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  エ.地域の活動情報を
  ○ 活動を始めるきっかけとしては、口コミや友人からのすすめ、市町村広報など
      、何らかの情報提供がなければならない。特に高齢者の場合、活動の場や活動内
      容、指導者・コーディネーター、団体・サークルなどに関する周辺市町村も含め
      た地域の、きめ細かく有用な情報が、高齢者の身近なところにおいて容易に取得
      できるような仕組みが必要である。
  ○ そのためには、スーパーなど人の多く集まる企業の掲示板の活用のような企業
      や企業OB会の協力を求めるなど情報提供先の輪を一層広げる方策を検討してい
      く必要がある。特に、本格的な高度情報化社会の到来がうたわれる21世紀を目
      前に控えた今日、新しい情報通信機器やネットワークの活用は避けて通れないと
      ころである。国も自治体も高齢者自身も、生きがいづくり分野における情報化に
      ついての積極的な取り組みを図っていく必要がある。
  ○ これについては、例えば、県の推進機構に、コーディネーター的な人材や各種
      活動の場、サークル・団体の情報、各種イベントの情報など、生きがいづくり活
      動に関連した様々な地域レベルの有用な情報を蓄積し、それを市町村に提供でき
      るような情報ネットワークを構築することが考えられる。その際、特に、高齢者
      ができるだけ身近なところで、活動に有用な各種のきめ細かな情報を、高齢者が
      容易に取得できるよう、高齢者向けの仕組みについて工夫が必要である。
  ○ なお、情報内容としては、民間のものも含め、行政(市町村、都道府県、各省
      庁)や各種団体の非常に多岐にわたる情報が想定されるが、高齢者住民に最も身
      近な市町村が中心となって関係団体と協力して情報を集積し、精査し、高齢者が
      選択しやすいように整理し提供されることが望ましい。そのためには、市町村行
      政区画や団体相互のタテワリの壁を乗り越え、地域での関係者間の連携による「
      情報の共有」のしくみ等が工夫される必要がある。
  ○ 他方、高齢者自身にあっても、単に情報の受け手になるだけではなく、自ら情
      報の発信源となるよう、機関紙の企画発行やワープロ、パソコンの操作など、情
      報関連活動への意欲的、積極的な取り組みも求められる。コミュニケーションは
      、本来、一方通行のものではありえず、双方向性が基本であるから、高齢者の主
      体性の確保のためにも、情報発信源たろうとする意欲が不可欠である。

  オ.会社人間から社会人間へ
    地域になじみの薄いサラリーマンOBにとっては、退職後ただちに地域の人々
      と親しい人間関係を形づくることは難しい。若い時から、地域社会の色々なこと
      に意欲や関心をもち続け、何らかの形で少しでもかかわっておけば、その蓄積に
      より、退職後の地域における活動の取り組みがスムーズになるといわれている。
      したがって、定年後に備えて、地域社会における人間関係を上手に形成していく
      ことが極めて重要であり、その意味では、現役時代から友人、地域活動、趣味・
      学習などの地域社会ネットワークをいかに形成していくかが、定年退職後におけ
      る地域への適応の鍵になるであろう。

(3)健康の保持・増進活動のあり方を考える

  ア.高齢者の生きがいづくりは、まず健康づくりから
  ○ 高齢者の「生きがい」と「健康づくり」とは密接に関係しており、表裏一体と
      も言えるものである。「生きがい」は人の生き方にもかかわる問題で扱いが難し
      い面もあるが、「健康づくり」は、誰にとっても必要なもので受け入れやすいも
      のでもある。このため「健康づくり」を切り口として検討し、それを生きがいづ
      くりにつなげていく工夫も必要である。
  ○ 「健康」については、医学や医療の世界では、一般的に、身体から出発し、心
      理面そして社会生活へという流れで考えることが多いようである。しかし、高齢
      者の場合には、予防的見地から、逆にまず社会生活面からのアプローチが大切で
      ある。このような意味において、人との関係を断ち、家に閉じこもりがちになっ
      ている高齢者に、どういう形で参加を呼びかけ、地域社会とのつながりをもたせ
      るのか、ということも重要となる。
  ○ ただし、「地域社会とのつながり」を強調する余り、お仕着せにならないよう
      に注意することが肝心である。例えば、内向的な人と外向的な人とでは、地域社
      会とのかかわり方も異なってくるであろうから、あくまでも本人の主体的な意思
      や選択を尊重すべきことは言うまでもない。

  イ.高齢者にふさわしい健康の物差しを
  ○ 高齢者の健康づくりは、各自の健康状態や体力に応じて、自立して自分の体を
      いつまでも動かし続けることを目標になされるべきである。このような観点から
      は、高齢者の健康度の新しい評価基準が必要であり、例えば、「疾病」の有無よ
      りも日常生活自立機能面を重視し、生活動作については、「どの程度できるのか
      」をみようとする考え方も出てきている。また、「余命」に関しても単に平均寿
      命や平均余命の「長さ」を問題にするのではなく、「活動的余命」や「生産的長
      寿」という概念がでてきている。
    今後は、このような新しい健康評価指標や考え方に基づく新しい高齢者の健康
   管理手法の確立が必要である。また、高齢者の身体機能の理解・心理面での配慮
      ができる質の高い指導者や共に支えあう仲間も必要である。
  ○ スウェーデンでは、高齢者(年金受給者)向け体操の指導をする民間組織が、
   自治体の大きなバックアップによって質の高い指導者を養成し、高齢者の身近な
      施設に派遣している。また、ホームヘルパーの仕事に高齢者の健康レベルにあわ
      せた体操指導や散歩が含まれている。
    我が国においても、個人差が非常に大きいという高齢者の機能特性やその安全
      性を踏まえた高齢者のための運動プログラムづくりと同時に、健康運動指導士な
      どの指導のもと、民間の健康増進施設や市町村保健センター等を活用して、地域
      で高齢者のグループを指導するような事業を検討すべきである。
  ○ 高齢者の積極的な健康づくりのためには、中高年からではなく、生涯を通じた
      若い時からの、栄養面・運動面・休養面での健康的な生活習慣の形成ということ
      が特に重要であり、しかも身体面だけではなく、ストレス対策も含めて考えてい
      く必要がある。

  ウ.閉じこもり高齢者などへの精神・心理面での配慮を
    精神・心理面での健康に関しては、孤独感や不安感をもちやすい閉じこもり高
      齢者や一人暮らし高齢者、高齢者夫婦のみの世帯などを中心に、痴呆や抑うつ状
      態の予防あるいは初期治療の推進のために、特に保健婦、看護婦やヘルパーなど
      高齢者と直接接触する者が、高齢者の抑うつ状態等の心理的な病気について、早
      期発見に必要な基礎的な知識を持つようにする必要がある。

  エ.高齢者の健康水準を向上させよう
  ○ 高齢者の健康については、一般的に「低下する一方である」と考えられがちで
      あるが、高齢者でも、(20才代にもどることはできないが)単に現状を維持し
      たり、低下を防ぐだけではなく、現時点よりも能力を高め、向上させることが可
      能であるということが、最近の研究成果で明らかになってきている。
    このように、高齢になっても能力回復・向上のための努力の効果が現れるとい
      うことから、「高齢」についても暗く考える必要はなく、健康づくりについての
      積極的な取り組みの必要性を改めて認識すべきであろう。
  ○ 健康・体力づくり事業財団が「健康情報ネットワークシステム」の整備に着手
      しているところであるが、高齢者の健康の問題については、高齢者の健康観、健
      康評価指標、健康管理手法のいずれも十分確立しておらず、その面での研究開発
      とその成果の蓄積がまず必要である。

(4)関係団体との連携が重要である
    生きがい健康づくり活動は、きわめて広範囲にわたる活動であり、それに関連
      する団体・組織の輪も相当の広がりを有する。特に、その活動推進の主要な柱で
      ある各県の推進機構や老人クラブなどについては、相互に活動を支援し合い、相
      乗効果が出るような連携の強化が求められる。既に一部では連携共同事業が行わ
      れているが、活動を一層効果的、効率的に推進するためには、連携の範囲、連携
      の相手を拡大していく必要がある。

(5)行政の役割は何か
    生きがいや健康づくりは、言うまでもなく基本的には個人の裁量にかかわる問
      題であるが、個人では解決できない基盤整備や環境づくり(意識面での啓発等、
      活動を促進するための誘導も含む)は、社会的、行政的に対応していく必要があ
      る。特に、行政にあっては、個人の自由な生き方や選択を大前提としながら、時
      代のニーズにあった個人や関係団体の自主的な取り組みをいかにして効果的に支
      援していくかということが課題である。

(6)その他
     長寿社会における「心の豊かさ」ということを考えた場合、その要因の一つで
   ある家族等「心の支えになる人達」の存在も重要である。特に、これまでタブー
      視されがちであった、高齢者の男女の問題や高齢者の再婚の問題も大切であり、
      避けることなく何らかの取り組みが必要であろう。

     懇談会委員一覧 (五十音順) [*印は座長]

     荒 尾   隆 [(財)明治生命厚生事業団体力医学研究所長]
     石 原 美智子 [(福)新生会理事長、叶V生メディカル代表取締役]
     伊 藤 憲 喜 [(社)日本セカンドライフ協会(JASS)常務理事]
     伊 原 正 躬 [(財)長寿社会開発センター専務理事] <注>
     荻 原 隆 二 [(財)健康・体力づくり事業財団常務理事]
     小 野 進 一 [(社)全国シルバー人材センター協会 前専務理事]
     香 川 正 弘 [上智大学文学部教授]
     金 子   勇 [北海道大学文学部教授]
     見 坊 和 雄 [(財)全国老人クラブ連合会常務理事]
    *坂 巻   煕 [淑徳大学教授、日本福祉大学客員教授]
     柴 田   齊 [(財)青森県長寿社会振興財団常務理事]
     鈴 木   勲 [栃木県保健福祉部高齢対策課長]
     高 橋 紘 士 [法政大学社会学部教授]
     高 橋   弘 [埼玉県春日部市福祉部長]
     武 井 正 子 [順天堂大学スポーツ健康科学部教授]
      竹 内 孝 仁 [日本医科大学教授]
     武 内 安 治 [(財)大阪府老人クラブ連合会会長]
     土 井 康 晴 [(社)生活福祉研究機構専務理事]
     松 本 吉 平 [(財)健康・生きがい開発財団常務理事]
     牟 田 悌 三 [俳優(世田谷ボランティア協会理事長)]
     村 田 幸 子 [NHK解説委員]
     森 戸   哲 [地域総合研究所所長]
     山 田 美和子 [(社福)全国社会福祉協議会高年福祉部長]

     <注>平成8年7月までは、「荻生 和成」委員


    問い合わせ先 厚生省老人保健福祉局老人福祉振興課
     担 当 遠藤(内3933)
          電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
                  (直)3597-1869


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