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                              平成8年9月11日

     21世紀、高齢者が社会を変える

  −− 新しい高齢者像の確立をめざして −−

   (「心豊かで活力ある長寿社会づくりに関する懇談会」中間報告)について

1.懇談会設置の趣旨
  本格的な高齢社会の到来を控え、介護問題への対応と並んで、高齢者が生きがいを
  もって、できるだけ元気に暮らし続けていけるようにする対策も重要である。それは
  とりもなおさず、要介護状態になることの予防につながると同時に、高齢社会を心豊
  かで活力のあるものにする対策でもある。
  特に、「高齢者の世紀」たる21世紀を目前に控えた今日、「第2の現役世代」と
  して他の世代とともに社会を支えるという発想に立った新しい高齢者像を模索すべき
  段階を迎えている。
  このような状況に対応し、高齢者の生きがいと健康づくり活動の新たな展開等につ
  いて検討するため、老人保健福祉局長の私的検討組織として標記懇談会を本年4月に
  設置した。

2.審議経過
 ・第1回 4月17日(水) 座長選任、検討項目の確認 等
 ・第2回 5月14日(火) 関係団体からの活動報告 等
 ・第3回 6月 7日(金) フリートーキング
 ・第4回 6月21日(金) フリートーキング
 ・第5回 7月25日(木) フリートーキング
  ・第6回 9月 6日(金) 「中間報告」取りまとめ

3.「心豊かで活力ある長寿社会づくりに関する懇談会」中間報告(要旨)

1.新しい高齢者像を考える

(1)「高齢者」観を変えよう
    「高齢者」といっても、30年以上の年齢的な開きがあることなどから、生き
      がいと健康づくりに関しては、一定の年齢による画一的なとらえ方は現実的では
      なく、今後は個人個人が多様な生き方や考え方をもち、身体的・精神的・経済的
      にも幅のある集団としてとらえていく必要がある。そのためには、高齢者自身が
      、より主体的・積極的に社会とのかかわりを求め、地域や社会で活躍するよう意
      識を変革するとともに、社会の側も画一的な高齢者観を変える必要がある。

(2)高齢者は「第2の現役世代」である
    高齢者にあっては、「第2の現役世代」として、より自由な立場を生かして、
   様々な形で社会的に活躍することが求められる。高齢者パワーをいかす社会的仕
      組みづくりという意味で、生きがいと健康づくり活動の役割は大きい。

2.高齢者の生きがいと健康づくり活動とは何か

(1)自己実現と共生をめざして
  ○ 「生きがい」とは自己実現を図ることであり、主観的なものであるが、その活
      動は、仲間や理解者を得、地域社会とのかかわりをもつことで、活性化し社会的
      意義をもつことになる。とりわけ社会参加活動が重要な意味をもつ。また、「健
      康」は身体面だけではなく精神・社会面も含め幅広くとらえられており、健康づ
      くりと生きがいづくりとはかなり重なり合う。両者は、できるだけ一体的にとら
      えていく必要がある。
  ○ 高齢期は、「健康」や「生きがい」ということが若い時以上に大切なものとな
      ってくる。個別的な状況に応じて、生きがいと健康づくりに努めていくことが、
      個々の高齢者にとって満足感の得られる「心豊かな」高齢期をすごすことにつな
      がる。

(2)なぜ生きがいと健康づくり活動が必要か

  ア.高齢者本人にとって
    自己実現を図るための生きがいと健康づくり活動(以下、「生きがいづくり活
      動」という。)は、自立・自助の生活を送り、また、年齢にとらわれず自由に生
      き、主体的に活動していく意味でも不可欠なものである。

  イ.地域社会にとって
    生きがいづくり活動が、普通に社会とのつながりを持ち続ける活動として地域
      の中に定着すれば、現実に地域社会を支える不可欠のものとなる。また、多世代
      共同によるまちづくり活動としての側面もある。世代間交流を通じ、地域社会を
      つくり、変え、活性化する意味で大きな意義を持つ。

  ウ.社会全体にとって
  ○ できるだけ長く元気で、主体的に生きるという高齢者の生き方が次の世代に伝
    われば、「高齢者の世紀」たる21世紀をより明るいものに変えていくことがで
   きる。
  ○ 「生活者」、「消費者」としての高齢者の存在は、将来の消費構造や仕事に関
      する考え方を変革する可能性を秘めている。
  ○ 生きがいづくり活動については、長期的にみた場合、医療費低減や寝たきり予
      防等の社会経済的な効果も期待される。

3.高齢者の生きがいと健康づくり活動を考える

(1)活動の方法を考える

  ア.仲間をつくろう、外へ出よう

  イ.知恵と経験を多様な活動で生かそう

  ウ.高齢者の、高齢者による、高齢者のための活動をめざそう

  エ.社会参加活動に目を向けよう

  オ.活動の効果を世の中に示そう

(2)活動促進のための環境整備を考える

  ア.市町村が先頭に立って

  イ.活動の拠点を

  ウ.地域にコーディネーターを

  エ.地域の活動情報を

  オ.会社人間から社会人間へ

(3)健康の保持・増進活動のあり方を考える

  ア.高齢者の生きがいづくりは、まず健康づくりから

  イ.高齢者にふさわしい健康の物差しを

  ウ.閉じこもり高齢者などへの精神・心理面での配慮を

  エ.高齢者の健康水準を向上させよう

(4)関係団体との連携が重要である
    生きがいづくり活動の効果的、効率的推進のためには、関係団体相互に一層活
      動を支援し合い、相乗効果が出るよう、連携を強化・拡大していく必要がある。

(5)行政の役割は何か
    個人では解決できない基盤整備や環境づくりは、社会的、行政的に対応してい
      く必要がある。特に行政にあっては、いかに関係者の自主的な取り組みを効果的
      に支援するかが課題である。

(6)その他
    長寿社会における「心の豊かさ」を考えるとき、これまでタブー視されがちで
      あった高齢者の男女の問題等についても、何らかの取り組みが必要であろう。


           21世紀、高齢者が社会を変える


           新しい高齢者像の確立をめざして


              平成8年9月11日


         心豊かで活力ある長寿社会づくりに関する懇談会

                (中間報告)

                 目次

                                   頁
〇はじめに‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥1

 1.新しい高齢者像を考える‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
 (1)「高齢者」観を変えよう‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
 (2)高齢者は「第2の現役世代」である‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥3

 2.高齢者の生きがいと健康づくり活動とは何か‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥3
 (1)自己実現と共生をめざして‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥3
 (2)なぜ生きがいと健康づくり活動が必要か‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥5
   ア.高齢者本人にとって
   イ.地域社会にとって
   ウ.社会全体にとって

 3.高齢者の生きがいと健康づくり活動を考える‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥7
 (1)活動の方法を考える‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥7
   ア.仲間をつくろう、外へ出よう
   イ.知恵と経験を多様な活動で生かそう
    ウ.高齢者の、高齢者による、高齢者のための活動をめざそう
   エ.社会参加活動に目を向けよう
   オ.活動の効果を世の中に示そう
 (2)活動促進のための環境整備を考える‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥10
   ア.市町村が先頭に立って
   イ.活動の拠点を
   ウ.地域にコーディネーターを
    エ.地域の活動情報を
   オ.会社人間から社会人間へ
 (3)健康の保持・増進活動のあり方を考える‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥14
   ア.高齢者の生きがいづくりは、まず健康づくりから
   イ.高齢者にふさわしい健康の物差しを
   ウ.閉じこもり高齢者などへの精神・心理面での配慮を
   エ.高齢者の健康水準を向上させよう
 (4)関係団体との連携が重要である‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥16
 (5)行政の役割は何か‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥16
 (6)その他‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥16

〇懇談会委員一覧‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥17

〇はじめに

 21世紀は、高齢者の世紀である。わが国は、本格的な少子・高齢社会を迎えており
、近い将来、高齢者は人口の四分の一をも占めることになる。このように社会のかなり
の部分を占める高齢者がどのような生き方をするかは、21世紀における社会のあり方
に大きな影響を与えることになる。
 高齢化の問題を考えるとき、介護の問題に注目が集まりがちである。確かに、この問
題は、非常に切実で大きな課題であり、要介護高齢者やその家族に対しては最大限の支
援が必要である。しかし同時に、8割〜9割の高齢者は、通常は介護や援護を必要とせ
ず暮らしている。このような身体的には比較的元気な高齢者が、できるだけ健康を保持
し、その意欲と能力に応じて普通に社会とのかかわりを持ち続けることは、要介護高齢
者の問題と同じように重要である。中でも、これからの高齢社会を明るく活力に満ちた
ものとしていくためには、高齢者のパワーを集約し、社会の中にうまく組み込んでいく
ことが、不可欠である。
 新ゴールドプランにおいては、要介護高齢者施策の基盤整備という意味合いで「高齢
者の社会参加・生きがい対策の推進」がうたわれ、様々な取り組みがなされてきている
。公的介護保険制度が具体化されつつあり、また、関係団体が21世紀を展望した新た
な動きを示している今日、高齢者が社会の重要な一員として、他の世代とともに社会を
支えていくという発想に立って、生きがいと健康づくり活動についても、より前向きな
あり方を模索すべき新たな段階を迎えつつある。
 当懇談会では、高齢者の生きがいと健康づくり活動について、その意義を再確認しな
がら今日的視点で見つめ直し、多くの元気な高齢者がいわば「第2の現役世代」として
高齢期を過ごせるようにするための環境や条件づくりの充実を目指して、その活動のあ
り方や事業展開の方向性、行政施策のあり方などを検討することとした。
 本年4月17日以降6回の検討を重ねてきたところであるが、今回、これまでの議論
を集約し、「中間報告」という形で、現時点における一応のまとめをおこなったもので
ある。

1.新しい高齢者像を考える

(1)「高齢者」観を変えよう
   ○ 1956(昭和31)年の国連経済社会理事会の定義によると、65才以上人
      口比率が7%以上の場合に「高齢化した社会」と分類され、「高齢化率」は65
      才以上の人口比で表示することとされている。しかし、その後の世界的規模での
      人口高齢化の進展を考えると、この定義自体が現状に合ったものとは言いがたく
      なっているように思われる。
  ○ 老人福祉法では65才以上をその施策の対象としているのに対し、老人保健法
   では原則として70才以上を老人医療の対象としている。また、年金制度におい
      ては、これまでは、60才が年金支給開始年齢として位置付けられてきた。
    このように、「高齢者」について、法律上一般的な定義がある訳ではなく、個
      々の法律目的との関連において「高齢者」の範囲が決定されてきている。
  ○ 仮に65才以上の人を「高齢者」とした場合、60才代から90才代までには
    30年以上の年齢的な開きがあり、個々の高齢者の身体的・精神的・経済的・社
      会的状況が多様であるのみならず、その知恵と経験も様々である。また、世代別
      にみても価値観にも幅のある世代が含まれることになる。さらには、地域によっ
      て住民意識や人間関係のあり方にも差異があるほか、特に最近では、高齢者の価
      値観も多様化し、生き方の選択もバラエティーに富んできている。
    このように考えると、特に生きがいと健康づくりに関しては、「高齢者」につ
      いて一定の年齢による画一的なとらえ方は現実的ではなく、また、年齢のみによ
      り一律に区別する取扱いも適当ではない。
    今後は、個人個人が多様な生き方や考え方をもち、身体的・精神的状況や経済
      的状況にも幅のある集団として高齢者をとらえていく必要がある。
  ○ そのためには、高齢者自身がより主体的、積極的に社会とのかかわりを求め、
   地域や社会で活躍するように意識を変えていくことが必要であり、社会の側でも
      、画一的な高齢者観を捨て、高齢者であってもその能力に応じて社会に参加した
      り、ハンディキャップがあっても、それに応じた社会参加ができるようなシステ
      ムを作っていく努力をしなければならない。

(2)高齢者は「第2の現役世代」である
  ○ 従来は、身体面・経済面での状況から社会的弱者というイメージで見られがち
      であった高齢者も、平均寿命の伸びや年金制度の充実などもあり、社会の中でか
      なりの割合を占めるようになるにつれその姿を変えつつある。これまでは福祉サ
      ービスを受ける立場にあるととらえられていた高齢者も、のんびり余生を送ると
      いうイメ−ジだけではとらえられなくなる。社会の第一線としての責任や緊張感
      から解放された元気な高齢者が、いわば「第2の現役世代」として、より自由な
      立場を生かして、働き、楽しみ、地域社会に貢献するなど、様々な形で社会的に
      活躍していくこと −− そして、それが特別のことではなく、高齢者のごく普
   通の姿であること −− が求められるようになる。
  ○ 今後、高齢者は、地域社会の主要な構成員として地域社会形成の責任と義務が
   ある。積極的に自己主張し、若い世代とも交流しながら共に地域社会に参加し、
   これを支える、という意欲的な取り組み姿勢をもつことが期待される。
    そのためには、高齢者パワーを活かし、社会の中にうまく組み込んでいけるよ
   うな仕組みやきっかけづくりが必要となる。
NO2に続く
    問い合わせ先 厚生省老人保健福祉局老人福祉振興課
     担 当 遠藤(内3933)
          電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
                  (直)3597-1869


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