うべきであり、最近の厳しい経済状況を考慮しても、ある程度保険料率を引き上げることも止むを得ない。
 患者負担及び保険料とともに医療費を賄う公費負担については、国や地方の財政構造が著しく悪化している現状では増やしていくことに限界があるが、老人医療の費用負担の仕組みを抜本的に見直すに当たり、社会保険方式における公費負担のあり方や、今後老人医療費が増大する中での財源確保のあり方といった課題も含め、適切に検討することが必要である。
 なお、政府管掌健康保険の財政状況を考えれば、国庫補助の繰延べ分の扱いについては、現下の国の財政状況の厳しさを踏まえた上で、可能な限り適切な措置を考えるべきである。

 
〔給付と負担の見直し〕
 保険料については、政府管掌健康保険の過去最高の保険料率が85 であることや、平成3年度までは84であったことを考慮すると、その程度の水準まで保険料率を引き上げることも止むを得ない。さらに、患者負担についても、各制度間の公平、老人医療費を支えている現役世代と高齢者世代との公平及び保険給付の重点化を図る観 点から、見直しを行う。この場合、具体的な方策としては次の(1)から(3)などが考えら れ、保険料率の引上げ等と組み合わせて医療保険財政の健全化に必要な措置を講ずべき である。
(1)  被用者保険本人の患者負担を、少なくとも健康保険法本則の規定に沿って2割とすること。これについて、他の方策との関連や優先度において慎重に検討すべ きとの意見もあった。
(2)  高齢者の患者負担について、1〜2割の負担とすること。この場合、定率負担とすることについては、診療を担当する委員は、老人の心身の特性にかんがみ定額負担とすべきとの意見であった。
(3)  薬剤給付について、給付除外ないし3〜5割の患者負担を設定すること 。これについては、薬剤に着目した患者負担を設けても、必ずしも薬剤使用の適正化に結びつかないのではないかとの意見があった。
 また、いずれの場合においても、必要な受診が抑制されることのないよう低所得者に適切な配慮を行う。
 一般用医薬品類似医薬品については、一般用医薬品を保険外で購入する場合との公平を確保するため、給付除外を含めて給付のあり方について見直す。
 高額療養費制度の自己負担限度額については、制度創設時に比べて被保険者の所得や医療費の水準が相対的に上昇していることを踏まえ、その水準や改定ルールのあり方を見直す。また、自己負担限度額をきめ細かく設定する仕組みを設ける。

 
 〔診療報酬体系等の見直し〕
 医療費の総額の伸びを財源の規模に応じて安定化させるための診療報酬体系及び審査支払方式の見直しに向けて、臨床の実態を踏まえ、医療費について科学的・客観的な分析を行うために必要な調査研究及びデータの蓄積に取り組む。

 
〔特定療養費制度の拡充〕
 医療技術の進歩、患者のニーズの高度化・多様化に適切に対応するため、 特定療養費制度の積極的な活用を図る。

 
〔保険者の機能の強化等〕
 保険者は被保険者に対して医療機関に関する情報の積極的な提供等を行う。
 保険者の自律性を高め、その機能を強化していく観点から、病床過剰地域 における保険医療機関の指定等について、保険者が積極的に関与できるような仕組みを 設ける。
 保険者規模を適正なものとするため、健保組合の統合を進めるなど保険集団のあり方を見直すほか、保険者の事業及び事務の効率化・合理化並びに給付の適正化を進める。

 
〔総合的な医療情報システムの構築〕
 情報通信等の技術革新を導入して医療の質の向上と事務処理コストの軽減を図るため、レセプト電算処理や被保険者証のカード化の促進などを通じ、総合的な医療情報システムの構築に着手する。


 問い合わせ先 厚生省保険局企画課
    担 当 伊奈川(内3216)
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